ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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連打三話目。


149話 イギリスの成果

次はイギリス。

 

フェリックス・アッシュフィールドだな。

 

青い瞳にブルネットの髪は、典型的なイングランド人。

 

パーマがかかった髪は、いかにも魔法使いらしいシルエットだ。そうでなければ、接客系の仕事をしてそうな、外交的な雰囲気をした男だな。小洒落たバーの店員と言われたら納得できる、そんな見た目だ。

 

しかし服装は、龍人の著名な魔導師集団である『日輪衆』のものだった。

 

日輪衆は、正式には、『火纏龍門第四部日輪衆』と言う。

 

意味合い的には、火龍族の四番目の公式分家である日輪家の家系という感じか?

 

龍人族は数が少ないから、同じ分野の流派は基本的に身内なんだよ。

 

因みに余談だが、本家は『火纏龍門第零部宗家天元衆』って言うんだよ。こいつらは火龍族の王族だ。

 

で、日輪衆は、外戦における元帥を担う大家だ。

 

そうだな、征夷大将軍の一門みたいな感じだろうか?いや、どちらかと言えばもっと仰々しい伝説的な存在だし、天蓬元帥とかの方が正しいかもしれない。海軍ではなく空軍だろうが。

 

とにかく、外敵を征伐する武門であることには変わりなく、極めて由緒正しい身分だな。

 

まあ、現代では、外敵なんてモンスターとたまに現れる人間くらいのもんだから、そこまで勢力は大きくないんだが。

 

だが、ほんの数十万年前のバリバリ戦争をやっていた頃は、『火纏龍門第一部紅蓮衆』に匹敵するほどの権力を持っていたそうだ。

 

紅蓮衆は近衛部隊だな。宮内庁みたいなもの。

 

で……。

 

そんな武門の日輪衆の姿は当然、鎧だ。

 

赤い竜革に竜鉄の鋲を打ったハードレザーアーマー。

 

とは言え、部分鎧を服のように見える範囲で整えた……、詳しい奴が見ればブリガンダインという鎧だと評するような、そんな形の鎧。

 

儀礼的に見ても、正装と認められる程度の装飾を備えたもの。

 

打たれた鋲は三角形の少々大きめなものだが、これは龍人族の誇りたる『龍の牙』……、転じて、龍の力を表す。

 

で、赤色は火龍の色。

 

そして、竜鉄のガントレットとブーツ。

 

最大の特徴は、赤い布でアイマスクのように目を覆っていることだろう。

 

これはまあ、武人らしく、『目で見えるものに意味はなく、心の目で見ろ!』みたいな意味合いがあるそうだな。

 

ああ、実務的な意味では、実はこの布、向こう側が透けて見えるんだよ。ついでに言えば、サーモグラフィーの魔力版みたいな風に見える機能もある。あとは光の量を調節したりもしてくれるそうだ。

 

聞いた話によると、日輪衆の最初の当主が盲人で、それながらも魔力視の達人だったそうだから、それに肖って……、ってことらしい。

 

だがぶっちゃけ、目が見えないのは困るので、形だけは肖っておきながらも、実務に支障がないようにしたみたいだな。

 

その辺りの、伝統を踏襲しながらも実務を重視するという、ある種矛盾した姿勢は龍人族特有のものだ。

 

あの連中は、デザインは古いのが好きなんだが、内面はゴリゴリに新型にするタイプだからな。

 

魔法も、古い型をずっと使い続けているが、古い型のまま進歩していき素晴らしい力量を持っているんだよ。

 

ああ、それと、戦闘部門なんで魔法の発動体は杖ではなく、剣でもなく、槍だ。

 

めちゃくちゃ珍しい。

 

 

 

さて、『元素思考による動力術』だったか?

 

まずだな、龍人の魔法思考である元素思考において、現代魔法学における区分である『動力術』は存在しないんだが。

 

強いて言えば、火元素の『振動』と水元素の『流転』が引っかかるかな?いや、風元素の『移動』か?

 

基本的に、元素思考における術式は、それぞれの元素から概念を抽出して使うものなんだが……、概念抽出は魔導の一要素であるからして、一番魔導師に近い地球人類はこのイギリス人なのかもしれない。もちろん、俺を除いての話だが。

 

で、何を見せてくれるのかねえ?

 

「巻雲貫け大龍声!我が身、虚人たる小人なれど、龍殻纏いて剣戟振るう武人なり!『擬似展開・龍体変幻(パラドラゴニクス)』!」

 

うっわ……。

 

龍体変幻かよ。

 

またクソ古い術を……。

 

龍体変幻とは、そのまんま龍に化ける術だ。

 

龍とは力と知恵を兼ね備えた最強種であり、それに近づくというのはシンプルに強くなるということ。

 

亜人国家だけじゃなく、地球の御伽噺なんかでもよく語られているが、優れた魔導師が龍に変じるのはよくあることなんだよな。

 

でもこれは、先ほどのフランスの女とは違い、擬似展開だ。

 

簡単に言えば着ぐるみだな。

 

龍の着ぐるみを着る魔法ってことだな。

 

なので、正確に言えば変幻魔法ではない。

 

だが、着ぐるみとは言え侮ってはならない。

 

戦闘能力はちょっとした竜くらいはあるだろう。

 

『オオオッ!!!』

 

爪の一撃でトラックを両断するくらいはやってのける。

 

ああ……、どんな姿かと言えば……。

 

うーん、そうだな。

 

特撮ヒーローもののボス怪人……?

 

怪奇!ドラゴン男!みたいな?

 

具体的に言えば、全身黒色で、鋭い一対の角が生えた……、いやもう本当に特撮だなこれは。

 

『ガアアアッ!!!』

 

おーおー、火も吹くのか。

 

『偽王は嘘の玉座に君臨する!『偽典聖剣展開(スーディピグラファ・コールブランド)』!』

 

ほー。

 

早いな。

 

この詠唱速度で生み出すのが、全長5m前後の純粋魔力によるブレードか。

 

魔法混濁効果も付いてるみたいだ。なるほど?魔法を破るという意味での『破魔の聖剣』ってことか?

 

『オオオオオオッ!!!!』

 

おー、ビルを両断したぞ。破壊力はそこそこあるなあ。

 

 

 

さて、質問タイムだ。

 

イギリスの首相が手を挙げる。

 

「いや、悪くないんじゃないかな?私は寡聞にしてコミックブックには詳しくないが」

 

「それはそれは!ありがとうございます、過分なお言葉です」

 

ふむ、流石イギリス人。

 

口を開けば皮肉が出てくるな。

 

あいつらはgoodをnot badと言うような連中だ。

 

因みに、このような諧謔は、獣人種には嫌われるな。逆に屍人種はめちゃくちゃこういう喋り方するから気が合うんじゃない?

 

「子供にはあまり好かれないような見た目だけど、私は悪くないと思うよ」

 

「よく言われます」

 

「あー、それに……、ビルの解体かな?いや素晴らしいよ、ダイナマイト代が浮くね」

 

「ええ、その内、軍事費や輸送費なども節約できるようになるかもしれませんね」

 

「ははは、それは夢のある話だね」

 

ふむ、つまりは、軍事や輸送業などにも使えるってことだな。

 

とは言え、まあ……、そんなに凄い魔法でもなかった。

 

動力術の範囲内だな。

 

動力術ってのは、物理エネルギーを発生させる術を指すので、これも広義では動力術だ。

 

創造術も入ってるが。

 

 


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