ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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お久しぶりです。


144話 アメリカの成果

あかつき魔法大学に各国の魔法大学の首席が集まり、研究発表をした。

 

午後は、午前に発表した魔法の実演をすることとなっている。

 

場所は、あかつき魔法大学のグラウンド。

 

ここに、空間拡張の魔法をかけて、流れ弾防止のバリアを張っての実演だ。

 

今回のこの魔法の実演には、各国の首相クラスの地位の政治家が集まっている。

 

流石に、各国の王室までは来ないようだが、王室の方々もオンライン映像で様子をご覧になるそうだな。

 

それくらいに注目されているってことだ。

 

他にも、各国のテレビ局も数十社が来日しており、相当な……、一大イベントとなっている。

 

俺はなんとも思わないが、亜人達は自分の生徒が見世物扱いされて、内心ムッとしてるんじゃないかな。

 

まあ、亜人の講師陣は流石に、歳の功ってのか?その程度で目くじらは立てねえけどな。

 

さてさて、見ていこうか。

 

 

 

研究発表と同じ順番で、ってことなんで、最初はアメリカから。

 

レナードとか言ったか?

 

金髪オールバックに丸眼鏡の鋭利な顔をした男だ。

 

格好は……、『森の智慧派』の装いだ。

 

森の智慧派ってのは、森人族の魔導師の最大学派だな。

 

具体的に言えば、植物由来の繊維で編まれた新緑の布地に、蔓状の植物の白い刺繍がしてあるローブを着込んで、木製のワンドを手にしている……。

 

これは、森人族の魔導師の代表的な格好だ。

 

新緑の布は知性を、蔓の刺繍は受け継がれる知識を意味している。

 

また、森人族という生き物の属性的に、植物由来の物質との親和性の高さがあるから、この装いは、森人族にとって自然な姿でもある。

 

コスプレみたいに見えるが、魔法的に意味がある装いだし、もちろん、亜人国家では正装としても認められているぞ。

 

さて……、何をやるんだか。

 

とりあえず、この場には、標的用の木人やら車やら何やらが揃っているが?

 

「魔力とは、『存在の力』と言えます。魔力は、その量の多さは違えども、草木や石ころ、当然人間にも、何にでも宿っているものです」

 

うむ、森人族の基本的な考え方だな。

 

「では、存在の力たる魔力が無くなった物質はどうなるでしょうか?」

 

そう言って、レナードは、ワンドを振るう。

 

すると、標的の中古車は、前半分が『消滅』した。

 

各国の首相は息を呑む。

 

初っ端から、『物質の消滅』という、人間の目から見れば危険極まりない大魔法が来たからだ。

 

うむ、これは、『純魔力誘導による魔力削除に伴う物質消滅現象』だな。干渉術の一種だ。

 

ルオがかなり初期の頃に書いた論文そのままの現象だ。

 

要するに、純粋な魔力を使って、物質の魔力を引っぺがすと、その物質は消滅するよ、って話。

 

もちろん、これは、魔力があまり篭っていない物質や小動物くらいにしかできないがな。

 

「名付けるならば、『消滅(ディサピアー)』でしょうか?……とは言え、私の魔力量では、人間をそのまままるっと消すことはできませんがね」

 

生命体に篭る魔力量は、鉱物とかと比べるとずっと多いからな。

 

今、こいつが消した車なんてもんは、所詮は鉄の塊に過ぎないから、魔力量も微々たる物で、簡単に消せたが、大きな生き物や魔導具に使われるような高魔力な物質は消せないだろう。

 

あ、簡単そうに見えるけど、それなりに高度なことだぞこれは。純魔力の生成は難しいからな。

 

「因みに、これは、相手の魔法もある程度は消せます。『魔法に対応する魔法』と思ってください」

 

その後も、デモンストレーションとして、機関銃の射線の前に立ち、飛んでくる弾丸を全て消したり、施錠された金庫の留め金部分を消滅させ中身を取り出したりなどした。

 

各国の首相達は顔面蒼白と言った様子。

 

「し、失礼します。質問をしてもよろしいかしら?」

 

そう言って手を挙げたのは、アメリカの大統領だ。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「実に素晴らしい魔法だと称賛させてもらいます。け、けど、その……、その魔法は、人間は消せないのよね?」

 

「はい、『私は』できません」

 

俺はできるぞ。ってか、ここに来ている亜人の講師はみんなできると思う。魔力量の差でな。

 

「それでは、その、人間以外に消せない物は?」

 

「亜人国家やダンジョンから採れるような、高い魔力が篭った物質は消せませんね」

 

「あー……、つまり、人間の国家にあるものは、消せる?」

 

「はい、人間が作るものは、基本的に魔法的な防護がないので、簡単に消せますね」

 

頭を抱える大統領。

 

「ええと……、どれくらい遠くのものが消せるのかしら?射程範囲は?」

 

「目で見える範囲のもの全ては」

 

「……つまり、地上から見えるジェット機があるとして、それを消せる?」

 

「はい」

 

その時、大統領の脳裏に浮かんだのは、高速で動く乗り物がいきなりパッと消えて、乗客が慣性のまま放り出される光景。

 

機関銃も効かない人間が、周囲のあらゆる物を消滅させながら歩くとしたら、どれだけの被害が出るか?そう考えているはずだ。

 

二の句を告げられなくなっている大統領に、俺が一言言ってやる。

 

「とは言え、貴方達の様なお偉方が、得意の国際法とやらで『魔法禁止』のルールを作ったとしても、取り締まることはできませんがね」

 

俺は注目を浴びつつ、言葉を続ける。

 

「魔法ってのはまさに、格闘技のようなものです。空手のブラックベルトやプロのボクサーと同じ」

 

そしてもう一言。

 

「プロボクサーが自ら、鍛えたパンチをいきなり人に振るうことはないはずだ。それは良いでしょう。しかし、その身に危険が迫った時、ボクサーが一般人を殴ることもあるはずだ。それは罪なのでしょうか?」

 

つまり、俺が言いたいのは、人間なんて脆い生き物は、プロボクサーでも殺せるポテンシャルを持つというのに、同じく人間を殺せるポテンシャルがある魔法使いだけを差別するのは許さんぞ、ってことだ。

 

「それに、魔導師は大抵、常に魔法を使っているんでね。禁止されると困るんですよ。自分も、何もやってないように見えるかもしれませんが、今現在、二十八個の魔法を並列起動しています」

 

そして更に……。

 

「更に、ペースメーカーの役割を果たすような魔法もありますからね。魔導師に魔法を使うなと言うのは、貴方方人間の尺度で例えれば、『科学を使って作った製品は持ち歩くな!』と言われるようなこととなります」

 

さて、魔法禁止は無理筋だと理解させたところで、次いこうか。

 




この辺はあんまり本筋関係ないよなあ。

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