ダンジョン法の成立に伴い、 『phantasia』は武具を販売することになった。
第一弾は、ヴェスタ鋼製の武具。
第一弾の目玉である『特記魔法道具類』は、火、水、風、土の四属性の魔導具。
これを、自衛隊精鋭部隊に見せたところ、銃器では駄目なのか?と聞かれたので、弟子の一人である魔法大卒ダンジョン攻略者の市川に、銃はダンジョンでは役に立たないことを説明させた。
理由は二つで、『ダンジョン内で長く伸びた補給線に、重くて嵩張る弾丸を供給するのは無理がある』こと、そして、『そもそも、銃弾程度では致命傷を受けない、物理攻撃が効かないモンスターがいる』こと。
では、どうするか?という話になった。
オークとゴーレムを生きたまま金縛り状態でターゲットとして使いつつ、サンプルの武器を広げる。
「これは……、いやいや、漫画やゲームじゃないんだから……」
と、武器を見た自衛隊員達が難色を示す。
それもそのはず、俺が出したのは、巨大なグレートソードやグレートアックス、洋剣にメイス、金属盾に大槍。
「あのですね、貴方方はモンスターと戦うんですよ?正に漫画やゲームなんです。文句言ってないで武器持って調整してくださいよ、一ヶ月しか調整の時間はないんですよ?」
俺がそう言うと、自衛隊員達は一応の納得を見せた。
「まず、提案するのは三種類。軽武装と重武装、そして魔装です」
俺は一度言葉を切って、周りの反応を見てから言葉を続けた。
「軽装とは、こちらのショートソードやシールド、軽装ボディーアーマーなどで武装して、機動力を活かしつつ戦うことです。利点は速さと器用さ、欠点は打たれ弱さと攻撃力の低さ」
俺は、軽装を見せる。
「重装とは、このようなグレートソードやタワーシールド、重装ボディーアーマーなどで武装して、高い攻撃力で強行突破することです。利点は攻撃力と防御力、欠点は遅さと不器用さ」
俺は、重装を見せる。
「そして、魔装。魔装とは、特定の状況や行動にて、魔法的な効果が発動する武装です。強力ですが燃費が悪い」
俺は、魔装を見せる。
「さて、ここまででご質問はございますか?」
「あの、服装も変えるんですか?」
また荒巻か。
「変えます。言っておきますが、防弾チョッキでは駄目です」
「それは何故ですか?」
「ダンジョンのモンスターが銃を持っていると思いますか?言っておきますが、モンスターは多様多種な攻撃をしてきますよ?爪や牙、打撃だけでなく、溶解液、火を吹く、魔法を使ってくる、毒を飛ばす、電気を発する……、それくらいはやってきます。そんな敵に対して防弾チョッキは無駄、魔法素材のフルプレートアーマーにしてください」
「いや、フルプレートアーマーは流石に……」
「あのですね、本当に死にますよ?胴体だけを守るプレートとか、ダンジョンを舐めてるとしか思えないです。実際に試してみますか」
俺は、自衛隊の防弾チョッキを着せた人形を用意した。
そして、斧持ちオークに攻撃させる。
『ブモオオオオオ!!!』
確かに、胴体の表面のみは保護されたが、四肢を切り落とされ、胴体を踏み潰された。
「では次、ヴェスタ鋼製のフルプレートアーマーを攻撃させます」
『ブモオオオオオ!!!』
フルプレートアーマーはギタギタにされたが、形は一切変わらなかった。
「まあ、こんなに無抵抗で殴られれば、中の人は脳震盪やら何やらを起こしているでしょうが……、それでも、原型は失っていませんね。二度と自衛隊が出来ない体になりたいならば、別にボディーアーマーを装着せずとも構いませんよ」
「……分かりました」
自衛隊の荒巻は、四肢を斬り落とされてから踏み潰された人形を見て、流石にヤバいと思ったらしい。
全員がボディーアーマーを装着し調整してから、武器を使った訓練に入った。
今回選抜された自衛隊精鋭部隊は、全員が、何かしらの武術を修得している。
剣道をやっているものが多いそうで、多くの自衛隊員は刀を手に取った。
ヴェスタ鋼製第一号中型刀……、後に、一番目の中型なのでイチ刀と呼ばれるそれは、今回新設された政府直属のダンジョン攻略部隊、『迷宮探索隊』の人気装備になり、民間のダンジョン攻略者にも広く普及するのは、そう遠くない話だ。
さて、ヴェスタ鋼中型刀を手に取った自衛隊員は、早速、金縛りサンドバッグ状態にあるオークに斬りかかる。
「キエエエエィ!!!」
うおっ、凄え猿声だ。
第八師団から来た自衛隊は迫力が凄いな。
「うらあ!!!」
特殊作戦群も負けてない、流石は精鋭部隊。
そうして、魔力の使い方を覚え、新しい装備に慣れた、一ヶ月後の六月六日。
ついに、ダンジョンの攻略が始まった……。
求、オススメの火葬戦記。