ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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焼肉うめー。


103話 ベスティエ旅行者 後編

俺はフリーランスのカメラマン、南裕太。

 

今日は、妻の涼子と、今年で七歳になる息子の真司と一緒に、旅行に来た。

 

旅行先はベスティエ……。

 

最近話題の亜人国家だ。

 

水族館は楽しかった。

 

今日は動物園に行く予定だ。

 

まあ、亜人国家の動物園とはすなわち、モンスター置き場らしいが。

 

安全性とか大丈夫なのだろうか?

 

いや、多分、日本人を呼ぶくらいだからちゃんと安全は確保されてるんだろうな。

 

起訴大国のアメリカの人とかも呼んでるし、起訴されても大丈夫なんだろう。

 

 

 

動物園は、水族館と同じコンセプトで、生命の進化を学びながら色んな動物が見れるんだそうだ。

 

まず、両生類から。

 

『龍類と両生類、霊類、それと藻類が陸上に上がり、両生類は爬虫類、哺乳類、鳥類へと姿を変えていきました。藻類も進化して、植物になりました』

 

この辺は地球の歴史と変わらないな。

 

『そして、地上に現れた全ての生命体は、龍類の餌になります。この時代は、パックスドラゴニカと呼ばれます』

 

ええー……。

 

『しかし、他の生命もやられっぱなしではありません。霊類の力を取り込んで、魔力を得た生命達は、それぞれ、モンスターへと進化していきました。この時、霊類の力を取り込めないまま進化した生き物が、動物や植物、人間なのです』

 

霊類……?

 

『霊類とは、魔力は持つが実態は持たない生命体の総称で、魔法学的には精霊と呼ばれます』

 

ええと、つまり、モンスターの祖先は、精霊との融合を果たした動物なのか。

 

『モンスターは、種族ごとに特性が全く違うので、詳しい分類が難しいです。例えば、ここにグリフォンがいます』

 

『ギャオ』

 

おおお!

 

「グリフォンね、鷲の上半身とライオンの下半身を持つモンスターよ」

 

涼子が言った。

 

涼子は、フリーのデザイナーで、ソーシャルゲームのキャラクターデザインを担当したこともある。

 

その時に、各国の神話や伝承について調べたそうだ。

 

だから、モンスターについて詳しいみたいだ。

 

にしてもグリフォンか……、雄々しくて、本当に立派な生き物だな。

 

『このグリフォンですが、一見、哺乳類のように見えますが、卵生です』

 

「えっ?!」

 

じゃあ、鳥、なのか?!

 

『しかし、雑食で、その上、母グリフォンからはお乳が出ます』

 

「はあ?!」

 

ど、どっちなんだ?!

 

『次に、こちらのケルピーですが』

 

おお、水かきのある青い馬だ。

 

『水中で生活しますが、陸上にも上がれる哺乳類に近い生態です』

 

イルカかな?

 

『しかし、水棲哺乳類とは違い、魚類のように水中で呼吸ができます』

 

はあ?!

 

哺乳類なのに水中で呼吸できるのか?!

 

もう、よく分からないな、モンスターって。

 

『また、モンスターは知能も高く、グリフォンは人間で言えば、10歳児くらいの知能があります』

 

「え?!!」

 

そ、それはいくらなんでも、賢すぎじゃないか?!

 

タコは二、三歳児並みの知能があるだなんて話を聞いたことがあるが……、それにしたって、人間の10歳児に相当する知能を持つ猛獣なんて、危ないんじゃないのだろうか?!

 

そ、それに、10歳児並みの知能があるならば、自我があるはずだ。動物園なんかに閉じ込めて良いのだろうか……?

 

『因みに、本動物園のモンスター達は、現状に納得しているので問題はないです』

 

あ、ああ、そうですか……。

 

意思疎通、できちゃうんだ……。

 

 

 

『そして、モンスター達は、パックスドラゴニカを打ち破り、地上の覇者となりました。龍類は、数がそこまで多くないので、様々な戦略や能力を持つモンスターに押し返されたのです』

 

へえ。

 

『そして、モンスターはやがて、我々、亜人種に進化しました』

 

ってことは、亜人はモンスターから進化した種族なのか。

 

『一方、その頃、龍類も、霊類を取り込んでモンスター化していきました。龍類は、モンスターとして、我々亜人に進化したり、または、龍の姿のまま、絶対的捕食者として君臨するか、はたまた、極地に適応した特殊なモンスターとなり生態系の一部となるかで、この世界に組み込まれました。霊類の力を得た龍類は新龍類と呼ばれ、それ以前の龍類は古龍類と呼ばれます』

 

へえ……。

 

一度分化した龍類は、再びモンスターとなって亜人類と交わったのか。

 

『その為、かつての龍人族は、龍人優越主義を掲げ、他種亜人に戦争を仕掛けた歴史もありました』

 

ふーん、ナチスドイツみたいなものかな?

 

おっと、またもやふれあいコーナーだ。

 

今度はなんだ?

 

カーバンクルか。

 

黄緑の毛、うさぎのように長い耳、額の赤宝石、猫のような体格。

 

『きゅ〜!』

 

かわいい!

 

「パパこれ買って!買って帰ろう!」

 

「うーん、日本では飼えるか分からないからなあ」

 

「ほしいよ!買って!」

 

「こらこら、わがままはダメよ?」

 

妻にたしなめられる息子の真司。

 

うーん、でも、亜人国家のペットか……。

 

良いかもしれないな。

 

 

 

お、次は動物ショーだ。

 

玉乗り、火の輪くぐりはまだ分かるんだけど、口から出るレーザービームでクレー射撃したり、居合用の巻藁をモンスターの爪で叩き斬ったりするのは最早軍事演習だった。

 

「パパ!うちもキマイラ買おうよ!」

 

「何言ってるんだよ、あんな大きいの玄関に置いてたら、郵便配達人が怖くて近寄れないだろ?」

 

「お利口だよ、きっと!」

 

「ダメです、飼えません!」

 

全く、子供は口が達者になってくると、我儘になるな。

 

 

 

その後も、テーマパークや高級料理屋、お土産屋、家電ショップなどを回って、ついでに史跡や博物館にも行ってみた。

 

この十日間で、ベスティエの魅力の一部を理解できたと思う。

 

本当に新鮮で、楽しい時間だった。

 

またいつでも行けるんだし、来年も行こうかな?

 




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