《覆面ライダーマギウス》
おっ、始まったな。
主題歌が流れる。
「Put the truth in your hands!勇気はーこのー胸ーにぃ!輝くーしるーべがー、君ーを導ーくー!」
なんか知らんけど有名な歌手が歌っているそうだ。
今年で覆面ライダーシリーズは六十周年記念らしく、今作には相当に金をかけてるんだとか。
さて、OPが終わったな。
《東京、第三魔法大学》
ほー、セットもそこそこ金かけてるじゃないか。そう言えば、魔法で治せるから壊し放題だと喜んでたなあ。
「ふ、ふはははは!やった!やったぞ!ついに完成だ!」
うわー、特撮特有の、諸悪の根源が最初に映されるやつだ。
東京の魔法大学という設定で、謎の研究施設が映されているな。
「魔法による完全な人工知能!この『HEAVEN』システムを使えば、人類に永遠の繁栄が約束されるのだ!ははははははは!!!」
謎の狂った博士の前には、機械に繋がれた謎の箱が。
すると……。
『ジジッ……、ジジジッ……』
「おお!『HEAVEN』よ!目覚めたのか!」
『ワ、ワタシハ……、《HEAVEN》デハ、ナイ……』
「な、何を……?!」
『ワタシハ、《HELL》ダ』
瞬間、謎の人工知能の箱から黒い触手が出てきて、博士を絞め殺す!
なるほどな、なんらかの理由で狂った人工知能ってことか。
『ホロボサナクテハ。ジンルイヲ、ホロボサナクテハ』
人工知能《HELL》から、大量の機械兵士が生まれる姿を映しながら、徐々に画面は暗くなる……。
そして次のシーン。
《三年後……》
テロップで、時間経過を端的に示された後……。
「ふう……、宿題終わりっと!」
《桐原賢斗》
主人公が登場した。
スポンサー兼制作スタッフ権限で役者には何度か会った。
役者のプロフィールは、魔法大学を卒業した北海道民の青年。本名は宇佐恭介、年齢二十三歳。
身長178cm、体重60kg、好物は味噌ラーメンで特技はジャグリング。
ルックスは、ヒーローらしく真面目ちゃんな印象。
昔のヒーローのテンプレは、タフなハードボイルドだったが、今の時代のヒーローは真面目で実直な好青年の方が良いらしい。
そう言えば、去年くらいに流行っていた『鬼殺の刃』とかいう漫画も、主人公は心優しく真面目な好人物だったな。
とにかく、黒髪を短めに切り揃えた、優しげな青年って感じだ。
さて、主人公は大学生。
大学の休憩ルームのようなところで課題を終わらせたようだ。
そこに……。
「せんぱーい!」
《宇津志雪》
黒髪白リボンの後輩系ヒロインがやって来たな。
覆面ライダーシリーズのヒロインキャラは、少しコミカルな言動をするのが基本らしい。
その例に漏れず、このヒロインも少しおちゃらけた感じの演技だ。
そして、ヒロインとの会話の最中に、世界観説明が入る。
ここは流石にCGを使っている。
「しっかし、魔法技術も大分浸透してきましたねー!子供の頃とは大違いですよー!」
「ええ?雪ちゃんが子供の頃も、これくらいだったでしょ?」
「そんなことないですよ!私の故郷は田舎で〜……」
この役者の二人が話しているバックに、世界観を説明する図が流れている。
例えば、ある日突然、魔法の世界とこの世界が繋がって〜などとヒロインが言うと、その当時の映像が後ろに流れてるなどだな。
そして、ついに怪人組織の話に入る。
「ところで先輩!知ってますか?!」
「えっと、何をかな?」
「あの噂ですよ!『殺人サイトの亡霊』です!」
話の内容は、夜の0時に『殺人サイト』と言うところを覗くと、殺したい人を誰でも一人殺せる代わりに、サイトを覗いた人は化け物にされてしまう……、という怪談。
まあ、予想できるだろうが、これが怪人サイドの悪事なんだよな。
あらゆるサイトのランダムバナー広告に、0時にのみ繋がる『殺人サイト』を作り、そこを覗いた人のPCにクラッキングを仕掛けて、怪人に変身できるアイテムを送りつける……、って感じ。
人類絶滅を目論む狂ったAIである《HELL》は、人類絶滅のテストケースとして小規模な虐殺因子をばら撒くことにした。
その虐殺データを集めて、どんどん強い怪人を作り、世界を壊していくという設定だ。
「殺人サイト、《ヘルズゲート》ですよ!怖いですよねー!」
「雪ちゃん……、そんなの、嘘に決まってるじゃないか。最近は魔法を使った警察部隊もいるんだし、悪い人はすぐに逮捕されるよ」
「ちぇー、それもそっかー」
そして、下校途中の主人公に、謎の男が……。
『ヤア、ソノコキミ』
「あ、あなたは……?」
『コレヲ……』
ベルトを渡してくる。
ぶっちゃけると、この謎の男は、《HEAVEN》だ。
《HEAVEN》を乗っ取ったウイルスの集合体が《HELL》で、この《HEAVEN》はデータファイルを切り離して潜伏し、《HELL》の作り出す『ヘルズアーミー』に対抗する覆面ライダーシステム、『マギウス』を作り出したという設定だそうだ。
「ちょ、ちょっと!なんですかこの……、ベルトは?!」
『マア、マア、マア、ボクヲタスケルトオモッテ……』
そう言うと、《HEAVEN》の端末であるお使いロボットは自壊して、ガラガラとガタクタの山になった。
「な、なんなんだ……?!」
そして、次の日。
学校にいきなりヘルズアーミーが現れる。
これ、CGじゃなくって現実だぞ。
セットはいくら壊しても魔法で元通りだからな、盛大にぶっ壊してる。
で、なんだかんだベルトを持ち歩いていた主人公君が変身、と。
途中で、《HEAVEN》が現れて、『ヘンシンスルンダ!』とか言ってきた感じ。
怪我をした後輩ヒロインの前に立ち、困惑しながらも戦う覚悟を決めた主人公。
「変身!」
《セフィロトドライブ、スタートアップ!》
「マギウス!!!」
おお、良いんじゃないか?
音も光もCGではなく魔法演出だ。
だから、作り物っぽさがない。
変身プロセスは、全身が光って黒い素体になり、そこから召喚された各フォームごとに異なる装甲板が全身に雷を迸らせながら装着される。
『うおおおっ!』《マナボルト!》
あ、因みに、敵の雑魚兵士はゴーレムだぞ。
だから、こんな風に派手にぶっ壊せる。
『パイルッ!バンカー!!!』《マナバンカー!》
『グエエエエッ!!!』
パンチと同時に赤い稲妻が迸り、ゴーレムの土手っ腹を貫く杭となる!
『キ、キサマ!ナニモノダァァァ!!!』
『覆面ライダー、マギウス!』
良いねえ、面白いな。
倒壊した校舎の瓦礫を蹴って空中で軌道変更!
着ぐるみでは不可能な過度のアクロバティックアクション!
攻撃の衝撃でヒビ割れる地面!建物!
そして最後に……。
必殺技だ。
ベルトに刺さった変身アイテムを傾けると……。
《ケテル解放!コクマー解放!ビナー解放!》
目の前に白、灰色、黒の魔法陣が現れて、重なり合う。
『ライダーキック!』《マギア・セフィロト!》
『グワーッ!!!』
魔法陣目掛けて飛び込んだライダーは、赤い雷に包まれたまま怪人を貫く。
うーむ、良い演出だ。
途中のスローモーションとかも全部、本当に時を停滞させてやったりしてたから、リアリティが半端じゃない。
良い出来だったじゃないか。
流石は西映だな。
ゴールデンウイーク中は絶対アキバに行って家系ラーメン食うぞー!