ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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お金がない。


12話 スカウト 後編

最後は、野母真由子と野母ありす。

 

この二人をスカウトする。

 

 

 

この二人の居住地であるマンションが、MAG濃度が高まり、異界になってしまう。

 

当然のように悪魔に襲われるので、それを助け、俺の陣営に引き込むって寸法よ。

 

「お母さんから、離れろ!!!『ムド』!!!」

 

あれが、異能者の娘、野母ありすか。

 

金髪ロングのお人形さんみたいな美少女だ。

 

ハーフらしいな。

 

恐らくは北欧系の血だろう、金糸のような金髪と白い肌が眩しい。

 

ありすは、異界と化したこのマンションで、母親である真由子を庇いながら戦っている。

 

そして、その辺で死にかけているのは、黒髪のロングヘアを編んだ、眼鏡の美女。幸薄そうだ。これが、野母真由子だろう。これで35歳?マジで?全然抱けるんだけど。二十代にしか見えねえぞ?!

 

さて、じゃあ早速。

 

「デトロイト市警だ!!!」

 

声をかける。

 

「だ、誰?!」

 

俺はジャベリンレインで悪魔を吹っ飛ばして、真由子にソーマを飲ませようとする。

 

「お母さんに何するの?!」

 

「薬を飲ませるんだ、怪我が治るぞ」

 

「は?飲めば怪我が治る薬なんてないわ!早く病院に……!」

 

「あるんだな、これが」

 

俺はありすを無視して、真由子に薬を飲ませる。

 

「お前……っ!」

 

ありすは、怒りのままに包丁を刺してくるが、そんなものは俺には効かない。

 

だが、真由子がソーマで怪我を治して起きると、ありすは真由子に駆け寄った。

 

「嘘……、本当に治ったの?!」

 

「あ……、私、は?」

 

ぼんやりしている真由子を抱えて、ありすを連れて、預金通帳や住民票を持たせて、異界マンションから脱出。

 

 

 

「は、はあ、悪魔、ですか……?」

 

「ええ、そうです。貴女方は悪魔に襲われた」

 

俺は、オフィスで、真由子とありすに説明をする。

 

「まあ、あれですわな、あのマンションには二度と戻れないと思った方が良いでしょうな」

 

「そんな……!」

 

俺はニュースを見せる。

 

『平崎市のマンションで毒ガス発生か?!このマンションは無期限に閉鎖され……』

 

「と、まあ、あそこのマンションは、今後はデビルサマナー達の狩場として使われるだろうな」

 

「私達、これからどうすれば……」

 

しゅんとして、俯く二人。

 

俺も男だ、美人がこんな顔をしているのは心苦しく思う。

 

「そこで、提案がある。うちの社員として働いてもらうことだな」

 

「社員……?」

 

「ああ、我が社、DDSnetの社員として働くことだ。デビルサマナーとしてな」

 

「えっ……?デビルサマナーというのは、危険なんですよね?」

 

怯えた表情を見せる真由子。

 

「危険だわな。いつ死ぬかわからない、切った張ったの殺し合いをするんだから」

 

「む、無理です、私にはそんなこと……」

 

「じゃあどうする?また一般社会に戻れると思うか?言っておくが、次も誰かが助けてくれるなどと思うなよ」

 

「そ、それは……」

 

俺はまくし立てる。

 

「いいか、あんたらはもうまともな社会には戻れない。一度悪魔と戦った者は、レベルが上がるんだよ。レベル0の一般人じゃないんだ、あんたらは」

 

「え、ええと」

 

「ありすだったか?あんたの娘。学校でいじめられてるよな?なんでも、ある日、いじめっ子が急死したんだっけ?何でだと思う?」

 

「……何が言いたいんですか?」

 

「ありすは、人を殺す魔法を覚えたんだ」

 

「あ、ありすは人を殺したりなんか!」

 

やはり人の親か、弱々しい雰囲気ながらも、怒りを見せる真由子。

 

「殺したんだよ!ありすは異能に目覚めてるんだ。ムドと言って、相手を呪い殺す魔法に目覚めたんだ!力の制御を学ばせなくちゃ、そこらへんの人間を殺しまくるぞ!」

 

「そんなこと……!」

 

「あるんだよ、あり得るんだよ!ありすはもうまともな人間じゃないんだ!」

 

「そ、それでも、私は、ありすをちゃんと育てて……!」

 

「無理なんだよ!おたくの娘は既に異能に目覚めた!ここで俺の傘下に入らなくても、次はもっとヤバい奴らが来るぞ!どうなると思う?ありすは連れ去られて戦闘マシーンにされ、あんたはありすと同じような強い子供を産むために産む機械にされる!」

 

「そ、そんな……!」

 

絶望しているようだが、それは事実だ。

 

「誇張じゃないぞ?ありすは、デスノートを持っているに等しい。それも、操りやすい子供だ。どんな風に扱われるか、言わずとも分かるだろう?」

 

あ、ってか、デスノートで通じるかな?

 

まあ良いや、通じるだろ。

 

「そ、そうだ、け、警察に!」

 

「良いんじゃないか?その場合、ありすは国営の組織に引き取られて、あんたとは離れ離れだが」

 

「そんな!どうして……!」

 

「良いか?デビルサマナーに関係する日本の国営の組織は四つ。宮内庁、ジプス、ヤタガラス、そしてクズノハ。だが、この四つはどれも、あんたらに手を貸すほど余裕がないんだよ」

 

「どうして、ですか?」

 

「まず、デビルサマナーってのは貴重な存在だ。一億二千万の日本人の内で、恐らく十数万人程だろうな。日本の警察官はおよそ三十万人いるそうだ。……デビルサマナーが人手不足なのは分かるな?」

 

「はい……」

 

「宮内庁については知ってるだろうが、天皇陛下をお守りするので手一杯」

 

宮内庁は、天皇陛下の霊的な防護の為の組織だ。一般人に構っていられない。

 

「ジプス……、Japan Meteorological Agency, Prescribed Geomagnetism research Department. は、日本を災害から守ることが仕事だ。一個人には構っていられないし、ムド系の能力者は危険人物としてマークされる可能性もある」

 

ジプスは、あくまでも災害から日本を守る組織だ。

 

「ヤタガラスは……、諜報メインで大して強くないから、後ろ盾としては弱い。その上金も持っていないから、異能者の保護なんてできない」

 

かつての政変で、事業仕分け(笑)によって予算を全カットされたヤタガラスは、可哀想なくらいに弱体化している。

 

「クズノハは……、アレは霊的組織の核ミサイルのようなものだ。人を守る組織ではなく、日本を乱す敵を斬る為の兵器のようなもの。守ってはもらえないだろう」

 

クズノハは化け物だ。多分、こうして人修羅になった俺でも勝てないだろう。

 

「つまり、あんたらを守ってくれる人間はいないの。お分りか?」

 

「そんな……!」

 

そんな!と言われてもねえ。

 

マジな話、もう詰んでる。

 

呪殺持ちの異能者は対天使用、つまりは対メシア教用の兵器として使われるに決まってるだろ。

 

最早、ありすは一生を殺人兵器として生きる他にない。

 

そもそも、覚醒したての異能者は力が安定していないから、ふとした時に異能を使ってしまうことが多々ある。

 

……と、ここまでは鞭だ。

 

これからは飴の話に移ろう。

 

「そこで、我々、DDSnetで雇ってやると言っているんだ」

 

「は、はあ……?」

 

俺は説明を続ける。

 

「うちは確かに、人手不足で、新興組織だ。だがしかし、他の組織よりはよっぽど良心的で、金もある」

 

俺は、高額な給料と、他の組織の悪行っぷりをアピールした。

 

プレゼンは得意じゃないんだが、実際問題、よその組織は大体庇いきれないレベルで悪いことをしてるから……。

 

そして。

 

「……ええと、では、DDSnetさんの目的は何なんですか?」

 

と聞かれた。

 

それについては、俺は、自信を持って答えられる。

 

「世界平和」

 

とな。

 

「は?はあ……?」

 

「世界平和だよ、真由子。我々DDSnetは、人々に仇なす悪魔を倒し、悪魔と戦う人々に武器や道具を売り、そこそこに利益を得ながら、悪魔と戦う人々を支援することが目的なんだ」

 

「えっと……?」

 

よく分かっていないようだ。

 

「そうだな、ところでスイスの兵役について知ってるか?」

 

となれば、例え話を混ぜて説明しよう。

 

「いえ……」

 

「スイスには、成人男性は皆、五ヶ月くらいの兵役の義務があってな。韓国なんかも徴兵制度はあるし、ベトナムやイスラエルもそうだな」

 

「つまり、どういうことですか……?」

 

「我々の世界は薄氷の上だ、砂上の楼閣だ。少し強い力がかかれば、まるでジェンガみたいに崩れ去る」

 

「……分かりません、何が言いたいんですか?」

 

「俺の、DDSnetの理想は、あらゆる人間が『デビルサマナー』や『異能者』になり、自助努力によって、世界の崩壊を逃れ……、また、仮に世界が崩壊したとしても生き延びられるように力をつけてもらうことだ」

 

俺は、俺の目的を語る。

 

「それ、は……、つまり、あらゆる人間に力を持たせたいと?そんなことをする必要があるんですか……?」

 

真由子は懐疑的……、いや、気狂いを見る目でこちらを見てくる。

 

「では、この資料を見て欲しい」

 

俺は、今まで、この世界にどれだけ悪魔による事件が起きていたのかを語る。

 

「これなんか知ってるか?自衛隊の後藤という男のクーデターだ。この事件の際には、下手をすれば日本に核ミサイルが落ちてきたぞ?」

 

「そんなまさか……」

 

「事実だ。シュバルツバースについても、悪魔事件だ。関東大震災すら、悪魔による事件のカバーストーリーだったと言われているんだ」

 

その話を、信じたのかどうかは分からないが、一旦飲み込んだ真由子は、俺に言った。

 

「……正直、信じられないお話ですけど、これが本当なら、理に適った考え方の組織だと思います。世界の裏側に悪魔がいて、悪魔と戦う人々に支援をする、ということですよね?」

 

「ああ、そうだ。だが、悪魔を悪用する組織もあるから、そう言ったところとは敵対するだろうな」

 

「……その時に、ありすに人殺しをさせることは?」

 

「積極的に殺人をさせるとは言わないが、暗殺者が来たり、たまたま街で出会ったりした時に、反射的に殺すことになるかもしれない、とだけ言っておこうか」

 

悩んでいる真由子。

 

「……私は、それで良いよ」

 

先程から話をずっと聞いていたありすが言った。

 

「ありす……?」

 

「お母さん、私、分かるの。この力は、ちゃんと扱わないと危ないって……」

 

ふむ?

 

「私がお母さんを守る。できるなら、お母さんのいるこの世界も守りたい。ねえ、おじさん、おじさんは、その為に、力の使い方を教えてくれるんでしょ?」

 

「ああ。何でも教えるし、生活するのに必要なお金もあげよう」

 

そして、と前置きして、言葉を続ける俺。

 

「ありす、君はあくまでも手札の一つだ、毎日戦わなくても良い。普段は家で勉強をして、テレビゲームをしたりスポーツをしたりして遊んでいて良いんだ。君は、君自身と、お母さんと、我々DDSnetに攻撃をしてくるものを倒せば良い」

 

「……うん、分かった。おじさんは私とお母さんを守る。私はお母さんとおじさん達を守る。約束する」

 

決意の篭った目を向けるありす。

 

幼いながらに強い意志の力を感じさせられる。

 

「ありす……!」

 

真由子がなにかを言おうとするが……。

 

「お母さん。多分もう、『普通』に戻ることは無理だと思う。だって、私……」

 

「ありす!」

 

「人を殺したんだもん」

 

今にも泣きそうな真由子を見ながら、ありすは言った。

 

「先月ね、私をいじめてた、クラスの女の子が言ったの。貧乏で可哀想ってね。それは良かった、けど、そのあと、そいつは、お母さんがちゃんと働いてないからだって……!だ、だから、私は、そいつに死ねって、死ねって思ったら、本当に死んで……」

 

「ありすっ!もうやめてっ!」

 

「私が殺したの!私は殺せるの!だから……、もう、『普通』には戻れない!」

 

その通りだ、ありす。

 

君達はもう、『普通』には戻れない。

 

 

 

『Lv7:人間(異能者):野母真由子

HP:71

MP:30

耐性:なし

力:5

技:5

魔:9

体:4

速:4

運:10

 

ジオ

セクシーアイ』

 

『Lv15:人間(異能者):野母ありす

HP:147

MP:88

耐性:なし

力:10

技:7

魔:15

体:6

速:8

運:5

 

ムド

子守り歌』

 




野母真由子
ありすの『母』親。

野母ありす
ハーフの少女。

今思ったんですけど、この主人公の動きって、閣下は見てるのかな?もし閣下が見てたら百パーセント手を出してくるだろうしなあ。

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