皆さんお気をつけて。
ラムセス二世とその妃ネフェルタリ様とカイロの街を歩く。
二人は、風変わりしたエジプトを興味深そうに眺めている。
そして、近くの飲食店に入り、適当に食事をする。
『ふむ、庶民でもこうして肉が食えるようになったのか。畜産についても大いに進化したようだな。魔法など有らずとも、人は進歩するか』
と、感心しているラムセス二世を横目に、俺はイスラム料理を食べる。
んー、味気ない。
だが、ファラオ的にはこれで特に文句はないらしい。
『しかし、ビールやワインが飲めぬとは……。イスラム教とやらは度し難いものよな』
ラーに選ばれしものと言う名を持つラムセス二世からすれば、エジプトの神々を信じなくなったエジプトの人々が異質に見えるそうだ。
まあ、ぶっちゃけた話、マジで存在していたエジプトの神々よりも、本当にいるか分からないイスラムの神を信じているのはおかしいだろう。
だが、まあ、他国に支配されて教化されたらそんなこともあるかと思ったらしい。
そして、適当なカフェで英語とアラビア語をお教えする。
まあ、魔力覚醒してるし、古代人の因子持ちだしで、知能は極めて高いからな。
一時間程で覚えたようだ。
速読で、英語の辞書10冊、アラビア語の辞書10冊を読んだ後に、不明点を俺に質問する形で学習したファラオ。
「成る程、イングリッシュとアラビア語については理解した。では、次は歴史と文化についてだ」
早速覚えた英語で言ったファラオ。
「では、国立図書館へ行きましょう」
途中、治安維持部隊の襲撃があったが、ファラオがそれを退け、金言魔法によるバインドで縛り、我が物顔で道を歩く。
図書館では、ファラオが歴史書や政治、経済、科学などのあらゆる本を片っ端から読み、理解できなかった点を俺に尋ねるという形式をまたやって、閉館までにほぼ全ての主要な本を読んだ。
今のファラオは、一流の大学教授並の知識を集められているだろう。
「ふむ……、間違っているな」
ん?ファラオが呟いた。
「我はラーの血を引くものだ。そして、五百年以上は生きた」
んんー?
「我は、偉大なるアトゥムの血族である神人ラーの孫である」
んんんー?
「まるで、神々が架空のもののように記されているが……、神々は実在していたぞ。まあ、我がファラオに就任した頃には、ラー様も老齢であり、ラー様は我がファラオに就任して百年で身罷られたがな」
やっぱりいたのか、古代人。
つまり、古代人のアトゥムが、神人と呼ばれる半古代人を多数、人間に産ませた。そしてそれらの子供がファラオなのか。
となると、ファラオは大体四分の一程は古代人の血が流れていることになる。
いや、ラムセス二世は更に半分か?
だが、八分の一の血でこれ程の魔力量と身体能力が遺伝するのだから、古代人の血は凄いな。
かく言う俺も、検査の結果によると、古代人の血を引いていて、先祖返りした可能性が大きいとされているからなあ……。
時間逆行でもすれば分かりそうなもんだが、古代人は自分の生きていた時代への時間逆行ができないようにプロテクトかけてるからな……。
タダでさえ時間逆行は難しいのに、プロテクトをかけられるとほぼ無理だな。
それも、古代人謹製のプロテクトなんざ、まず突破できねえ。
量子コンピュータを一億台用意して百万年かければ解析できるんじゃね?みたいなプロテクト。
もちろん、俺や、亜人国の王室も時空間的プロテクトはかけてあるから、過去に戻って子供のうちに殺してやろうみたいな某サイボーグ映画みたいな真似はできない。
ラムセス二世とその妃を高級ホテルのスイートルームに案内する。
俺?俺は一旦転移してデモンズネストに帰ったよ。
明日の朝、起こしにくると伝えておいた。
「ほう!見よ、ネフェルタリ。これが電灯というものらしい。魔力を感じさせぬのに、眩い光を発しているぞ」
「ええ、面白いわね」
金もごそっと持たせておいたし、問題はないだろう。
ルームサービスの高級ワインで乾杯しているのを見届けて、一旦帰る。
次の日の朝。
俺が迎えに来て、またもやカイロを移動。
朝食に世界中の食事が出るビュッフェを楽しむファラオと妃。
「ふむ……、外国か。このような食文化の国は、さぞ豊かな国なのだろう。ヒッタイトの国の西側、欧州と言ったか?我の代で支配しておけば、エジプトの食事はもっと美味くなっていたかもしれんな」
あと、この人達、パンをめちゃくちゃ食うね?
まあ、古代エジプト人だもんな。
そりゃパンを食うわな。
「このクロワッサンの美味きことよ!かつてのパンのように、砂が混じっておらぬ!鋼鉄の機械で挽いた小麦のパンはこうも違うものか!」
楽しそうですね。
そうして、好き勝手飲み食いして、また街の見物をしようと外に出ると。
『『『『動くな!』』』』
対テロ用特殊部隊のエントリーだ。
ファラオのご機嫌がルーデルのスツーカばりに急降下。
ファラオは口を開いた。
「『控えよ』」
金言魔法だ。
特殊部隊は皆、土下座の体勢にされる。
「ファラオたる我に対し武器を向けるとはなんたる不敬か!」
お怒りだな。
「昨日も同じく、この我に不敬にも銃を向けたな?最早、許せぬ。『潰れろ』」
超重力で兵士を押し潰すファラオ。
不味いな。
「『ディスペル』」
魔法を解く。
「……何をする、魔導師?」
「恐れながら、ファラオよ。ここでエジプトの民を殺せば、軍事政権たるエジプトの政治家は、全力で襲いかかってくるでしょう。さすれば、このカイロが火の海になるやもしれません」
「……戦闘機、爆撃、戦車、ロケット砲と言ったか?」
「ええ。そしてファラオよ。貴方にはもう、この国の民を裁く資格がない」
「……ふむ」
ファラオは、感心した様子で頷いた。
「確かに、この国は最早、我のものではないな。ならば、我も民と同じく、法によって裁かれる立場か」
「その通りでございます」
ファラオは、暫く考え込んだ。
そして。
「ふむ、ならば我は、再び玉座に返り咲くこととする」
そう言って、ファラオは、ギザを目指し空を飛んだ。
どうする気だ?
ギザの大ピラミッドの頂点に立つファラオ。
「『起動せよ』」
あー、そう来るか!
ピラミッドは、どうやら、古代人の飛行船だったようだ。
複数のピラミッドが、砂と石に覆われた外殻をぶち破って、正八面体の黄金の飛行船として起動する。
「『起動せよ』」
そっちはそうか。
スフィンクスはどうやら陸戦兵器らしいな。
金色の四足歩行兵器として覚醒した。
「『進行せよ』」
ファラオは、ピラミッドの内部に入ると、高速で空を飛び、メンフィスに数秒で到着。
ここは……、王家の谷か。
「『起動せよ』」
王家の谷が、円柱の様な形の空中要塞になる。
「『起動せよ』」
アブ・シンベル神殿も同じく、空中要塞として覚醒。
その他にも、様々な遺跡が、黄金の要塞として再起動した。
遠話の魔法で話しかけられる俺。
ファラオはこうおっしゃられた。
『さて、魔導師よ。これは、クーデターと言うらしいな』
ははーん?
そう来る?
『軍事力により、現在の政権を奪い取る。クーデターでございますね』
俺がそう返す。
『何、案ずるな、魔導師よ。我は貴様に感謝している。我がこの国を再び支配した暁には、貴様には一切手出しをせんと、我が神に誓おう』
『それはありがたいお言葉ですね』
『ふはははは、よく言うわ。貴様の全力ならば、我を再び冥府に送ることも容易いだろうに。……エジプトは、暫くは我の手で叩き直す。世界を侵略する意思は最早ない』
ふーん。
『であるならば、私からは何もお声がけすることはございませんな』
好きにすりゃいいんじゃねーの?
俺、しーらない。
『……そうか、それを聞いて安心したぞ。貴様が我の前に立ちはだかれば、正直な話、我は負けるからな。我がファラオとして再臨した時には、貴様の国とは友好的になりたいものだな』
『私は国に仕える者ではありませんがね』
『ふむ、では、貴様とは個人的に友好関係を結ぼう。我の友となれ』
まあ、それくらいなら。
『良いだろう。俺はレイジ・ヨロイ、今この瞬間から、ファラオの友だ』
どうも俺の書く主人公はサイコパスばかりで、最終目標が世界征服か自分の世界に閉じこもるかの二択になりつつある。
メガテンssは今行き詰まり中。幹部が全員改造されて魔人になることと、ラスボスが四文字であることは確定してるんだけど、他は特に考えてないんだよなあ……。今、初期幹部のスカウトシーン書いてるけど中弛みん。
クラフターはふわふわ設定で困ってる。コの字型の大陸で、北にある別の大陸から侵略者が来て、南の未開の森に逃げ込む亜人と、それを働かせる主人公君……、うん、普通だな!あんまり面白い話にならなそう。