ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ヒゲも髪も切ってねえから今やばいことになってる。


108話 迷宮探索部隊 前編

六月六日、マルハチマルマル。

 

「作戦開始!」

 

「「「「了解ッ!!!」」」」

 

我々は、日本各地の精鋭兵を集められた部隊、『迷宮探索部隊』だ。人数は自衛官三十名の小隊、それと、民間協力者三名ないし四名である。

 

本日のマルハチマルマル(朝8時)から、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、広島、仙台にある大型ダンジョンを、七つの小隊で一斉に攻略していく。

 

本日から一週間かけて、各地のダンジョンを調査、マッピングし、可能であれば有用な資源を発見することが、本作戦の目的だ。

 

しかし……、民間人を三人も庇うとなると、難しい任務になるだろうな……。

 

だが、ダンジョンという全く未知の領域で、有識者の意見が聞けるのは助かる。

 

私は、荒巻国綱。

 

この小隊の小隊長である。

 

 

 

我々、迷宮探索部隊の武装は、自衛隊のそれとは大きくかけ離れている。

 

まず、鋼鉄のボディーアーマー。

 

チェーンメイルを下地に、頬まで覆う鉄兜と、つるりとした鉄の胴、右肩のみに肩当てがあり、手甲と、膝まで覆う脛当てに、鉄板を繋いだ佩楯。

 

そのどれもが、ヴェスタ鋼製である。

 

ヴェスタ鋼の堅牢さについては既に理解しているが、このような装備で戦闘行動をするとは、思ってもいなかった。

 

その他にも、肩当てを外してより身軽にした軽装バージョンや、肩当てを両肩につけ、面頬や腕鎧などを増量した重装バージョンもある。

 

そして武器は、ヴェスタ鋼製第一号中型刀を中心に、第一号大型剣、第一号中型斧と第一号中型盾、第一号中型槍と第一号大型盾などを装備した者がいる。

 

それと、魔導具の、試作型第一号魔法拳銃を全員所持。

 

分隊長には、特記第一号魔法中型刀『荒魂』、『和魂』、『幸魂』、『奇魂』の四種のうちいずれかを配布。それぞれが、火、水、風、土の魔法剣になっている。

 

私も『荒魂』を装備して、いざダンジョンへ。

 

陣形は、ダンジョンの入り口は狭かったが内側はそこそこに広いので、一分隊を前に出して、一分隊が休憩、もう一分隊が民間人の護衛と後方の警戒をする。

 

ダンジョンは薄暗いが、ヒカリゴケのようなものがあちこちにあり、ぼんやりとした光があった。

 

それだけの光があれば、夜間のサバイバル訓練をしてきた我々からすれば充分だ。

 

にしても……、この狭い洞窟にこの人数はどう考えても過剰ではないだろうか?

 

民間人のダンジョン攻略者が言うには、この人数がベストとのことだが……?

 

「敵発見!!!」

 

む、来たか!

 

『ピキー』

 

……スライム?

 

「あ、それは雑魚なんで、適当に踏み潰してください」

 

民間人の市川君が言った。民間人は、この小隊には、市川君、海老名君、山岡君がいる。

 

バスケットボールほどの水色のスライムがピョコピョコと跳ねている。

 

「そりゃ」

 

言われた通りに、前衛の分隊の隊員がスライムを踏みつけると、ぷちっと潰されて死んだ。

 

こ、こんなに弱いのか?

 

いや、しかし、油断してはならないな。

 

「一応言っておきますけど、顔に張り付かれたら普通に死にますから、顔を近づけないようにしてください」

 

市川君が言った。

 

そうだ、油断はいかん。

 

 

 

しかし、そんな私達の気持ちに反して、あっさりと階段を降りて二階層へ。

 

曲がることのない一本道で、長さはおよそ400mほどか。

 

一階層はスライムしか現れなかった。

 

スライムからは、青いぷよぷよの拳大のゼリーが取れた。

 

「これはスライムコアですね。色んなことに使えます。水に入れると水の汚れを吸い取ったり、スライム系人造魔物の核に使ったり……、食べれもしますよ」

 

とは言え、作戦中にそんな怪しいものは食べられない。

 

この階層の魔法物質であれば、誰でも手に入れられるとのことなので、破棄した。

 

それと、朱色のひし形で、小指の爪ほどの大きさの石も出た。

 

「あ、それは魔石です。魔力の結晶で、色んなもののエネルギー源になります。ポーションの材料にもなりますよ」

 

しかし、市川君によると、スライムから取れる程度の魔石に価値はないらしい。

 

なお、魔石は全モンスターに存在するらしく、大きくて質のいい魔石は高値で取引されるそうだ。

 

二階層からは、スライムに加えて、バレーボールほどの大きさのコウモリが現れた。

 

『キキー!』

 

飛びかかってくるが、前衛の隊員が腕を叩きつけると、短い断末魔をあげて地に堕ちた。

 

弱いな……。

 

「ケイブバットですね。美味しいですよ」

 

食べれるのか……。

 

だが、作戦中なので。

 

二階層も一本道の500mほどか。しかし、ダンジョンらしく、少し複雑な道に。

 

三階層はそれに加えて、ツノの生えたウサギも出た。

 

『ヂュチュ』

 

「踏み殺してください、ホーンラビットです。食べれます。美味いですよ」

 

作戦中なので……。

 

三階層は、道のりにして600m程の行き止まりありの迷宮だった。

 

まあ、それでも、子供向けのやさしい迷路だが。

 

四階層は……、おお、小型のイノシシだ!

 

「落ち着いてください、単なるレッドボアです。蹴り殺すか、殴り殺すかしてください。美味しいそうですよ」

 

作戦中なので。

 

よし。

 

四階層はそこそこ迷う行き止まりありの迷宮。道のりにして700mほどか。

 

そして、五階層だが……。

 

「おお……!」

 

五階層からは、どうやら、草原らしい。

 

ここまでで、2kmと少し歩ったな。

 

戦闘らしい戦闘もなく、楽に進軍できた。

 

「はー、五層から草原って当たりですねえ」

 

「市川君、当たり、とは?」

 

「この目黒ダンジョンは資源が多いってことですよ。ダンジョンにも色々タイプがあって、さっきみたいな洞窟が続くダンジョン、毒沼や火山、寒冷地や水中……、みたいなダンジョンもありますからね。いや、ダンジョンは深くまで行けば大抵は過酷になるんですけど、この浅い位置に草原があるのはラッキーってことです」

 

「そ、そうなのかね?」

 

「ほら、例えばここの草……、この、ススキみたいな葉っぱ、あるじゃないですか。これ、ヒール草って言う薬草なんですよ」

 

「この、雑草のような草がかね?」

 

「ええ、低級のポーションの材料になります。その他にも、この辺の草花や虫は全部、亜人国家のものと同じなんで、研究したら何かしらあるかもしれませんよ」

 

「ふむ……」

 

「まあアレですよね、薬草摘みでもバイトにはなりますよね」

 

なるほど、雇用が増えることは良いことだな。

 

「敵発見!」

 

む。

 

「あー、ゴブリンですね。ゴブリンの筋力じゃ、ヴェスタ鋼の鎧を貫けませんけど、ナイフで目とか抉られないように気をつけてください」

 

ゴブリン……、緑色の醜い顔の小人。

 

力も弱くのろまで、脆い。

 

だが、最低限の知能はあるらしく、仲間を盾にしたり、勝てないと見るや逃げ出したりするようだ。

 

そして、五階層の草原を索敵しつつ進むと……。

 

「ボスですね、ホブゴブリンです。大して強くないんでさっさとやっちゃってください」

 

『ゴギャ、ゲギャア!』

 

ゴブリンが小学生並みなら、ホブゴブリンは中学生くらいだろうか?

 

ゴブリン五体の群れを率いて現れた。

 

が、まあ、鎧袖一触だ。

 

そして、五層を越えると……。

 

「お、セーフエリアですね」

 

「セーフエリア?」

 

「モンスターが出ない階層です」

 

「そんなものがあるのか……」

 

五階層は草原を1.5kmほど歩くことになった。

 

 

 

ここまでは順調だ。

 

少し休憩して、先に進もう。

 




ラブのないラブコメ、新ヒロインのドラゴン娘と、安心のグロシーンあります。


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