ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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この辺は本筋に関係ないので連打させていただきます。



147話 フランスの成果

次は、フランスのアンヌマリーとかいう女だ。

 

溌剌とした雰囲気の、若くて元気な女だな。

 

実は、結構やんごとないご家庭の子らしく、おてんばながらも気品に溢れる美女だ。

 

師は『七つ牙』のグランスだが、グランスは他の牙流についても詳しいからな。アンヌマリーの装いは、『四つ牙』のものに近い。

 

即ち、黒いドレスだ。肩出しのノースリーブ型で、スカート部分の裾が広いもの。

 

レース部分は『牙流』特有の模様である『七天』という、七角形を組み合わせたパターン模様になっている。

 

それ以外は何も持っていないのは、牙流として正しいな。

 

牙流は肉体変成系の術式の大手だ。

 

つまり、身体の形が変化するから、余計なものをごちゃごちゃ着込んだり、ものを持ったりしないのが基本だ。

 

とは言え、あの女は、オシャレ面も考えているらしく、シンプルめなイヤリングと腕輪も付けているんだが。

 

まあ、あのアクセサリーは、見たところ、魔石を埋め込まれた魔法増幅器で、しかも『変形』の付与魔法がかけられてるから、邪魔にはならないはずだ。

 

『牙流(ガーロード)』の『七つ牙』の対軍魔法『王噛(アゴラ)』……。

 

『一つ牙』の決闘魔法『殴神(ザンバ)』、『二つ牙』の狙撃魔法『奥咬(ザムド)』、『五つ牙』の攻勢防御魔法『応擤(リガン)』……。

 

『四つ牙』の絶対防御魔法『黄守(バレン)』、『三つ牙』の対城魔法『桜上(ワズム)』、『六つ牙』の領域展開型魔法『扇髪(ビルス)』……。

 

それらを一般化すると言うが、何を見せてくれるんだろうか?

 

「設定変更をお願いしますわ」

 

職員にそう言ったアンヌマリー。

 

「はい、何にしましょう?」

 

「ビル街でお願いします」

 

あ、設定変更?

 

このグラウンドはね、魔法がかけて空間拡張されてるけど、その他にも、街やジャングル、砂漠なんかに環境を変えることができるぞ。

 

「行きますわよ!」

 

ん……、ああ、そう来るか。

 

手首から飛び出した骨。

 

骨には、神経繊維のロープが繋がっている。

 

ビルのコンクリートに着弾した骨の杭は、変形してコンクリートを掴む。

 

脚の部分変化。バッタに。

 

思い切りジャンプ。

 

神経繊維のロープを引っ張る勢いと、バッタの足のジャンプ力。

 

双方を合わせると、音速程か。

 

そのまま、空中でコウモリの羽を背中に生成。

 

滑空しながら、指の骨を音速で飛ばす。

 

その他にも、肺腑を変化させて、火炎や吹雪を吐いたり、酸液を飛ばしたりする。

 

他にも、下半身を虎の胴体に変えてケンタウロスになり地面を走り、尻尾を蛇にして毒息を吐かせる。

 

背中から蜘蛛の脚を生やして、背中の脚でビルに登りつつ、両手足の骨を飛ばしたり。

 

やりたい放題だ。

 

究極の完全生物みたいなノリだが、単なる魔法使いだな。魔導師には勝てない。

 

そもそも、『牙流』の凄い点は、自分の肉体を複製して、それを贄にして発動する儀式魔法ってところだから。

 

それと、肉体のパーツから意味のある概念を抽出するところとか。

 

例えば、『一つ牙』の『欧神』は、拳から概念を抽出して、打撃という概念を相手にぶつける魔法だ。

 

その威力は、月が音速の数千倍で落ちてくるくらいの威力がある。しかも連射可能。

 

概念的な打撃であるからして、余計な破壊は行われず、ただ、月くらいの質量を持つ拳で、音速の数千倍で殴ったという結果のみを持ってくるぞ。

 

だが、そこまではまだできないだろうな。だから、肉体変成か……。

 

まあ、確かに、肉体の変成を行う戦闘術は『牙流』が開祖だから、間違ってはいないと言えばそうだな。

 

古い時代、変身魔法は、肉体を組み替えることが危険だとみなされていたんだ。

 

別の存在に変じれば、別の存在になってしまうという迷信が長らく信じられ、死霊術と同じような禁術に指定されていた。

 

けど、それを、戦闘に使えるくらいに洗練したのが『牙王』だった訳だな。

 

『牙王』は偉大な戦士であり王であり、禁じられた変身魔法に挑んだ研究者でもある訳だ。

 

 

 

さて、質問タイムだ。

 

例によって、フランスの首相が質問を始めた。

 

「大変素晴らしかったです。ですが、胴体や頭は変身しないのですか?」

 

と、問いかけ。

 

ふむ、尤もだ。

 

それは……。

 

「はい、現状は、脳の変身はできませんわ」

 

と答える。

 

「厳密には、変身することそのものは可能です。けれど、獣の姿に変身すると、知能も獣並みになってしまうのです」

 

理由を続けて言うアンヌマリー。

 

そう、これが、変身魔法が禁術とされていた理由だ。

 

獣に変身したら戻れなくなる。

 

まあ、その辺は、単なる『魔法使い』には不可能ってだけの話で、訓練を積んだ『魔導師』ならば、変身しても知性を失うことはない。

 

前にどこかで説明したかもしれないが、魔法使いってのは、単に魔法を「使って」いるだけ……。

 

魔法使いができるのは、物理法則を多少書き換えることだけなのだ。

 

一方で魔導師は、自ら魔法を編み出すような研究者であり、また、物理法則以上のことができる存在を指す。

 

例え太陽並みの熱量を出せてもそれは単なる魔法使い。魔導師なら、例えば、炎と言うものの概念を抽出して、あらゆる物を燃やす炎という概念的なものを出す。

 

魔法使いというのは、どこまでいってもプレイヤーにしか、ルールの中で何かをする存在にしかなり得ないが、魔導師になればゲームマスターになれる。ルールを作る側に回れるのだ。

 

と、そんな説明をアンヌマリーがした。

 

「なるほど……?人間の魔導師はいないのですか?」

 

フランスの首相が訊ねる。

 

ふむ、それは……。

 

「俺以外には存在しない。ああ、いや、あちらの世界にはいたが……、この地球には存在しないな」

 

と、俺が答えた。

 

うん、舐めるな。

 

たかが数年の修行で魔導師になれる訳ねーだろ。

 

いや、俺はなれたけど。

 

それは自慢じゃない、単に俺には才能があったってだけの話だ。世界で一番ぶっちぎりの才能がな。

 

ただの人間が魔導師になるなら、いくら才能に溢れていたとしても、百年近くはかかるだろう。

 

延命の術式を覚えたり、延命のための薬剤を集めたり……、そういうことをやる必要もあるだろうから、人の身で魔導師になるのは大変に困難な道だと言っておく。

 

「ふむ、よく分かりました。では、要するに、全身を変化させるのは非常に難しい魔法である、と。そういう認識でよろしいですね?」

 

首相が言った。

 

「はい、そうなりますわ。ああ、でも……」

 

アンヌマリーは獣の耳を生やし、「半獣人」のような姿になった。

 

へえ、可愛いじゃん。

 

俺、嫁が全員人外だから、人外じゃないとイマイチ興奮しないんだよね。

 

もふもふ手足の犬っ子っぽい姿になったアンヌマリーは、マスコミ連中にめちゃくちゃ撮影された。

 

今、ツブヤイターを見たら、『コスプレ魔法』とかいうハッシュタグができてた。

 

人間さあ……。

 


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