異世界生活、三十五日目。
タイ人のお酒をやめようCMみたいなノリで、必死に働き、勉強する亜人達。
そのうち使い物になるだろう。
しかしだな、俺は、今使える労働力が欲しいんだよ。
「ソニア、エルフを集めろ」
「え?」
「エルフに旋盤回させて労働力にする」
「き、金属の加工ならドワーフの方が得意ではないか?」
「うるせえな〜、やるっつったらやるんだよ、集めろ」
「わ、分かった」
ソニアのデカ尻を叩いて、森の奥に行かせる。
異世界生活、三十六日目。
エルフが集まった。
大体千人未満ってところか?
結構いるな。
俺の中では百人も集まれば充分って感じだったんだけど……、まあ、多くて困ることはないな。
エルフに命じて、《基礎工作部品》を量産させる。
これもまた、基礎、良質、上質、伝説、奇跡、神話と、クラスごとに分かれた工作部品だ。
機械を作るときには必ず必要になるアイテムだな。
例えば、この《足踏み旋盤》は、《基礎工作部品》×5+《基礎ネジ》×5+《鉄板》×1+《鉄棒》×1で完成する。
この基礎工作部品と基礎ネジが、手作業で作るのは余りにもタイムロスなんだよ。
何とか足踏み旋盤を駆使して、足踏み旋盤を10台作ったんだが……。
うーん……。
エルフって多分知識層だよなあ、単純労働やらせんの勿体なくね?
あー……、そうだ!
「ソニア、エルフの識字率は?」
「ええと、ほぼ百パーセントだ」
「じゃあ、お前に人事権を丸投……、一任する。若いエルフには、この旋盤で仕事をさせろ。大人の物知りなエルフには、村人の教育を手伝わせろ」
「わ、私を信用して、私に人事権を一任っ?!!りょ、了解した!必ずや貴方の期待に応えてみせよう!!!」
ヨシ!
異世界生活、三十七日目。
《足踏み旋盤》は、半日フル稼働させて、《足踏み旋盤》一つ分の工作部品を、鉄を素材にして作れる。
つまり、鼠算方式で増えていく訳だ。
昨日は10台だった足踏み旋盤は、今日は20台。
そして明日は40、明後日は80……とな。
「これ、同じ道具を増やして何の意味が?」
「草木に触れたい……」
「鉄臭いよう」
なんかエルフ共がごちゃごちゃ言ってるが、黙って働けとしか言えねえわ。
異世界生活、四十日目。
《足踏み旋盤》100台達成。
中々の生産力だ。
これからは、旋盤を増やすことよりも、機械を作ることを優先する。
足踏み旋盤では、1800年代付近の機械を作れるぞ。産業革命付近だな。
その次の円筒研削盤で1900年付近、その次の自動旋盤で2000年付近。
さらにその次にレーザー旋盤、分子加工機、物質転換機と技術が進む。
物質転換機は最早、工作機械ではなく、宇宙船のパーツである。
そして、俺が何を作るのかというと……。
産業革命と言えば。
やはり列車だ。
エルフの移住、増えた愚民。街の大きさは既に国レベルだ。人口はおよそ三十万人ほど。
三十万もの人間がウロウロする街とか邪魔なんだよなあ。
それと分かったことは、亜人って割と体力ないかも?ってことか。
全身に毛が生えてて、身体に熱を持ちやすい?
ほら、チーターとかが長距離走れないやつ。
流石に軍属の亜人は鍛えてるからそこそこだけど、普通の亜人は暑さに弱くて体力もあまりない、と言うか回復力が低いように感じる。
乗り物、あった方が良いなあ。
さあ、トレイントレイン。
異世界生活、四十一日目。
線路を敷く。
異世界生活、四十二日目。
線路。
異世界生活、四十三日目。
線路。
異世界生活、四十四日目。
亜人街を周回する《ヤマト・エクスプレス》開通。
一番線から四番線まで、毎日フル稼働。
そして起きるのは、産業革命……。
亜人を工場にぶち込んで、労働させる。
列車ぶん回して輸送。
大量生産させ……。
「俺が大量に消費する」
集まった機械部品で機械を作る。
車、計算機、船、機織り機、印刷機、時計。
今日は時計塔を建てた。
異世界生活、五十日目。
街も段々と回ってきた。
円筒研削盤も俺用に一つできたから、これでT型フォードを俺用に作り、乗り回す。
身体能力向上の魔導書を使っているから、走った方が早いのだが、俺はブルジョワジーなので車に乗る。
街には道路と信号機を設置した。
車は俺しか乗ってないんで移動が楽になっていい。
基本は歩行者天国だが。
折角なのでバスも作る。
イギリスとかでよく見る赤くて丸いバスだ。
適当なエルフを捕まえてバスの教習を始める。
異世界生活、六十日目。
エルフは知能が高く、車の運転もすぐに覚えた。
と言う訳で、バスとトラックを量産する。
流通が進化すれば、あらゆること、あらゆるものが進化する。
最近始めたのは、印刷機で紙幣を刷ることだ。
紙幣をガンガン発行して、流通させる。
俺の指示ではなく、ケイトの指示だった。
紙は、木と水をクラフトすればできるし、製紙工場もできた。
元々、亜人国家には製紙のノウハウがあったそうだ。
亜人国家ってか、エルフにだな。
エルフは紙の本を作る技術があったらしい。
だから、エルフに指揮させて大規模な製紙工場を稼働させている。
今の亜人街は、赤いバスが居住区から労働者を工場に運び、列車が資材を運び、時計台の鐘に従って五時には帰る……。
そんな状態だった。
俺が社会人だった頃の会社は、国内トップシェアのとあるPCメーカーだったが、福利厚生はしっかりしていた。
フレックスタイムありで、年間休日も何日と明記はしないが、普通の会社よりかなり多かった。
俺もこう見えて相当良い大学で、謎かけみたいな入社面接を潜り抜けてきた身だ、普通の人間より良い労働環境で働く権利がある。
しかし、だ。
馬鹿だからと言って、労働環境を低くして良いのか?
そんな訳はない。
道徳的理由からではなく、モチベーションや体調管理などの面から見てのこと。
馬車馬のように働いて欲しいが、馬車馬はしっかり休む。
「では、改めて。馬車馬のように働け!」
もうフリーターやるか……?
あ、次はメガテンいきます。