ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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コロナ休みダルすぎる。


114話 自衛隊と魔導師 その1

「あー……、まず、俺ァ、陸自の織田信仁ってモンだ」

 

「探索者の市川春人です」

 

「山岡孝太郎です」

 

「海老名俊輔です」

 

第一師団団長、織田信仁陸将は、先日の迷宮探索部隊に民間協力者として同行した魔法大卒探索者の中でも、一際に優秀だとされる三人を練馬駐屯地へと招いていた。

 

「まずはご足労いただいてありがとう、と言っておくぜ。もちろん、交通費はこっちで出すぞ、一万円だけだけどな」

 

「「「ありがとうございます」」」

 

織田陸将……。

 

歳の頃、とうに五十を超える壮年の男だが、ぎらりと光る猛禽のような眼光と、碌に手入れされていない無精髭は、やくざ者かと思わせる。

 

殺し合いとなれば、市川らの方が確実に強いのだが、この織田という男はただではやられないであろう、と思わせる気迫があった。

 

闘争の場に身を置いたことのないような常人であっては、この織田という男の醸し出す気迫に、雰囲気に呑まれてしまうのは想像に難くない。

 

しかし、市川らからすれば、今まで殺しあってきた数多のモンスターや、師たる、鎧嶺二、そして、教師であった亜人達の中にも、この類の気迫を持った強者は少なくなかった。

 

故に、市川らは、この織田の気迫に膝を折らずに、正面から見据えた。

 

ふむ、と、織田信仁は嘆息する。

 

大抵の、今時の軟弱な若造は、自分が顔を見せればまるで小動物のように縮こまる。

 

肩で風切るツッパリ連中も、自分がひと睨みすれば目を逸らして道を譲る。

 

ところがどうだ。

 

織田信仁の発する無意識の気迫を受けて、この三人の若者はというと、縮こまる訳でも、緊張を見せる訳でもなく、さも当然のように気迫を受け流したではないか。

 

しかし、それは、致命的なまでに愚鈍で鈍感なのではないか?

 

否、違う。

 

この三人の若者は、如何なる時に奇襲を受けても対応できる程度に、闘争に練達しているのだ。

 

もし、次の瞬間に織田が飛びかかっても、殴り飛ばすくらいの覚悟をしているし、それが可能でもある。

 

つまりは、織田に、否、織田を含めた周囲に充分に警戒しながらも、気迫を『受け過ぎない』匙加減。

 

気を張り過ぎてはパンクする、気を張らなければ死ぬ、その二つを理解した上で、『リラックス』した上で『警戒している』という矛盾的行動を最良のバランスで両立しているのだ。

 

欲しい、織田は思った。

 

ここまでの練達を見せる強兵は是非にも欲しいと。

 

しかし、その一言をぐっとこらえ、織田は軽い話を始める。

 

「いやいやいや、この前の迷宮探索部隊への協力は助かっちゃったなあ!あんだけ危険なとこに行って被害ゼロだぜ?一人でも死者が出ていたら、バカな民権党やら共産党やらの連中になんと『お叱り』されたか分からん!助かった、ありがとう!」

 

「いえ、まあ、その、月並みな言葉ですが、僕も日本人ですし。日本のためになることができて嬉しかったですよ」

 

「ははは!そうかい!なら、いっそ自衛隊やるか?予備役からでも良いぜ?」

 

「いえいえ、探索者の方が儲かりますし」

 

「はっはっは!そうかそうか!儲かるか!なら駄目だな、公務員ってのは儲からんからな!」

 

そのように、軽い会話を少しして。

 

「ははは、さて……、君達はなんで呼ばれたと思う?」

 

「そうですね……、戦力確認でしょうか?」

 

またもや、感嘆する織田信仁。

 

どうやら、肝も座っているが、頭も切れるらしい。

 

「その通りだ。諸君らは強い。自衛隊よりもな。そんなんじゃ、俺達は国を守れねえんだよ」

 

「そうですか。それで?」

 

「こっちの要求は二つ。諸君らの『性能』の確認と、専門家としての意見をもらおうってことだ」

 

「性能の確認っていうのはなんとなくわかりますが、専門家としての意見?それなら、魔法大の教授を呼んだ方が良いのでは?師匠は多分来ないと思いますけど」

 

「いやね、宮仕えってのは面倒なモンでね……。俺や他の陸将レベルの意見では、自衛隊にも魔法の教育をした方が良いってことになっていてだな。それはまあ、大体決まったんだが、だが、魔法の教育だなんて、ノウハウがないんだわ」

 

「はあ……」

 

「鎧嶺二は例外だとして……、諸君ら三人は、間違いなく日本人の魔法使いだ。人間の魔法使いの意見が欲しいんだよ、俺らは」

 

「ああ、はい……、なるほど。分かりました、答えられることで良ければ」

 

「っと、その前に、色々と見せてもらうぜ。さ、外に出てくれ」

 

「はい、ですが、僕達も魔導師として、手札の全てを見せる訳にはいかないとだけ言っておきますね」

 

「おうよ、そりゃ構わんよ、触りだけでも見せてくれりゃあな」

 

 

 

外に出た織田信仁と、市川達。

 

「じゃあ、移動するぞ」

 

「どこに行くんですか?」

 

「東富士演習場だ。まあ、広いところさ」

 

「遠いんですか?」

 

「遠いが……、あれか?魔法で移動するのか?」

 

「いえ、僕らは転移魔法はマーキングがないと上手く使えないんですよ」

 

「ほう……、つまりはあれかい?ワープするには、決められたマーキング……、そう、魔法陣とかがなきゃできないのかい?」

 

「まあ、僕らレベルじゃ無理ってだけで、師匠とかはマーキングなしに太陽系のどこにでも行けますよ」

 

「ううむ、上等な魔法使いは、マーキングなしにワープができるのか。上等な魔法使いはどれくらいいるのかね?」

 

「そうですねえ……、僕らの腕前が、軍隊で例えれば中尉くらいなんですけど、大体中佐くらいの魔導師ならマーキングなしの空間転移が可能だと思います」

 

「んじゃあ、数百人くらいはできる奴がいるのか」

 

「いえ……、軍隊に例えたらって話なので、軍属じゃない魔導師にも出来る人は多いです。世界的に見れば数十万はいるかと思います」

 

「はっはっは!笑えねー!数十万人が軍事機密をいつでも盗める状況にあるってことか!マジで笑えねー!!!」

 

そんなことを話しながら、車に乗る織田と市川達。

 

「それじゃあよ、大将クラスの魔法使いは何ができんだ?」

 

「えーと、なんでもできます」

 

「何でも?」

 

「はい、何でも。地球を砕いたり、何もないところから物質を創り出したり、時間を巻き戻したり……、とにかく、何でも」

 

「はーっはっはっは!そうかい!勝てねーなこりゃ!益々もって笑えんわ!!!ははははは!!!」

 

そうして、本州最大の演習場、東富士演習場に移動する……。

 




ヘルテイカーが旅人そのもので草生えた。

黒井鎮守府行く前の旅人もあんな感じでナンパしまくってたと思ってください。

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