ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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昨日は暑かったのに今日は寒いな。


マテリアル・リアライズ

アトランティス帝国が滅亡し三日が過ぎた。

 

九頭龍高校特進クラスは、何故か登校しなくても単位が取れるので、基本的に暇な魔人が駄弁りに来るか、毎週金曜日の会合の日しか集まらない。

 

何故、登校しなくても単位が取れるのか?

 

何でだろうね、おかしいね。

 

まあ、もしも、登校してないから単位はあげませんと学校側が言ったとすれば、次の日には学校と全ての教師の家が更地になっているであろうことは、想像に難くないよね。

 

さて……、今日の暁人は、『カフェ・コルジェット』にて、ブランチを食べてから、懐にしまっておいたロシア文学の小説を取り出した。

 

食後のコーヒーを楽しみつつ、ゆっくりと小説のページをめくる暁人は、最高に絵になる美男子だ。

 

長く伸びた黒墨のような髪、鋭角で理知的な瞳、白人らしい高い鼻。

 

程よい筋肉をつけながらもすらりと伸びた長身。

 

カジュアルな黒いポロシャツにブルーのジーンズを合わせ、黒のブーツを履いて、シンプルなシルバーアクセを数点身に付けたラフな休日ファッション。

 

今日の明けの明星は休日ルックだ。

 

魔人と知らなければ、あらゆる女性が惹きつけられるようなハンサム男である。

 

「きゃー❤︎今日も私の暁人はカッコいいわ〜っ❤︎」

 

それを見つめるベアトリクス。

 

「はっ?!いけないわ!今日こそは暁人を改心させて、愛に目覚めさせなきゃならないんだから!暁人ー!」

 

暁人に突撃するベアトリクス。

 

そして流れるような動きでベアトリクスを投げ飛ばす暁人。

 

もちろん、コーヒーは一滴も溢れていない。

 

タツジン級のワザマエである。

 

おお、ゴウランガ。

 

「いっ……たーーーい!!!なんで酷いことするのよぉ!!!」

 

「今日は休日だ」

 

「え?今日って水曜日よ?」

 

「休日だ。俺が決めた」

 

「そ、そうなの」

 

要はサボりであったが、どうせ九頭龍高校に登校しても、特進クラスでは授業そのものが行われていないので問題はなかった。

 

それに、サボりでも、暁人が休日だと言い張れば休日になるのである。

 

それがこの湯後洲という街の掟だ。

 

魔人が白といえばカラスも白。

 

魔人が黒といえば……、そいつは地球の果てまで逃げても、明日の朝日は拝めない。

 

さて、ベアトリクスとしても、こうも堂々とサボり宣言をされると、最早反論は無駄だと悟る。

 

「え、えっと、隣、良いかしら?」

 

「好きにしろ」

 

暁人は本を読む。

 

「えっと、何読んでるの?」

 

暁人は本を読む。

 

「そ、その、ここにはよく来るのかしら?」

 

暁人は本を読む。

 

「き、聞いてる?」

 

「おい」

 

「あ、聞いてたのね」

 

「黙れ」

 

「え……、そ、そんな!ちょっとくらいおしゃべりしましょうよ?!仲良くしてちょうだい!」

 

「………………」

 

暁人は、そのまま一時間かけて読書を終えた。

 

その間、話しかけてくるベアトリクスは徹底的に無視された。

 

 

 

「ひっく、ひっく……」

 

ベアトリクスは、愛する暁人に一時間ガン無視されて泣いていた。

 

それを見て不憫に思った喫茶店のマスターがココアをサービスしてくれたので、それを飲みながら暁人の読書が終わるのを待っていた。

 

「ふむ……」

 

暁人は読書を終えると、ハイセンスなグッチのマネークリップから万札を五枚抜いて、マスターに手渡した。

 

もちろん、釣りはいらない。

 

普段は、アメックスセンチュリオン……、ブラックカードで買い物をするが、このカフェではカードが使えない。

 

別にツケにもできるのだが、暁人は、仕事に対しては報酬が支払われるべきだと考えているので、店舗にも自分が支払うべきと思った金額を支払う。

 

カフェ・コルジェットのブランチとコーヒーには、五万円の価値があると認めたのだ。

 

「ちょっとちょっと、五千円分くらいしか食べてないのに、十倍も渡されちゃ困るよ!」

 

マスターが抗議したが、暁人は。

 

「構わん、取っておけ」

 

「太っ腹なのねえ」

 

ベアトリクスが感心した。

 

 

 

そして、外に出て。

 

「ベア」

 

「はあい?」

 

ベアは頬を叩かれた。

 

「うるさいんだよ、お前は」

 

「は……」

 

ベアは、最初、何をされたのか分からなかったが、遅れてやってきた痛みを感じて初めて、自分が頬を打たれたことを自覚した。

 

「ご、ごめんな、さい……」

 

ベアトリクスはまたもや涙を流した。

 

その時である。

 

「空薙暁人……、貴様!」

 

翼に尾、鋭い爪と牙、頭のツノ。

 

ドラゴンの魔物娘……。

 

「私はアカム!貴様に罰を与えにきた!」

 

アカムは叫んだ。

 

「私の親友であるベアトリクスを泣かせてばかりいるそうだな!許さんぞ、貴様!」

 

アカムは、腕を組んで、暁人の目の前に降り立った。

 

「今日は休日だ」

 

「何を……、が、ふっ?!!!」

 

おおっと、暁人選手、ここで情け容赦のない腹パン。

 

明らかにヤバい音。

 

アカムの両足が一メートルほど浮いた。

 

更に追撃。

 

ジャンプからの回転蹴り。

 

人間なら、内臓破裂と脊髄損傷で死んでいるコンボだ!

 

だが、そこは、最強種『ドラゴン』の魔物娘。

 

多少のダメージは負うが、空中で一回転して受け身をとった。

 

「ぐぅ……!!!貴様、手足の一二本は覚悟しておけよ!」

 

その叫び声と共に空を駆け、鋭い爪で攻撃してくるアカム。

 

「『アーモリーハウス』」

 

だが暁人は、即座に異次元武器庫を開き、魔導式ライフルを取り出すと、アカムの脳天と心臓に射撃をした。

 

「があっ?!!」

 

血を流し、倒れ伏すアカム。

 

「アカムっ?!!アカム!!!!」

 

ベアトリクスが急いで駆け寄る。

 

「アカムっ!起きてっ!」

 

「う、ううっ……、退がっていろ、ベア!こいつは許せん……!斯くなる上は!」

 

「やめて、アカムっー!!!」

 

『真の姿で相手をしてやろう!!!』

 

最強種であるドラゴンは、本気を出せば、一時的に、魔物娘になる以前の巨大で強大なドラゴンの姿に戻れるのだ。

 

いわゆるハイパーモードである。

 

『ドラゴンブレス!!!!』

 

地面がガラス化する程の超高熱。

 

鋼鉄すら溶かすドラゴンの吐息。

 

それは、破滅そのもの。

 

だが……、相手が悪い。

 

目の前に立つその男は。

 

『な……?!!馬鹿な?!!』

 

明けの明星、闇の太陽、終焉を呼ぶもの。

 

「『マテリアル・リアライズ:バルムンク』」

 

『そ、それは!ドラゴンキラー!!!ぐわあああああああ!!!!』

 

闇色に輝き、光を喰らう暗黒の太陽。

 

堕ちたる明星には届かない。

 

「……ブレスが盾になり、肉体は両断出来なかったか」

 

今のは、空薙暁人の秘儀の一つ、『マテリアル・リアライズ』である。

 

その名の通り、魔力を凝固させて物質に変換させる術式だ。

 

だが、それは、物質創造という神の領域であった。

 

暁人の超高性能な電脳の演算力と、超越した魔力量によってのみ可能とされる、『創造』の力。

 

神の御業たる創造の力だが、その殆どは、他者に苦痛を与えるためのもの。そう考えると実に皮肉な話だ。

 

「アカム!そんな、アカムっ!」

 

「が、はっ……」

 

そこに、暁人がバルムンクを持ったまま現れる。

 

「あ、暁人……?」

 

「死ね」

 

「ッ、やめてっ!!!」

 

ベアトリクスは素早く、魔法で衝撃波を発生させて、暁人を攻撃した。

 

一応言っておくが、魔物娘が人間の男を攻撃するのはよっぽどのことだ。

 

「ふむ」

 

暁人がため息をつく。

 

「……この子は私の親友なの。殺さないで!いきなり攻撃してきたことは謝るわ、だからっ!」

 

「お前は、俺のことを愛しているのか?」

 

突然の問い。

 

「え……、ええ、そうよ、愛しているわ。……ま、まさ、か」

 

ベアトリクスの頭に、最悪が思い浮かぶ。

 

いくらなんでも、それはないだろうという最悪が。

 

だが。

 

「愛する人のお願いは聞けるよな?ベア、そいつを殺せ」

 

魔人はその最悪の選択肢を他人にぶつけるのが大好きだ。

 

ベアトリクスの血の気が引く。

 

それは怒りか、絶望か。

 

バルムンクを差し出された、ベアトリクスの答えは……?

 




新作を書いてー、傭兵リメイクを書いてー、別の新作を書いてー。

新作は大賢者ポストアポカリプスですが、更にまた新作を……。

大賢者ポストアポカリプスがこけた時用に、新作を用意せねば……。

というか、いい加減どれかを完結させて、なろうとかカクヨムに転載せねば!!!

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