ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

533 / 1724
今朝酷い夢を見た記憶はあるが、内容は思い出せない。


116話 自衛隊と魔導師 その3

東富士演習場にて、市川達の魔法を見ることになった自衛隊幹部達。

 

海老名は回復魔法を、山岡はルーンを見せた。

 

では、市川は何を見せるのか……?

 

 

 

市川用に鉄の塊の標的が多数用意されていた。

 

「次生火神軻遇突智。時伊弉冉尊、爲軻遇突智、所焦而終矣……!!!来たれ軻遇突智!!!『炎神降臨』!!!」

 

市川の全身から炎が噴き出る。

 

炎が市川を包み、球体になり、割れる。

 

すると、みるみるうちに炎は膨れ上がり、三十メートルほどの炎の巨人となった。

 

『ガアアアアアアアアーーーッ!!!!!』

 

爆轟のような雄叫びを上げて、地面を薙ぎ払うように腕を振るう巨人。

 

巨人の炎の腕が通った箇所は、文字通り何も残らなかった。

 

『ゴアアアアアッ!!!!!!』

 

巨人の口から炎のレーザーが吐き出され、地面を割るように熱線が通り過ぎ、熱線の通り道が爆発した。

 

「ヒェッ、もうかいじゅうぢゃん……」

 

織田が言った。

 

 

 

「ふう……」

 

軽いため息ひとつと共に、人間に戻った市川。

 

「あの、市川君……?」

 

織田が話しかける。

 

「あ、はい。僕の『炎神降臨』は、日本書紀にて語られる『軻遇突智』を、神話の再現により呼び出す神話再現術式と、降霊術による神降ろしの複合術式です」

 

「お、おう……?」

 

「まず、魔力で女性の子宮に近いものを創り出し、軻遇突智を宿します。その時に、軻遇突智を産んだということにより発生する『死』は、仮想子宮に押し付けて、自分と軻遇突智の存在を重ね合わせ、誕生します。擬似的に神と炎の力を持って生まれ変わる術式ですね」

 

「あー……、訳が分からんのだが……?」

 

「神話再現術式というのは、古い神話や伝記に宿る力を利用して、儀式や伝説を再現することにより、神話や伝記の登場人物や現象の力を再現できる、という魔法です」

 

「はあ……、そりゃ何か?じゃあ、モーゼの伝説を再現すれば海が割れんのかい?」

 

「可能だと思いますよ。……それで、降霊術とは、その名の通り、様々な存在を身に宿す魔法です」

 

「つまり……、伊邪那美の神産みを再現して、ついでに軻遇突智に成り代る魔法、って解釈で良いのかね?」

 

「大体合ってます」

 

話し合う自衛隊の幹部達。

 

「そもそも神っているのか?」

 

「さあ?ですが、古い物語には力が宿ります。古い物語に宿った力を神と定義するのであれば、神はいるのでしょうね」

 

「はあ……、そうかい」

 

「ですが、この術式には欠点がありまして……。神話再現術式全般に言えることなんですけど、その物語の中で強い存在にも、弱点があるということです」

 

「ってことは、伊奘諾か」

 

「はい、軻遇突智の術式は、伊奘諾の術式に弱いんです」

 

にしても、あり得ない威力だ。

 

特撮映画の怪獣そのもの。

 

自衛隊が束になっても敵わないと骨身に沁みた。

 

 

 

「えーーー、とりあえず、まず何ができる話し合っていこうじゃあねえか」

 

織田陸将が言った。

 

「率直に聞くが、自衛隊員が君らくらいの力を持つにはどうすりゃいい?」

 

「ええと……、まあ、優れた師匠に十年くらい師事すれば……?」

 

「十年はキッツイなあ……、短縮できないのか?」

 

「魔法は学問ですから、一番の近道は真面目に勉強することです」

 

「で、あるか……」

 

織田が考え込む。

 

「であれば、妥協をしよう。防衛大四年間のカリキュラムに魔法教育を組み込んだとして、どれくらい使い物になる?」

 

「一日どれくらい、魔法に時間をかけられますか?」

 

「こちらもあらかじめ、防衛大学のカリキュラムや部隊の訓練時間の見直しを行った。そんでな、どうにか一日一時間半の空き時間を作ることができたんだがよ……、どうだ?」

 

「足りませんね」

 

市川が答えた。

 

「僕らは、小学六年生の頃から魔法やってますけど、小学生の頃は一日六時間、中学生の頃は帰宅部で一日四時間、高校の頃は授業と部活と自習で六時間、大学も卒業後もそれくらいやりました」

 

海老名と山岡も頷く。

 

「一日六時間を十年以上か……。流石に無理だな。逆に、一日一時間半の訓練を……、そうだな、一年やったらどこまでできる?」

 

「そうですね……、まあ、魔法の真髄である真理の探究という観点に目を向けず、単に軍用の道具として扱った場合なら、目黒ダンジョンの二十階層の攻略なら、三、四人で可能となるでしょう」

 

自衛隊の幹部達は笑う。

 

「ふはっ、ははは、そいつぁいい!具体的な話を聞かせてくれや。軍用の道具として使うってのはどういう事だ?何ができる?」

 

「亜人国家で、大昔に、同じようなことを考えた軍隊がありました。魔法を学問ではなく軍事器具と捉える考え方の体系を持つ学派、『ルオ・ナイン軍用魔法』……、通称『オーレス式軍用魔法』です」

 

「ほう」

 

「エルフの大魔導師、ルオ・ニューソンとナイン・ヴィープが考案した学派で、魔法を軍事器具として扱うことが主眼に置かれています。高速発動、修得の簡単さ、一定の火力が評価できます。コンセプトは、食い詰め者でも兵隊になれること、です」

 

「なるほどな」

 

「その代わりに、応用力がほぼなく、火力も、物理法則を超えることはできません。ルオとナインは、この術式を『邪道な入門編』だとか、『これを見て、本当の魔法にも興味を持って欲しい』だとか、そう言った言葉を言い残したそうです」

 

「邪道でもそれが一番使いやすいんだろ?じゃあ、それで行くことにするわ」

 

「まあ、良いと思いますよ」

 

かくして、オーレス式が正式採用される流れになった。

 

オーレス式とはどのような魔法体系なのか?




エロい夢が見たい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。