さて、仕事の始まりだ。
あなたとしても、王家のスキャンダルを手にすることができると思うと楽しみである。
それとは別に張り切っていて楽しそうなギーシュの存在には失笑が漏れるが。
こいつはなんで無能姫率いるガタガタのゴミ王家に喜んで従うのだろうか?マゾなのだろうか?
究極のサディストにしてエゴイストのあなたには理解できない領域だ。
あと、でかいモグラに抱きついているのも理解できない感性だ。
放っておこう。
あなたは、標準的な馬……、駄馬よりは上、野生馬、いや、ノイエル馬程だろうか。
そこそこの品質の馬に跨り、走り出そうとした。
その時、空から何かが舞い降りた。
「グリフォン隊隊長、ワルドだ。アンリエッタ様から、君達と同行するようにと命じられた」
ふむ、グリフォン。
ノースティリスには存在しないモンスターだ。
興味深い。
「あの魔法衛士隊の?!」
「あ、貴方は!」
ルイズとギーシュの驚きを他所に、あなたは、とっとと出発するぞと発破をかける。
「あ、ああ、すまないね。久し振りに許嫁のルイズに会えて舞い上がっていたようだ」
あなたの眼に映るワルドは、ルイズ自身を見ていないように思える。
利用してやろうという意思が透けて見えるこの男がいまいち好きになれなかった。
他人を利用することは正しいことだが、何というか、小物臭がする。
あなたの友人に白髪の旅人がいるが、あれは割と大物だ。他にも、自分の知り合いと比べると、随分とチンケな男に見える。
ワルドは、グリフォンでルイズと共に移動する気でいるようだが、あなたはそれを止めた。
「フッ、嫉妬かな?」
と、起きているのに寝言を言うという器用な真似をしたワルドを他所に、引き離して移動を急がせる。
港町、ラ・ロシェールに到着。
その最中も、ワルドとルイズは会話を続けていた。
ギーシュは、暇なのか、おっかなびっくりといった様子であなたに話しかけてきたので、適当に相手をした。
「へえ、君のいたところでは、強さの指標を表すレベル、主能力、スキルがある、と。自分の強さを数値で表せるのは面白いね。僕はどれくらいなのかな?」
そうだな……、精々、15くらいだろうか?トロールにどうにか勝てる程度か。
「トロル鬼……。うーん、それくらい、かなあ。確かに、僕の腕ではトロル鬼一体と同じくらいかもしれない。では、ワルド様は?」
32、グリーンドラゴン程だ。
「僕の倍以上、ドラゴンくらい、か。確かにそれくらいの強さはあるだろうなあ。それじゃ君は?」
100000、すくつ数万階層程だろうか。
「じゅっ……?!!そ、そんなにかい?!そんなになのかい?!!」
軽く会話をしながら、宿屋についた。
「ここに泊まって、明日の夜に出発する、良いかな?」
「わ、分かりました、ミスタ・ワルド」
頷くギーシュ。
「あんたも返事くらいしたらどうなの?」
と、ルイズ。
あなたとしては、このワルドとか言う小物に態度よく接する必要性がないので、適当に返す。
この男は生理的に無理なタイプだ、苦しめねば。
クールな仮面を被った小物だ、その仮面を剥いで苦しめて殺してやりたいところだ。
あなたは常軌を逸したサディストなのだ。
出会ったものを即殺すジャンクな殺戮も悪くはないが、今回はじっくり時間をかけて地獄に叩き落としたい気分だ。
惜しむべきはこの男がルイズを愛していないところだろうか?もしも愛しているのなら、ルイズを犯したことを告げて心を折るのだが。
しかし、あなたはサイコパスだ。
人間の気持ちというものがいまいち理解できていない。
愛するものがいるのならば、それを汚して苦しめて殺せば、絶望させることができる。
分かりやすい夢や希望があるのなら、それを徹底的に貶めてやれば心を折れる。
あなたには、ワルドの気持ちが分からない。
ワルドの大切なものが分かれば、それを破壊するのだが。
さて、出発は明日の夜な訳だが。
「君のような男とは是非手合わせがしたくてね」
ワルドが血迷ったことを言い始めた。
「ワ、ワルド様、や、やめて、死んじゃう……!!」
「ははは、何、手加減はするさ」
「そうじゃなくって……!!」
あなたは、まあ、やってもいいと答えた。
「死人が出ますよ、ワルド子爵!!」
「ギーシュ君、だったかな?安心したまえ、手合わせと言っても軽く、だからね」
「だからそうではなく……!!」
あなたは、明日の決闘を楽しみにしておくと告げて、宿屋の一室に入った……。
「さあ、決闘だ!」
あなたは、バフもかけずに軽く踏み込んだ。
「速……ッ!!!」
速度はたったの2、3000だが。
ワルドは反応できずに、ソニックブームに吹き飛ばされ、無様に倒れた。
ふむ、こんなもの、か。
「ワルド様っ!!」
「ぐ……、格好悪いところを見せたね、ルイズ」
「仕方ありません……、悔しいですけど、あいつには誰も勝てないんですから」
雑魚過ぎて話にならなかった。
ギーシュに、あれでこの国のトップ層なのかと尋ねる。
「あ、ああ、そうだよ、彼はこの国でもトップクラスに強いんだけど……」
あなたは、メイジのお粗末さに落胆した。
しかし、それを口に出したところで、このワルドという男を煽ることはできないだろう。
例え、メイジはかたつむり以下のゴミだと罵っても、このタイプの男は困ったように笑って受け流すであろうことが容易に想像できる。
あなたは悩んだ。
どうすればこのワルドとか言う男の心を折れるのか。
答えは見つからないまま、時間が過ぎていった……。
その夜、ワルドはルイズを連れて、アルビオンへ向かった。
やられた。
あなたは機嫌が悪くなった。
ギーシュは女漁り、あなたは暇つぶしに街で通り魔をしていた。
その隙に、ワルドはルイズを連れ出したのだ。
「ダーリン!追いかけて来ちゃった……、ってあら?す、凄く御機嫌斜め?」
「ん」
キュルケとタバサが追ってきたが、そんなことはどうでもいい。
あの小物に出し抜かれたのが気に障るのだ。
基本的にあなたは、策を弄するタイプではないが故に、他人のことについてまで気が回らないのだ。
ペットも鍛えて強くするが故に、自分で自分の面倒も見れないルイズのような奴を四六時中守るのは得意ではない。
護衛依頼もやらない訳ではないが、得意ではないのだ。
それに、水のルビーもルイズに貸し出している。
あなたの読みでは、ルイズこそ虚無なのだろう。
図書館で調べた限りは、あなたのルーンは伝説のガンダールヴ。
ガンダールヴを使役するのは伝説の虚無の使い手。
つまり、ルイズこそ虚無。
それの覚醒を期待して、普段から身につけているようにと言いつけて、水のルビーを持たせておいたのだった。
ルイズ本体は割とどうでもいいが、貸し出した水のルビーがなくなるのは嫌だ。
タバサ、ドラゴンで追えるか?
「無理、高過ぎる」
そうか。
となると、これしかない。
ルイズは人として好きになれないので、扱いは雑です。