「我々、ヤタガラスとしては問題ないかと思います。本当に適正な仕事をさせるのであれば、の話ですが……」
俺は、ヤタガラスの宗方の前で、DDSnetの『デビルサマナー短期派遣計画』について説明した。
「どうですかねー?行けそうですかねー?」
「はい。ですが……、DDSnetさんの目的は?それにより、DDSnetさんはどのような利益を得るのですか?」
ふむ……、確かにそこを知ってもらうことは大事だな。
「利益?利益、利益……、そんなもの、ありませぇぇぇん!DDSnetはデビルサマナー、異能者、ペルソナ使いの強ォォい味方っ!強、い、て、言えばぁ!皆様が生き残り、強くなってもらうこと!それこそがッ!我々にとって最大のメリットオオッ!!!」
「は、はあ……」
『サラディンのシャムシール』、『ヤタガラス』、『生体エナジー協会』、『阿修羅会』、『星の智慧派』、『ファントムソサエティ』、『応龍會』……。
そいつらが集まっている場所で、俺は思い切りそう言った。
「さっきから聞いてりゃあよう、お前さん、巫山戯てんのかい」
おっと、誰かな?
「俺ぁ、阿修羅会黒田組の黒田八郎ってモンだ」
スキンヘッドに、頬に刀傷の男。
作画はグラップラーな漫画だ。
身長2メートルはあるだろうマッチョの巨漢だな。
「ははあ!阿修羅会!ヤクザさんですか!ワテクシ、任侠映画は好きですヨーッ!」
おっと襟首掴まれた。
「舐めとんのか、ごらぁ!テメエ、ガイアーズに通さねえでデカい商売やりやがってよお!そんでその上、デビルサマナーの味方だとお?!」
「舐めてませえええん!!!本気なのです!!!」
「大体にして、顔も見せねえで何様のつもりだこの野郎!!!」
「顔……?顔が見たいのですか?」
俺は、ピタリと動きを止めて、黒田の顔を見つめる。
「お、おお?!」
「顔が見たいのか。私のこんな顔を見たいのか!見たいのか!!!」
そして、ブチギレる演技をしながら、襟首を掴んでいる黒田の腕を振りほどき、麻袋の下の顔を見せる。
「お、おおお……」
「私の!!!顔が見たいのか貴様は!!!どうだ!これで満足かぁぁぁ!!!!」
そこには、拷問の痕のようなぐちゃぐちゃに切り刻まれ、焼かれた顔が……。
まあ、本来の俺はハンサムなんだが、今回はコロンゾンが変幻してくれてるから。
叫び散らしながら黒田を投げ飛ばす。
「……す、すまねえ、まさかそんな顔だとは」
これで、『DDSnetの営業部長は、力自慢の黒田を投げ飛ばすほどの腕力がある化け物で、精神が破綻している、見た目も化け物』すなわち底知れないヤベーやつと認識された。
俺は、激昂した雰囲気のまま、麻袋を被り直す。
すると、打って変わって明るい調子でまたペラペラ話し始める。
これにより、更に『アブネー奴』っぷりを知らしめて、今後の交渉でプラスになる……、と良いなぁ。
因みに、身体の制御はコロンゾンに預けているから、演技とバレない迫真さがあると思う。
「……であるからしてっ!ガイアーズもっ!メシアンも!ヤタガラスも!顔と家族を失ったワテクシを、弱者を助けてはくれなかった!ならば、在野のデビルサマナーを強化して、ワテクシのような『可哀想な人』を増やさないようにしたいっ!それこそがDDSnetの目的なのですっ!」
ペラ回した。
すると、ヤタガラスの宗方は……。
「顔無しさん」
「ハイ?」
「まずは、貴方の力になれなかった不甲斐ない我々について、謝罪を。……DDSnetさんの、『悪魔被害者を減らすために在野のデビルサマナーを強化したい』という目的、よく分かりました」
「オオッ!分かって下さいますかッ!」
「そう言った目的であれば、我々ヤタガラスは、協力できると思います。具体的には、デビルサマナー向けの依頼をDDSnetさんに出せば良いのですね?」
「はあぃ、そのトーリですっ!依頼につきましては、極力塩漬け状態にならないように、不人気な依頼はうちの人員を使ったり、依頼料を上乗せさせていただいたりなどの処置をする予定でぇす!」
そう言って俺は謎のポーズを決める。
「ハイッ!ご質問はっ?!!」
さあ、質問は?
「ふむ……、良いだろうか?」
「ハイ、なんでしょーか?」
話しかけてきたのは白髪に赤い瞳の男。吸血鬼っぽい印象を受ける中年の男だ。
「生体エナジー協会のジェイク・リューマーだ。我々はDDSnetのボスを呼んだはずだが、何故営業部長が?そもそも、デビルサマナー組織に営業部長などというものがあるものなのか?」
「ハハッハー!良い質問です!まず第一に、うちのボスはとーってもとても怖がりなんでぇす!『ガイアーズ全てと戦ったら勝てない』とのことで、顔を見せたくないみたいです!」
本心だ。
「ふむ……、勝てない、つまり、負けるとは言わないのか?」
「さあ?その辺りはワテクシにはなんとも……?アッ、因みに、ワテクシは後方勤務のものでございます!平社員の中でもそこそこ使えるってことで、営業部長に大抜擢の大出世!ありがたいことですねぇえ!!!」
「(となると、その言葉を額面通りに受け取ると、平社員の一歩上……?いや、幹部補と言ったところだろうか?このレベルの強さの人材を、切り捨てても惜しくないというのか?)」
とか思ってるんだろうなあ。
「分かった、ありがとう」
「ハイッ!他には?」
「なら……、良いですか?」
「はい!」
おっと、次は誰だ?
「私は、サラディンのシャムシール日本支部の長、ラティーフと申します」
天パの黒髪、茶色い肌、優しげな男だ。いつも笑ってるように見えるような顔をしている。爽やかアラビアン青年って感じだ。
「無辜の民を守る為に、フリーのデビルサマナーの力になりたいという目的は、とても素晴らしいと思います」
「はぁい」
「ですが……、そのような素晴らしい組織があれば、我々の耳にも届いているはず。貴方方DDSnetはいつ頃からある組織なのですか?」
「はいはいはーい!確かに、始動したのはここ最近ですが、組織自体はそれなりに昔からあること、そして、母体はフリーのデビルサマナーの集合体、相互組合だということは告げておきまぁす!」
「(となると、結束力は低いのかもしれない?そこが付け入る隙だろうか……?)」
なんて考えてるんだろうなあ。
「分かりました。これから友好的な関係を築いていけると良いですね」
「はあい!」
次は?
「ハイ、応龍會の朱凛風(シュウ・リンファ)、質問あるアルヨ」
「ハイ、何ですかー?」
うわ、『アルヨ』だってさ。
あからさまに中華だ。
黒髪にシニヨン、赤地に金色の龍のチャイナドレスのあからさまに中華な美女。因みに平胸のロリだ。足も小さい。纏足ではないようだが……、儚げな雰囲気の理想的な中華美人だな。
「私達、応龍會は、アジアの政府筋ともご縁がアルネ。中国のお偉いさんは昔から不老不死の霊薬を求めてるアルヨ」
「オオッ、秦の皇帝ですかっ!水銀ですかっ!」
「まあ、そういう事アルナ。なんかそういうアイテムはあるアルカ?例えば、ソーマとか……」
おっ、カマかけか?
「流石にソーマは厳しいですが……、もしもその手のアイテムが手に入れば、DDSnetのネットオークションに出品しますねッ!」
「(ふーん?厳しいけど出せないとは言わないアルカ……?まさかソーマを売る?いやそんな馬鹿なことをするアルカ……?)」
とか思ってるんだろうなあ。
「他にはっ?」
「じゃあ、良いかしら」
おお、銀髪ストレートロングヘア、真っ白な肌の切れ目の青い瞳。もうちょっと髪が短ければあるるかん!とか言い出しそうだな。服装もこれまた綺麗な白のドレス。
そんな美女が質問してくる。
「ファントムソサエティ日本支部のクラリッサよ。直球で聞くわ。あれだけの物資、どこから持ってきたの?」
「はははのはー!その辺りは企業秘密でぇす!我が社の生命線ですもんで!ですがまあ、日本国内でもそーとーな人数を動員しているとだけ!」
「(相当な人数を……?恐らくは数千単位?日本にいるファントムソサエティの戦闘員が千人くらいね……、確かに、うちも千人全員をマジックアイテムの収集に費やさせると、数百単位の魔石を確保できないこともないわ……。でも何かタネがあるはずよ……)」
とか考えてるだろうな。
「星の智慧派さんは?」
「フフフ、我々は特に何もありませんよ……」
分かんねえや、怖いな。
スターマインと名乗る白人の金髪の神父風の男が代表らしいが、何を考えてるのかわからん。
「では、質問はないようですので、ワテクシは!何もない部屋にっ!愛する家族がいないクソッタレな一人部屋にっ!帰りますすすっ!!!」
「はーい、サマナー!」
「こちら、送迎用のモーショボーちゃんですっ!可愛い可愛い可愛いでしょ!ワテクシの娘もこれくらい可愛かったんでしたよっ!まあ、もう死んでるんですけどけどけどねー!!!!それじゃ、グッドバイバイでございますよー!!!!」
トラポートで帰る。
トラポートはレアな魔法だ。
これで更に、DDSnetは只者じゃないですよというアピールをする。
さて、どうなるか……。
どっちかって言うとこの話は、DDSnetと言う巨大勢力が現れた際の世界の動きについて書きたいんですよね。
web版オーバーロードみたいな話になりそうかなあ。