俺の名は湯川幸人。
未婚の三十五歳。
職業は警備会社の職員。
ロボオタだ。
警備会社は、夜勤があったりして割とキツくはあるが、その分給料は高いし、休みもそこそこある。
今日日、テロなんてやる奴もいないだろうし、たまに現れる変態おじさんを捕まえて通報する程度の仕事だ。
もう十年くらい働いているが、刃物を振り回すやべーやつにエンカウントしたことは一度もない。
さて、独身アラサー男の無駄に余った手取りで何をするか?と言うと……。
メタルアーミーズ弄りだ!!!!
俺は子供の頃からカトブキヤのフィギュアの大ファンだった。
プラモデルを作ってジオラマを作り、模型投稿サイトなどに掲載するのが楽しいんだ。
自慢じゃないが、模型雑誌への掲載や、フィギュアの販売でかなりの額を稼いでいる。警備会社の社員の方がむしろ副業という有様だった。
そう!それで今回は、カトブキヤ×メイデンハーツ×クロムソフトウェアの企画で、メタルアーミーズが実際に動くようになったんだよ!!!!
つまり、俺のカスタマイズしたメタルアーミーズが、空を飛び、敵を撃ち、戦うんだよ!!!!
こんなに最高なことって他にあるか?
更にもちろん!
ガールズサイドの方も買ったぜ!
さあ、開封!!!!
『オペレーティングシステム起動。ZET-04 影楼です。マスター登録をします。お名前をお聞かせください』
『おはようございます!ZET-04 カゲロウです!あなたが私のマスターですか?』
地球連邦軍正式採用機、影楼!
そして、そのガールズサイドバージョンのカゲロウ!
グレーのフレームにホワイトアッシュの装甲板が中量級ほどに乗り、大口径のバズーカ砲『ソリッドシューター』にアサルトライフルの『アサルトキャノン』、そして胸部の対小型機用の機銃『インファイター』に、近接用高周波ブレードナイフの『シュレッダー』を装備した無骨な量産機!
追加武装パーツで重装化したり、飛行ユニットを取り付けたりしてもカッコいい神機体だ!
ガールズサイドの方は、灰色髪に碧眼、ショートカットの女の子!性格は明るく元気で負けん気が強い。OVAでアニメ化された時は、主人公ポジションだった。
「俺は、マスターの湯川幸人だ!よろしく!」
『マスター登録、完了。ユキト・ユカワを最高司令官であるとメインメモリに書き込みました』
『マスターユキト!よろしくお願いします!』
おはあ……。
かっこいいし、可愛いし!
「カゲロウちゃんかわヨ……」
撫でて良い?
良いよね?
俺のフィギュアだもん、撫でて良いよね?
『ふえっ?!も、もー!なんですかいきなりー!』
えっ?
ちょっと待ってこれ、手触り!
人肌じゃん!ぷにぷにであったかくて、髪の毛もサラサラ!
瞳も動いてるし、口も動く!
さ、流石は一万四千五百円(税別)だ……。
ガチな出来だな。
「じゃ、じゃあさ、早速遊びたいんだけど、良いかな?」
『任務了解』
『良いですよ!何するんですか?』
えーと、この空間拡張装置で……、おおっ!
すげえ、このタブレットで好きな地点から様子を見れるのか!
じゃあ、影楼のカメラアイから物を見るようにしようか。
っと、その前に、オペレーションってのを決めなきゃならないんだったな。
タブレットで、オペレーション設定っと。
《オペレーション》
・機動
・回避
・防御
・索敵
・格闘
・射撃
・特殊
おおっ……、分かりやすいUIがタブレットに表示されて、タッチで選べるようになっているみたいだ。ここから選ぶのか?
まずは機動だな。
・機動
→《敵》を《発見したら》、《真っ直ぐに》《接近する》
なるほど、これじゃダメだな。
購入した追加オペレーションチップ(税別千二百円)も駆使して、最適と思われるオペレーションを設定する。
こんな感じか?
・機動
→《敵》が《レーダーに映った時》、《弧を描くように》、《メインウェポンの射程範囲まで》《接近して距離を維持する》
っと……、これで試してみよう。
駄目そうなら、また違うオペレーションを設定しよう。そういう試行錯誤がパズル感あって面白いな!
他にも設定を弄って……、と。
よし、ステージ選択だ。
ステージセットとミッションセットの第一弾も買った(合計一万二千円)から、それで遊ぼう!
まずは手始めに、敵は、戦車×6と戦闘ヘリ×4、そして敵メタルアーミー『オルグ』×2と、開けた砂漠にある基地の破壊任務だ!
「ミッション開始だ!」
『『了解!』』
うほほほほー!
すっげえ!
カメラ切り替えしながら色んな視点で戦闘を楽しめる!
そして、プレイ中の俺の仕事はオペレーターだ!
「アルファはオペレーションの通りに接敵してオルグAに奇襲攻撃だ!ブラボーは露払いをしろ!」
『『了解!』』
もちろん、パイロット視点で直接操縦することもできるみたいだけど、俺はやっぱり、操作するよりは見てる方が面白いと思うし、オペレーターをやらせてもらおう。
「アルファはビーコンA地点まで移動!」
『了解』
「ブラボーは敵防衛ラインAを突破しろ!」
『了解!』
そうして遊んで……。
『『ミッションクリア!』』
クリアした!
オペレーター視点だと、戦場をある程度俯瞰して見れるから、シミュレーションゲーム感が出て面白いな!でも、戦場は目まぐるしく動くから、ある種のアクションゲーム感もある……。
全く新しい新感覚のゲーム体験だ!
あー、おもしれぇ!!!
もちろん、カスタマイズも楽しい!
パチパチと武器や装甲を換装して、強化できる!
それも、子供向けおもちゃのブシドールとは全く違うカスタム度合いだ!
追加装甲パック(八千八百円)の第一弾には、かかとの装甲の種類だけでも十種類もあるんだよ!
かかと、つま先、足首関節の保護パーツ、太もも装甲、脛装甲……。全身で数百種類以上の装甲パーツと武器を組み合わせる!
これは、同じ機体は二つとして作れないだろうな!
もちろんフルカスタムだ!
それに、面白いのは、ヌルいゲームでよくあるような「これやっとけばOK!」な最強装備は存在しないってところも渋くて良いね!
ミッション内容に合わせて、装備を柔軟に変更しなくてはクリアできない、絶妙な難易度設定!
例えば、戦場にECM効果がある時は強力なレーダーを装備しなきゃならないし、長期戦なら追加弾薬パックを背負う必要がある。他にも、宇宙や水中、砂漠や月面などの様々な場所で、生体兵器やメカなどの様々な敵と、長期戦、狙撃戦、格闘戦と様々な戦いをする必要がある。
それに合わせた最適な装備をそれぞれ変えなきゃならない訳だな。
ミッションは本当にバリエーションが豊かで、中には「騙して悪いが……」な奇襲をされる側のミッションもある。
それを見抜いて初見で撃退できた時の快感は最高だぜ!
影楼は……、重装型にしてカゲロウの盾にしよう。美少女の盾になれるなんて、男冥利に尽きるだろ?いや、マシンボイスは男性だけど、多分性別はないか。
一方で、カゲロウの方は、顔や体型は弄れなかった。まあ確かに、女の子に整形しろとは言えないわな。でも、髪の色や瞳の色、髪型と肌の色くらいなら変えられるようだ。
カゲロウには、黒髪ロングになってもらった。俺の趣味だ!
うーん、カゲロウちゃんかわヨ……。
かわヨだから、あんまり前線に出したくないな。
カゲロウちゃんが傷つくところは、精神衛生上見たくないわ。
リョナラーの人は大歓喜なんだろうけど、俺はノーマルだしな。
よし、じゃあ、あんまり接近戦をしない狙撃戦仕様に改造してあげよう!
『狙い撃つぜー!……どうですか、マスター?』
「かわヨ……」
『もー!マスターっていっつもそれじゃないですか!たまにはちゃんと褒めてくださいよー!』
我々おじさんは語彙力が死んでるから、美少女を見るとかわヨとしか言えなくなるのだ……。
死にてえ。
今日はラーメンを食べましたが、なんかこう、あんまり旨いとは思いませんでした。
家系ラーメン食いてえ。もう家系ラーメン以外じゃ満足できない体にされてる。