ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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天ぷらうめー。


104話 世論に負けた日本

雑貨店『phantasia』は、亜人職員を雇い入れまくりなので、ほぼ会社をくれてやった形になっているのだが、亜人達は今でも俺を代表取締役の座に据えたままでいる。

 

お陰で最低限の仕事はやらねばならず、新宿の一等地にある本社ビルに毎日通勤する羽目になった。

 

因みに、支部は、マンハッタンやシティオブロンドンにもある。

 

だが、俺の仕事は、各国の政府高官や研究所との直接的な取引や会議と言った、重要だが面倒過ぎない仕事ばかりだ。

 

エクセルで計算だとか、無理な飛び込み営業だとか、そう言うことはやらない。

 

そもそも、そんな非効率的なことに時間をかける亜人はいない。

 

会計は全てホムンクルスにやらせて、亜人は営業や交渉に力を入れる。

 

つまり、俺の仕事も、ダラダラと長いミーティングや無駄な交渉ではなく、大まかな経営方針の決定と、所謂『偉い人』との交友が殆どになる。

 

だから、毎月、世界を飛び回らなきゃならないし、ともすれば大統領とも会わなきゃならない。

 

その分、もう本当に信じられんくらいの金が舞い込むのだが。

 

具体的にどれくらいか?

 

『phantasia』は、そうだな、通販メーカーのママゾンくらい稼いでるかな。

 

かと言って、ママゾンと仲が悪いかといえばそうでもない。

 

うちの商品をママゾンで売らせたりしてるから、関係は悪くないと思う。

 

さて、今日は、なんか知らんが日本の官僚が来てるらしいな。

 

なんだかんだでルシアが秘書として隣にいる。

 

美人秘書だ。

 

特に憧れとかはないが、美人秘書という響きはいいんじゃないかな。

 

「しゃちょー、お客様をお連れしましたー」

 

ルシアが気の抜ける声と共に、客を連れてきた。

 

因みに俺とルシアは私服だ。

 

俺がわざわざスーツを着たくないと言うのもあるが、そもそも亜人に合うスーツは存在しないから、スーツ通勤にする意味がないんだよな。

 

うちの社員は全員亜人、服装は自由、ただし良識の範囲内で。大学生みたいな話だ。

 

その為、俺もいつもの赤いシャツと黒い革ズボンという、メタルバンドっぽいスタイル。

 

こんなんでビジネスするのか?と思われるだろうが、うちの会社は亜人政府と繋がっていて、世界で唯一、亜人の製品を売れる立場にある。

 

つまり、誰も文句が言えないのだ。

 

そもそも……、杓子定規に皆が皆スーツを着る意味が分からないんだがな。

 

確かに、スーツを着て来いと指定しないと、あり得ないくらいバカな服を着てくる、致命的にセンスのズレた人間もいるから、そういうのを防ぐためってことかね?

 

まあ、俺に言わせりゃ、スーツを着ても無能は無能だ。

 

そんなことを考えていると、客が入室してきた。

 

「おはようございます」

 

「おはようございます」

 

挨拶はする。

 

しかし、名刺は受け取らない。

 

無駄だからだ。

 

会って話すだけなのに無駄な工程を挟むなよ。

 

そんなことをするから、マナー講師とかいう、クソにたかるハエみたいな連中が湧くんだよな。死ね。

 

「で、話とは?」

 

「私は、ダンジョン管理委員会の坂田優馬と申しま」

 

「ルシアー、お客様がお帰りだ、丁重に案内して差し上げろ」

 

「まっ、待ってください!今回は別件です!」

 

ふーん?

 

「はあ……、話とは?」

 

とりあえず、聞くだけ聞いてみるか。

 

「今年の四月一日に、とある法案が出ていまして……、それは、野党の民権党から出た法案なのですが……」

 

「何ですかね?」

 

「……ダンジョンに民間人を入れて、攻略させ、ダンジョンの産出品を国で買い取るという法案です」

 

は?

 

「は?」

 

え?

 

いや、は?

 

「通ったんですか?」

 

「いえ、まだ、与党である自由党の反発が大きく、法案はそのままでは通らないと思います。ですが……、アメリカでは、同じような法案が通るそうなんですよね」

 

え?

 

「あー……、つまり、アメリカで通るなら日本も!と後追いすることになる、と?」

 

「はい……、民権党のロビー活動と、若者の声もあり、更には経済発展について考える自由党内部の勢力もあり……、この法案は多分通るかと……」

 

うわー……。

 

そう来るか……。

 

確かにダンジョンは夢がある。

 

今や、世界をひっくり返しても見つからないフロンティアがそこにある訳だからな。

 

アメリカ人は、フロンティアスピリッツの赴くままにダンジョンに入るだろう。

 

他の先進国も、外国の手が入らない資源が欲しくてたまらない筈だ。

 

「なので、せめても、犠牲者を減らすためにご協力をお願いしたいのです」

 

「それはまあ、一企業としてできることはやりたいとは思いますが、具体的には何を?」

 

「つきましては、ダンジョン攻略者に対する、魔力覚醒処置をお願いしたいと……」

 

ふーむ?

 

「そうですね……、まず、ダンジョンに入れるのは、当然、誰でもという訳にはいきませんよね?」

 

「もちろんです、自衛隊の協力のもと、試験をしたいと思います」

 

「試験とは、具体的に?」

 

「まだ決まっていないのでなんとも言えませんが……、やるとすれば、体力調査と精神鑑定、犯罪歴の調査などになるかと」

 

ふむ……。

 

「となると、もしも、ダンジョン攻略者が暴れた時のために、魔力覚醒した警官も必要ですね」

 

「はい、それはもちろんです。ですが、そうでもしなければ犠牲者が……」

 

「戦場に出た身としてあらかじめ言っておきますが、戦場に絶対はありません。いえ、こう言いましょうか……、『確実に死人が出ます』」

 

「それはっ……、承知の上です。ですがもう、この法案は成立してしまう……!それを言えば、政党は失敗しても支持率が下がるだけで済みますが、失われた人間は戻ってこないのです!」

 

ふむ……。

 

官僚の坂田は言葉を続ける。

 

「いまや、全国民がダンジョンに夢を見ています。どうにか、『実力のないものは命を失う危険な仕事だ』ということを認知させなければなりません!」

 

なんか……、そう言うと株とかFXみたいだな。

 

「確かに、国として言えば、資源は欲しいです。けれど、国民を犠牲にしてまで欲しいものなど、ありませんよ……」

 

大変なんだな。

 

他人事だけど。

 

まあ、そうだな。

 

「そうですね……、プラスな意見を言えば、魔法大学の卒業生レベルなら、軽く試算して、プロスポーツ選手並みに稼げるとは思います。一般人でも、それなりには稼げるでしょうね」

 

「そう、ですか……。やはり、止められない時代の流れなのでしょうね……」

 

「ダンジョン攻略者の魔力覚醒処置というのは、まあ、構いません。しかし、有料になりますが……」

 

「どれくらいになりますか?」

 

「一人十万円以上にした方が良いでしょう。変な奴が魔力覚醒したら危険ですからね、素行なども見つつ……。まあ正直、魔力を使えない亜人がいないので、その仕事にどれほどの価値があるのか分からないのですが」

 

「それなら、希望者の申請制ということにして、申請したダンジョン攻略者から徴収しましょう」

 

「良いと思いますよ。それで、話はそれだけですか?」

 

「いえ、実はもう一つ……」

 

んー?

 

何だろうか?

 




ロリもお姉さんもどっちもすき。

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