ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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指摘ありがとうございます。

手直ししてたら消えちゃってました。


10話 スカウト 前編

最初にスカウトするのは、デイブ・ボードウィン。

 

京都府の某総合病院で瀕死の重体、入院中。

 

さて、死にかけの、顔も知らない人間に会う方法ってのは何だろうか?

 

普通は無理だろう。

 

だが、デビルサマナーなら、これでオッケーだ。

 

「すみません、ここに入院しているデイブさんの友人の村田です」

 

偽名である。

 

俺は、服も久し振りにスーツに袖を通して、髭を剃り、髪をゴム紐でまとめて、小綺麗にして面会を申し込む。

 

「ああ、あのデイブさんの……?」

 

「デイブさんに、好物の『ソーマ』を持ってきたので、本人に渡したいんですが……」

 

「ソーマ?」

 

「ええ、デイブさんは欧州出身ですよね?欧州でコアなファンがいるジュースなんですよ。電話では、胃腸はある程度治ったとデイブさんも言ってましたから、好物のジュースの差し入れくらい良いですよね?」

 

「そうですね……、分かりました。今、デイブさんに確認をとってみますね」

 

そして、五分後に……。

 

「村田さん、デイブさんが是非会いたいと言ってますよ!お願いします、デイブさんは、身寄りもなくて、貯金も医療費でなくなってしまったそうで……。デイブさんのメンタルケアのためにも、是非お会いして下さい!」

 

と、看護婦さんに頼まれた。

 

 

 

「では、積もる話もあるでしょうから、私は席を外しますね」

 

そう言って、デイブの個室から離れた看護婦さんを見送って、俺は倒れ臥すデイブを見る。

 

欧州出身のデイブは、38歳という年齢を感じさせるいぶし銀な渋い男っぷりのナイスガイである。

 

色素の薄めな黒髪に青い瞳、鋭角で神経質そうな顔つきで、顎と頬、口髭を短く生やしていて、ツーブロックの髪型で清潔感を演出。

 

スタイルは細めで高身長。

 

馬鹿な女ならコロッと惚れ込むだろう、いい男だ。

 

だが……、包帯で塞がれた片目、そぎ落ちた片耳、切断された両足、ねじ曲がった片腕……。もう、モテることはないだろう。

 

「やあ、デイブ!会えて嬉しいよ!君の親友の村田だよ!」

 

俺が気さくに声をかける。

 

「……お前は、誰だ?」

 

まあ、そうだわな。

 

俺は、デイブのベッドの隣に置いてある丸椅子に腰掛ける。

 

「俺か?俺は……、DDSnetだ」

 

俺がそう囁くと、デイブは酷く驚いた顔を見せる。

 

「そうか……、お前が、DDSnet……。私に何の用だ?」

 

「スカウトだよ、デイブ」

 

俺はニヤける。

 

「スカウト?死にかけの私を?ソーマなどと嘘をついて、私をどうしたい?!」

 

疑われてるねえ。

 

「デイブ、うちはな、ほんの数ヶ月前にできた組織なんだよ。人員だって俺一人だ」

 

「………………馬鹿な、アイテムはどこから手に入れているのだ」

 

「ついでに言えば、俺も、数ヶ月前にデビルサマナーになった初心者、若葉マークって訳さ」

 

「そんな嘘を!」

 

「俺は!俺は、独自技術で、アイテムを生産する方法を確立した。だからこそ、あの量のアイテムを安定供給できている」

 

デイブは目を見開く。

 

「馬鹿な……、あり得ん!異界のアイテムは、誰にも作れないからこそ、あれ程の値段がまかり通っているのだ!それを、お前は……!」

 

俺は懐からソーマの瓶を取り出す。

 

「これを見ろデイブ。なんだか分かるか?ソーマだよ、お前が欲しがるであろうソーマだ。飲めばどんな大怪我でも治し、健康な時に飲めば五歳は若返るとされる秘薬、ソーマだ」

 

瓶を目の前で揺らす。

 

「欲しいか、デイブ。これが欲しいか?なら、俺の部下になれ、裏切るな、忠臣になれ。……お前のことは、予知系の悪魔を使って調べてある。身寄りもない、どこぞの組織の紐付きでもない、しかし才覚はある……、うってつけだ、最高の物件だ」

 

「………………」

 

「契約書やギアススクロールは作らない。お前を信用しているからな。お前はつまらん理由で裏切るような人間ではないと調べてある。簡単な話だろう?」

 

「……私でなければ、駄目なのか?」

 

「いや、お前の他にも候補は五人いる。だが、その五人は全員、暗い未来が待っている。だから、俺は諸君らを救う。代わりに、部下になってもらう」

 

「……契約の内容は?」

 

「文書にまとめた、これだ」

 

デイブは、片手でゆっくりと資料をめくる。

 

ほんの数ページの資料だ、すぐに読み終わる。

 

「……確かに、私に有利な契約だ。指示がなければ自由時間が保証され、月に二百万円の給料が出て、アイテムや装備も支給。副業、個人的に異界に潜ることも許可……、あり得ないくらいに、虫のいい話だ」

 

「そりゃね。俺って、基本的にあんまり人間を信用してないのよ。悪魔は契約と制約を絶対に守るけど、人間は裏切る。だから、利益を与えて、恩に着せなきゃならない。いや、人間相手ならこうかな?」

 

俺は、またもやニヤついて、言った。

 

「デイブ、勝ち馬に乗せてやるよ」

 

と。

 

「……ふ、ふはは、ははははは!そうか、勝ち馬に乗せてくれるか!良いだろう、分かりやすい話だ。お前らは利益を上げる。これから、もっと強く、もっと大きくなる。そんな奴らの一員に、早い段階からなれる!まるでインサイダー取引だ」

 

「契約は成立か?」

 

「ああ、契約しよう。そもそも、ソーマの代金ともなれば、残りの一生をかけて働いたとしても返せるかどうかは分からないんだ。借りは働いて返すさ」

 

俺は、ソーマを手渡した。

 

デイブは、ソーマの瓶の蓋を片手で器用に開いて、中身を飲んだ。

 

「ぬ、う、おおお!」

 

すると、みるみるうちに使い物にならなかった手足が、なくなった目玉や耳が、こそげ落ちた皮が、断裂した筋肉が、神経が……。

 

「おおおおおおおっ!!!」

 

全て、元通りに再生した。

 

完全に身体が回復したデイブを連れて、トラエストで病院を脱出、トラポートでデイブの家に帰す。

 

京都の外れのマンションに住んでいるらしい。

 

支度金として一千万円を渡して、東京に引っ越してきてもらう。

 

 

 

三週間後、デイブが東京に引っ越してきて、かなりいいマンションに住むことに。

 

金王屋にも入社させて、表の身分を用意。

 

あ、俺も金王屋の社員ってことになってる。

 

そして、本社ビルの地下異界にて、ブートキャンプをする。

 

対人戦のエキスパート、ヨシツネ。

 

戦闘的な思考、作戦立案などの教官、カンセイテイクン。

 

対悪魔戦のエキスパート、ジークフリート。

 

そして、適切な悪魔の配置により、レベルが上がるデイブは……。

 

『Lv35:人間(達人):デイブ・ボードウィン

HP:321

MP:250

耐性:なし

力:18

技:24

魔:25

体:17

速:16

運:10

 

ペルソナ:星:ガンダルヴァ

アギ

アギラオ

マハラギ

マハラギオン

癒しの調べ

錯乱の舞踏』

 

と強化されていた。

 

レベルは、1で一般人、10もあれば一人前、20で一流、30で組織の幹部並、40で組織のトップ並……、と言ったところだ。

 

既に、デイブの力は組織の幹部クラスを超えている。

 

会ったばかりの頃のレベルが23だったのを見れば、異常なレベルの高さだろう。

 

買えば軽く十億円はする、レベルアップアイテムの魔導書を無制限に使えるとは、こういうことだ。

 

さあ、次の人をスカウトしよう。

 

ルーファス・ブレイド、26歳の異能者。

 

次はこの男をスカウトする。

 

 

 

ルーファスは、長野県諏訪市一丁目の、ガイア教が仕切る異界に潜っていた。

 

利き腕の左腕を失い、左目も失い、人工臓器で失った臓器を無理矢理動かし、異界を攻略している。

 

ルーファスの願いは一つ。

 

再び完全な肉体を取り戻すこと。

 

自分を罠に嵌めたデビルサマナーの始末など二の次三の次、とにかく、金を集めて、身体を治さなければならないと考えているようだ。

 

まあ、人工臓器を酷使して、動かない肉体を無理矢理動かしている以上、残り時間は少ないのだが。

 

ろうそくが燃え尽きる瞬間に強く輝くように、むしろ怪我をする前よりも強いのではないかと思える程、鬼気迫る勢いで戦っているルーファス。

 

だが、時間切れのようだ。

 

異界の中で悪魔に囲まれ、吐血しているルーファス。

 

厚手のカーキーのコートの、アメリカの古い刑事ドラマの警部のような姿で、色素の薄い金髪をオールバックにした男だ。

 

端整な相貌を歪ませて、地獄のような苦痛の中、片腕で剣を振り回して、悪魔と戦っている。

 

「が、アアアアアアアッ!!!!」

 

その姿は正しく修羅のそれであり、咆哮は悪魔と変わらない化け物のそれだ。

 

しかし、もう、身体は動かないみたいだな。

 

人工臓器がイかれたらしく、致死量レベルの大量吐血。

 

咳き込むが、ギラギラと光る目は生気を失っていない。

 

カッコいいね、こいつなら心強い味方になりそうだ。

 

取り敢えず、目の前の雑魚悪魔にマハラギストーンを投げつけて消毒してやる。

 

断末魔の声を上げながら消滅する悪魔。

 

最初は、俺も、刃物や銃で悪魔を殺すのは慣れなくて、精神的にちょっと来たけど、今では慣れたもんだ。

 

肉の焼ける匂いも不快だが恐ろしいとは思わない。

 

「ルーファス・ブレイドだな?」

 

俺は、倒れ臥すルーファスを見下ろして、言った。

 

「貴様は、何者だ……」

 

ルーファスは、血を吐きながら言った。

 

もう、長くない。

 

「俺は、DDSnetだ。ルーファス、お前をスカウトしよう」

 

「………………」

 

しゃがんで、ソーマの瓶を目の前に置いてやる。

 

「こ、れは!」

 

裏社会には、異界のマジックアイテム外見の写真が出回っている。

 

デビルサマナーなら、主要なアイテム、有名なアイテムは大体見れば分かるってことだ。

 

ソーマは、100mlくらいの酒で金色に輝き、瓶の形はハクション大魔王が入ってそうな形の壺だ。

 

味は甘い酒だな。かなり甘いから人を選ぶな。

 

まあ、何にせよ、喉から手が出るほど欲しいであろうソーマを目の前にチラつかせてやると、ルーファスは目の色を変えてきた。

 

「俺の部下になれ。そうしたら、このソーマをくれてやる。さあ、どうする?」

 

「寄越せ……!!!」

 

おや、即答。

 

「言っておくが、もらってからやっぱりなしなどとは」

 

「そんな恥知らずな真似をするものかよ!早く、寄越せ!」

 

目の前に瓶を置いてやる。

 

すると、瓶を掴んで、蓋を歯で開ける。そして、寝返りをうちながら転がって、仰向けになり、ソーマを飲んだ。

 

「ぬっ、が、あああ!!!」

 

煙を上げながら肉体が再生していき、ルーファスは立ち上がる……。

 

 

 

その後、ルーファスは、約束を違えることなく、俺の部下になり、契約書にサインをした。

 

怪異:アンサーへの質問でルーファスの忠誠心をチェックしたが、全く問題なしと診断される。

 

そして、金王屋地下の異界にて訓練させ、この辺りまでレベルを上げさせる。

 

『Lv31:人間(達人):ルーファス・ブレイド

HP:350

MP:212

耐性:なし

力:23

技:21

魔:15

体:20

速:18

運:6

 

ザン

ザンマ

マハザン

一文字斬り

利剣乱舞』

 

ある程度使えるようになったので、装備と自由裁量権を与えて、出社させる。

 

意外なことに、表向きには飲食店を経営していたらしいので、急遽、金王屋の一階のテナントを空けて、そこでカフェバーをやってもらう。

 

まさか、裏稼業の人間も、カフェのテナントが入っている美術商がDDSnetだとは気付くまい。

 

ん?カフェの名前?

 

えーと、確か、『ミルクホール新世界』だったっけ?まあ、どうでもいいだろう。

 

さあ、次に行こう。

 




デイブ
美的センスに優れる北欧系の男。「ヴァイオリン」が趣味。

ルーファス
祖父がスペイン人の「闘牛士」だったアメリカ人。剣術が得意。



つまりそう言うことですね!
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