1話 結成!株式会社 BAE!
それなりに程度の良い、小さな庭のある一軒家の中で、子供が三人、言い争っている。
「おい」
「何だ」
「……」
「この馬鹿共」
「何だと」
「……」
「てめえよりにもよってARMSなんて選ぶかな?!この馬鹿!完全に火力過多じゃねえか!!魔法少女ものだっつってんだろアホ!!」
「お前こそ十傑集はおかしいだろ」
「チッ、お前もだからな!何でボルト・クランクだ?!」
「悪いか」
「悪いんだよぉー!!!」
「「「………………」」」
「はぁ、取り敢えず、罵り合っても埒あかないな。よし、まずは会議だ。俺達に足りないものは?」
「名前」
「そうだな、まず名前を決めようじゃないか。どうやら、転生にあたってお互いの名を忘れてしまったようだからな。なら、私は……、ARMS、キース・ブラックから……、黒井鍵と名乗ろう。お前はどうだ、十傑集男?」
金髪碧眼、理知的な見た目の少年は白衣の襟を直しつつ名乗った。
「何だよ十傑集男って。ええと、まあ、十傑集だし十条修司で良いか。お前はどうする、エセボルト・クランク」
黒スーツにネクタイでビシッと決めた黒髪の少年は、ネクタイを弄りながら名乗った。
「……閂杭那」
無口で金の長髪、緑のコートの少年は、丸いサングラスを直しながら名乗った。
「なるほどね、ボルト・クランクっぽい名前って訳か。じゃあ、今後はその名前で呼ぶからな」
「ああ」
「おう」
「さて……、まずは金だな」
「机の上に通帳がある。残高は……、億単位だ。三人で暮らすなら十分だな」
「住民票もある。戸籍もOKだ」
「なるほど、神様は随分と親切だな」
「ほんの数刻前は、三十代の俺達が集まって飲み会してた筈なのにな。おかしいなこれ、おかしいな」
修司は遠い目をして呟いた。
「しかし、これからどうする?」
と鍵。
「……」
喋らない杭那。
「……あー、やっぱりほら、働、く?」
「その前に学校だろう、俺達はどう見ても五歳児くらいだぞ」
「俺達は……」
と、急に口を開く杭那。
「……この世界で生きていくことは十分に可能だろう。その場合は、子供からやり直しになる。しかし、俺達の中身は大人だ」
「じゃあ、仕事しながら小学生やるか」
「そうだな」
「ああ、仕事はいい、人生を充実させる」
「つっても、何の仕事を……」
「前世ではできなかったことをやろう」
杭那が言う。
「そう、だな、今や俺は超能力者の超人」
「私はナノマシンでできた機械人間、杭那は人外、と」
修司と鍵が頷く。
「そんな俺達にしかできないこと……」
「つまり……」
「ああ、浪漫の追求だ」
「「「メイドロボにしよう」」」
三人の少年達は、取っ組み合いの喧嘩をしつつ、お互いの浪漫をぶつけ合い、決めた。因みに喧嘩では修司が一番強いようだ。
「俺はスーパーロボットが良かった」
杭那が呟く。
「作っても使い道がねえし、人類にそんなもんくれてやっても戦争の火種になるだけだろ」
「しかし、超AI搭載の勇者ロボなら?」
杭那が食い下がる。
「勇者ロボが自治してくれる世界には興味がある、いずれ作ろう。……しかし原材料はどうする?」
「問題ない」
杭那が言う。
「俺の能力は、『ボルト・クランクの能力、スペック、今まで食べたもの、EATMAN世界の技術』だ。ボルト・クランクの食べたものの中には、戦闘アンドロイドからメイドロボまで多数ある」
確かに、ボルト・クランクは、本編では、限りなく人に近いアンドロイドの数々を口にしている。本編で描かれていないところでも、膨大な量の超技術……、ロボットやアンドロイド、重機、大砲、火薬、化学製品……、あらゆるものを何億トンと口にしているだろう。
「確か、ボルト・クランクの能力は、食べたものを体表から出力する、壊れたものを食べると治った状態で出力できる、だったな」
「じゃあ、それに、多少私が手を加えて……」
鍵の能力は、『Project ARMSの主人公の両親のスペック、全 ARMS、エグリゴリの技術力』である。
特に、遺伝子工学やナノマシンなどの分野に優れる。少し脳内の情報を漁れば、末期ガンから先天的な遺伝子の病気まで治せる超医学があった。
「 ARMSと言えば、反物質砲、高周波ブレード、飛行能力、スタンドっぽいもの、レーザー、空気砲、エネルギー吸収、ワープ、絶対零度とか、兎に角チートの塊だったな。……そして俺が、命を吹き込む」
修司の能力は、『BF団の能力と技術とスペック』だ。十の超人の能力と常軌を逸した身体能力。そして、クリーンな新エネルギーから世界を滅ぼす大怪球の設計図までもが、頭に入っているのが分かる。
「BF団の十傑集といえば、サイコキネシス、忍術、仙術、何でも切れる真空波を発する指パッチンに、衝撃波、幻術、蟲使い、武術、命の操作とかだったな。さて」
「「「……ToHeart作戦だ!!!」」」
馬鹿三人の暴走が始まる……。
「組織名はどうする?」
「来栖川エレクトロニクスか」
「そこまでToHeartにする必要があるか?」
「覇道財閥」
「バーカ、デモベかよ。つーか財閥ってほど資本ねえだろ」
「財団」
「想定の範囲内だよぉ!」
「ブラックゴースト」
「悪の組織じゃねえか!」
「財団X」
「だから悪の組織だろーが!」
「パクらないで俺達で考えようか」
「BF団、EATMAN、 ARMS、頭文字を取ってBAE……、そうだ、 BAEで良いじゃないか」
「確か、愛しいもの、を表す英語のスラングだったか」
「よし、株式会社 BAE、決定!」
「ビルっていくらくらいするんだ?」
「億単位だ、買える」
「じゃあ、会社のウェブサイト作るか」
鍵は、前世では研究職で、パソコンはお手の物だ。
「ツイッター開設しよ」
修司はデザイン関係の仕事。
「メイドロボの貸し出し及び買取の権利関係について煮詰める」
杭那は法律関係の仕事だった、らしい。
「取り敢えず、モノがないと何とも言えんな」
「任せろ」
杭那の体表から出力される緑髪のアンドロイド。
「「おおー!」」
「んっ、おはようございます。HMX-12マルチです」
「スゲー!!マルチだぁ!マルチだぁぁぁ!!!」
「可愛らしいものだ」
「フッ……」
「何でお前が偉そうにしてんだボケ」
そして……。
「いやー」
「「「ははははは」」」
「笑えるな」
「まさかここまで稼げるとは」
「つーかメイドロボ有能過ぎる。今じゃ会社のこと大体は任せてるもんな」
眉目秀麗のメイドロボ達は、その性能と見た目から瞬く間に世界を席巻した。
特に介護などの分野において、極めて多大な貢献をし、国から表彰されるまでに至ったのだ。
今や、ある程度裕福な家庭であれば、一家に一台というレベルでメイドロボ達は普及している。
もちろん、頭の固い学会や、その他研究機関の妨害はあった。
しかし、その圧倒的な性能と、まるで、「命を吹き込まれた」かのような仕草は、世の人々のハートをキャッチし、飛ぶように売れた。
こうして、一躍有名になった株式会社 BAEは、ロボットの作成などの工学分野、遺伝子治療などの医療分野で、世界に羽ばたくことになったのである!
そして!
「で」
「この世界は魔法少女リリカルなのはらしいが……」
「何だ、それは」
残念なことに、こいつらは原作を知らなかった!!!
どうなる、未来?!
黒井鍵
悪人顔のイケメン。タイプ的には知能犯。
十条修司
悪人顔のイケメン。パワータイプ。ToHeartで泣いた経験アリ。
閂杭那
イケメン。ロボ好き。無口だが、言わなくていいことをボソッというタイプ。