「あ、あのう、いきなり逃げてきた身として、このようなことを言うのは心苦しいのですが……、どうか、食べ物を分けてもらえないでしょうか……?」
カラカルの男、名前はカール。
そいつが、またもや申し訳なさそうな面で言った。
「はあ?しょーがねーなー!働きもしない村人に飯をやるのは嫌なんだが、今後真面目に働くと約束するなら特別に!特別に食い物を恵んでやらないこともないんだがなー?」
一応、ここでマウントを取っておく。
「は、はい、一生懸命に働くので、どうか……」
「ふん、全員集めろ、飯をくれてやる」
「あ、ありがとうございます!」
避難民十人は、全員、碌に食事をしていなかったらしく、皆痩せ細っている。
俺は、そんな避難民の前で、畜舎の牛の首を斬り落とす。
「ああ!まだ若い牛を……!なんと勿体ない!」
元は牛飼いだったと言う、セントバーナード風の特徴を持つ垂れ耳の犬獣人の大男、バーニィが嘆く。ってかお前、めっちゃ声低いな。
俺は、牛をアイテム化する。
ふむ……、どうやら、ゲームの世界と違って、手に入る肉の量が多いな。
ゲームでは、牛を殺しても、精々三、四個の《牛カルビ》、《牛ホルモン》、《牛ロース》、そしてレアドロップで《牛サーロイン》が手に入る感じだった。
しかし、この世界では、各種牛肉が、レアドロップであるはずのサーロインを含めて、5kg程の肉の塊が三、四十個近くドロップするようだ。つまり、現実に即した量のアイテムが出る訳だ。
けど、増えることはあっても減ることはないらしく、拾ったアイテムで見た目よりも手に入る数が減るケースはなかった。
「いや、牛は食う為に育ててるんだよ。お前は牛飼いなんだろ?解体はできるか?」
「ああ、はい、できますが……?牛を食べるためだけに育てているですと?なんともまあ……。乳を絞ったり、畑を耕すのに使ったりしないのですか?」
「ん?あー……」
俺、農家だったけど、牛で農作する方法なんて知らねえや。コンバイン使ってたし。
「じゃあ、家畜は好きに使え」
「わ、分かりました、家畜の管理はお任せ下さい!……その、ですから、食べるのは老いた牛にしましょう。数に限りがありますので……」
は?
「いやいや、牛なんざいくらでも増やせるだろ。ほら」
俺はインベントリから《干し草》を取り出して、牛二頭に与える。
「ンモー!!」
ポンっ!と言う軽快な、シャンパンの蓋を開けた時のような音と共に、子牛が一匹。
「………………は?」
「ほら」
ポン!ポン、ポン!
瞬く間に、子牛が十頭増えた。
そして、その子牛に干し草を与えると、またもやポン。
「「「「モー」」」」
子牛が成長した。
「まあ、こんな感じで、牛なんざいくらでも増やせる」
「あ、ああ……、大神ゼロよ……」
バーニィが跪いてなんか言ってる。
「やはりジーク様は……」
「大神ゼロの現し身……」
「あれこそが権能……」
ごちゃごちゃ言ってる村人を連れて、とりあえず、こいつらが風呂に入っている最中に作っておいた宿舎に入れる。
宿舎の調理セットで、《ビーフストロガノフ》と《コッペパン》、そして《牛乳》、それと《シーフードサラダ》を用意する。
パンはさておき、ビーフストロガノフには玉ねぎが、シーフードサラダにはイカが、牛乳もそもそも、犬猫にはあまり良くないものだ。
これらを食わせて、反応を見ることにする。
「お、おお!おおお……!」
あ、カールとバーニィが泣き出した。
やっぱり駄目なのか。
「残念ながら、他に食事は用意してやらんぞ。玉ねぎやイカを食ってどうなるか実験を……」
「我々のためにわざわざ若い牛を潰してくれただけでなくっ!このような上等な料理を用意してくれるとはっ!」
は?
「神様、ありがとうございます!」
「はぐっ、もぐもぐっ!」
「こらこら、そんなに急がないで良いのよ……?うう、良かったわね、お腹いっぱい食べさせてもらえるだなんて……」
あー?
あー……。
「ええと、ここにある鍋の分は食べて良いぞ……?」
ケイトを呼び出す。
「はい?ジーク様、どうしました?」
「お前らって、玉ねぎ食えるの?」
「玉ねぎって何ですか?」
インベントリから玉ねぎを取り出す。
「これ。犬猫は食えないものなんだけど」
「くんくん……、はい、食べれると思いますよ?色は違いますけど、これってオラニエですよね?オラニエは香味野菜として、煮物料理に入れたりしますね」
あっ、そうなの。
「あと、イカって食って良いもんなの?」
「イカ?」
インベントリからイカを取り出す。
「えーっと、これって、クラーケンの子供ですか?クラーケン、たまに人魚族が大規模な狩りをして捕ってくるんですけど、コリコリしてて美味しいんですよ!」
あ、食うんだ。
「因みに牛乳って飲める?」
「牛乳が飲めない種族って聞いたことないですね……」
ほーん?
なるほど。
何を食わせても良いんだなこれ。
「えっと……、その……、モンスター扱いされないのは嬉しいんですけど、犬猫扱いなのは、それはそれでちょっと困ります……」
「いやお前犬じゃん。犬種何?ウルフドッグ?」
「私は狼ですっ!」
まあ、とにかく、飯は何を食わせても良いみたいだな。
とりあえず、今日のところは全員を寝かせておく。
俺は、離れに石造りの家を作って、そこに立てこもる。
ドアを二重にして、入り口に落とし穴を設置して、枕元に剣を置いて、なおかつインベントリにも剣を入れて、ベッドで寝る。
そして、異世界生活九日目……。
朝六時前に目覚める農家である俺。
落とし穴を避けてドアを開け、外で顔を洗ってから、朝のランニングを済ませる。
すると、起きていた獣人のガキ共が面白がってついてきた。
ムカつくので若干ペースを上げたが、獣人のガキは平気な顔をしてついてくる。
クソが、こいつら、俺よりすばしっこいぞこれ。
あとで基礎ステータスアップの魔導書を使わないとな。
朝、《目玉焼きセット》と《牛乳》を用意する。
目玉焼きセットは、卵と肉類、キャベツ、そして魚類を、調理台でクラフトすると作れる。
ちなみにこれはお料理MODによるものではなく、グラップラーMODと呼ばれる、格闘能力アップの、とある格闘マンガをモデルにしたMODのおまけだ。
ゴキゲンな朝飯ってやつ。
内容的には、秋刀魚の塩焼きとベーコンエッグ、ご飯と味噌汁、そして山盛りのキャベツ。
他にも《毒も栄養も食らうセット》や《Tボーンステーキ》、《中華薬膳》、《熊の刺身》に《14kgの砂糖水》などがあり、食べている時に『ナポ……』『モリッ……』などの謎の効果音が出てくると大好評だ。
秋刀魚、山盛りのご飯とキャベツ、卵四個のベーコンエッグに味噌汁と、かなり量が多いのだが、元から俺は健啖家なので、これくらいは平らげてしまう。農家は身体が資本だからな、たくさん食べなきゃ動けないんだよ。
流石に、山盛りの千切りキャベツをそのままではキツイので、お料理MODのマヨネーズをたくさんかけて食べる。
マヨキャベツはおかずなんだよ!!!
最初は、米を怪訝な目で見ていた獣人達だが、俺が美味そうに食べているのを見て、食べ始めた。
「これは……、穀物を茹でたものか?美味いな!」
「ナポ……」
「モリッ……」
そして、マヨネーズをかけた山盛りのキャベツを食べると。
「おお!この白いソースは酸味が効いていて実に美味いな!」
「これ、本当に美味しいわ!干したクラーケンとか、茹でた野菜なんかにも合いそうね!」
「お野菜美味しいね!」
そして、米粒を残さないようにと指導したあと、三十分ほどで食べ終わり、開拓を始めることに……。
下がりに下がったヒロインちゃんの株を上げねば。
設定的には、困った時は神(主人公)に祈ってしまうだけで、本人の性能は高いです。王族として教育を受けた姫君ですから、文化やマナーに詳しく、経済や行政の知識を持ち、それなりにカリスマもあります。ただ、馬鹿です。
それよか魔物娘書いてるんですけどどう思います????
どう思いますってかほら、あんまりにもあんまりな設定なんで書いてる途中に後悔が押し寄せてきて……。
現代世界に魔王の娘である十三女のリリムが男探しに来る話で、主人公は特別魔界との繋がりが深い体質なので、男漁りに協力して魔物娘に良い男を紹介してね❤︎と言われる話です。
ですが、主人公は、人間を滅ぼして新たな世界を生み出し、新たな世界で生きる新人類として、魔術及び科学的に調整された改造人間であり、更に兄弟姉妹間で蠱毒のようなシステムで殺し合わされて最後に残った『究極の新人類』……、と言う設定。
他の面子も、人類史が始まる前から世界に存在していた大魔導師や、メタルギアライジング的なサイボーグ、R-TYPE的なことを平気でやるマッドサイエンティスト、ポン刀一本で神を殺した退魔師、経済界の七割を支配する経営者、ハサン・サッバーフの流れをくむ暗殺教団の若き指導者、グルメ細胞的な料理人、どんな人間も虜にする芸術家などで、そいつらが何故か高校の一クラスに集まってつるんで悪巧みして世界を裏から操っていると言う頭の悪い設定。
もちろん、そんな奴らに愛情などと言う無駄な感情は一ミリもなく、人間が大好きでラブラブセックスが大好きな魔物娘がぞんざいに扱われたり酷い目に遭わされたりして泣いちゃう……、と言う、ラブコメになりきれなかったコメディです。
いけるかなこのss……。