ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ウーバーイーツでラーメンを頼んだ。

やっぱり店で食った方がうめぇな。


39話 金持ちを釣る

「非礼を詫びよう!そんなつもりはなかったんだ!」

 

あーはいはい。

 

「……今回、こちらに話を持ってきた理由は、皆様に支払い能力があると聞いたからです。対価を払えるならば、我々としては誰に話を持っていっても構いません。皆様が話を聞くというのであれば、話しましょう」

 

顔無しだが、ふざけた態度は改めたままだ。

 

顔無しというキャラクターは、普段は不気味なふざけた奴だが、ブチ切れるとまともになるという設定だからな。

 

圧迫感を出しながら、金持ち共を少し威圧しつつ、商談を続ける。

 

俺は、COMPから悪魔を……、機械(マシン)を呼び出した。

 

呼び出したのは、『クグツ』『ビットボール』『T93G』『T95C/P』『人型造魔』だ。

 

クグツが一番安く、人造造魔が一番高価……、となっている。

 

見た目については、クグツはメイドロボットで、人型造魔もメイドだ。

 

「こちら名前を、左から『クグツ』『ビットボール』『T93G』『T95C/P』『人型造魔』となっており、右に行くほど強いです」

 

「ま、待ちたまえ」

 

ん?

 

「何か?」

 

「一番右は、その……、どこからどう見ても人間の女性なのだが」

 

ふむ、人型造魔が人間に見えるか。

 

確かに、俺がそうなるように設定したからな。

 

「ええ、そうですね。実際、人に近い存在ですよ。ですが……、見た目と強さは比例しません」

 

俺は、プロジェクターを操作して、人型造魔の戦闘シーンを写す。

 

『……《ジオ》』

 

人型造魔が手を翳し何事かを呟くと、掌から紫電が迸り、標的である雄牛を焼いた。

 

レベル0の雄牛が、悪魔の魔法たる『ジオ(電撃)』に耐えられるはずもなく、大きな断末魔をあげると、焦げた肉体を横たえた。

 

雄牛は、口の端から血の泡を吐き出し、失禁しクソ小便を漏らしながら、感電死特有の痙攣をしている。

 

牛とは言え、この死に様はトラウマ級だ。

 

その他にも、人型造魔が銃で撃たれた後に立ち上がるシーンや、パンチで雄牛の頭蓋を砕くシーンを映した。

 

雄牛は、日本の角を折られた肉牛ではなく、立派な体格の闘牛用の雄牛だ。

 

それの突撃を片手で止めて、フックで角ごと頭蓋を凹ませたり、片手で角を掴んで投げ飛ばしたりする。

 

時速百キロ越えの自動車を正面から受け止め、走る馬と並走して、海外の崖で命綱なしのボルダリングをして……。

 

これを見ると、人型造魔の性能を疑う奴はもういなくなった。

 

人型造魔の能力は、およそレベル25相当。

 

金持ちのボディガードにしては上等過ぎるな。

 

その後は、他のマシンも紹介する。

 

『T93G』『T95C/P』は、両方とも銃火器が取り付けられているので、銃刀法がどうこうみたいなツッコミもされたが、嫌なら買うな!の一言で終わり。

 

注目されたのは『クグツ』『ビットボール』『人型造魔』だな。

 

クグツは、言ってしまえば単なる動くマネキンなんだが、ソフト面が優秀なので、結構いい動きをするんだよ。

 

少なくとも、最安価モデルのクグツでも、レベル5相当の力はあるな。

 

レベル5とは弱そうに聞こえるかもしれないが、ここにいる金持ち共が普段雇っている人間のSPの数倍は強いぞ?

 

最高価格のクグツはほぼアンドロイドだな。

 

クグツは、自意識は殆ど無いんだけど、プログラムをインストールすれば人間に近い行動が取れるようになるぞ。

 

だが、どんなに頑張っても、心は作れなかった。

 

調べたところ、桐条グループなる会社が、『アイギス』とかいう心を持った機械を作り出すことに成功していたらしいが、今はもう無いしな……。

 

どうやら、死の化身たるニュクスなるものと、高校生のペルソナ使い達が戦って、命を引き換えにどうにかしたらしいのだが……。

 

まあ、厄ネタは昔からあったって事だな。

 

心の創造は今後の課題って事で。

 

うーん……、俺の予想では、『他人に服従する』と『心あるもの』という背反した存在は、根本からして矛盾しているから無理なんだと思うんだが……。

 

うん、とりあえず、その辺は後で。

 

で、ビットボールな。

 

これは、空飛ぶ鉄の玉。

 

カメラと電気銃がついている。

 

大きさは直径60cmくらいか。

 

レベル的には5あるかないかくらいだし、稼働時間も四時間の充電で八時間と短めだ。

 

だが、このビットボールには利点がある。

 

まず、安い!

 

値段は標準モデルでも、たったの八十万円!

 

クグツは最安価モデルでも軽自動車並みの値段がするのだが、それと比べると半分くらいの値段だ。

 

次に優れているのは、武装が銃じゃないってところだ。

 

ビットボールに搭載されているこの電気銃は、『ジオ(電撃)』のメカニズムを研究し、科学的に再現したもの。

 

魔法ではない故に、威力そのものはジオに劣るが、服の上からでも電撃を浴びれば感電するくらいの攻撃力を持っている。

 

つまりは、テーザー銃よりも信頼性が高い訳だ。

 

非殺傷型の制圧武器ってのは、イメージを大事にする企業様にとっては喜ばしいそうだ。

 

人型造魔については……、まあ、そりゃ人気も出るわな。

 

人間にできることは全て可能で、心を持たず、一流のデビルサマナーを超える実力を持つ……。

 

そりゃ誰だって、欲しくない訳がない。

 

しかし、値段が五十億円と言うと、全員が難色を示した。

 

けど……、レベル20を超える一流どころのデビルサマナーを雇うとすると、一日で数百万円は要求されますよ、と。

 

俺がそう言うと、金持ち共は一旦身を引いたが……。

 

まあ、俺の忠告を無視して、変なデビルサマナーを雇って痛い目を見るのは構わない。

 

そうなるとむしろ、モグリのデビルサマナーは信用できない!DDSnetのデビルサマナーが一番!と広まる訳だからな。広告費を払ってやっても良いくらいだ。

 

『T93G』『T95C/P』については、現状ではまだ良いかな……、みたいな人が多かったが……。

 

だが、ただ一人、買うと言った金持ちがいた。

 

「いや!儂は買うぞ!『T93G』『T95C/P』をな!銃刀法など、すぐに有名無実化するに決まっとるわ!」

 

と矍鑠としたハゲ爺さんが言い放つ。

 

「蔵敷会長?!し、しかし……!」

 

「そ、それは少し、お待ちになった方が!」

 

周りの他のお偉方は、やんわりと反対の意を伝えてくる。

 

蔵敷……、蔵敷と言うと、日本でも五本の指に入る総合商社グループ、『蔵敷グループ』か?

 

コンビニ『トリプルセブン』なんかの運営会社として有名だな。

 

「儂は、この前に西日本の支社に視察しに行った!その時、暴れ回る悪魔と鉢合わせたんじゃ……。その時は、うちの秘書が、命がけで儂を逃してくれた……!」

 

蔵敷会長の頬に涙が伝う。

 

「分かるか?!儂の秘書は、まだ三十だった!あんな若造が、儂のような老いぼれを逃すために……、犠牲になった!!!こんなことは、二度と起きないようにせにゃならん!!!」

 

ふむ、確かに、そんな報告があったな。

 

蔵敷グループ会長、『蔵敷源次郎』は、先日、西日本の支社に視察しに行った時に悪魔に襲われた、と。

 

「良いか?!儂が見た悪魔は、大きさ五メートルにもなるけむくじゃらの化け物じゃった……。そいつが腕を振り回すと、警官達は紙屑のように吹っ飛ばされた!警官の拳銃なんてものはこれっぽっちも効かなかった!」

 

確か、暴れている悪魔は邪鬼ウェンディゴだったそうだな。

 

「銃が気休めにしかならない化け物が現れるようになったこの世界で、銃刀法など言ってられんわ!そして!あんな化け物から社員を守れるなら、いくらでも金を出すわい!」

 

ふむ。

 

「こちらのデータによりますと、蔵敷会長を襲ったのは『邪鬼:ウェンディゴ』になります。所謂雪男ですね。特徴としては、冷気を自在に操り、毒ガスを吐き、怪力を持ちます。この個体はレベル23だったそうです」

 

「なんと……!つまりは、一流の強さだった訳じゃな……!」

 

と、蔵敷会長が言った。

 

「この悪魔を召喚した犯人は、『なんでも良いから社会をめちゃくちゃにしたかった』とSNSに投稿した後に、自らの命を捧げて悪魔を召喚。その後、街に放って暴れさせたそうです」

 

「な、なんて……、なんて奴だ!!!そんな奴に、儂の秘書は殺されたと言うのか?!許せんっ!!!」

 

憤る蔵敷会長。

 

あ、あらかじめ言っておくが、蔵敷会長に仲間になって欲しくてわざと悪魔に襲わせてー、みたいな黒幕ムーブは一切してないぞ。

 

マジで、DDSnetの手に負えないくらいに事件が頻発してるんだよな。

 

まあ、規模や回数は頻発ってほどでもないのかもしれないが、いかんせん距離の問題がな……。

 

インターネットの繋がる地域全てに悪魔召喚プログラムが無差別に配布されたんだから、インターネットが繋がる地域全てを警戒しなきゃならない。

 

うん、無理だね。

 

職員をあっちこっちに派遣しているが、とてもじゃないが手が足りない。

 

DDSnetの職員数は、合計で三万人を超えたが、実際に事件解決に当てられる戦闘職員は一万人ほど。

 

たった一万人。

 

戦力的にと言うより、物理的にカバーしきれない。

 

現在は、大都市にのみDDSnet職員を配置して、過疎地域などは実質的に切り捨てているという現状だ。

 

俺達はスーパーヒーローじゃない。全てを守ることはできない。

 

なので、より人が集まっている大都市を守る。

 

そもそも、俺達は神様じゃない。

 

だから、人の命を数で評価する。

 

頭がいいとか顔がいいとか、そうやって俺達が人を評価することはない。

 

この世界はダービースタリオンじゃないし、『良い人だけの国』を作るなどととも言わない。

 

俺達は、常により多くの人を助ける道を選ぶ。

 

一人を見殺しにして十人を助ける。

 

その一人が天才だろうがなんだろうが、十人を、より多い方を助ける。

 




傭兵
「優秀な奴を取り立てて、無能は切り捨てる。その基準は俺が決める。気に食わない奴は皆殺し」→Dark-Chaos
傭兵は他人の人格は否定しないんですね。心を折る楽しみを得る為に、相手を知ろうとすらします。心から服従させ、自分の為に命を捨てるように洗脳すらする。けど結局は、暴力で全てがどうにかなると思っている人面獣心の化け物。

DDSnet
「その生命が優秀かどうかなんて評価できないから、とにかくより多くの人を助ける」→Neutral-Neutral
こいつが一番まともなんだよなあ……。

ガチャ
「お前らは全員平等に無価値だから、俺の為に身を粉にして働くという法を与えてやる」→Dark-Law
自分以外は全員NPCか何かだと思っているサイコパス。他者の人格とかどうでも良いし、共感性とかも一切ない。こいつ多分、レクノアとか近しい人が死んでも「あっそう」の一言で済ませるぞ。



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