ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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弟からスパロボTを借りたが、やる暇がない模様。


82話 宇崎使節団 その1

ベスティエ。

 

人口一億五千万人を超える大国であるベスティエには、亜人国家との敵対を避けたい国々が、それぞれ、大使館を設置した。

 

人口一億五千万人と言えば、ロシア以上である。

 

亜人大陸の面積はオーストラリア大陸の約二倍ほどで、横と下に伸びるL字型に分布する大陸である。ベスティエは、その約五分の二程の面積が領地だ。つまり、オーストラリア並の面積を持つのだ。

 

それも、山岳や氷雪地帯が多いという訳でもなく、平原を中心に、開発可能な土地を持っている。

 

一方で、この亜人大陸のせいで、太平洋の飛行機の航路はほぼ封じられて、航空会社が苦情を出している。

 

また、新たに現れたもう一つの月を領地として開発していることが、宇宙条約に反する。

 

様々な問題を抱えながらも、とりあえず戦争はやらないでおこうと言う風潮から、一部のそれなりに頭が回る国々は、外交のチャンネルを開いた……。

 

 

 

我々、宇崎使節団は、先日の河内外務大臣の第一使節団が、亜人国家との友好条約の締結という偉業を成し遂げて帰還してきたことを受け、本格的に亜人国家の調査を行い、ニーズを把握し、輸出する製品の選定や、逆に輸入すべき製品の選定を行う。

 

また、亜人の文化や技術力を調査して、将来的に、両国間で人間が行き来して問題ないかなどを調べ、各国の元首に親書を渡すことが使命だ。

 

ネットでは、「現代版岩倉使節団」と揶揄されているが、事実である。

 

私、宇崎春雄を全権大使として、およそ百人ほどの日本人の男女……、二十歳以上の学生を含む集団で、亜人国家の調査を、半年かけて行う予定だ。

 

大使である二十人以外は、皆、各分野のスペシャリスト。そして、今回の調査により、日本に新たな風を吹かしてくれるような若者達もいる。

 

日本で集められる最高の人材を用意して、我々は船でベスティエに向かった……。

 

 

 

一週間の船旅の末に、ベスティエの港、バラジュエナに到着する。

 

途中で、船について一悶着あったが、謝りつつ何とか上陸。

 

「おお……!」

 

感嘆の声を上げる我々使節団は、上陸すると、しばらく、「お上りさん」のように周囲を見回していた。

 

あまりにも違う、まさに異世界であるこのベスティエに対して、それぞれが知識欲を刺激されたのだ。

 

食べ物の匂いも独特で、道行く人の顔も違う。

 

そこらの虫も、鳥も見たことのない種類のもので、キツネ色の羽の逞しい鳥や、土色のトカゲなどが荷馬車を牽いて、人々が空を飛んで移動している。

 

格好も違う。

 

革鎧、金属鎧は当たり前で、男性は革のズボン、女性はチューブトップと短いズボンが多いように思える。

 

だが、あまりにも、人々の服装には統一感がなかった。

 

ズボンだけで、裸足の上に上半身が裸の逞しい男性もいれば、見事な細工のドレスを着た女性もいる。

 

彩色も色とりどりで、服の質は高いように感じる。

 

街並みは石や木材が中心だが、まるで機械で加工されたかのような精密な細工だ。

 

決して、亜人達が文化的、技術的に、我々よりも劣っているようには感じられない。

 

むしろ、全身に毛の生えた亜人に服を着る意味があるのかという疑問がある。

 

「うーす、迎えに来たぜ、人間共」

 

軽い調子で声をかけてきた、錆色の鎧と黒いマントの狼男の集団は、我々に向かって名乗った。

 

「俺はヴォールグ・テンペスタ男爵だ。うちのモンを連れて来たから、案内に使えや」

 

「これはどうも、私は宇崎春雄特務大使です。よろしくお願いします」

 

「おうよ、よろしくな。世話役はうちがやれってなもんで、経費もどっさり、ちゃんと働いたらボーナスも出る予定なんだ。もらう金の分は働くぜ。それに、王からの直々の指名っつったら断れねえしな」

 

ふむ……、男爵とは、年金がもらえる訳ではないのだろうか?

 

その辺りも後でそれとなく聞いてみよう。

 

「そんじゃあ移動だ。ボヤボヤしてる奴は置いてくから、ちゃんとついてこいよ!」

 

「ええと、どこへ?」

 

「あー?まあ、王都に転移すりゃ良いんじゃねえのか?」

 

「その、地理関係を知るために、転移せずに移動したいのですが」

 

「んー、まあ、良いんじゃねえか?魔導列車と魔導馬車、どっちにすんだよ」

 

列車があるのか……。

 

「では、列車でお願いできますか?」

 

「おうよ、ついてきな、駅はこっちだ。おっと、その前に、ナシナを渡すわ」

 

ナシナ?

 

「ナシナとは?」

 

「んー……、多分、お前らの国で、スマホ?って呼ばれてる道具に似てるもんだ」

 

スマホ?!

 

そこまでの技術力が?!

 

「最新型の日本語パッチを入れてあるから、お前らでも使えんだろ。操作は……、まあ、何となくで使えるから、分からなけりゃ部下に聞いてくれや」

 

「は、はあ」

 

そして、手渡される、現行のスマホより一回り大きな手帳。

 

革の外装と白紙のページがめくってもめくってもなくならない不思議な手帳だ。

 

「何開いてんだよ、ここの真ん中のエンブレムに指を乗せろ」

 

「はあ、こうですか……、おお?!」

 

言われた通りに、親指でエンブレム部分に触れると、立体画面が出てきた。

 

これは……。

 

立体画面のオブジェクトに触れる。

 

これは電話のマークだろうか?

 

ここに触れると、私達全員の名前と、テンペスタ男爵の名前がある。

 

これは電話帳か。

 

では、ここは?

 

棒グラフ?

 

株価か!

 

なんて事だ、先物取引をしているのか!

 

そしてこれは……、ネットワークブラウザだ!

 

ん……、これは何だ?

 

「あの、ここの、一千万ドグラマとは?」

 

「ドグラマはドグラマだろ?お前らはドグラマを使わないのか?」

 

はあ?

 

「ええと、ドグラマとは、何に使う数値なのですか?」

 

「買い物だよ、ドグラマを払って品物をもらうんだ。あー、お前らの国では、カネ?って言うんだっけか?」

 

「ま、まさか、電子マネー?!」

 

「デンシ?よく分からんが、昔からドグラマは、亜人国家共通のカネだ。ベスティエではガウリーンとエアロン、スタリオとホーナー、あとグリプス辺りも使えるな」

 

「ええと、他の通貨があると?」

 

「おうよ、通貨ごとに、その時々で価値が変わるから、それを両替して稼ぐなんて奴もいるな」

 

為替市場!!

 

なんて事だ、ベスティエ人は我々と同じように、株や為替で金銭を稼いでいるのか!

 

中韓は未開の民族とバカにするがとんでもない!

 

スマホでマネーゲームに興じる人々が未開の民族であるものか!

 

「この、ナシナというものの充電などは?」

 

「ジューデン?なんだそりゃ?」

 

「ええと、このナシナはどういう原理で動くのですか?」

 

「あー……、大学の基礎魔導具学入門でやったっけな。あんま覚えてねえけど、ここの設定のところからソースコード見れるぜ」

 

全く理解できないプログラミング言語のようなものが、手帳にびっしりと書き込まれている。

 

文字は、宙に浮かびつつ絶え間なく動き回り、魔法陣が回転している。

 

「ええと……、つまり、どういう仕組みなのですか?」

 

「オイオイ、見りゃ分かるだろ?」

 

「いえ、その……」

 

「あ〜?人間は魔法言語やってねえのか?こんなもん、魔導具学と魔法言語学と魔法陣学の触りをやってりゃある程度分かるもんだろ?」

 

「我々の国ではそのような学問はありませんでした……」

 

「ふーん、不便なんだな」

 

魔法的に見れば、こちら側が後進国どころか未開の蛮族なのか……。

 

「まあ、ナシナは小型の魔導書と魔導具をくっつけたもんだ。ジューデンってのはよく分からねえが」

 

「いつまで動くのですか?」

 

「滞空魔力駆動式だから一生動くんじゃねえの?」

 

「一生、ですか?!」

 

「おうよ、滞空魔力駆動式の魔導具は壊れるまで動くに決まってんだろ。じゃなきゃ困るわ」

 

永久機関……?!!

 

「ええ、と、壊れたりは?」

 

「んー……、まあ、高圧の軍用魔法なら壊れるんじゃね?自己再生術式あるし、ちょっとくらいなら壊しても平気だしな」

 

なんてことだ……。

 

「もう良いか?さっさと駅に移動すんぞ」

 

「は、はい!」

 

亜人国家、我々よりも上かもしれない……!

 




これからの帰還勇者。

宇崎使節団のベスティエ訪問が六ヶ月。

帰国した各国の使節団が報告をする。

各国の反応。利に聡いアメリカ、金の匂いを嗅ぎつけるドイツ、宗教的に荒れるバチカン、亜人と敵対する中韓、内ゲバでそれどころじゃない中東アフリカ、いち早く兵器を輸入するロシア、平常運転の日本。

これを機に嫁の実家に帰る帰還勇者。

銀狼族の里、ウルフェンロア内に存在、ブレードランナー的なサイバーパンク街。何故か日本のカードゲームが大流行りする銀狼族の里。

アクアレギス内の最高学府サムドラ大学、プロフェッサーオリヴィエの帰還により湧き立つ。

ティルナノグ、エルフの里、シェイクスピアに感銘を受ける。

ネクロニア、パンデモニウム、悪魔族の人間堕落計画。

ベスティエ、ハーピィ領、カラオケルームが新設される。

ドラゴニア、銃器に興味を持つ。

ベスティエ、ケンタウロス領、輸入野菜がとても美味しい。

ネクロニア、スライム街、絵画の輸入。

ティルナノグ、アルラウネの村、「知識」の収集を始める。

ティルナノグ、虫人領アラクネ地区、日本のアニメキャラの服のデザインが可愛いので、大好きなドール遊びがヒートアップ。

ベスティエ、ドワーフ組合、工業製品をリバースエンジニアリング。

ウルフェンロア、九尾族の里、酒を買い集める。

そして、亜人の地球国家への入国許可。亜人の観光客は金を持っているので、景気爆上げ。あかん観光業界がオーバーワークで死ぬゥ!!!

今度は逆に、国民様の声により、各国政府は亜人国家への人間の観光客の入国許可を取る羽目に。外貨流出で経済壊れちゃ^〜う!お前なーっ!ただでさえ技術力が上の亜人国家になーっ!外貨をたくさん落とされたらなーっ!

各国の大使館の様子。そして一般通過観光客の様子。

なんか色々悪い人が暗躍したりするけど基本的に無意味。反亜人国家は、あらゆる手段で嫌がらせをしてくる。他のまともな国は、魔法技術をちょっとづつ吸収していき、頑張る。

おおっとー?ここでノースコリア君テポドンをぶっ放したーっ!

亜人国家、怒りの滞空魔力解放、留めてあった魔素が全世界に広がり、各国でダンジョン発生のお知らせ。

無策で突っ込む中韓、中東、アフリカ、南米。予定調和の如く死にまくり。あらかじめある程度準備していた国家は何とか凌ぐ。自滅国家が何故か国際的な非難を始める。

ここでアメリカさん、音速で法整備を終わらせて民間人にダンジョンの攻略を委託。アメ公得意の物量戦やろうにも、ダンジョンの中には戦車も戦闘機も入れないし、榴弾砲とかぶちかますのも難しい、ほぼ室内戦だから、実質歩兵しか使えないんだよなあ。室内戦ができる純粋な歩兵かつ予備役じゃない人となると少ない。人的資源無駄遣いしたら世論怖いし……。なおロシアはやった。そんなこんなで冒険者制度の始まりである。以降、世界各国で冒険者制度が施行される。世界冒険者協会の設立。

一方その頃、帰還勇者は、公式に嫁の人権が認められたので、嫁と世界旅行へ。

帰還勇者、世界冒険者協会のオブザーバーにされる。

当然断る。

ポストアポカリプスダンジョン程のとんでもない量と質のダンジョンではなく、この世界のダンジョンは量も質も控え目なので、一般的な社会が存続可能な範囲である。なので、自分で頑張れって話。

それはそれとして、冒険者としての資格を持っていれば無職ではないので、一応資格は取る。え?魔導具店の経営?亜人国家の経営者や管理職、技師を入れたんでもう帰還勇者だけの会社じゃないよ。利益収縮、手取りは年収十億円くらいかな……。以降、魔導具店のブランドは亜人国家製品のブランドとして、食品、武器、薬品、魔導書、何でも売ることに。

何でテメーみたいなのが講習受けにきてんの???みたいな目で見られながらも、嫁と和気藹々と冒険者試験を受け合格。

ダンジョンデート。

しかし、実際、デートなどする暇はないと知れ!!!帰還勇者、お前には、人間に流していい範囲の魔導具の選定という仕事があるのだ!!!

しかしその為には当然、各国の冒険者と足並みを揃える必要がある。仕方がないので冒険者協会との会議会議アンド会議。

冒険者に強い武器を持たせてダンジョンをほじくり返して利益を吸い上げたい冒険者協会上層部と、人間の身の丈に合わない玩具はロクなことにならないと知っている帰還勇者の熱いバトル。いや、熱くはねーな、帰還勇者が一方的に断るだけだし。

冒険者制度の始まりにより、変わった各国の風景。信じられるか、武器防具魔導具ポーション、そんなものの販売店がダンジョン近くの街中にあるんだぜ?まあ、その店舗の殆どは帰還勇者と亜人のグループ経営系列の店舗なんだがな!!!いやー、ダンジョンができたからって一目散に逃げた奴はアホだったね!今、ダンジョン近くの地価はグングン値上がりして、ダンジョン近くの街は経済発展が著しいのにね!

一般通過冒険者の様子。

ここまで考えた。あとよろしく。

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