私は木林梨々子。
アラサーのショタコンである。
職業は自慢じゃないけど不動産鑑定士で、同年代の人達と比べても倍は稼いでいると思う。
十代前半の美少年しか愛せないという性癖を除けば、まともな社会人だ。
今までは、露骨に狙ってくる同僚のブ男達を避けつつ、性欲を芸術活動(ショタエロマンガ)に注ぎ込んできたが……。
「ぐへへへへ……!」
「どうしたの?おねーさん?」
このフレステMによって、理想の恋人を手に入れたのだ!!!!
ツェンムーVRというソフトを購入した。
値段はなんと、12,800円もしたが、その価値はあった……!
ツェンムーは、本来は、昔に開発されたゲームで、オープンワールドゲームがまだ存在しない時代に、オープンワールドゲームの雛形を作ったようなゲームの一つだった。
内容は、私も古いゲームなのでよく覚えていないが、少なくとも今作であるツェンムーVRとは似ても似つかない内容だったはずだ。
今作は既存作とは全く違うスピンオフ的な内容になっている。
やってないので分からないが、アイアンギアVRなども、既存作とはあまり繋がりのない完全新作という扱いだそうだ。
今回のツェンムーVRは、内容的には、オープンワールドゲームかつ、『わたしのなつやすみ』『グランドシフトアート』『ペルンナ』のような要素を混ぜ込んでいる、全く違う別ゲーとなっている。
アイアンギアVRが、リアルな戦争を楽しめるゲームなら、このツェンムーVRは、リアルな日常が楽しめるゲームとなっていた。
即ち、働いて(労働シーンはスキップ可能)、遊んで、食べて、恋して、喧嘩して……。
日本の街でできることなら何でもできるゲームになっている。
範囲は、東京都一つ分くらいの街で、ゲーム内の好きな人と遊んで、楽しく生活するだけのゲーム。人生シミュレータと言っても良い。
これが、面白くない訳あるだろうか?
もちろん、ゲーム内の目的もある。
ストーリーとしては、朝起きるとシングルマザーの母親が何者かに殺害されており、母が大事にしていた『白銀の指輪』が何者かに奪われていた。なので、その死の謎を探るべく色々活動しよう!という感じ。
ただ、このゲームが他と違うのは、五感が正確に感じられるVRであることだけじゃない。
一番凄いのは、自由度だ!
本当に、何でもできる。
私は安定した生活を望んで、不動産鑑定士という稼げる仕事に就いたけれど、本当にやりたいことはこんな仕事じゃなかった。
カバン一つで世界を巡るバックパッカーや、古本屋で本に囲まれて穏やかに生活すること、いろんな意味で子供が好きだから教師になることとか、色々とやりたいことがあった。
けどそれらは、将来のことを考えた時や、収入のことを考えた時に真っ先に否定すべきことだった。
けれど、このゲームでなら。
このゲームであれば、その全てができる!
そう、つまり……。
「現実では許されない、美少年とのお付き合いも……!ぐへへへへ……!」
「おねーさん、いつも笑顔でたのしそう。いいことだね!」
紹介しましょう、こちら私の恋人のモーガン君です!
金髪碧眼の美少年ですが!!!!
頑張って口説いて私のお婿さんにしました!!!!
こんなん、現実では私みたいなじめっとした陰キャ女が近づいたら、三秒で逮捕ですが……、この世界では許されます!!!
更に言えば、モーガン君からプライベートデータまで貰っちゃったからね?!
ああ、プライベートデータって言うのは、このフレステMのゲーム世界で仲良くなったキャラクターから、全ゲーム共通でもらえるデータだよ。
他のゲームのNPCも、仲良くなればプライベートデータをくれるみたい。
このデータは、フレステMのマイホームでロードすることができて、そこでなら何でもできるよ!
最初のマイホームは何もない白い空間なんだけど、初期のテンプレで『草原のログハウス』と『アパートの一室』が選べるね。
そこから課金で、好きな家とか家具を揃えられる感じかな。
食べ物とか、VRじゃないゲームとかも買えるよ。
で、そんなマイホームに、このプライベートデータがあれば、そのキャラを召喚できる訳だね。
キャラを召喚すると、キャラに好きなことをさせられるよ!あんまりひどいことすると嫌われるけど。
例えば、一緒に食事したり、一緒におうちデートしたり。
エッチなことも当然できます!!!!
なので私は、愛するモーガンきゅんとおうちデートしてるのだ!!!!
……ほんっとにSONEYさんの集金術やばいわー。
だって、プリセットテンプレの何にもない部屋に、愛しのモーガンきゅんを押し込むなんて無理だもん。
モーガンきゅんのために3,850円の『森の豪邸』と2,000円の『ペットわんこ』と計4,680円の『家具セット』と月2,880円の『日本のご飯セット』のサブスクと……、とにかく色々買っちゃったんだもんね。
モーガンきゅんの為だからね、ちかたないね。
「はあ、はあ、モーガンきゅん……!」
「わあ、おねーさん、こーふんしてる」
「モーガンきゅん……、今日もクソみたいなセクハラ課長を殺さなかった私を褒めて!」
「たいへんだね……。いい子、いい子。おねーさんはいい子だよー!」
「びゃああ、脳みそとろけりゅ〜!!!」
んあーっ!
モーガンきゅん!
「モーガンきゅん愛してりゅ!結婚ちて!」
「いいよー。でも、結婚するにはぼくの身体がほしいねー」
そうなんだよなあ、モーガンきゅんはどこまで行ってもデータでしかないからなあ。
正確に言えば魔法生物っていう生き物らしいんだけどよく分からんね。
「メイデンハーツって会社に頼めば、ぼくの身体を用意してもらえるよ」
んー?
「それマジなの?」
メイデンハーツって言えば、亜人の、リビングドールの製作会社だったよね?
「えっとね、ぼくたちの思考ルーチンっていうのかな?ぼくたちのたましいは、リビングドールのたましいと同じ仕組みなんだー。だから、会社側に器さえ用意して貰えば、それに憑依する感じで……」
「つまり……、リアル世界でもモーガンきゅんに会える?!!!」
「そーだよ!メイデンハーツでは、オプションをつければ、その……、子供を作るための機能もつけられるんだって」
モ、モ、モーガンきゅんの子供を産める……?!?!?!!!
「モーガンきゅん、ちょっと詳しく教えてくれる?!」
「うん!いいよー!」
あー、新しくなった薬の副作用で体調わるわるなんだがー?!もうこの薬やめます!
ロリコンショタコンなど、性癖がぶっ飛んでる人が救済されると良いね。
いやマジで、「NPCにヨイショされて惨めじゃないの?」って意見があるかもしれませんが、「理解のある彼クン」は万病に効くってデータがありますからね。
因みに、リビングドールは、「主人に最も言って欲しいこと」ではなく、「主人の為になること」を言います。ニートにはそれとなく働けと言ってきますし、ブラック企業の勤め人にはそれとなく休めといってきます。都合が良い存在でありながらも、為になる存在って訳ですね。
リビングドールの子供とか100%社会問題の種ですが、今後爆発的に増えるから大丈夫じゃないっすか?