石神町、石神稲荷神社から徒歩で一時間の地点にある駅から、電車で三十分。
日本最大級の繁華街である、銀座……。
なんと、この銀座に、DDSnetの支部があるらしいのだ。
DDSnetの支部は、各都道府県に二つ三つくらいはあるそうで、支部の数は120を超えるらしい。
120の支部と三千人を超える構成員を持つ大組織……、それがDDSnetだ。
そんなDDSnetは、帝都こと東京と、旧都こと京都を中心に、日本各地に支部がある。
東京の四つの支部のうち、最大のものが、ここ……。
「ミルクホール新世界……!」
ミルクホール新世界である。
ミルクホール新世界は、どことなくレトロな雰囲気で、なおかつ、シックで落ち着いた感じの綺麗で大きめのカフェバーである。
全国的にチェーン展開されているらしい。
簡単な食事から、飲み物、お酒まで、なんでもいつでも提供される飲食店だ。……表向きは。
その実……、本当は、デビルサマナー、異能者、ペルソナ使い……、そう言った存在が集まるギルドである。
覚醒したての異能者の駆け込み寺であり、初心者デビルサマナーの訓練のために異界を無料で開放していたり、訓練を手伝ってくれたりなどもする。
とにかく、入ってみよう。
「こんにちわー」
「いらっしゃいませ」
色素の薄い金髪をオールバックにした、鋭くてスタイリッシュな雰囲気のお兄さんが、コーヒーメーカーを磨きながら、こちらを一瞥して言った。
私は周囲を見回す。
入り口。シックな木製のドア。
カウンターテーブル。ピカピカに磨かれた清潔なテーブルと、革張りの椅子。
棚。お酒が並ぶ。詳しくはないので分からないけれど、高級そうに見える。色々なボトルがあるのに、雑多な感じはせずに、上品な感じがする。
壁。メニューがある。今日のオススメはカツサンドだ。
お客さん。皆、不自然に楽器ケースやスーツケースを抱えていると言う共通点はあるけれど、性別も年齢もバラバラ。
マスター。ヤンキー風のアメリカ人男性に見える。しかし、ぴっちりと清潔な服を着崩したりせずに着ているので、ヤンキー風なちょいワルイメージの上に誠実そうな雰囲気を醸し出している。
「あの、マスターさん」
「はい、ご注文は?」
「私はデビルサマナーです」
私が小声で伝えると……。
「なるほど」
マスターさんは頷いた。
「私は、DDSnetのルーファスです。新たなデビルサマナーの誕生をお祝いします」
そして、マスターさんは、私の前にノートパソコンを差し出す。
「スマートフォンはお持ちですか?」
「あ、はい」
「それでは、こちらにメールアドレスの入力を」
メールアドレス、と。
あ、何か届いた。
このURLにアクセスすれば良いのかな?
「このアプリは……」
「DDSnet専用ブラウザです。こちらから、依頼の受注、デビルサマナー専門店の捜索、異界や悪魔の情報収集や、掲示板にアクセスすることなどが可能です」
なるほど……。
「なお、依頼の受注は、ここ、ミルクホール新世界からでも可能です」
「はい……、じゃあ早速、依頼を見せてもらえますか?」
「その前にこちらの測定器でレベルを測ってください。それに対応した依頼をおすすめします」
なるほど、安全のために、レベルごとに受けられる依頼が違うんだ!
測ってみよう。
「私のレベルは8でした」
「となると、この辺りの依頼でしょうか」
《各種宝石買取
成功報酬:一つにつき百万円
依頼者:DDSnet》
《各種アイテム買取
成功報酬:そのアイテムごとにDDSnetの販売アイテムの値段額の八割
依頼者:DDSnet》
《未管理異界の見回り、悪魔の間引き
成功報酬:一万円
依頼者:ヤタガラス》
《妖精:ピクシーの買取
成功報酬:十万円
依頼者:サラディンのシャムシール》
《マグネタイトの買取
成功報酬:1MAG=100¥
備考:マグネタイトバッテリー貸し出し
依頼者:生体エナジー協会》
へえ……、こんな感じなんだ。
「このうち、ピクシーの買取以外は常設の依頼です。おすすめは、見回りの依頼を受けながら、悪魔と戦い、宝石やアイテムを拾うことですね」
なるほど、それなら、一日一万円は手に入る計算だ。それくらいのお金があれば、ギリギリ生きていくのには困らない。
「そして、レベルの上昇を認められれば、よりハイリスクハイリターンな依頼も受注可能になります」
そうなんだ!
「大体、レベルが20にもなれば、月に百万円を稼ぐことも不可能ではありませんよ」
「ほ、本当ですか?!」
凄っ!
「では、早速依頼の方、受注致しますか?」
「はい、よろしくお願いします!」
「では、依頼の前にこちらを」
目の前にピンク色のソーダが出される。
「これは……?」
「サービスのミラクルソーダです」
「ミラクルソーダ?」
「こちらは、DDSnetの技術により作成された、魔法的な薬品を配合したジュースです。約二週間の間だけ、特定の能力を伸ばすことができます」
「え?!えっとその、ふ、副作用とかは……?」
「ありません。もしも万が一何かあれば、DDSnetにご連絡ください。……このミラクルソーダは、飲めば運のステータスが3上昇します。宝石やアイテムが手に入る確率が上がりますよ」
うーん……。
「おい、嬢ちゃん」
「はうぇい?!!」
後ろからいきなり話しかけられた。
「飲んでおいた方が良いぜ?初心者は、これを飲んで宝石をいかに集められるかで、今後が決まるからな」
「あ、貴方は……?」
「おう、俺ァ、デビルサマナーの堤ってんだ」
「あっ、そっ、そんなに大きな声でデビルサマナーだなんて!」
「はははっ!構わねえよ!この店にいる、デカい楽器ケース抱えた奴らは、全員デビルサマナーだからな」
「えっ、そうなんですか?!」
「おうよ、ほら、見てみろ」
堤さんが、楽器ケースを開ける。
その中には大きな斧とオートマチックのピストルが入っていた。
「これは……!」
な、なるほど、こんな感じで武器を持ち歩いているんだ。
「因みに、銃刀法で捕まったら、ちゃんとデビルサマナーですって言えよ?そうすりゃすぐ釈放される」
「え?!そうなんですか?!」
「ああ、一応、警察の上の方はデビルサマナーの存在を知っているからな。何かあればDDSnetを頼れ」
そうなんだ……、意外と、デビルサマナーっているんだね。
よし、じゃあ、早速……。
「マスターさん、ありがたくいただきます」
サイダーを飲んで、と。
「異界、行ってきます!」
「ええ、お気をつけて」
誰か養ってくれ。