ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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そろそろラブのないラブコメ書きてえなあ?


101話 ベスティエ旅行者 前編

俺はフリーランスのカメラマン、南裕太。

 

今日は、妻の涼子と、今年で七歳になる息子の真司と一緒に、旅行に来た。

 

旅行先はベスティエ……。

 

最近話題の亜人国家だ。

 

俺みたいなフリーランスでも、今のバブルの日本じゃいくらでも仕事がある。

 

一家三人で海外旅行するほどの余裕もある訳だ。

 

本当に、今の日本の景気は凄い。

 

数年前はそれこそ、毎日が、「日本は終わりだ!経済発展していないー!」みたいなムードの中にあったが、今では真逆。

 

しかしまあ、「この魔法バブルで日本人は大切なものをなくした、例え貧しくても〜」みたいなことを言う逆張り人間も出ているが……、そう言う変な奴はいつでもどこでも出るからな。

 

何にせよ、今の日本は、二度目のバブルによって、熱狂の最中にある。

 

バブルが弾けたらどうなるのか……、それが怖いけれど、今のように稼いでいるこの時以外では、俺の収入じゃ、家族を海外旅行に連れて行ったりはできないからな。

 

今回の旅行は、家族の忘れられない思い出にしたい。

 

息子の真司の顔を見る。

 

ベスティエまでは船で移動だから、今は客船の中にいる。

 

特に船酔いとかはしてないみたいだが……。

 

「パパー!見て見て!海だよー!」

 

「ああ、そうだな……」

 

きっと、この時の思い出は、一生の思い出になるだろう。

 

俺にとっても、妻にとっても、そして、息子にとっても……。

 

 

 

船で二日、ベスティエに到着した。

 

「「「おおー!」」」

 

ベスティエの第一印象は、風光明美と言うよりは、異国情緒と言った感じだろうか?

 

木製の足場と石でできた美しい港に、明るい夏の海。

 

極彩色の海鳥のような何かが空を飛び、街では、小型の恐竜や馬などが馬車を牽く。

 

人々の顔も、亜人のもので、日本とは……、いや、地球人とはまるで違う。

 

本当にファンタジーな世界だ。

 

ここが地球とは思えない。

 

「わあー……!!」

 

目をキラキラと輝かせる息子を見て、もうこの段階から、ここに来て良かったと感じる。

 

早速、入国審査を受けようか。

 

入国審査か……、長引いて真司が退屈しなければ良いんだけど……。

 

 

 

俺の予想に反して、入国審査は五分ほどで終わった。

 

電子マネーのチャージされた電子端末を渡されてハイ終わり、と言った感じだった。

 

今回は自由に十日間の間、ベスティエを回るつもりだから、ガイドとかも特にいない。

 

とりあえずは、予約してあるホテルに荷物を預けようか。

 

ホテルは、港から歩いて十分程度の、海の見える綺麗なホテルだ。

 

ギリシャの彫刻のように、文様が描かれた白亜の壁に、英語でホテルと書かれているぞんざいな看板がある。

 

一応、中級のホテルだが……。

 

部屋は広かった。

 

中は大体、昔行った民宿『勇者』と同じようなシステムだったから、戸惑いは少なかった。

 

しかし、真司にとっては面白いらしく、無限に供給されるお茶菓子を面白がってたくさん食べていた。

 

「こらこら、お昼ご飯が食べられなくなるからやめなさい」

 

「はーい、ママ」

 

さて、荷物も置いたことだし、昼ご飯を食べに出かけようか。

 

最低限の荷物だけを持って、外へ。

 

 

 

ホテルから出て十分ほど歩く。

 

携帯端末には、既に、人間向けおススメ観光コースやら飲食店やらのウェブページのようなものやアプリのようなものがあらかじめインストールされていたので、これを使って飲食店を探す。

 

ファミレス、『ボノボーノ』……、家族向け。ここにしよう。

 

ええと……、店には勝手に入って良いのか。

 

好きな席に座って、と。

 

やたらと分厚いメニュー表を開く。

 

おお、色々あるな……。

 

うーん、やはり、異世界ならではの料理とかが良いかな?

 

ん……?このメニュー……。

 

「うわっ!」

 

触れると、タブレットみたいに料理が拡大できるし、説明文が表示されて読み上げられるんだ!!

 

どう見ても紙媒体なのに、紙の中の絵が動く!!

 

面白いなこれ……。

 

にしても、ステーキひとつ取っても色々な種類があるな。

 

鹿、牛、龍、よくわからない何か……。

 

流石に、このよくわからない何かや、虫のソテーみたいなあからさまなゲテモノは避けたい。

 

となると鹿か、牛か?

 

いや、折角なら龍だな!

 

ええと……、龍にも色々あって、陸龍は甘くとろける、飛龍はヘルシーで力強い味わい、水龍は魚っぽい……。

 

うーん、ステーキならとろけるような濃厚な脂身が良いなあ。

 

よし、陸龍ステーキだ!

 

「パパはこれにしよう。真司はどうする?」

 

「うーんとねえ、これ!」

 

ええと……、カトブレパスのお子様ハンバーガーか。

 

いいんじゃないかな?

 

「ママはどうする?」

 

真司が生まれてからは、お互いに、ママ、パパと呼び合うようになったな……。

 

それはさておき。

 

「私はこの、異世界野菜の彩りパスタにするわ」

 

涼子はカロリーを気にしているようだ。

 

うーん、他の奥さん達と違って痩せてると思うんだがなあ。

 

夜、ベッドの上でも、お腹に余分な肉はついてないように見えたけど……。

 

それと、大皿のサラダもひとつ頼もうか。

 

 

 

おっと、注文した料理が来たな。

 

「こちら、ビーストサラダになります。そしてこちらが……」

 

ホムンクルスの給仕によって配膳された料理は、種類が違うにもかかわらず、全く同じタイミングで出された。

 

それも、出された時間は大体数分。

 

かといって、料理の具合を見るに、コンビニのホットスナックのように常に温められていた料理って訳でもない。

 

俺が頼んだステーキは焼きたてらしく、じゅうじゅうと鉄の皿の上で焼けている。

 

どうなっているのか、考えるのはやめておこう。

 

さあ、食べてみよう。

 

よくあるステーキ専門レストランのように、目の前でソースをかけてくれるらしい。

 

ソースが鉄皿に触れて跳ねないかな?と思ったが、魔法でソースの跳ねは弾かれた。

 

因みに、ソースは香味野菜のソースにした。

 

このソースは、玉ねぎやニンニクに近いような食品を使って作られているらしい。しかし、色はトマトでも使ったのだろうかと思えるほどに真っ赤だった。

 

「「「いただきます」」」

 

真っ赤なニンニクのソースがかかった陸龍のステーキ。それと、紫色や青色赤色の付け合わせ野菜。こぶし大の黒いパンも三つ付いてきた。ステーキは大体、300g程ってところだろうか?

 

食べる前に撮影して、と。

 

とりあえず、ステーキだ。

 

色は白身で、まるで豚のようだが、脂のつき方は牛肉に近い。

 

フォークを指してみると、少し硬めの感触。

 

ナイフはすうっと簡単に入った。

 

俺は、鉄皿の赤いソースをすくうようにして、肉を口に運んだ。

 

「んおお……」

 

不思議な味だ。

 

肉の繊維、食感は、豚のロースと牛肉を合わせたかのような、ぎっしりと詰まった肉感があった。

 

だが、味は、昔田舎で食べたイノシシ肉のように野生的で、かつ、独特のクセが少しある。全体的に淡白な味わいだが、脂気はあり、ソースとの相性も良い。

 

付け合わせの野菜も、食欲が減退するような、変な色をしているが、面白い味で、決して不味くはない。

 

ただ、里芋のような質感ながら味はサツマイモ……、といったように、味に戸惑うことはあった。

 

これから分かるのは、亜人も人と味覚は変わらないってことだ。

 

ふと、隣の席を見る。

 

「俺はレガリアンだから、このカトブレパスのステックを生で出してくれないか?」

 

「かしこまりました」

 

生で……。

 

そう言うのもあるのか。

 

となると、亜人と人間の味覚は多少異なるのかな?

 

お隣さんは狼っぽい亜人さんだから、やはり生肉が好きなのだろうか?

 

まあ、どうでも良いだろう。

 

「真司、美味いか?」

 

「美味しいよ!」

 

「そうか、良かったな」

 

とにかく、食事に困ることはなさそうだ。

 




ラブのないラブコメ、ヒロインいじめが捗る。

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