ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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メアリースーである旅人がバッドエンドを覆す話。


旅人の過去話
世界を守るついでに女子学生と結婚した話


「うん」

 

歪んだ空間。

 

「うんうん」

 

血の迷宮。

 

「はいはいはい」

 

屍肉と化け物のオンパレード。

 

間違いない。

 

「転移失敗かぁ!」

 

てへぺろりーん!まっこまこりーん!

 

どうすっぺかなー、どうすっぺかなー。

 

なーんか、なにかを封印している空間なのか、転移できないみたいだし。

 

でもまあいいや、冒険冒険。ダンジョンの探索だと思えばなんてこたぁないぜぇ!

 

「やだぁ、ここどこぉ……?」

 

おや、早速第一村人発見ー。

 

「やあ!」

 

「えっ、ひっ、だっ、誰、ですか?」

 

「こんにちは、可愛らしいお嬢さん!お名前は?」

 

「く、那廻早栗です……」

 

んっんー。

 

「うん、素敵なお名前!ところで聞くが、俺を呼び出したりしたかい?この世界は君の趣味かな?」

 

「い、いえ、貴方も気づいたらここに?」

 

「ああ、いや、転移に失敗して。横着して呪われた帰還の巻物なんて使わなきゃ良かったのにな、本当に」

 

「?、よく、分からないんですけど、貴方もここに迷い込んだんですね?」

 

「概ねあってる」

 

「な、なら!一緒に協力してここから出ませんか?!」

 

「出たいの?」

 

俺は暫く探検するくらいの気持ちでいるけど。

 

「は、はい、帰りたいですし」

 

「なら、脱出を手伝おうじゃないか!」

 

「あ、ありがとうございます!独りぼっちじゃ、不安ですから」

 

「良いさ、君みたいな可愛い子に頼まれたら断れない」

 

「か、可愛いだなんて……」

 

照れる早栗ちゃん。

 

「いやいや、とっても可愛いよ、中学生かい?」

 

「はい、そうです。あの、貴方は?」

 

「自由気ままな旅人さね、旅人と呼んでくれ」

 

「はい!」

 

素直で良い子じゃないか。

 

「よしよし」

 

「あうあう」

 

撫でてやる。

 

「それじゃあ行こうか。なんなら、手でも繋ぐかい?」

 

 

 

「あ、鍵が」

 

「はぁい、危ない」

 

「え?」

 

壁から大きな杭が突き出る。俺が早栗ちゃんを止めなければ、早栗ちゃんはバーベキューの如く串刺しになっていただろう。

 

「ひ、あ」

 

それを理解したのか、怯え始める早栗ちゃん。んー、怯える女の子も可愛くはあるけど、どちらかと言えば可愛そうという気持ちが前に出る。

 

「どしたの?」

 

「い、今、こ、これ」

 

「うん、トラップだね」

 

「なんで、そんな、平然と」

 

「慣れてるから」

 

「慣れてる、って」

 

「いやいや、長い旅の途中、これくらいのトラップは多々あったよ」

 

「で、でも」

 

「大丈夫さ」

 

抱きしめる。

 

「君は俺が守る」

 

はい、無責任にカッコいいこと言うー。

 

「んっ❤︎ほんと、ですか?」

 

「ああ、約束するよ」

 

ふふ、堕ちたな!

 

また一人堕としてしまった……。

 

自分のイケメンぶりには参ったものだ。

 

 

 

「南斗水鳥拳!ガンド!魔法の矢!」

 

『ぎいっ』

 

『ぐえっ』

 

『ぎゃん』

 

「終わったよ早栗ちゃん。行こうか」

 

「はいっ、旅人さん!」

 

笑顔でついてくる早栗ちゃん。可愛らしいじゃないか。

 

「強いんですね、旅人さん!」

 

「それほどでもない(謙虚)」

 

これくらいなんてこたぁねぇ。

 

返り血を浴びずに華麗にモンスターを倒した俺に早栗ちゃんが駆け寄ってくる。

 

そんで、すり寄ってくる。

 

本能的に、強いものに媚びているのだろうか。生きて帰りたいと言う極限の意思がそうさせていると言う部分もあるだろう。

 

早栗ちゃんは、俺に頼らないと帰れないと思っているのだ。

 

事実、それは合っている。

 

早栗ちゃんが今できることは、俺に頼ることだけだ。

 

偽医者のように媚びろぉー!と言うつもりはないが、頼られるのは少し嬉しい。

 

「さて……、こっちだ」

 

「はい!」

 

おやおやおやおや。

 

「危ねえっ」

 

「きゃあ!」

 

おっと、天井から伸びるワームに片腕を持ってかれたか。

 

まあ、早栗ちゃんの頭を持ってかれるよりはマシよ、マシ。

 

「旅人さん!」

 

『魔力の集積』『ライトニングボルト』『ファイアボルト』

 

『ーーーッ?!!!』

 

やった、と。

 

「た、旅人さん、う、腕が!」

 

「ん、ああ、取れたね」

 

「ごめん、なさい!私が、私が足を引っ張ったから!」

 

泣きながら謝る早栗ちゃん。

 

「いーよ、いーよ、これくらいすぐ治るさ」

 

「へ?」

 

『エリスの癒し』

 

失くした腕を生やして、と。

 

「さあ、張り切って行こう」

 

「……え?」

 

 

 

『私の名はリース、君達に助言をしよう』

 

「へえ、悪魔じゃないか」

 

『……何故、分かった?』

 

「そんなもん見りゃ分かるさ。さて、ここから出る方法は?」

 

『……7体の魔神を倒すことだ、そうすれば先に進める』

 

「ふうん、嘘っぽいな。まあ、話半分くらいに信じておくさ。取り敢えず進め、旅はそう言うもんだ」

 

 

 

サタン、ねぇ。

 

「なんだ、デカブツ?動きがトロいぞ」

 

「ひぃぃぃ!!!」

 

『ガオオォオ!!!』

 

サタンとか言う三メートルくらいの巨人を相手取る俺。動きがトロいもんで、早栗ちゃん庇いながらでもどうにかなってる。

 

「よーし、ドア開いたし逃げるよ早栗ちゃんー」

 

「はいぃぃぃ!!!」

 

 

 

「石化しちゃった❤︎」

 

「た、旅人さん!」

 

「まあ待てよ、こんな時のために金の針が。あっ、両腕石化した」

 

「旅人さん?!!」

 

 

 

「おおう、これはまたSAN値チェックものの化け物さん。話は通じるかな?ハロー?」

 

「旅人さん、通じる訳ないでしょ?!」

 

「ああ、本当だ、殺す気しかない。なら、こちらも殺す気で対応するしかないな」

 

 

 

さて、アスモデウスか。

 

色欲の魔王だが……。

 

「んっ❤︎はぁ、はぁ❤︎た、旅人さん、なんだか、変な気持ちに……❤︎」

 

「よしきた!じゃあ、その気持ち、お兄さんと鎮めようか?」

 

「は、はい……❤︎」

 

「さあ、服を脱いで……」

 

「あんっ❤︎」

 

『キィィィ!!!』

 

「邪魔するなやボケナスがワレェッ!!!!」

 

 

 

「あ、ああっ!家だ!私の家!帰ってこれたんだ!」

 

いや……、これは、違うな。

 

「違うよ、ここは君の家じゃない」

 

「え?だって」

 

……「早栗ー、ご飯よー」

 

「ほ、ほら、お母さんの声がするもん!ここは、私の家だよ!」

 

「騙されるな、絶対に違う」

 

「で、でも」

 

「じゃあ、確かめてみよう」

 

俺と早栗ちゃんは、早栗ちゃんの母親の声がする部屋へ向かった。

 

「早栗、早、栗、さくり、さくり、ざぐりざぐりざぐりざーあーーーあーーー!!!!!』

 

「……ほらね?」

 

「あ、あ、いや、いや、お母さん!お母さん?!」

 

さて、お母さん(偽)を殴り飛ばし、早栗ちゃんを回収して逃げる。

 

巨大なスライムとか現れてもー大変。

 

 

 

ルシフェル。

 

ラスボスっぽいな。

 

「タイマン張らせて貰うぜ?」

 

『グオオオオ!!!』

 

「が、頑張って下さい、旅人さん!」

 

「死ぃぃぃねぇぇぇ!!!」

 

『ガオオオオ!!!!』

 

 

 

「既に満身創痍だー♪」

 

「あんなにボロボロにされてよく生きてましたね……」

 

「別にBUMP OF CHICKEN好きでもないけど」

 

「は、はあ……」

 

『これでようやく、私の世界が……』

 

「リース!」

 

あーあ、やっぱりな。

 

「騙したな?」

 

『騙してなどいないさ。私は魔神を倒せばここから出られるなんて一言も言ってないしね』

 

「なるほど、最初から脱出方法は用意されていなかった、ってことか」

 

『特に君は本当に邪魔だった。早栗だけならば、何度も試行すればここに真っ当に辿り着けたはずなのに。君と言うイレギュラーのせいで、彼女は死ぬこともなく、予定より早くここに来た』

 

「で?俺はお前を外の世界に出してやるつもりはないぞ。お前ほどのランクの悪魔が世に出ると事だ」

 

『なら、彼女諸共、死んで貰う』

 

「上等だ」

 

そして始まる裏ボス戦。

 

「早栗ちゃん!」

 

「きゃああ!旅人さ、ん、?!」

 

魔法の矢が突き刺さり、足を吹っ飛ばす。

 

『エリスの癒し』

 

即座に失くした足を再生して、バフ。

 

『リジェネレーション』『英雄』『加速』『聖なる盾』『ウォークライ』『シェル』『ヘイスト』『ファランクスIII』『かばう』『レイジ』『ランペイジ』『エナンザム』『闘勁呼法』『鳳凰呼闘塊天』

 

「疾ィッ!!!」

 

『ほう』

 

さあ、一晩お相手してもらうよ、悪魔さん。

 

 

 

『……残念だ。これで、私がここから出る方法は失われた』

 

「は、は、勝った、か。ギリギリだった、な。ゴフッ、かはっ」

 

何とかなるもんだな。

 

3回くらい死んだが、契約の魔法で生き残り、数時間くらい戦った。

 

『仕方ない、次の召喚者を待とう……』

 

そう言うとリースは姿を消した。

 

「た、旅人さん、旅人さん!!」

 

「ちょっと、今、無理、寝せて……」

 

なけなしの魔力で結界を張って、俺は寝落ちした。

 

 

 

「今、起きた」

 

「あっ!旅人さん!良かった、良かったよぉ、死んじゃったのかと……」

 

「俺が死ぬ訳ないじゃん」

 

「は、はあ」

 

「んー、で、出れないんだっけ?」

 

「は、はい、リースはそう言ってました……。もしかして、本当に、ずっとここから出られないんじゃ……」

 

「ちょっと一週間くらい時間頂戴、解析するから」

 

まあ待て、解析する。

 

「解析?」

 

「そうだ、多分出られる」

 

「本当ですか?!」

 

両の目に希望を灯す早栗ちゃん。

 

「ああ、まあ、監禁からの脱出での最長記録は一ヶ月だから、それまでには出れるんじゃない?」

 

「わ、分かりました!ありがとうございます!」

 

 

 

「それで、その、私の記憶が確かなら……、私達、えっち、しちゃいましたよね?」

 

「ああ、良かったよ」

 

「そ、それじゃあ、その、せ、責任とって下さい!!」

 

「え?」

 

「責任をとって、私と、け、結婚して下さい……!」

 

んー。

 

「まあ、いっか。結婚するよ、早栗ちゃん」

 

「い、良いんですか?!やったあ!」

 

最悪ばっくれれば良いしな。

 

 

 

「よし、解析完了。1765に監禁されてた時の術式が使えるな。さあて、転移ッ!」

 

 

 

……こうして俺と早栗ちゃんは、狂気の迷宮から無事脱出し、約束通り結婚することになった。

 

だが、まあ、案の定。平穏な結婚生活なんて長続きせず、早々に俺がまた旅に出るって言うのは、余談だよな。

 




過去話です。

まだ提督になる前の話。

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