クァーリーはあります。
よっし、次は水と食料だな。
近くに岩場と河原があるのを発見したので、そこで水と川魚でも得るか。
まず、岩を殴って破壊します。
持ち歩いてる作業台で加工して、石の水瓶を作ります。なんか知らんけど、石のブロックをノミで突くと水瓶になった。
そこから水を汲んで使います。
「……やっぱりこれ、ワールドクリエイターの仕様のまんまだな。水瓶から水を汲んでも、水がなくならない」
無限水源と言って、ワールドクリエイターで水瓶をクラフトして水を入れるか、同じ穴に二回水をぶちまけるかすると、無限に水が湧き出て、何故か淡水魚海水魚両方が棲める謎の水場ができる。
物理法則?知らない子ですね。
さて、俺の格好は、ワールドクリエイターの主人公であるクリエイターが最初に着ている青い布の半袖服と茶色い長ズボン、靴下、革靴である。
靴下と革靴を脱いで、ズボンの裾をまくり、川に入る。
ゲームのグラフィックと同じように、主人公である俺のズボンは、割と裾が広く、裾がまくれる。冬は寒いだろうな……、防寒着についても考えなきゃならんか。
「ちべたい!」
この世界は今、春くらいだと思う。少し肌寒いし、水も冷たい。
が、川魚はいっぱいいるし、水も綺麗だ。
「そぉい!」
川魚を掴み取ると、インベントリに《ニジマス:1》と表示される。
あっ、ニジマスなんだ。
ニジマス美味しいよね。
でも塩をどうすりゃいいのか……。
取り敢えず焼いて食おう。
刃物もないから内臓捨てたりもできないし、肉の部分だけ食って捨てるか。もったいないけど仕方ない。
えーと、火は拾っておいた火打ち石でいけるかな?
木材ブロックに火打ち石を使うと……、うおっ!焚き火になった!
………………。
ひょっとしてこれ、こうすれば……。
本来なら、鉄の串に刺したりとかしなきゃ魚は焼けないのだろうが、ニジマスを焚き火に使おうと、ニジマスを持った手を火にかざすと……。
ポコっ。
「おおっ!」
ニジマスは、どこからか用意された鉄串に刺さったまま火元にかざされており、物凄い勢いで焼けていく。
三十秒程で焼き魚になった。
「あむ……、塩味?!!」
何故か塩が付いている。しかも、内臓も取り除かれている。
これがクラフトか。
ついでに、拾ったジャガイモも焚き火に放り込むと、何故か芋が棒に刺されて焼かれた状態で出てくる。
「……じゃがバターだ」
塩胡椒で味付けされたじゃがバターの味がした。塩胡椒とバターどっから来たんだよ。
うーん?
これ、オレツエーってやつじゃねえのか?
焚き火を始末して、石を根こそぎ集め、一旦帰宅する。
取り敢えず、石のシャベルとツルハシ、クワ、剣と弓矢を作っておく。
それと、かまども作った。
そして、空を飛んでいる鳥を射殺す。
弓は久し振りに使うが、何とか当てられた。
鳥は80cmはあろうかというデカい鳥のモンスター、『ウインガー』だ。
ウインガーは、ワールドクリエイターの世界にバニラでいる鳥のモンスターで、ウインガー肉と羽毛が取れる。
ウインガーは鶏より脂が乗って美味いという設定があったっけかな?公式ガイドブックにそんなことが書かれていたような……。
さて、獣の解体をせにゃならんな、と思って、撃ち落としたウインガーに近づいて、死体に触れると、またもやポコっと音がした。
すると、ウインガーの肉は、部位毎に分けられて、耐水性のある紙に包まれた肉になり、手羽、ささみ、もも肉、せせり、ハツ、砂肝、レバー、げんこつ、皮などが取れた。羽毛のブロックが三個も付いてきた。鳥の骨も得た。それと、モンスターを倒した時にドロップする魔石も。
ほーん?
そう来るのね、はいはい。
作業台で鳥の骨をクラフトすると、骨粉肥料に。
俺は作業台に備え付けてあるトンカチで骨を叩いただけなのに、何故か乾燥した骨の粉が五キロくらい、紙袋に入って出てきた。質量保存の法則って言葉知ってる?
その辺の土を石のクワで耕す。一回クワを地面にぶっ刺せば、ザクッという音と共に50cm四方の土が肥沃な畑に早変わりする。どういうこったよ。
その辺で拾ってきた野菜の種を使う。農家なんで植え方には気を遣おうと思ったが、種を持ったまま土を穿ると、ポンっと種が埋まった。
無限水源を畑の隣に設置すると、みるみるうちに乾いた畑が湿り気を帯びて、即座に芽が出るので、そこに骨粉肥料をばら撒く。
ポコっ。
「………………」
一瞬で野菜が育った。
うーん、これは酷い。
手に入れた羽毛と木材でベッドを作り出して、新鮮な野菜を洗ってから丸かじりして、かまどにウインガーのもも肉を放り込む。
すると、三十秒程で、塩胡椒の焼き鳥が六本できちゃった。
それを食ってから、その辺に串を捨てて、俺はベッドで寝る。
もう訳が分からん。
寝れば元の世界に帰れるやつじゃないのこれ?
そんなことはなかった。
普通に異世界で次の日を迎えた俺。
かまどでジャガイモを焼いて食う。
水瓶から水を汲んで、木のコップで水を飲んで、その辺の枝を加工して《木の歯ブラシ》にして歯を磨き、木の歯ブラシをインベントリ内のゴミ箱に捨てる。
「うーん……」
元の世界に帰る、か……。
元の世界に帰りたい気分は大きい。
おじさん、現代っ子なもんで、ネットなしの環境とか嫌なんだよね。
でも……。
水瓶を覗き込む。
「……どう見たって、十六歳くらいの頃の顔だよなあ」
異世界転生。
そう、異世界転生なのである。
現在の俺は、若さ大爆発の十六歳前後の肉体に生まれ変わってしまっている。
このまま帰ったらバリバリ怪しい。
まあ、仮に、元の世界に帰るとしたら……、時空間移動MODしかあるまい。
時空間移動MODは、SF系MODシリーズの最高峰のものの一つで、馬鹿みたいなエネルギー量と、数多の工作機械で作り出すポータルゲートを使って、別の次元に転移するものだ。
具体的に言えば核融合炉と量子コンピュータ、物質創造機と次元連結システムを使って作るんだが、そこまで行くのに遠い遠い。
一応、魔法ファンタジー系MODとの互換性もあり、核融合炉を賢者の石に置き換えたり、量子コンピュータをアカシックレコードに置き換えたりもできる。まあ、そうなると魔力変換コンバータやらが必要になってくるのだが……。
まあ、魔法MODでも、極めれば時空を超越することくらいはできるな。
ワールドクリエイター世界での俺のキャラクターは、時空間を支配し、星を消し飛ばし、多次元世界を行ったり来たりする大魔導師にして、開拓船団を指揮し、スペースコロニーを作り、当たると緑化されるビームで星々を開拓したクラフターでもある。
惑星丸ごと一つを要塞にしたり、バハムート牧場を作ったり、不老不死の女の子しかいないハーレム惑星を作ったりなど、好き放題やった。
先のことは分からないが……、この世界に、俺の追加したMODが存在すると考えれば、レシピ通りにやれば、次元を超えて元の世界に戻れるかもしれない。
でも、まずは、自衛のために力をつけなきゃ駄目だ。
ウインガーがいるってことは、モンスターがいるってことだ。
モンスター追加MODが有効だとしたら、山よりでかいモンスターだっていることになる。
とりあえずは、強くならねば。
果たしてこれは面白いのか?
自問自答する日々。