たまに読み返してね!
「流石ですわ、お兄様っ!」
「………………」
「もー!なんとか言ってよおにぃ!」
「まず第一に、俺はそこまで魔法が上手くない。第二に、俺はシスコンじゃない。第三に、劣等生と呼ばれるほど不真面目じゃない」
「おほー!冷静なツッコミぃ!益々お兄様じゃーん!」
「しばくぞ」
はぁ、全く……。
あやめにも困ったものだ。
双子の妹なのに、何故こうも俺と似ていないんだか……。
「でも、魔法は魔法高校では評価される項目だから良かったね!」
「そうだな」
「将来的には分解とか再構築とかするの?」
「馬鹿かお前は……」
分解?再構築?
俺の師匠である嶺二さんが言っていた。
魔法の極致は個人によって違う、と。
例えば、嶺二さんの極致は創造だった。
創造というのは、ただ物を創り出すだけじゃなく、「破壊という結果そのものを創り出して世界に上書きする」ことも可能だそうだ。
並の魔法使いが相手なら、破壊したという結論のみを押し付けて、魂ごと消し飛ばすことも可能……。
それが師匠の創造魔法だった。
師匠が言うには、魔法とは、口喧嘩合戦であり、プログラミングであり、交渉であるそうだ。
つまり何が言いたいのかと言うと……。
魔法を使ってAとBが戦闘したとする。
すると、AはBに三千度の炎を放つとしよう。
そしたら、BはAの炎を防ぐわけだが、ここで選択肢がある。
例えば、水魔法で相殺、三千度の炎を防ぐ盾を展開、燃えない盾を展開。
それに対してAの次の行動はこうだ。
相殺されたなら別の魔法をぶつける。
三千度の炎を防ぐ盾を展開されたなら、四千度の炎を出す。
燃えない盾を展開されたなら、燃えない盾を燃やす炎を放つ。
さあ、燃えない盾を燃やす炎に対してBはどうするか?
簡単だ、燃えない盾を燃やす程の炎を防ぐ盾を出す。
そうやってパワーゲームに持ち込むことも可能だが、魔法はこんなこともできる。
衝撃には弱いがどんな炎も防ぐ盾を出す、などだ。
つまり、魔法とは、屁理屈のぶつけ合い、子供の口喧嘩のようなもの。
「バーリアー!」「じゃあバリア壊すビーム!」「じゃあバリア壊すビームを防ぐバリアー!」みたいな感じだな。
まあ……、俺にとっての極致がどうなるのか、最近は段々と見えてきた。
俺の極致は、「熱量」だと思う。
圧倒的なエネルギー量でどんな術式も焼き切る。
俺は市川春人。
炎の魔法使いだ。
国立あかつき大学附属魔法高等学校。
俺の通う高校だ。
現在の俺は高校一年生……、新入生だった。
とは言え、二、三年生もいる。
二、三年生は、師匠に魔法の薫陶を受けた高校生達が転入してきたのだ。
その他にも、都内の有名高校から転入してきた生徒も多数いる。
俺のような、師匠とその奥さんに魔法を習った子供達は、世間ではこっそり『ファーストエイジ』と呼ばれている。
その中でも、俺と、その親友の山岡孝太郎と海老名俊輔は、特にビシバシ鍛えてもらった。
お陰で、今は、師匠が言うには、「一端の魔導師だな」と評価されている。
そんな俺達は、一年の山川海トリオって名前で通っている。
魔法高校からなら、試験免除で隣の魔法大学にも行けるし、学費も大幅に減額されるし、将来は魔法大に通って魔法使いになるぞ。
おっと、孝太郎と俊輔が来た。
「よお、ハル!」「おはようございます」
「ああ、おはよう」「あ、コウとシュンじゃん!おっはー」
俺と妹が挨拶を返す。
茶髪の野球選手みたいな奴がコウこと孝太郎で、長い黒髪で優しそうな顔をしている方がシュンこと俊輔だ。
俺達三人の夢は、「いつか亜人国家に行って、ダンジョンを攻略すること」だ。
妹のあやめは、師匠みたいなハンサムな年上との結婚とか言っていたが……。
「おいおいハル!聞いたかよ?」
「何をだ?」
「来年の修学旅行の行き先が亜人国家になるかもって話だよ!」
「……そうなのか?」
「おう!数年後には亜人国家への渡航が自由化するらしいが、俺達は修学目的で一足お先に亜人国家に行けるって話だぜ!」
「なるほどな……」
それは楽しみだ。
そんな感じで馬鹿話をしていると……。
「そろそろチャイムが鳴りますよ、急ぎましょう」
「何?……シュン、早く言ってくれ!」
「聞かれませんでしたから」
なんとか間に合ったな。
一限は……、数学か。
孝太郎は普通科目の勉強はほぼしていないからそこそこ、俺はそれなりに勉強しているから結構上、俊輔は学年トップだ。
魔力覚醒していれば、下手に勉強をするより、魔力の使い方を学び地頭を良くする方が楽だと気がつく。
二限は国語、三限は物理、四限は基礎魔法学。
今日の午後は丸々魔法の実習だ。
うん……。
魔法を気兼ねなく使える異次元空間で、魔法を思い切りぶっ放すのは気持ちいいな!
こう言うと頭がおかしい奴扱いされかねないが、魔法もスポーツと一緒で、思い切り使うと気持ちいいのだ。
力に酔う?
師匠クラスの魔法使いを見て自分の力に酔うとか……。
そんなこんなで、魔法をぶっ放して気持ちよくなる。
放課後は……、部活だ。
この学校は部活も魔法関係が多い。
俺は攻撃魔法を学ぶ属性魔法研究会に、孝太郎は魔法剣を学ぶ剣術部に、俊輔は回復魔法を学ぶ魔法医学部に入っている。
妹?あいつは帰宅部だ。
そこで俺は、亜人の先生方に習いながら、魔法を研究する。
これが、俺の一日だ。
将来、三人でダンジョンを攻略するために、今は努力だな。
明日休みだー!