ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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お時間ない!!!!!!!!



83話 宇崎使節団 その2

バラジュエナの港から徒歩で一時間、バラジュエナ駅に到着する。

 

しかし、おかしいのは、駅と銘打っている割に、線路がないことだ。

 

「あの、線路は……?」

 

私、宇崎使節団の特務大使である宇崎春雄は、狼人間のテンペスタ男爵に質問する。

 

「線路?いつの話してんだよ、そんなもんは何十万年も前になくなってるっつーの!」

 

線路がない?

 

それは列車なのか……?

 

「時刻表によると、あと五分だな」

 

時刻表は、掲示板の上で文字が動いている。

 

電光掲示ではなく、木版にインクで書かれた文字がうねって、電車のように次の列車がいつ来るのかを示している。

 

パンタジア語で、あと五分後に列車が来ることを示しているが……?

 

五分待つと、列車が……。

 

『バラジュエナー、バラジュエナに止まりまーす』

 

「そ、空から……?!」

 

空から列車が降りてきた。

 

最早、常識の範囲外だ。

 

確かに、私はあまり詳しくはないが、空飛ぶ列車はファンタジーの定番のように思える。

 

しかし、プロペラも、ジェットエンジンもないのに、空を飛んでくるとは……。

 

「乗れ」

 

「は、はい」

 

『出発しますー』

 

 

 

「あの、これ、料金とかは?」

 

「ナシナから引かれてるに決まってんだろ」

 

電子マネーか……。

 

「しかし、簡単にアクセスできるなら、不正アクセスされて、ナシナ内のドグラマを操られてしまうのでは?」

 

「はぁ?そんなことが出来るような大魔導師なら、最初から普通に稼いだ方が儲かるぜ?」

 

ハッキングもほぼ不可能、と。

 

「この列車はどのようにして飛んでいるのですか?」

 

「魔法だ」

 

また、魔法か……。

 

「どのような魔法ですか?風を吹かせているのでしょうか?」

 

「いや、空中に一時的に仮想の線路を生み出して、それの上を走ってんだよ」

 

斜め上だ……。

 

「安全面などは……?」

 

「事故なんざ一度もねえよ」

 

全く揺れずに、快適な気温で、安全さも保障されている。

 

我が国の電車も、世界に誇る技術だが、この列車が本当に今まで無事故だったならば、我が国の電車に匹敵、いや、上回るだろう。

 

空を飛ぶ列車ならば、踏切も線路も必要ない。

 

この国の物流網の凄まじさが伺える。

 

ん……?

 

他に列車はないのだろうか?

 

「列車は一日にどれくらい本数があるのですか?」

 

「さあ……?少なくとも、バラジュエナには一日百本くらいあるだろうな」

 

ふむ……?

 

「他の列車が見えませんね」

 

「そりゃあ、列車によって、飛ぶルートも高さも違うからな。この列車は低い位置を走るから、他の列車とすれ違ったりはしねえよ」

 

位置関係的に見えないだけか。

 

「あとは景観の問題から、貨物列車は『ステルス』の魔法で見えないようになってるな」

 

光学迷彩まで……。

 

もう驚かないぞ。

 

 

 

王都レーベリオン。

 

ベスティエの首都である。

 

内陸地の巨大な城塞都市であり、常識外れの白亜の巨城がランドマークだ。

 

「ここが、レーベリオン……」

 

「おお……」

 

「凄い……」

 

我々、宇崎使節団は、レーベリオンを興味深そうに眺める。

 

『レーベリオンー、レーベリオンに到着でーす』

 

列車から降りて、駅を出る。

 

ナシナを確認すると、二千ドグラマ程引かれていた。

 

因みに、列車内で聞いたが、ナシナを持たずに、または、ドグラマの残高が足りない状態で乗車すると、データベースに記録され、あとで倍額の運賃を支払うことになるそうだ。

 

さて……。

 

予定通りに、国王陛下に親書をお渡しして、我々は、わざわざ作っていただいた日本の大使館に案内された。

 

日本の大使館は、電力や上下水道の仕組みが全くの謎であること以外は、全て正常に動作している。

 

ただ……。

 

「何故武家屋敷なんだ……?」

 

何故か建物は武家屋敷だった。

 

因みに、諸外国の大使館も近くにあるが、どこもおふざけのような出来だった。

 

アメリカ大使館は、まるで西部劇の酒場のような木造建築。

 

ロシア大使館は、ホテルモスクワの小さい版のような出来。

 

イギリス大使館は、ゴシック調の美術館のような石造り。

 

各国は、それとなく、馬鹿にされているのだろうかと問い合わせたが、ベスティエの主張によると、各国の文化を調べて、それぞれの国の代表的な建築物を真似たらしい。

 

ああ……、なんというか、忍者が実在すると思い込む外国人のような思考回路だ……。

 

とはいえ、無償で建築してもらい、管理維持費も完全にベスティエが持ってくれるとなると、建て替えろなどとは口が裂けても言えない……!

 

幸い、応接室はしっかりとソファーやテーブルのある洋室だし、外装はアレだが、内装に問題はない。

 

因みに、この諸外国の大使館前には、ベスティエの亜人達が珍しがって見にくる。

 

どうやら、「ブルノック」なる、SNSのようなものが存在するらしく、各国の大使館の前で、ナシナで自撮りを撮って、ブルノックに掲載する亜人が沢山いる。

 

やっていることが女子高生と同じだ……。

 

 

 

さて、昼時。

 

我々は空腹を感じ、テンペスタ男爵に飲食店について尋ねる。

 

「あの、男爵?この辺りで飲食店は?」

 

「ナシナに聞け」

 

「ええと、『この辺りの飲食店は?』と」

 

『地図を表示します』

 

立体的なマップに矢印が表示され、飲食店が表示される。

 

種類ごとにソートできるようだ。

 

ん……?

 

「この、店舗情報の右上にある犬の顔のマークは何ですか?」

 

「ああ、そりゃ肉食獣人向けメニューのある印だ。お前らは食えねえだろうから、この森人族の横顔のマークがある店にしろ」

 

「参考までに、肉食獣人向けメニューとは……?」

 

「骨つき生肉をハーブ塩漬けしたものとか、内臓を血液ソース漬けにしたもの、砕き骨のスープ、生肉ミンチに生卵を乗せたものとか……。まあ、肉食獣人以外は食わねえな。食えないことはないだろうけどな」

 

な、生肉……。

 

それは無理だ。

 

「森人族のマークは、森人族、鉱人族、多腕族、仙人族のような超人系亜人を示すマークだ。超人系亜人は、人間と味覚が殆ど変わらねえからな、お前らでも食えるもんが出てくるだろうよ」

 

「成る程」

 

「行くんなら……、ここのボノボーノが良いと思うぜ。ここは値段も手頃な割に美味いし、亜人国家全国にあるチェーン店だ」

 

フランチャイズ店舗も存在するのか!

 

我が国でも、フランチャイズ店舗は多数存在する。ファミレスと言うものだな。

 

もし、このボノボーノがファミレスであれば、亜人の基本的な食文化を知れるかもしれない!

 

「このボノボーノは、どんな特徴が?亜人国家の家庭料理のようなポピュラーなものがあるのでしょうか?」

 

「ん、ああ、そうだな、亜人国家共通で食べられてる基本的なメニューが出るぜ。あんたらは亜人国家について調べてんだろ?なら、ここが良いだろうぜ」

 

「分かりました、ここにしましょう。あ、ですが、人数的に大丈夫でしょうか?」

 

「んー?ボノボーノは二百人くらい入れるから行けるだろ」

 

そんなに広いとは、インドの大衆食堂のようだ……。

 




帰還勇者、書き溜めがもう残り5話くらいだぞ!

次に何をぶち込むか各自考えておくようにー!

メガテンかな?ポストアポカリプスダンジョンかな?それとも別のやつ?

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