ち ん ち ん。
我々、迷宮探索部隊の小隊は、目黒ダンジョン五階層をクリアし、セーフエリアで休憩している。
次、六階層では、ブラウンハウンドとゴブリンが現れた。
ブラウンハウンドは中型犬のようなモンスターで、ゴブリンと連携するかのような動きが厄介だ。
しかし、道に迷うような要素もなく草原を探索していたら、五階層セーフエリアの階段から2km程先に七階層への階段があった。
後で看板を立てておこうか。
「良いと思いますよ。でも、ゴブリンが壊すかもしれないんで、保守点検は定期的にした方が良いです」
とのことだ。
七階層ではアクスビークというダチョウのようなモンスターが出た。
その斧のような嘴が鳥鉄という金属でできているらしい。
また、肉も美味いらしい。
八階層ではサーペントという二メートルほどの蛇が出た。
肉が食用、革が革製品に。
そして九階層では……。
「鹿か!」
「ええと、ストライクディアーです。体当たりされたらかなり痛いと思いますよ。ツノも、当たりどころが悪いと死ぬかもしれません」
「大楯持ち、前に出ろ!大楯持ちが抑えてる間に横から仕留めろ!」
「「「「了解!!!」」」」
ツノは、かつて武器として使われていたそうで、革も使えて、肉も食えるそうだ。
遂に、十階層までたどり着いた。
十階層は……。
「オークだ!」
「オークは魔石以外に、睾丸が精力剤として使われます。肉は不味いらしいです」
だが、我々は仮想敵の一つとして、オークとの訓練をしてきた。
多少の苦戦はあれど、オークを撃滅した。
「あ、ボスのオークジェネラルですね」
『ブモオオオオオ!!!』
一際大きいオークが、五体のオークを引き連れて現れた。
「私がやろう!はああああっ!!!」
分隊長の一人が前に出て、魔法剣でオークジェネラルを両断した。
これで終わりだ。
さて、十階層のセーフエリアで現状の確認をする。
今まで歩いた距離は約15kmほど。
経過時間は6時間と言ったところか。
ふむ、少し早いが食事をしよう。
と言っても、まだ余裕があるので、食料は切り詰める。
自衛隊が購入した魔導具であるアイテムボックスから、人数分の食事を取り出す。
水は、ご丁寧にも、セーフエリアに川が流れていたので、水質調査ののち、飲料として利用できると発覚したので、川の水を飲む。
食料は、これまた『phantasia』から購入した、『一本で一食分のエネルギーが得られるエネルギーバー』こと、『ウェハー』を食べる。
あらかじめ、訓練期間中に口にしたことがあり、特に体調に問題が出なかったし、食べたら、かなりの満腹感と共に力が湧いてきたので、特に問題はないと考えている。
むしろ、革命的な糧食に思える。
ほんの、プロテインバーほどのブロッククッキーを食べるだけで、半日は動き回れるカロリーと必須栄養素を得られるのだから。
味に飽きてしまうのは難点なのだろうが、利便性を考えれば、戦闘行動中は毎食これでいいかもしれない。
生きて帰ればいくらでも美味いものが食えるんだからな。
さて、民間人もいることだし、多少の戦闘行為もあった。今日はもう睡眠を取ろう。
「「「ずるるーっ」」」
ん?
「あ、なんかすいません」
おおっ?!
いつのまにか、どこから取り出したのやら、日振カップヌードルBIGを食べている民間協力者三人。
どうでも良いことだが、市川君が醤油、山岡君がカレー、海老名君がシーフードだった。
「あ、因みに、セーフエリアには、どこかに転移魔法陣があって、そこに魔力を流すと入り口に戻れるんですよ」
そうなのか。
次の日の朝、十一階層。
「森か……」
「あー……」
「む、どうしたのかね、市川君?」
「難易度上がりましたね」
「ふむ?」
市川君が、捩じくれた杖を振るう。
「燃えろ」
その一言で、正面の木三本が燃え上がる。
す、凄まじいな、これが魔法か。
銃を抜くよりも早いスピードで、大きめの樹木を一度に三本炎上させるとは。
これは……、やはり、自衛隊内に魔法の普及をすべきではないだろうか。
すると……。
『『『ギョオオオオッ?!!!』』』
燃え上がった樹木三本が、ぐねぐねと暴れ始めた!
「な、なんだあれは?!」
「トレントですよ、木に化けたモンスターです。倒すと木材が得られます」
「そ、そうか、擬態……!いや、何故擬態していると分かったのかね?」
「ああ、常に感知魔法使ってるんです」
「感知魔法……?」
「魔力を見る魔法で、魔力の流れで隠れたり擬態したりする存在を見つけるんです」
「ほお……、その感知魔法は、物理的に見えない敵にも有効なのかね?」
「はい」
なるほど……、夜間などの索敵に使えるだろうな。
トレントは、奇襲さえ避ければ、十分に対応可能だった。
森を3kmほど歩いた。
十二階層。
『ギキーッ!』
「猿か?」
「フォレストモンキーです。すばしっこいんで気をつけてください。それと、トレントもいるので、フォレストモンキーに気を取られてトレントの奇襲を食らった、なんてことのないように」
十三階層。
林にトレント、そして大きな牛。
「ビッグホーンブルですね。体当たりされたらかなり痛いですよ。肉がかなり美味くて、革がよく使われます」
この時点で既に10km以上歩った。
流石に疲労が溜まっている。
休憩にしよう。
しかし、モンスターが突発的に現れる中での休憩は、中々気が休まらない。
だがまあ……、レンジャー5訓を思い出そう。
飯は食うものと思うな。
道は歩くものと思うな。
夜は寝るものと思うな。
休みはあるものと思うな。
教官は神様と思え。
つまり、我々は、休みなんてものは取れると思っていないのだよ、最初からな。
十四階層。
トレントとパンサー。
「アサシンパンサーです!毒持ってるんで噛まれないでください!あ、毒牙は鏃として、革は色々と使えます」
そして、十五階層。
トレントとフクロウ頭のヒグマ。
「オウルベアですね。強いですよ、気張ってください。因みに、胆嚢などの内臓は薬に、革は鎧などに、肉は食えます」
ここからは割と厳しい戦いになってきた。
オウルベアは、大楯持ちに引きつけてもらっている間に、囲んでダメージを与えて倒すようにした。
魔力操作により、平常時は自分の肉体の約三倍の身体能力を発揮でき、瞬間的に魔力を高めると約六倍もの力を出せる。それを利用して、オウルベアの脳天をかち割った。
「ボスです、エルダートレント!」
「私がやる!うおおおおおっ!!!」
また、魔剣持ちが倒した。
しかし、一太刀では倒れず、二、三回斬りつけた。
十五階層セーフエリア。
流石に疲労を感じている。
が、しかし、人数に余裕があるため、そこまで深刻な疲労ではなかった。
一小隊で攻めて正解だったな。
ここまで、道のりは合計で32km、経過時間は四十時間。
となると、たった三人でいつもダンジョンを攻めているこの民間協力者の三人の若者は、一体どれほど……。
「市川君」
「はい、なんですか?」
「君達は、最大でどれほど深くまで潜ったことがあるのかね?」
「うーん、ここみたいな一般的なダンジョンなら、七十くらいですかね?」
七十……?!
たった三人で七十階層まで……。
思えば、市川君は、あれ程の魔法が扱えて、山岡君は、ヴェスタ鋼の中型剣で一太刀でオウルベアを斬り伏せていた。海老名君はまだ分からないが。
恐らく、この三人は、この小隊全員が束になっても敵わないだろうな……。
そんなことを考えつつ、我々は野宿した。
次の日の朝。
十六階層。
十六階層は洞穴だった。
微かに腐臭がする。
「ゾンビです!毒持ってますし力も強いし、数も多いですから気をつけて!あ、あと、ゾンビの血は毒薬として古来から暗殺に使われてきたそうです。物騒ですね」
「おおおっ?!」
『『『『グゴアアアッ!!!』』』』
十体を超えるゾンビが襲いかかってきた!
「ぐわあああっ!!!」
くっ、誰かやられた?!
「負傷者を下げろ!」
「頭を破壊すれば倒せます!首を切りとばすか、頭蓋を潰すかしてください!」
「聞いたな?!頭を狙え!!!」
そして、ゾンビを全滅させた。
負傷した隊員を見ると……。
「……駄目だ、角膜をやられている。失明だ」
「そ、そんな……、ぐうっ?!」
「くっ、毒だ!アンチドーテポーションを!」
クソ!もう駄目なのか?!
「ああ、待ってください。これくらいなら私が。『キュア』、『ヒールシリアスウーンズ』」
海老名君?!
「……あ?み、見える!治った!」
「何っ?!!」
海老名君が手をかざして、光った瞬間に、傷が治った!それだけじゃなく、毒まで消えた?!
角膜を移植でもなしに治せるだと?!
現代医療を超えている……!!
「どうします?負傷者も出ましたし、帰りますか?」
市川君が言った。
「いや……、二十階層のゴーレムまでは倒そうと思う」
「そうですか」
「すまないが、我々に付き合ってほしい……」
「あ、はい」
フェアリーテール借りて読んでるんですけど、仲間!友情!家族同然のギルド!って感じで、好きな人には申し訳ないんですが、ぶっちゃけ言ってクソ反吐が出ますねえ!!!