ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あー!イライラするー!!!


蝿の王

ベルゼブブこと、『天元突破』の安倍"16代目ハルアキラ"藤太郎。

 

「この人ってどんな人?」

 

ベアトリクスが尋ねる。

 

「藤太郎か……。神殺しだ」

 

暁人が答える。

 

「………………え?」

 

 

 

ベルゼブブ、天元突破。

 

この二つの通り名を持つ男、安倍"16代目ハルアキラ"藤太郎。

 

何故、ベルゼブブか?

 

燃費が悪くて大飯食らいなのをからかわれて?それもあるが、この男は正しく蝿の王であるからだ。

 

何故、天元突破か?

 

天元、すなわち宇宙の中心たる神々を打ち滅ぼしたからだ。

 

最も新しい神殺しの英雄。

 

安倍晴明の一族の末裔。

 

人の生み出した霊的守護者の最高峰。

 

それが、16代目ハルアキラ。

 

それが、安倍藤太郎である。

 

 

 

「妖狐の佳代じゃ!よろしくの!」

 

「………………」

 

そう言う訳で、妖狐の佳代と藤太郎がお見合いをすることに。

 

「妾は九尾の妖狐じゃぞ!凄いんじゃぞ!」

 

「………………」

 

「あの……」

 

「………………」

 

「な、何か喋ってぇ……」

 

すると、藤太郎は筆を懐から取り出し、術をかけた。

 

筆が空間に文字を書く……。

 

『言霊という言葉をご存知だろうか』

 

「へっ?!あ、ああ、はい」

 

『僕の言葉には、強い言霊が宿る。戯れであっても、死ねと命じれば人が死んでしまう。故に、僕は、気軽に声を出せないのです』

 

「そ、そうなのか……?」

 

『申し訳ありません』

 

頭を下げる藤太郎。

 

「あっ、いや、謝らなくてもよいぞ?!お主の声が聞けぬのは残念じゃが、筆談できるみたいじゃしな!」

 

釣られて頭を下げる佳代。

 

『ええと、それで、僕の使い魔になってくれるとのことですが?』

 

「はえっ?!い、いや、なんじゃそりゃ?!妾は、お主と男女のお付き合いを……」

 

『僕は既に子供がいます』

 

「な、な、な……、なんじゃとー?!!」

 

そう。

 

この男には、既に子供がいるのだ。

 

「けっ、結婚しておるのか?!!」

 

『いいえ』

 

「はえっ?!あっ、よ、養子か?」

 

『いいえ、実子です』

 

「………………????」

 

説明を始める藤太郎。

 

『僕は、16代目ハルアキラです。日本国守護の為、後世に血を残す使命がある』

 

「え……?使命?」

 

『僕が望まなくても、僕の血は残さねばならないのです』

 

「そ、それじゃあ、お主は、好きでもない女と……?」

 

『ええ。我が一族の隠し里に、それ用の女がいますから』

 

それを聞いて怒りを覚える佳代。

 

「それ用の女、じゃと?!お主らは女をなんだと……!!」

 

『あれは、救えません』

 

「は……?」

 

『手足を捥ぐのです』

 

「何の、ことじゃ……?」

 

『手足を捥いで、神の血を流し込み、呪印を刻むのです。それが、安倍一族の胎盤です。我々は、皆そこから産まれました』

 

「う……、うおぇえっ!!!」

 

その様を想像したのか、吐いてしまう佳代。

 

藤太郎は、そんな佳代を介抱した。

 

「な……、何故じゃ?!何故そんな非道なことができる?!!!」

 

『護国の大義の為です。日本を守る為ならば、我々安倍一族は、どこまでも外道に堕ちましょう』

 

群れだ。

 

佳代は、虫の群れの悍ましさを感じた。

 

人間も魔物娘も、合理を突き詰めた先にあるものは地獄だ。

 

そりゃあそうだ、神の血を入れた、産む専用の『女だったもの』に優れた『個体』を産ませる。それならば強い個体が生まれるだろう。愛や情を切り捨てればそうなる。

 

だが、それをやるのは、あまりにも人の道に反している。

 

誰もがやらない禁忌である。

 

虫のようなグロテスクさを感じさせる行為だ。

 

「何故じゃあっ?!!国が、国がそんなに大事かあっ?!!お主らは、人間を何だと思っておる?!!!」

 

『人間に価値はありません。最近は人口が増え過ぎているので減らそうというのが我が一族の総意です』

 

「なっ……?!!!」

 

『そして、我らハルアキラが守護すべきは朝廷……、すなわち陛下でございます。多少、人間が減る程度、問題ありません。要は、より多くを生かせればよいのですから』

 

「お主はっ!王が死なねば、民などどうでもよいと抜かすかっ!!!」

 

『極論を言えば。しかし、国に有用な血は残さねばなりません。陛下の他にも、我々のような強き血を残さねば』

 

「何と非道な!」

 

『僕個人としては、できるだけ人を守りたい。ですが、僕はハルアキラですから』

 

「何故じゃあ?!お主は守りたいんじゃろう?!なら、そうすれば……!!」

 

『僕の親も、その親も、ずっとそうしてきました。我々はそれ以外に知らないのです』

 

「うっ……、うわああぁん!!!」

 

泣き出す佳代。

 

悲しい。

 

悲し過ぎるのだ。

 

藤太郎自身は、決して悪人ではない。

 

だが、藤太郎の身に流れる血が、それを許さない。

 

「……妾は、決めたぞ」

 

『何をですか』

 

「お主を救う。お主に、せめても、普通の家庭を……!」

 

『そうですか。ですが、僕はハルアキラです。家庭よりも国防の使命を優先させていただきます』

 

 

 

ハルアキラにとって、国防に関すること以外は全て些事である。

 

佳代がどれほど努力したところで、ハルアキラという虫の群れの心は動かない。

 

虫の胸には熱く燃える心臓がなく、ただ、脈動する冷たい管があるのみだから。

 




もうやだ!疲れた!

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