「タラの芽」
「ほえ?なんじゃと?」
春の午前。
カエデと飯を食いに行くことになった。
「タラの芽の天ぷらがな、ガキの頃は苦くて大嫌いだったんだが……、何でか、今は嫌いじゃないんだよ」
「ほうほう」
「と言う訳で今日の昼飯は天ぷらにしようぜ」
「おお、よいぞ!」
京都の老舗、朝霧屋。
そこで、天ぷらを注文すると……、春の山菜と京野菜、そして魚の美味しい天ぷらが。
これほどに上等な天ぷらだと、塩で食べたくなる。
素材の味ってやつかね?
タラの芽、苦いんだけど……。
「苦いが、美味いなあ」
「くふふふふ、大人になった証じゃろうて」
「かもな」
と、食事を楽しみ、京都見物をしていると……。
「あ、あのっ!鎧嶺二さんですね?!」
スーツの男が話しかけてきた。
俺のファン、って様子じゃないな。
何者だろうか?
「鎧嶺二さん、ダンジョン管理委員会の者なんですが……」
「ああ、はいはい、良いです」
「はっ、良いとは?」
「やらないんで帰ってくださる?」
「そんな!政府からの直接の命令で……!」
「大体にして誰だよてめーは。いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねーぞ」
「も、申し訳ありません、私はダンジョン管理委員会の八木と申します」
「名前なんて聞いてねえよ。とにかく、オフの日に来るな」
「ではいつなら……」
「俺は未来永劫毎日がオフだ」
「そ、そんな」
「行くぞ、カエデ」
「はーいなのじゃ!」
「ま、待ってください……!ああっ!」
転移。
俺は未来永劫毎日がオフだから、料亭とか行っちゃう。
「……!!」
美味っ!!
「うーん、美味じゃのう」
「鯛めしマジで美味えな……、旬の真鯛はヤバい」
京料理だから味うっすいんだろうなー、なんて失礼なことを考えていたがとんでもない。
塩気でジャンキーにせずとも、素材の味を活かせば、過分な調味料なんて要らないんだと教えられたよ。
ふむ……、上品な、透き通るような味付け。
魚ってこんなに美味かったんだなあ。
鯛めし、これ、家でも食いたいな。
チラッとカエデの方を見る。
「む?ああ、味は覚えたぞ。帰ったら、また今度作ってやるわ」
「おー、ありがてえ」
そして帰宅。
久し振りに、民宿の様子を見に行く。
「おー、寒い寒い」
北海道はまだ雪が残っていて寒いな。
「メイド、民宿の様子はどうだ?」
と、担当メイドに尋ねると。
「良好でございます」
と返ってくる。
見たところ、客足は落ち着いてきたようだが……。
俺が台帳などを見ていると、メイドが解説してくる。
「魔法学校の設立により、魔法学の門が大衆に向けて開かれましたから、この民宿『勇者』に魔法目的で宿泊する人は減ったようです」
なるほどな。
「今は、価格に反して良好なサービスが話題となり、正しい意味で、民宿として評判を得ています」
そりゃ良かった。
んん?
「すいません、鎧嶺二さんですね?」
またスーツの男だ。
「ダンジョン管理委員会の村田です」
「ああ、もういい」
「しかしながら、こちらも仕事でして」
「いいから」
「しかし!」
「メイド!」
俺はメイドを呼び寄せる。
「はっ」
「営業妨害だ、つまみ出せ」
「了解致しました」
「うわっ、ちょっ、ああー!!!」
ダンジョン管理委員会の勧誘を避けながら一、二ヶ月。
春の終わり頃に……。
「お、ついに来たか」
『亜人国家への立ち入り許可』が発令された。
これで、あらかじめ亜人国家との繋ぎを作っておいた賢明な旅行会社は、早速、「夏休みは亜人国家へ行こう!」キャンペーンを打ち出した。
これまた、三秒で予約は埋まった。
しかし、またもや、賢明な旅行会社は、予約が埋まることを見越して、追加枠を作っておいたのだ。
最近は日本に亜人が出入りする関係からか、中国人観光客が減少している。
故に、その中国人観光客向けのクルーザーを何台か、亜人国家への観光旅行船として回したのだ。
今の日本はバブル期で、低所得層も贅沢をする。
それなりの所得があれば、みんな亜人国家への旅行やら新車の購入やらをする。
国民全体の購買意欲が非常に高い状態だ。
そんな状態だからか、追加枠も速攻で埋まった。
今はキャンセル待ちだそうだ。
旅行会社も大いに儲かっている。
今はかなりの円高だからな。
亜人国家はそういうの関係なしに日本に来るが、他の外国人観光客はかなり減った。
お陰で、綺麗な海や自然が、マナーの悪い外国人観光客に汚されなくて嬉しいとの声が上がっている。
亜人観光客はかなりマナーが良いそうだ。それこそ、日本人並に。
まあ、円高だから、安く海外旅行に行けるし、バブル景気だから、高くても亜人国家を一目見ようって人が多いそうだ。
日本のバブルに釣られて、アメリカや、一部のヨーロッパもそれなりの景気回復を見せているし……、エジプトなんてもう、アフリカで一番の好景気だ。
とにかく、親亜人国家の景気が良い。
今年の夏休みは、親亜人国家の人間が亜人国家になだれ込む結果になるだろう。
『亜人国家一ヶ月ツアー!五十万円から!ツアーガイドの旅ビート!』
『ベスティエ旅行二十八万円!!』
『今年の夏は亜人国家へ行こう!』
とまあ、そんな感じだった。
とにかく、今年の夏は浮かれポンチ共が亜人国家へなだれ込む。
その隙に俺は嫁と国内旅行するわ。
あーーーーー!
書き溜めがないよー!!!
一応次はポストアポカリプスダンジョンになります。
ゼロ、教えてくれ、俺は次何を書けばいい?