ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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肉まんおいしい!肉まんおいしい!


85話 宇崎使節団 その4

私、宇崎使節団の特務大使、宇崎春雄は、三ヶ月目にもなる亜人国家のベスティエの滞在で、様々なことを学んだ。

 

まず、前日にスーパーマーケットで買ってきたトーストを焼いて、バターとチーズの中間のような、不思議な乳製品「キャスメ」を塗って食べる。

 

それと、カトブレパスのベーコンとコカトリスの卵焼き、袋分けされている野菜サラダパックを一つ……、このような朝食を済ませて、午前中に、魔法について、案内役のテンペスタ男爵に教わる。

 

午前の魔法訓練後に、街の視察をして、市場についてや、技術について学ぶ。

 

そして、昼食を様々な飲食店で食べて、亜人の食文化について学び、午後六時の、亜人国家の定時になるまで、亜人国家の調査をする。

 

六時になると、夕食を済ませて、買い出し担当が大量の明日の朝食を買い込む。

 

そして、亜人国家は、夜中にも人々が活発に活動して、明るい街が多く(夜行性の亜人も多いらしい)夜には、酒場などに出向いて、我々の慰問を兼ねた、酒市場の調査をする……。

 

このようにして、我々、宇崎使節団は、王都レーベリオンを中心に様々な街での調査活動をしている。

 

 

 

亜人国家には、数万年前の歴史的な建築物や道具、生き証人が現存するので、博物館も多く存在する。

 

また、美術館や図書館なども多数存在し、ファッションショー、映画の撮影、演劇など、極めて文化的な生活を送っていることが分かった。

 

特に王都では、道を封鎖しての映画撮影が盛んだった。

 

私も、亜人国家の文化を知るために、映画やドラマを視聴したが、種族によって違いがあるものの、概ね、人間と変わらない内容の映画だった。

 

時代劇は、数万年前の亜人の戦争ものなど。主に獣人種と龍人種が好む。

 

恋愛……、これは森人族や爬人種に多い。明るい話からドロドロの浮気話まで幅広い。

 

ポルノ映画も淫魔族のものが多数存在している。

 

アクション映画や推理映画、SFなども多いが、ファンタジーやホラーは少ない。

 

まあ、この国がファンタジーそのもので、夜には幽霊そのもののような亜人がそこら辺にいるこの亜人国家において、わざわざファンタジーやホラーをやる意味がないというか……。

 

そして、水族館や動物園も存在する。

 

水族館は規模が小さいと言いつつも、多数の魚や水棲モンスターがいる。

 

職員がいわゆる人魚だったのは驚いた。

 

動物園も多数のモンスターに溢れていた。

 

娯楽施設は充実しているが……、国内のものを介入させる余地がまあまああるだろう。

 

また、王都の大闘技場は凄まじい大きさだった。

 

連日、強者同士が戦う、最高のエンターテイメントだ。

 

時には、巨大なドラゴンと戦うケースもある。

 

もちろん、負けたら死ぬのだが……、亜人の死生観は人のそれとは違うらしい。

 

というより、死者は蘇生されるので、死んでも問題ない。

 

文化面でも、同性愛や若年者の結婚、近親相姦など、タブーと言えるようなことは少なく、性風俗についても盛んだ。

 

亜人国家においては、とにかく、タブーがない。

 

政府批判などの言論の自由も許され、人工子宮による生命の創造や、人体実験も許可される。

 

しかし、これは特殊な場合にのみ使われるので基本的には使われない。

 

人工子宮は、どうしても出産をしたくないが子供が欲しい場合に使われ、人体実験は高額のアルバイトや、重い刑罰として適応される。

 

 

 

技術については、全くもって、我々の技術では太刀打ちできないことが分かる。

 

軌道エレベーターがある時点でそもそも……。

 

量子コンピュータや無線充電(充填されるのは魔力だが)、高性能AI搭載型二足歩行ロボット(ゴーレム)、宇宙戦艦、ロボット兵器、人造生命体、強化外骨格……。

 

デザイン面が古めかしいが故に誤解されそうだが、人間の技術力はこれっぽっちも亜人国家の技術力に敵わない。

 

医療関係はまさに圧倒的だ。

 

クローン、人工子宮、臓器培養、ips細胞、若返り、蘇生、難病の治癒。

 

全ての、物理的な世界法則よりも上の位置に存在する魔法的な現象こそが研究対象らしい。

 

亜人にとって、末期ガンや鬱病、筋ジストロフィーなど、物理的な病気は全て、軽傷なんだそうだ。

 

むしろ、モンスターから受ける呪いや毒物、邪眼の方が、魔法的な疾患を引き起こすので恐ろしいらしい。

 

だが、金を積めば治せない病気はほぼないし、例え死んでも復活できる。

 

死者蘇生保険というものがあるらしく、定額の保険料を払えば、不慮の事故で死んだ場合に、高額な蘇生費用を賄ってもらえるというシステムとのこと。

 

また、若返りも高額だが可能で、大抵のセレブは若返りを選択して、今では数万年生きているセレブも多いらしい。

 

そして、ベスティエでの名産品は刀剣や鎧などの武具らしく、兵器開発も盛んに行われているようだ。

 

 

 

そして……。

 

この、亜人国家の重要な産業の一つ。

 

ダンジョン産業だ。

 

ダンジョンとは、滞空魔力の魔力溜まりによってできる異空間で、内部にモンスターと、魔法物質……、海外においてはファンタズムマテリアルと呼ばれる物質が出土する。

 

ファンタズムマテリアルは、魔法的な要素を持つ物質のことで、世界各地で新素材として注目されている。

 

また、ダンジョンでは、多数のアイテムが出土する。

 

未知の薬品、強力な武具、魔導書、魔導具などが手に入るこのダンジョンが、巨万の富を生んでいる。

 

しかし、恐ろしいのは、亜人国家はこのダンジョン産の魔導具を殆ど解析して、自らの手で量産できるようにまで研究をしたことだ。

 

確かに、高ランクの希少な魔法素材は、ダンジョンで採取するか、あまりにも高い額をかけて生産プラントで生成するかの二択……。

 

なので、ダンジョンでの採取作業が産業として成り立っている。

 

その他にも、亜人国家の山や海では、魔法物質がとれるそうだ。

 

地球においては一キロ数百万円の金でも、この亜人国家においては鉄より少し高いくらいの値段でやり取りされるらしい。

 

このダンジョンという無限の資源の他に、様々な生産プラントを稼働させているらしく、資源に溢れて、労働もなく、多くの人が遊んで暮らす……。

 

まるで、この世の天国だ。

 

 

 

こんな国家に対して、我々は何ができるのかと、この半年間、ずっと考えていたが、答えは見つからなかった。

 

ただ一つ、分かったことは、「日本は、亜人国家から見れば後進国である」ということだ。

 

かつて、開国せずに国内で尊王攘夷だなんだと争っているうちに発展していたヨーロッパを見ている日本と、全く同じ状況なのだ。

 

我々は、何としてでも、魔法技術を習得し、国益に繋げて、いち早く亜人国家の技術に追いつき、対等な国交をせねばならないだろう。

 

その過程で、亜人国家へ借金などの借りを作ったとしても、ここで動かなければ、世界から置いてきぼりにされてしまう。

 

今はプライドがどうこうなどと言っている場合ではない、土下座外交で、亜人国家から魔法技術を吸収せねばなるまい。




さーて、次回で帰還勇者は、亜人国家転移による世界の動きを軽く描写して、書き溜めエンドです。

次次回からはポストアポカリプスダンジョンの続きになります。

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