ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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今とにかく死にたい。

真女神転生のダークヒーローみたいな死に方したい。


136話 大魔導師の弟子

「……うん!以上で面接は終了だお!結果は追ってお伝えするお、レナード君!」

 

「はい、ありがとうございました」

 

やれることはやった。

 

ペーパーテストも面接も、卒なくこなせたと思っている。結果はまだわからないが、自信はある。

 

私は、裕福な生まれで、良い教育を受け、人並みに努力してきた。

 

ここまで恵まれた環境を生まれ持ち、ここまで努力して、それでもなお、不合格であったなら、それならそれで構わない。

 

 

 

そして私は、しっかりと合格していた。

 

努力が報われて嬉しい。

 

合格したと両親に報告して、恩師に挨拶をしなければ。

 

 

 

全てを済ませて、学生用のアパートメントに引越した。

 

アパートメントは、オートロック付きの他、実験的に魔法技術による代替インフラを設置した革新的な設備だ。

 

魔石駆動式の電力ジェネレーターは、停電しようが何しようが、魔石がある限り半永久的に駆動する。

 

魔石駆動式の浄化槽、上水道は、通常の設備もあるが、魔石駆動式をメインとして運用。

 

掃除用のゴーレムも一部屋に一体、魔石駆動式の洗濯機、冷蔵庫、コンロなども設置されているようだ。

 

始業式までの間、軽く滞在した感想だが、かなり便利という印象だった。

 

魔石式インフラは金がかからない。

 

魔石一つ、10ドルもしないくらいだが、これひとつで一月分の電気ガス水道の費用を賄える。

 

これは革命的だ。

 

しかし、インフラの施設整備をする企業は、メンテナンスが最小で済んでしまう魔法技術インフラに困惑しているようだ。

 

経済界では、魔法技術の混入により、多くの技術が陳腐化し、それにより失業者が増加する見込みだと囁かれている。

 

また、政府は、圧倒的な好景気により、福祉関係の予算を増やす予定があるそうだ。

 

魔法技術の導入により、政権交代はあり得ないと言われている共和党。共和党は保守的な白人が支持層の、小さな政府を目指し、自由市場を推奨する政党であることは誰もが知っているはずだ。

 

そんな共和党は、福祉などというものは後回しにしがちで、自助努力を求める方向性が基本だった。

 

しかし、現在のアメリカは、未曾有の好景気により、金が余っているのだ。

 

もちろん、国債などもあるが故に、余っているというのは正確な表現ではないのかもしれないが……、とにかく、予算に余裕がある。

 

その余裕を、全力で新技術である魔法技術関連に投入せずに、一旦福祉方面に流したようだ。

 

今現在、魔法技術の導入により、社会は急激に変化しつつあるからね。

 

魔法技術導入による国内産業への打撃は、まだそこまで問題になってはいないが、いずれ大きな歪みができる見込みだ。

 

国内産業が壊滅して、魔法技術に全てが乗っ取られてしまっては本末転倒。だからこそ、予算の一部を一旦、福祉方面に流すこととなったそうだ。

 

そして、そうしている間に、魔法技術を扱えるアメリカの人間をどんどん増やしていこう……、という、数十年規模の長大な計画がある。

 

その計画の第一弾として、魔法大学の生徒になれた私。とても光栄な話だね。

 

 

 

学校が始まる。

 

入学式の次の日から始まるガイダンスで、生徒は全員、魔力覚醒措置を受けた。

 

魔力覚醒措置とは……、簡単に言えば、人体に眠る魔力を励起して、使用可能な状態に覚醒させる措置のこと。

 

詳しく言えば……。

 

魔力は、例えるならば血液に例えられるそうだ。そして、この世界の人間は、長い間魔力と無縁な生活をしていたため、澱んだ魔力が血栓のように魔力の回路を塞いでいる。

 

人間の持つ真の能力が発揮できない状況にある訳だね。

 

それに対して、魔力の扱いに熟達した亜人が、対象の人間の魔力を撹拌して、通りをよくすることにより、魔力の回路が励起し、覚醒する。

 

魔力の撹拌は、酩酊したかのような強い不快感を感じるが、一分ほどの措置が終われば、恐ろしいほどに頭が冴える。

 

その頭脳の冴えは、カフェインを多めに摂取したときの高揚感に似ている。

 

また、個人差はあるが、身体能力も1.5倍から3倍程に向上する。

 

その全能感と言ったら、神にでもなったかのようだ。

 

スポーツはかなり嗜んでいて、高校の頃はバスケットボールの高校生大会で州代表にもなった私だが、今の身体能力ならば、プロのバスケットボール選手も軽くあしらえるだろう。

 

動体視力、反射神経、バランス感覚……、全てが倍近く強化された私は、人間の枠組みを超えているかもしれない。

 

しかし、魔力に覚醒した全能感も、ルオ学長の圧倒的な魔法の力を見てしまうと、酷くちっぽけなものだとすぐに思い直し、なくなってしまったが。

 

ハエがゴキブリになったと喜んでいたようなものだ。

 

ルオ学長など、講師の方々の力は海のように大きかった。

 

調子に乗ってはいけないな。

 

 

 

カリキュラムについては、普通の大学と同じ制度だ。

 

多数存在する授業から好きな科目を選択し、必修授業を受ける。

 

その気になれば、必修授業だけを受けて、最低限の選択科目で単位を取って卒業……、そんなことも可能だ。

 

しかし、魔法を学べるこの場において、そんなもったいないことをする馬鹿はいない。

 

みんな、限界ギリギリまで授業を詰め込み、一限から四限まで、場合によっては五限、六限も取り、なおかつ、空いている時間は、併設された魔法図書館にて自習する。

 

私の時間割はこうだ。

 

月曜日:法学I、統計学I、魔法物理学I、魔法工学I、演算能力強化実習A

火曜日:基礎日本語A、魔法陣学I、付与魔法学I、体育実習(格闘技)(必修)

水曜日:基礎ドイツ語A、魔法戦術論A、基礎魔法学I(必修)、基礎魔法学実習I、体力トレーニング実習A

木曜日:魔法社会概論A(必修)、刑法I、魔法犯罪論A、体育実習(バスケットボール)

金曜日:属性魔法学I、変成魔法学I、強化魔法学I、封印魔法学I、情報魔法学I、精神魔法学I

土曜日:ルオ学長による特別訓練メニューその1〜4

 

限界ギリギリまで詰めてあるが、みんなこのような感じだ。

 

特に、土曜のルオ学長による特別訓練メニューは、成績優秀者のみが受講できる特別な授業であり……、とてもためになる。

 

具体的には、ルオ学長が『大魔導師』の二つ名を持つ理由である『賢人大計(システム・ソピアー)』という魔法を教えられるのだ。

 

システム・ソピアーは、一度目にした魔法を解析し、自分でも使えるように瞬時にデチューンし、それを記憶するという単純な魔法だ。

 

だが、それは、百万年の時を生き、数多の魔法を目にしてきたルオ学長が使えば、まさに、「この世のすべての魔法」を使う魔法となる。

 

そして更に、古今東西の様々な魔法を教えてもらえるのは、本当に為になる授業だ。

 

『灰縄式封印術(アルヴァロン)』に『牙流(ガーロード)』、『朽花魂吸(ロザリンド)』……。『至高魔導世界支配(マギア・ルギア)』、『火を吹く山(フレア・ダ・ラグナス)』、『死霊転輪(エンドリング)』、『払暁(アルザリオン)』……。

 

鋼の勇者レイジの『答(アンサー)』も!

 

何でも教えてもらえる、物凄くありがたい授業だ。

 

……ルオ学長は、政治感覚というものがほとんどないので、「これは教えちゃまずいだろう」という質問にも平気で答えなさる。

 

 

 

「と、まあ、そんな風に授業を受けているんだ。ああ、うん、心配しないでおくれ、母さん。うん、元気でやってる……」

 




しばらく帰還勇者やります。

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