1話 サイコパス×サイコパス
ーーー『力が欲しいか?力が欲しいのなら……、くれてやる!』ーーー
「……んぁ?」
あれ?俺、寝てた?
なーんか、懐かしい夢を見てた、ような?
まあ、良いや。
「ふあぁ、おはよう相棒!」
「ああ、おはよう」
相棒はー、っと。
ありゃ、先に起きて飯作ってくれてんのか。
「悪いね」
「気にするな、俺とお前の仲だろ」
「なんかホモっぽい」
「はっはっは殺すぞ」
「相棒の殺すぞは洒落にならないっス!」
俺より強えもんな、本当に。
「で、仕事だけどさぁ」
「ああ、あれだ」
アーシア・アルジェントの護衛、ねぇ。
「堕天使供から言いつけられた、元聖女様のお守りだ。金払いは悪くないから、適当に構ってやって帰るぞ」
「えぇ?そんなことしなくても、その女堕天使をブチ犯して金を奪って帰ればいーじゃんすげーじゃん」
「馬鹿、この業界は信用第一だぞ?」
えー?
「まぁ……、何かの弾みで、依頼主が死んで、その時たまたま、依頼主の金庫が空になっても……、誰も気付かないだろうがね」
悪い顔で笑う相棒。
「ギャハハ、良いね、それ!」
流石は相棒だぜェ、考えることが違うッ!
「クハハ、レイナーレ、とか言ったか?あの女……、お高くとまっているよな?殺す時、なんて言って命乞いしてくれるかな?」
「クソ小便漏らして命乞いするんじゃネーノ?今から楽しみだぜェ!」
「まあ、その時が来たら……、楽しむぞ、フリード」
「あいあいさー!」
俺と相棒は、うふふあははと朗らかに笑い合いながら、朝食を済ませたとさー。
え?朝食?パンとベーコンと目玉焼き、サラダにインスタントのコーンスープ。まあ、男二人ならこれで上等じゃね?
アリスたんがいればもっと美味いもん食えるんだけどな。
まあ、言ってもしゃーねーか。
アリスたんは事務所でお留守番だスィー。
俺の物じゃなくって相棒のペットだスィー。
……相棒のペットに食いもんを貰ってるって、なんかアブねー雰囲気だよな。
「さあて、飯も食ったし、あとは仕事か」
「何でも屋は仕事選べなくってキツいわー」
俺が愚痴りながらも、相棒について行く。
「ここで待ち合わせだ」
「うぃーす」
するとぉ?
少し待って……?
あ、俺は待っている間ソシャゲ回してたぜ。
相棒にもソシャゲ勧めておいた。そしたら結構真面目にソシャゲやるもんだから笑える。悪のカリスマッ!って面した奴がソシャゲだもんよ、ウケる。
あ、で、少し待ったら、来たんだよ、これまた偉そうな女堕天使がよ!
「あんた達が何でも屋ね?」
「ええ、そうですよ、雇い主様」
おおっと、相棒ったらお仕事モード発動ッ!
外面の良さは凄えもんな、相棒。
そういや、教会にいた頃も、その外面の良さで助けてもらったっけかな。
俺っちの相棒はデキるサイコパスなのです!
ヒャは、良いねぇ!
「私、元エクソシスト、現何でも屋のキース・クリムゾンです。こちらは、相棒のフリード・セルゼン」
「よろしくっス!」
明るく挨拶する俺。こりゃ、高ポイントー!モテモテですわ!
「聞いているわよ、あんた達の噂はね。地獄の二枚刃(インフェルノシザース)、教会の悪魔、斬血の双剣……。名前負けしてないと良いんだけど」
「あ"ぁ?」
「ステイ、フリード、ステイ」
ちっ……。
「?、まあ、その力を堕天使の為に使えることを感謝しなさい!」
「ええ、光栄ですとも、ははは」
あっ、相棒、目が笑ってねぇ!!
「取り敢えず、拠点に案内するわ。あんた達はそこでアーシア・アルジェントの護衛をすること。傷つけるんじゃないわよ」
「了解しました」
「うっす」
「……アーシア・アルジェントです、よろしくお願いします!」
「ええ、よろしく、美しいお嬢さん。私はキース・クリムゾンです」
「そ、そんな、美しいだなんて……」
「なんで口説いてんだよ……」
ってか、猫被りはもう良いだろ?雇い主どっか行ったし。
すると、俺に耳打ちしてくる相棒。
何々?
純朴な女が裏切られた時、どんな絶望顔を見せてくれるのか気になる?
……イイネ!!
さっすが相棒!!
じゃあ俺も!
「こんにちは!僕はフリード!フリード・セルゼンさ!昔は教会でエクソシストをやっていたんだ、よろしくね!」
「はい!よろしくお願いします、フリードさん!」
あっあっあー!
良いねぇ!
これを裏切って見捨てた時のことを想像すると……、それだけでえええエクスタシィいいい!!!
「……昔は?ってことは、今は違うんですか?」
「あ、えっと……」
あー、どうしよっかな、言い訳言い訳、と。
「私達も君と一緒だよ、アーシアさん。何も悪いことはしていないけれど……、教会から追放されてしまったんだ」
ハ、クハーッ?!!!
何も悪いことはしていないけれどォ?!!!
ハハハハアヒハハハ!!!!
真顔で嘘ついちゃう?!!
あれれー?おっかしいなー?!
俺の記憶が確かなら、教会を五、六個爆破して逃げた気がするんだけどなぁ?!
「く、クヒヒ、そ、そうなんだ、僕もきっと何かの間違いだと思うんだけど……。おお、主よ!」
まあ、カミサマなんざこれっぽっちも信じてねーけどな、俺も相棒も。
相棒なら、俺が神だ、くらいは言うんじゃねーかな。愛染様みてーに。
「まあ、そんなことが……。お二人も、大変だったのですね」
「いえ、これも主がお与えになった試練でしょう。私達は今こそ、信仰を試されているのです」
「!!、そうですね!主はきっと、私達のことを見て下さっています!」
ハッ、馬鹿だなー、この女。いるかどうかも分からねーもんに縋って。
男ならやっぱ、頼れるのは自分の腕と相棒だけ、みたいな?そう言う感じでやっていきてぇよなぁ?
「では、折角ですし、親睦を深める為にも少し出掛けませんか?」
「はい!是非!」
相棒はほら、前戯に時間をかけるタイプだ。紳士だぜ。
こういう風に仲良くしてやったこの女、泣かせる時が楽しみだな!
「あ!イッセーさん!」
「アーシア!……後ろの二人は?」
んんー?
こいつの、この気配、は……。
悪魔、か?
おいおい、どうすんだよ相棒?
コロコロしちゃう?
え?
待て?
「悪魔め!アーシアさんに近寄るな!」
「ぐうっ?!」
殴ったァーーー?!!
「ああっ?!イッセーさん!!」
「アーシアさん、あれは悪魔です!!」
「ええっ、そうなんですか?!で、でも」
「いけませんアーシアさん、あれは神の敵です!」
「イ、イッセーさんは良い人です!」
「いえ、きっとそれは、貴女に取り入って貴女を惑わそうとしているのです」
「でも……」
おっと、相棒からさりげない目配せ。
「さあ!アーシアさん!こちらへ!僕についてきて!」
「ああっ、イッセーさん、イッセーさーん!!」
「行きましょうアーシアさん!」
「ぐ、お、ちょ、ちょっと待てよ!!」
悪魔君は立ち上がって抗議してくる。
ありゃ、相棒、手加減したな?お互い、ただの悪魔程度なら、素手で殺せんのに。
「クク、退がれ悪魔め!アーシアさんに近寄るな!!」
……この状態を楽しんでやがるな、相棒?口の端が釣り上がってるぜ?
「アーシアさんは敬虔な信徒なのだ!決して、悪魔に惑わされるような人ではない!そもそも、アーシアさんが教会から追放されたのも何かの間違いに違いないのだ!」
「お、俺は別に、アーシアを惑わせようなんて気は」
「もしも!もしもアーシアさんがここで悪魔と仲良くすると言うのであれば!教会に復帰するのも遠のくんじゃあないかな?」
「わ、私は……」
「ククク、そうですよね、アーシアさん?悪魔と友好関係を築いているなど……、そんなことはありませんよね?真にアーシアさんは敬虔な信徒ですよね?」
「わ、たし、は……」
くぅ〜!攻めるねぇ、相棒!
相棒はチョーサディストだからなァ?女の子いぢめるのがだーい好きなのよ!ま、俺もだけど!!
「まさか!アーシアさんが!神の敵である!悪魔と!仲良くしようなどと!」
「……うう」
「ア、アーシアが誰と仲良くしようと、アーシアの勝手じゃねえか!外野がとやかく言うんじゃねえよ!」
あらあらあらあらぁ?
そーんなこと言っちゃうー?
「ほう?ならば君は、アーシアさんが不幸になっても良いと?」
「ど、どういうことだよ!」
「アーシアさんはね、教会に追放された身なのさ。そんな中、悪魔と仲良くしているのが上にバレたら……、異端として殺されるかもしれない!」
「な、なんだって?!」
うっわー、ノリノリだな、相棒。普段は無口なんだけど、ノってる時はペラペラ喋るんだよねぇ。
「つまり、君のせいで!アーシアさんは!死ぬかもしれないのだ!」
「お、俺のせいで……?」
滅茶苦茶な話でも、美形でカリスマがある見た目の相棒が口を出すと、何となく丸め込まれちまう……。相手が馬鹿だとなおやりやすい。
「お互い、もう会わない方が良いだろう……」
「そ、そんなのって」
「イッセーさん……」
「さあ、行きましょう、アーシアさん!」
「……は、はい」
後味悪ぅーい!
相棒はこう言うの好きだよなァ。
まあ、当然って話だが、アーシアちゃんはあの悪魔君から引き離されてからずっとブルー。
しかし、それを健気にも慰めようとする俺達二人!
アーシアちゃんは気を遣われていることを自覚して更にブルーに!
確か、自分の神器で悪魔を治療しちゃったから、追放されたんだっけ、アーシアちゃんは?
なるほどな、だから、相棒はさっきから、悪魔がいかに悪い存在かを説いているのか。つまり嫌がらせだねこりゃ。
「……確かに、アーシアさんは、悪魔を誤って!治癒してしまったのかもしれません。ですが!神の敵に対して毅然とした態度で立ち向かえば……」
「……はい、うう、すいません」
まあ、俺達の方がもっと神の敵っぽいことしてるけどな!
「私達のような敬虔な信徒は……」
こ、堪えろっ、笑うな俺!
「……さて、もう夜ですね。そろそろ帰らないと。おや?」
んん?あー、こりゃ、はぐれ悪魔の気配だわな。
「……丁度良かった。アーシアさんには、悪魔というのがどんなものかしっかりとお見せしましょう」
「え、乱入すんの?」
「するとも。社会科見学だ」
「なん、ですか?」
「「はぐれ悪魔の討伐」」
でもでもぉ、先客がいるなぁ、これは?
「さあ、はぐれ悪魔バイザー!観念しなさい!!」
「ひっ?!いやあああああ!!!」
悲鳴をあげるアーシアちゃん。
まあ、あのはぐれ悪魔は化け物だ。大分人を食ったんだろうな、全身が変形してやがる。
「?!、アーシア!それと、今朝の二人組……!!」
「さあ、アーシアさん!見なさい!あれが悪魔です!」
「ひ、ひぃ!!!」
よーしよし、これでアーシアちゃんにトラウマを植え付けて、と。
「しかし、アーシアさん!目を背けては駄目だ!戦う私達の勇姿を見て欲しい!」
「はぁ、はぁ、はぁ、は、はい」
んじゃ、やるかぁー。
嬲り殺しターイム!!
「ジャバヴォック!!」
相棒はお得意の爪、ジャバヴォックを展開!
ジャバヴォック……。次元すら切り裂く科学の結晶ぉ!
「ナイト!!」
俺は相棒から貰ったサイコーの武器、ナイトを展開!!俺の腕に埋め込まれたナノマシンだ!
『な、なんだ貴様らは?!』
「「エクソシストだ(ァ)!!」」
『グギャ?!!』
相棒がその鋭利な爪で下半身を切り裂き、上半身を俺の間合いへ持ってきてくれる!助かるぜ!
「死にやがれ悪魔やろ、ごほん!主の名の下に成敗する!!!」
『ぎゃああああああ!!!!』
で、俺が首を飛ばして、終わりっと!
「うっ、おぅえ"え!!!」
スプラッターなグロ画面に思わずリバースしちゃうアーシアちゃん!んー!可愛い顔を歪めちゃって!愉悦!
「変わった手甲を持つ、金髪と白髪の二人組エクソシスト……?ま、まさか!地獄の二枚刃?!!」
おおっと、知ってんのか。
「さあ、行きましょうアーシアさん。ここは憎き悪魔の血で汚れています」
あることないこと言われる前に撤退っすかねー?
「行くぞフリード」
「おうよ、相棒」
「まっ、待ちなさい!貴方達は」
待ったをかける赤髪の女悪魔。
「ふむ、やる気かね?」
相棒が殺意を滲ませ、一言。
「くっ……」
はっ、ビビるくらいなら喧嘩売んなよ。
「今日のところは教会に帰りましょうね、アーシアさん。そこで、主の教えについて語り合いましょう!」
ま、まだ追い討ちすんのかよ。相棒ってば鬼畜ぅ!
ま、そんな訳で。
依頼初日は無事しゅーりょー。
アーシアちゃんのハートもフルボッコにしたし、明日の儀式当日が楽しみだぜェ!
フリードとの出会い、教会爆破までの道のりとかも書きたい。