「アンヌマリー・ル・ヴェリエ」
「はいですわ!」
「これから面接に入る。まず〜……」
ああ、良かった!
大学の願書を提出する前で!
魔法大学ですって?!そんな面白そうなもの、絶対、絶対行かなきゃ駄目よ!
このアンヌマリー・ル・ヴェリエ!
美味しいディナーよりもお菓子よりも、面白いことがずーっと好きなのだから!
無事に合格!
もちろん主席!
お勉強も中々に楽しいのよ?
というより、世の中のことって大抵が楽しいわ!
ショッピングも楽しいし、旅行も楽しい。
雨の日に家で読書したり、夏の日にビーチへ行くのも趣があるわ。
人生って、楽しいことばかりなのよ!
今回の魔法大学は、もう、聞いただけで心が躍ったわ!
だって、そう、魔法なのよ?!
こんな面白そうなこと、ゼーッタイに見逃せないわ!
学校はまあ……、普通ね!
特に、飾ってある絵が動いたりとか、幽霊が出たとか、そういうのはなかったわ。ちょっと残念?
でも、授業はとっても面白いわ!
魔法については、全く知らないことばかり!
どんな話を聞いても面白いのよ!
それに、ルー・ガルーのグランス先生も、とってもチャーミングなお方よ!
本当に退屈しないわ!
「ねえ、先生?何か、魔法の面白い話をしてくださる?」
「あ"ァ?なんで俺がそんなことしなきゃならねぇんだよ?」
「あら!コミュニケーションは大切ですわよ?」
「チッ、あー、何が聞きたい?」
「そうですわね……、では、わたくしがこれから学ばせていただく、『牙流(ガーロード)』についてはどうかしら?」
「『牙流(ガーロード)』か……。まずは最初から話してやる。……五十万年前、まだ、亜人国家がバリバリ戦争やってた頃に、初代『牙王』……、ザラギア・シルバリオという偉大な魔導師がいた。俺の先祖だ」
ふむふむ……。
「そして、ザラギアの死後、七人の弟子がそれぞれ、『一つ牙』から『七つ牙』を名乗った。俺は、今代の『七つ牙』を、妹が『一つ牙』を拝命した。『二つ牙』から『六つ牙』も、俺の親戚だ」
「何が違うのかしら?元は同じなのよね?」
「……ザラギアは、銀狼族でも考えられないほどの天才だった。『牙王流』が七つに分かれたんじゃなく、ザラギアは、『一つ牙』から『七つ牙』ができることは全てできたんだよ」
なるほど!
「俺はまあ、良くって秀才ってところだ。一万年近く生きたが、極められたのは『七つ牙』のみだ。だが、妹は違うぞ?あの子は天才だ!若干十五歳にして『一つ牙』を拝命した!あの子は『牙王』の再来に違いない!」
「まあまあ!優秀な妹さんがいらっしゃるのね!」
「そうだ!お前は良く分かっているな!俺の妹は天才で、それだけじゃなく可憐で……、まさしく俺の太陽だ!」
「あら?でも、妹さんって、『鋼の勇者』に嫁いだとか……?」
「ぐっ……、ち、違う!一時的に預けているだけだ!いずれ俺が引き取りに行く!」
「そうなのね、頑張りなさって!」
「おう!」
で……。
「勝算の程は?」
「ゼロだよ畜生!!!!」
あらまあ。
「なんなんだよアイツ?!人間の癖に六王に並ぶ程の実力持ちって!おかしいだろうがよ!大体にして固有魔法の『答(アンサー)』が凶悪過ぎんだよ!『至高魔導世界支配(マギア・ルギア)』を打ち破るとか意味わかんねーーーーッ!!!」
「どう強くて、どうして勝てないんですの?」
「……まず、ここ十万年で最強の称号をほしいままにしている、オリヴィエ=ルルヴィエラ・ララルフィアは知っているか?」
オリヴィエ女史……、小耳に挟んだくらいですが……。
「ええと、確か、普通は魔導師は歴史が古い方が強いのに、たったの数万年の歴史しかない若い魔導師が、初代『至高魔導』という大仰過ぎる異名を得た……、とか?ですが、その異名に負けないどころか、超えるほどの実力があるとも耳にしていますわ」
「じゃあ、ララルフィアの使う固有魔法の『至高魔導世界支配(マギア・ルギア)』については?」
「存じ上げませんわね……」
「良いか?『至高魔導世界支配(マギア・ルギア)』はな、百億を超える術式を同時制御して、周辺世界を二十五次元先までエミュレートし、超精密な制御で、再現された仮想世界を改変して、それを現実世界に上書きするという、現実改変魔法だ」
は?
「え、ええと……、つまり、何ができるんですの?」
「『何でも』だ。太陽を西から昇らせ、時間を止め、昼と夜を入れ替え、土塊をオリハルコンに変える。できないことはない。故に至高の魔導師と、全ての魔導師の上位互換だと謳われてんだ」
うーん!
「何だかもう、そこまで行くと笑えちゃいますわね!」
「だがな、あの勇者は、一度だけとはいえ、至高魔導に打ち勝ったんだよ」
え?
「はあ……?どうやってですの?」
「アイツの固有魔法、『答(アンサー)』はな、スロースターター型の創造魔法と言う、アホみたいに使い辛いアホ魔法だ。その効果は、相手に対して常に最適な魔法を放ち、常に最高の対応をするってもんだ」
「はあ……」
「だが、それだけじゃない。『答(アンサー)』は進化して、先鋭化する。その場その場で、どんどん相手を解析し、受ける側からすればもっともやって欲しくない魔法を創り出していくんだよ。つまり、時間をかければかけるほど加速度的に、勝てない存在に無限に進化していくってことだ」
「それは……!」
「そうだ。つまり、時間さえかければ、殺し合いという尺度でならば『必ず勝てる』んだよ。アイツを殺すには、初期解析を掻い潜って、最初から最大火力攻撃を叩きつけて一撃で殺し切る他ない」
「できるんですの?」
「できねぇーよ!並の魔導師なら、一目見られただけで解析されて、一番やって欲しくない魔法が即座に百個は飛んでくんだよ!俺は三分保たなかった!!!」
なるほどですわね……。
「では、逆に、誰なら勝ち目があるんですの?」
「ん……、まあ、スロースターターだから、初期段階で殺し切れる奴はそこそこにいるぞ。まあ、それでも、世界に五十人もいねぇだろうがな」
へえ……。
「『鋼の勇者』に匹敵するとなると、『大魔導師ルオ』『六王』『灰縄のヴィルザ』『夢幻のファナディア』……、『暁星のゼファー』に『天晴のバルグザン』『窮極のアンセム』『神威のイス』『終焉のニニナナ』……、あとは『残響のヴィネス』とか、『覇王マガツ』とかか?」
「お強いのですか?」
「強いなんてもんじゃない、神の領域だ」
はあ……。
「灰縄の『灰縄式封印術(アルヴァロン)』は、万象一切の変化量をゼロにする。夢幻の『夢幻夢想(アルカディアス)』は、あらゆる事象の夢と現実の境界線を曖昧にして消失させるし、窮極の『大極点(エグゾウド)』は因果を逆転させ結果だけを創り出す。終焉の『終焉(ベルガナス)』では、時間そのものを破壊して因果を消滅させる……。無理だな、バケモンだ」
うーん!
「核ミサイルよりおヤバイ魔法ばかりですわねえ!!!」
そんなものをぶっ放されたら地球が吹き飛びますわよね?
「安心しろ、核ミサイルくらいの魔法使いはまあ、少なくとも一千万人はいるからな」
安心とは一体……?
ネガりたいところだけど、他人がネガネガしてるところって見たくないじゃないですか。
やっぱり、作者は余計なこと言わないで、とっとと書けと思われている訳ですね。
なので、頑張って書き溜めします。
今はDDSnet書いてます。