「ううう……、酷いわ、酷いわぁ!こっちの人間ってこんな感じなのぉ?」
「いや……、あのクラスは有能だが癖が強いものを集めてあるだけだ」
「そっ、そうよねえ!普通の人間もいるわよねえ!」
今、暁人は、リリムのベアトリクスに魔物娘城を案内されている。
暁人は、ARモニタデバイスとカメラを片手に、魔物娘のプロフィールをまとめ、知り合いに売り飛ばすつもりでいるらしい。
ベアトリクスは、わざわざ高い金を払ってまで魔物娘を求めてくれるような人になら、同朋たる魔物娘を任せて良いと思っている。
「あ、でも、魔物娘本人の意思を尊重してね?」
「考えておく」
まあ……、この、キチガイキングダムである湯後洲では、人身売買くらい有り触れた事件なので……。
最悪、魔物娘が変幻を解いたままそこらを歩っていてもスルーされる恐れすらある。
「あ、ってか逆に、そっちの人間の男側のプロフィールをくれないかしら?私がそれを魔物娘側に見せて、気に入った人同士でお見合いとかしない?」
「自分でやれ、勝手にしろ」
そして、ベアトリクスはクラスで聞き取り調査を行い、プロフィール資料を作る。
ルシファー:『祟神』の空薙暁人
サタン:『天拳絶技』の大神伴
レヴィアタン:『悪魔博士』の小鳥遊千景
ベルフェゴール:『魔導王』の青天目大門
マモン:『機人』のエゴール・"ザ・ファング"・クラースナヤ
ベルゼブブ:『天元突破』の安倍"16代目ハルアキラ"藤太郎
アスモデウス:『月下美人』のグリム・"アフロディーテ"・パンドラ
他十九名の簡単なプロフィールと写真だ。
そして、三日後……。
「サキュバスのリリカって子がグリムさんに会いたいって」
「そうか」
そう言うことになった。
グリム・"アフロディーテ"・パンドラ。
月下美人と称される彼は、正に、美の女神の愛し子である。
眉目秀麗、ギリシアの彫刻のような美しい肉体美。
おまけに、あらゆる芸術に対する抜群のセンス。
美に愛された魔人である。
性格は、男女共に美しくなければ相手にしない、あらゆることを美しいかどうかで判断する、美に魅入られた異常者である。
寒気を覚える程に整った中性的な顔と肉体、黄金の、金糸のような髪を長く伸ばした碧眼の色男。品のある白いスーツを着て現れた。
対するサキュバスのリリカは、下品にならない程度に豊満で、怪しげな魅力を発する紫の髪と朱色の瞳、角や羽、尻尾などがある美しい女だった。服は下着のような薄着である。
「あ、あのっ、グリムさん!私、リリカって言います!よろしくおねが」
「シッ、静かに」
グリムはリリカの言葉を遮り、リリカの周囲をぐるりと回る。
「ふむ……」
「あ、あの、グリムさん……」
「女、私のことはグリム様と呼びなさい」
「は、はいっ、グリム様っ!」
「よろしい」
満足気に頷いたグリムは、リリカの髪に触れる。
「あっ……❤︎」
「ふむ……、実にいい。美しい……、惚れ惚れとするほどに」
事実、リリカは、グリムが認めるほどに美しかった。
「よろしい、大変よろしい。女、名は?」
「リリカです……」
「リリカ……、貴女を、私の下僕として尽くすことを許可します」
「げ、下僕ですか?!!」
驚くリリカ。
当然だろう、一目惚れした男に下僕認定されるとか、普通の女なら百年の恋も冷める瞬間だ。
「えっと、下僕でも可愛がってくれますか?」
「当然です」
「じゃあ私下僕になります!」
しかし魔物娘はこんなもんである。
速攻でカップル(?)ができたので、ベアトリクスは大喜びである。
「やったわね!」
「いや……、アホだなあの女」
呆れた様子を見せる暁人。
「あら?何で?」
「グリムは、今まで数十人の恋人がいた」
「数十人?」
「だが、全員、愛想を尽かして消えた。何故だかわかるか?」
「分からないわ、どうして?」
「あいつは、女に対して、立ち振る舞い、体型、着る服、髪型、ネイルの一欠片に至るまで全て指図してくるんだよ。自分のセンスに反するものは絶対に許さない。あのリリカとか言うサキュバスも、一週間もしないうちにノイローゼになるだろうな」
「うわぁ……」
しかし、そんな暁人の予想に反して……。
「そこは違う!ここも駄目!」
「はいっ!」
「姿勢が悪い!背筋伸ばして!」
「はいっ!」
「メイクが下手!チークはこうで口紅は薄くでいいのです!」
「はいっ!」
一週間後もカップルが保っていた。
暁人は、ほう、と感嘆のため息を吐く。
「よくもまあ、やるもんだな」
ベアトリクスも、その様子を見て驚いている。
「リリカって我慢強いのねぇ……」
リリカが言うには、好きな人の言うことなら何でも聞けるとのことだ。
リリカも、暁人の「お願い」により、特進クラスに転入してきた。
「リリカです!グリム様の下僕やってます!」
「まただよ」「新しい下僕よー」「一週間保つとか新記録じゃねえか」「え?マジ?!」「既に付き合って一週間経つんだとさ」
クラスメイト達は歓迎……、歓迎?した。
喧嘩師、アドラメレクの陽介がふざけ半分でグリムとは既にヤったのか聞く。
「で?どうなんだ?グリムとはヤったかァ?」
「はい、ヤりました!」
魔物娘界では、これくらいセクハラにカウントされないのだ!
「だっひゃっひゃっひゃぁ!!!ヤりました!だとよォ!!!」「ほぉ、そうなのか」「草」
魔人達には大ウケである。
「グリム様、とっても優しいんですよ!」
「……え?あの偏屈が?」
「偏屈?グリムは、人よりちょっと美に対する意識が高いだけです!」
「ハハッ、マジで言ってんのかこいつ」
「ベッドの上でもとっても優しいですよ!」
「ンフッ、ヒャハハハハ!!!」
まあ……。
グリムにとって、恋人など、自分の美しさを際立たせるためのアクセサリーに過ぎないのだが。
書けば書くほど不安になる。