ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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要望多数よりメガテンから行きます。


スーパーハカーが世界をハックするメガテン
1話 クビ


俺は、ガキの頃から、パソコンいじりが好きだった。

 

スポーツも学校で一番だったし、勉強も全国模試で一位以外をとったことはない。

 

自慢だが、顔も良いし、背も高い。

 

だから俺は、世界の全ての人間を見下していた。

 

学生のうちはそれで良かった。

 

女なんて好きなだけ抱けたし、成績はトップ、研究成果は世界的に認められた。

 

だが、社会は、有能であればあるほど、爪弾きにされる。

 

「真上君、明日から来なくて良いよ」

 

「……は?な、何でですか?!」

 

「勤務態度が悪過ぎるんだ。君がいるだけで、チームの和が乱れる」

 

「チームの和?!」

 

何だそりゃ?!

 

「飲み会もミーティングも全く出席しないで、上から目線で指示をして……、何様のつもりなのかね?」

 

「それは、貴方達が非効率なことばかりしているからでしょう?!意味もなく飲み会やミーティングをして、肝心の業務は下請けに丸投げ、日本一のIT企業の謳い文句に対して、碌にC++も使えない社員!私が今までどれだけ……!」

 

「はぁ……。下請けにやらせるような、ちょっとしたプログラムができる程度、何の自慢にもならないんだよ。社会人で最も大切なのはコミュニケーション能力なんだよね。多少業績を上げられた程度で威張らないで欲しいね」

 

「はぁ?!多少?!俺がこの会社に入って、新人の教育やら業務内容の改革やらをやらなければ、この会社は潰れてましたよ?!」

 

「はぁ……、だから、そうやって数字でしか物事を判断できない人は、うちの会社に向いてないんだよ」

 

ああ、駄目だ、目眩がしてきた。

 

IT企業が、数字じゃなくて気持ちを大切に?

 

「あ、ああ……、じゃあ、聞かせてもらうがな、テメーが会社のPCでエロサイト見て、ウイルス仕込まれて社内情報がばら撒かれた時、夜通しウイルス削除したのは誰だ?」

 

「い、いや、あれは……」

 

「俺は言ってたよな、32ビットのウィンドウズなんてクソPCやめて新型を導入しろって。予算削減とか言ってケチった挙句、ウイルスで俺の仕事をパァにしたアホは誰だ?」

 

「と、とにかくクビだ!出て行け!」

 

「オメーだろーがよお!!!テメーが無能なせいで俺が苦労してんだろうが!!!中国からハッキングされた時も、対処したのは俺一人じゃねーかよ!!!」

 

「う、うるさい!懲戒免職だ!退職金は出さん!」

 

 

 

「はぁー……」

 

思った以上に社会はクソだった。

 

有能であればあるほど、邪魔者扱いされる。

 

自分の仕事を十全にこなした上で、更に努力しても、認められない。

 

「やってらんねー……」

 

缶に残った、今の俺の気持ちのようにブラックなコーヒーを飲み干す。

 

何でだ?

 

俺は何か悪い事をしたか?

 

確かに、正論を言う奴は目障りだろうさ。

 

だが、俺は正しい。

 

会社として業績を上げるのも、業務の効率を上げるのも、勉強をするのも、正しい事だ。

 

そうだ、俺は正しい。

 

あいつらが悪い。

 

世の中の方が間違っている。

 

「……よし」

 

 

 

次の日、俺がいた会社は、凶悪なコンピュータウィルスにより、ありとあらゆるデータが流出して、倒産した。

 

 

 

 

 

それから、四年。

 

二十八歳になった俺は、働くでもなく、一人でだらだらとただ生きていた。

 

ヒゲも剃らず、髪も切らず、四年前から服も碌に買わず……。

 

ホームレスのような姿で、パソコンの前にいた。

 

「なあ、コロンゾン」

 

『はい、旦那様』

 

「暇だ」

 

『……これで、千四十二回目の「暇だ」でございますな』

 

「暇なんだ」

 

『筋力トレーニングはいかがですか?』

 

「さっきやった」

 

『テレビゲームは?』

 

「飽きた」

 

『性風俗は?』

 

「んー、髭剃るの面倒い」

 

『では、私にどうしろと?』

 

「どっかに面白い話とか転がってない?身寄りのない美少女とかさ」

 

さて、たった一人の部屋で、俺は誰と話しているのか。

 

それは、こいつだ。

 

スマホの画面の中にいる、青いリング。

 

名を、コロンゾン。

 

俺の作ったAIだ。

 

俺は、女キャラのAIのような媚び媚びのキャラクターより、アイアンマンのジャーヴィスのような硬派な執事AIとかの方が好きだったんで、ボイスは男性。

 

この高慢な性格と、女にモテまくるという点から、男性の友人がまるでいない俺の、唯一の友人であり、俺を世話するAIだ。

 

「じゃあ、そうだな、迷惑メールの発信元にハッキングしかけて潰そうぜ」

 

『ご勝手にどうぞ』

 

「うーん、これとかどうだ?」

 

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『……それは、やめておいた方がよろしいかと』

 

ん?

 

「何でだ?未成年デリヘルだぜ?本当に未成年のデリヘルが来たら大笑いだろ?」

 

『やめておいた方がよろしいかと思います』

 

んー?

 

「コロンゾン、どうしたんだ?お前らしくないぞ?」

 

『他のメールにしましょう。他のものなら安全です』

 

安全?

 

このメールは危険なのか?

 

「ウイルスなら大丈夫だ、切り離した仮想OSで起動するし……」

 

『……では、ご随意に。私は、いざとなれば出ます』

 

「出る?何言ってんだ?何のことだ?」

 

『………………』

 

「ったく、何だよ……。まあ良いや、じゃあ、このメールの添付ファイルを開くぞ、そら!」

 

仮想OS内でプログラムを走らせる。

 

「ん、お?」

 

やべ、何だ?

 

今一瞬意識飛んでたぞ?

 

俺の中の「何か」をごそっと抜かれた、そんな感覚だ。

 

仮想OSには、『SAMON』と赤文字で書かれて、オリジナル言語のプログラムが走っていた。

 

「んー?何だこりゃ?見たことねえ内容だな?えーと、PC上に仮想の空間を用意して、そこに仮想のオブジェクトを置いて……、駄目だ、分かんねえ。何だこれ?」

 

「ねえ」

 

「いや、ちょっと待てよ?これ、プログラムが二重にあるな。仮想空間に仮想のオブジェクトを置くプログラムと、これは……、ああ、クソ、何のデータだ?」

 

「ねえってば」

 

「えーと、ガル、ザン、ディア、銃弱点……、何だこれ?ゲームキャラのステータスを死ぬほど遠回りに書いてんのか?んー、ファイル名はモーショボー?モーショボー?何だっけ?どっかの国の鳥女だっけ?」

 

「ねえってばぁ!!!」

 

あぁ?

 

「うるせ、え、な……?んんんんん?!」

 

何だこのガキ?!

 

「お、おまっ、ど、どっから入ってきた?!どこのガキだ?!」

 

「こんにちは、おじさん!」

 

「俺はまだ二十八だ!」

 

「えー?ヒゲのおじさんじゃん!」

 

チッ、何だこのガキは。

 

「おい、どこのガキだ?早く出て行け、面倒はごめんだ」

 

「契約内容は?」

 

は?

 

「契約?」

 

「そ、悪魔を呼んだなら、何かを要求しなきゃ」

 

「悪魔だぁ?」

 

そりゃ、確かに、後ろ髪が羽のようになってるが……。

 

コスプレだろ?

 

「欲しいものはなあに?」

 

「何もねーよ、強いて言えばお前に帰って欲しい」

 

「そっか!私はこれが終わったら出て行くよ!はい、じゃあ、契約完了だね!対価をもらっていくよ!」

 

対価?

 

「対価は……、おじさんの脳みそ❤︎」

 

「は?」

 

「『ザン』」

 

な、何だ?!

 

衝撃波?!

 

やべえ、食らった……、あれ?

 

「あれ?」

 

ん?

 

「ちょ、ちょっと待って、な、なんか、私の前に見えない壁があるんだけど?」

 

「い、いや、お前今、何を?」

 

「えい!えい!もー!何で?!脳みそ食べたいのにー!」

 

クソ、何なんだ?

 

「コロンゾン!」

 

『はい、旦那様』

 

「説明しろ、何事だ」

 

『……旦那様には、平穏な生活を送って欲しかったのですが、仕方がありませんね』

 

は?

 

『旦那様が今走らせたプログラムは、悪魔召喚プログラムです。電子空間で再現された、悪魔召喚の儀式により、悪魔を呼ぶものです』

 

「悪魔だと?」

 

『はい、この私も悪魔です。悪魔は、確かに世界にいるのです』

 

ふーむ……。

 

コロンゾンは俺に嘘をつけない。

 

俺はそう設定している。

 

「コロンゾン、それは」「出してー!出してよおー!脳みそよこせー!」

 

「コロンゾ」「おじさん!おじさん!出してよ!なんでこんな酷いことするの?!」

 

「コロ」「出して出して出して出して出して出してーーー!!!!」

 

「るっせえぞクソガキ!!!!」

 

「ぴいっ?!」

 

ガキを黙らせる。

 

「コロンゾン、どういうことだ?」

 

『この世界には悪魔がいます。そして、コンピュータ上で悪魔を呼び出すプログラムである、「悪魔召喚プログラム」により、悪魔を呼べます』

 

ふむ。

 

こう言った話は、まず否定から入ったらラチがあかないな。

 

ちゃんと聞こうか。

 

「じゃあ、このガキは、悪魔だと?」

 

『はい。モーショボーという低級の凶鳥です。こちらのプログラムが召喚プログラムで、こちらがモーショボーの電子データになります』

 

ふむ。

 

「……おじさん、脳みそ取らないから出して?」

 

「仮に、このモーショボーのデータを改変するとどうなる?」

 

『前例がありません。悪魔召喚プログラムの解析に成功した人間は存在しませんので』

 

ふむ!

 

「俺は見ただけである程度理解した。なあ、これさ、このモーショボーのデータを書き換えれば、忠実な俺の奴隷にできるんじゃねえか?」

 

『可能性はあります』

 

成る程!

 

「モーショボーちゃーん?」

 

「お、おじさん、なあに?」

 

「俺のためにちょっと中身をいじらせてくれや」

 

データのバックアップを取ってから、書き換え、と。

 

この辺りを弄ってみるか。

 

さて、この変数は?

 

「え……、あ、っぎぃ?!!!あああああああ?!!!いだいぃぃぃ!!!やべでええええええええ!!!!」

 

おお、腕が弾けたな。

 

バックアップをコピペして戻す。

 

じゃあここは?

 

「あ、あああああ、やだやだやだやだ、頭が、頭の中、入ってこないで、やだやだやだ!!!」

 

ふーん、ああ、これ多分好物か?

 

脳みそじゃなくて精液とかにしてみるか?ハハハハハ!

 

『その辺りを弄ると、別の悪魔に変化するかもしれませんな』

 

「あー、サキュバスとかになるのかな?」

 

面白えなこれ、もっとやろう。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

ある程度弄ったので、データファイルに保存しようとしたところで、コロンゾンがスマホへのダウンロードを提案してきた。

 

何でも、悪魔はいつでも呼び出せるように、手元のコンピュータに入れた方が良いらしい。

 

「出しっぱじゃ駄目なのか?……ってか、さっきから目眩がするな」

 

『今のように出しっぱなしでは、旦那様のマグネタイトが吸われてしまいます』

 

「マグネタイト?」

 

『生体エネルギーのことで、悪魔が存在するために必要な、人間の科学においては観測不可能な素粒子だとお思い下さい』

 

「……ってことは、悪魔であるお前とこのガキは、俺の生命力を吸ってこの世に存在してるのか?」

 

『その通りございます』

 

ふーん。

 

「やめろや」

 

『誤解なきように申し上げておきますが、私は現在、実体がないので、殆どマグネタイトを吸っていません。そちらのモーショボーが七割、私が一割程ですね』

 

「十割なくなったら?」

 

『死にます』

 

いやいやいやいや!!

 

ちょっと待てや!!

 

『因みに、どうやらデータファイルの大きさとマグネタイトの使用量は比例するようなので、弄り回して二割程ファイルを大きくした旦那様にも責任がありますね』

 

「クソが、圧縮してやる!」

 

データを圧縮。

 

すると……。

 

「あれ?」

 

モーショボーがちっちゃくなった?!

 

これじゃ役立たずじゃねえか!

 

クソが、データ量減らすしかねえ!

 

『マグネタイトは生体エネルギーなので、食事や睡眠で回復しますよ』

 

「よっし、今日は寝る!」

 

モーショボーをスマホにしまって、俺は寝た。

 




でも書き溜めは10話くらいしかないょ。

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