ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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まーたクズのサイコパス主人公書いてるよ……。


16話 完治

「完治おめでとう」

 

「ええ!」

 

「付いて来い」

 

三人の悪魔っ子を引き連れて、医務棟から出る。

 

三人には、屋敷に備え付けて置いてあるフリーサイズの下着を着せて、適当なワンピースも着せた。

 

サンダルを履かせて、外套を着せて外に出す。

 

「あ、あの……、治ったら出て行けということかしら?」

 

ニコレットが不安そうに尋ねてきた。

 

「ん?ああ、いや、移動するんだよ。ここは医務棟だから、本棟に行くんだ」

 

「本棟……、って、どれだけ広いのよ?!」

 

外に出た瞬間叫んだニコレット。

 

「あまり陽に当たると良くない、ついてこい」

 

「わ、待って賢者さん!」

 

 

 

そして、本棟にて。

 

「わあ……!」

 

「これは……!」

 

「凄いな……!」

 

驚きの声を上げる悪魔っ子達。

 

あまりにも広い玄関に、上品な調度品。それは、煌びやかな成金趣味とは違い、気品のある控えめな装飾。一見地味に見えるが、見る人が見れば分かるものばかり。

 

三人とも、『分かる』側の人間らしく、屋敷の品の良さを感じていた。

 

「いや……、本当に見事な屋敷ね!正直、宮廷よりも洗礼されていると思うわ!」

 

「ニコレット様……」

 

「……メナス、もう良いじゃない」

 

「しかし!」

 

「良いのよ」

 

「……分かりました」

 

そんな話をしているうちに、リビングに着いた。

 

このリビングは、暖炉と、落ち着いた雰囲気の家具が特徴だ。普段からここでくつろいでいる。

 

俺は、紅茶を淹れて、高級クッキーを出す。

 

「あら、ありがとう」

 

「そんな、私にまで……」

 

「ああ、ありがとう」

 

さて……。

 

「確か、南の方で戦争をしているんだったな」

 

俺が口火を切った。

 

「っ……」

 

ニコレットが、辛そうな顔をしている。

 

「いや、詳しくは知らんがね、俺の下僕がそう言っていてな。で、だ……」

 

俺は紅茶を一口、口を湿らせる。

 

「恐らく、察するところ、戦争に負けて逃げてきた貴人であるとお見受けするが」

 

「……そうよ」

 

ニコレットが絞り出すかのような声で言った。

 

「魔族の国に、人間がいきなり攻めてきたの。アガスティアの兵達は精強よ、でも、宣戦布告もなしに行われた、人間の国の突然の奇襲で大打撃を受けて、皆散り散りに……」

 

へえ、亡国アガスティア、ねえ。

 

「いや、知っての通り俺は転移者なんでね。こっちの世界の都合は分からんよ。それで、ニコレットは貴族なのか?」

 

「いいえ……、私は王族よ。魔王ヴァルフリート・デル・カーバインの娘、ニコレット・デル・カーバイン……」

 

なるほど、王族だったか。

 

「ほう、お姫様か。頭でも下げようか?」

 

「やめてよ、賢者さん……。むしろ、頭を下げるべきなのは私の方よ。でも、王族として軽々しく頭を下げることはできないんだけどね」

 

と、軽く笑うニコレット。

 

「ふむ、で、どうする?」

 

「……どうもこうもないわよ。近衛騎士達が必死になって私を逃してくれて、それっきり。お父様も討ち死になさったらしいし」

 

ふむ……。

 

「失礼」

 

俺は一言断って、スマホに連動した屋敷内の放送スピーカーに接続する。

 

『ギラ、リビングに来い』

 

すると、五分ほどでギラがリビングに来た。

 

ギラの姿を見た悪魔っ子達の顔は、驚愕で歪んでいた。

 

「まさか……!最果ての黒龍?!赤毛赤目の黒い龍……、間違いないわ!」

 

「ああ、紹介しよう、こいつはギラ。察しの通り最果ての黒龍だそうだ。今は俺の下僕をやっている」

 

「そんな……!最果ての黒龍を、使役、したというの……?!」

 

驚いている三人をよそに、俺はギラに話を聞き出す。

 

「ギラ、南の戦争はどうなった?」

 

「ふむ、悪魔族は北西に移動したが、殆どは念入りに殺されたようだ」

 

「そんなっ……!」

 

ニコレットが悲しみの声を上げる。

 

「だが、他の魔族は殆ど逃げておったわ。おお、そうだ、そう言えば、悪魔族がそこらで何者かを探しておったな」

 

「……みんなは旧都ウルズへ移動、悪魔族は恐らく私を探している……?」

 

ふむ……、そうだな。

 

その辺のコピー用紙とペンを持ってきて、言った。

 

「手紙を書いたらどうだ?ギラに届けさせるから」

 

「い、良いの?!」

 

「構わん、ただ一つ条件がある」

 

「条件……?」

 

不安そうにこちらを見つめるニコレット。

 

「お前ら、ここに住め」

 

「えっ……、い、良いの?!」

 

ん?

 

「置いてもらえるならずっとここにいるけど……?」

 

え?

 

「逆に聞くが、帰りたくないのか?」

 

「帰る場所はなくなったわよ……」

 

「いや、旧都ウルズ?とやらに行かなくて良いのか?」

 

「え?ああ、そのね、既にお兄様から連絡があったの。お父様は既に討ち死になさり、今は王子であるお兄様達が指揮を執っているらしいの」

 

「待て待て、どうやって連絡した?」

 

「魔法よ?《遠話》って言って、特定の人に一方的に声を届ける魔法があるの。《遠話》に必要な髪の毛は、あらかじめお兄様達に渡しておいたし」

 

「お前はその、《遠話》って魔法で連絡を取り合っていたのか?」

 

「いいえ、私は《遠話》を使えないもの。一方的にあっちから連絡が来てるだけよ」

 

そんな感じなのか。

 

使い勝手悪いな……。

 

「聞いた限りじゃ、悪魔族は大きく数を減らして、ほぼ国体をなしていないわ。お兄様達は、私を探すための偵察隊を一応出しているみたいだけど、そんな余裕も殆どないみたいなの」

 

ふむ……。

 

ニコレットは言葉を続ける。

 

「お兄様達は、他の魔族と旧都ウルズに撤退したけど……、もう一度人間が攻めてきたら終わりよ。でも、魔族もかなり抵抗したから、人間側の再侵攻はほぼあり得ないらしいわ。しばらくは富国強兵に努めるそうよ」

 

それは分かった。

 

だが……。

 

「何で、お前らはここにいたいんだ?」

 

「だって、最果ての荒野から移動なんて、自殺行為よ?」

 

「じゃあ何でここに逃げてきたんだよ」

 

「追っ手に追われるうちに仕方なく……。本当はもっと護衛とか、馬車とかもあったのよ?でも、追っ手やモンスターにやられて……」

 

ふーむ?

 

「じゃあ、ここから出してやると言ったら、出て行くのか?」

 

「……その、ね?あっちに戻ったら、確実に政略結婚の道具だしね?」

 

「ここに残ったら俺しか相手はいないぞ?」

 

「え……?いやいや、賢者さんは私達の裸を見たんだから、責任を取って娶ってくれるのよね?」

 

「は?」

 

「え?」

 

んーーー????

 

「そういうもんなのか?」

 

「そうよ!乙女の肌を何度も見ておいて、責任を取らないなんて言わせないわ!」

 

そういうノリなのか。

 

うーん。

 

「俺はさ、あんまり他人を信用できないんだ。多分、結婚とかしても、うまく行かないと思う」

 

「良いわよ、別に。だって私達は、貴方に、信用できる証拠をまだ見せてないもの。でも、貴方は、この一ヶ月、私達の面倒をしっかり見てくれたわよね?それをもって、私達は、貴方が信用できると思ったわ」

 

ふむ。

 

「だから今度は、私達が貴方に信用してもらう番よ!」

 

そう言って、三人に真名を預けてもらった。

 




自分の平穏な生活のためなら無表情で親をも殺すタイプの主人公、好きだけど一般受けしない。

なお、作者は普通に親と仲良しなので邪推はNGだぜ!

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