ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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12話 洗ってない猫の匂いがするヒロインさん

「たったの二時間でゴブリンを百体も討伐できる訳ねえだろうが!」

 

「できる、できるのだ」

 

「言っておくが、この辺境でインチキをやって評価を上げようったってそうは行かねえぞ!」

 

「腹を立てるとどうするんだ?ウサギとワルツでも踊るのか」

 

「テメェ、舐めてんのか?」

 

「ああ、すまない、誤解のないようにちゃんと言っておこう。お前ら全員眼中にない」

 

「……表に出ろ」

 

そんなこんなでバトル展開だ。

 

冒険者君と殴り合いをする羽目に。

 

おかしいね、なんでだろうね。

 

「まあ、一丁軽く揉んでやるか」

 

 

 

俺はいつもの灰色のベストにカーキーのトレンチコート。ブラウンの品のあるハットも忘れない。

 

対する冒険者は、今辺境で絶賛売り出し中の一流Bランク冒険者。

 

見た目は赤塗りの動きやすそうな金属鎧を部分的に装着しており、モンスター革の服も着込んでいる。

 

全体的に動きやすさを重視していることが見て取れる。

 

得物はロングソードらしいが、今は素手だ。

 

周囲の冒険者達が語るところ、『魔法剣士ロイ』という名前らしい。

 

その名の通り、魔法も使える剣士だとか。

 

さあ、どうなる……?

 

 

 

「さて、次の依頼はどうするか」

 

「これなんかがいいんじゃないか?」

 

「Cランクのマイコニドか。売れるのか?」

 

「食材に薬の材料なんかになるらしいぞ」

 

「美味いのか?」

 

「ああ、美味い」

 

「じゃあ狩ってみるか」

 

再び依頼を受ける俺達。

 

「あ、あの、扉……」

 

受付嬢が何か言っているな。

 

扉?

 

ああ……。

 

「扉の修理代は、俺にぶっ飛ばされて扉にめり込んだあのバカから徴収してくれ」

 

「は、はい」

 

 

 

さて、またもや森へ。

 

マイコニドだ。

 

二メートルくらいの歩くキノコ。

 

アレだな、タイプ的にはダークネスソウルのアレだ。

 

つまりは、ゴリゴリの物理型。

 

『モ………………!』

 

「お、アレだな」

 

「やるか」

 

木々が立ち並ぶ森の中では、銃の利点が活かせない。

 

なので、どうしても近接戦闘になってしまう。

 

俺?

 

俺は……。

 

Abilityがあるから。

 

あと武器。

 

「ほい」

 

『モギッ』

 

あ、弾けちゃった。

 

「おい……、それでは売れないだろうが」

 

「すまんすまん、威力が高過ぎたな」

 

今使ったのは、格闘武器の『エクスタシー』だ。

 

パンチャーという武器種でも、バニラ最高クラスの威力を持つ。

 

パンチャーは、腕をすっぽりと覆うような籠手で、拳の部分に強い衝撃を与えると、火薬による爆発やマイクロウェーブなどが発生して、殴ったものを破壊できる……、という武器。

 

因みに、エクスタシーは、プラスティック爆弾並の爆発を起こす。

 

何故そんな爆発がすぐ側で発生して怪我しないのか?

 

……ニュークリアデターランスだからな!

 

「じゃあ、普通に殴るか?」

 

「打撃はダメだ、肉が傷む」

 

なるほど、切断しろってことか。

 

じゃあ、ビームソードで。

 

「ふん」

 

『モギッ』

 

真っ二つになったマイコニド。

 

「一体で銀貨六枚はするはずだ」

 

「おー、リッチだ」

 

 

 

一日で銀貨三十枚を稼いだ。

 

Eランク冒険者は殆ど余裕なんてものはない。

 

それなのに、いきなり銀貨三十枚も稼ぐというのは化け物だ。

 

銀貨三十枚はBランク冒険者の稼ぎにすら匹敵する。

 

俺は銀貨が詰まった袋をシルヴィアに預けて、宿を探すことにした。

 

 

 

古典ファンタジーにも歴史にも詳しくはない俺は、この時はまだ、この世界の宿の酷さを知らなかった……。

 

 

 

「マジ無理」

 

「どうした」

 

「確かに、ニュークリアデターランスの世界でも、衛生環境や食事はクソだった。だけどな、俺はいつも、お手伝いロボットに掃除させていたし、食事も拘っていた」

 

「何が言いたい?」

 

「まずな、汚いんだよ」

 

ベッドシーツや毛布は変な匂いがする。

 

床も埃や泥で汚れている。

 

流石に、中世ヨーロッパのように、その辺にクソを投げ捨てる訳ではないようだが、下水道はないのでクソを汲み取ってどこかに捨てているそうだ。

 

なので便所はおまる。

 

人々もなんか臭い。

 

シルヴィアも、猫のような香ばしい匂いがする。それはそれで興奮するが、やはり風呂に入ってないのはキツい。

 

最低限の、ゴミを決まった場所に捨てる、みたいな文化はあるようだが、守っていない奴も多く、ポイ捨てなどから悪臭が漂う。

 

「そして飯も不味い」

 

飯。

 

不味い。

 

そして衛生的じゃない。

 

臭い人が作る飯なんて食いたくないだろ。

 

量も少ない。

 

噛み切れないような硬いライ麦パン一つに、チーズひとかけら、そして蕪が入った塩味のスープ。

 

シルヴィアが言うには、これでも良い方だと言う。

 

これで一晩で銀貨一枚?笑えないジョークだ。モンティパイソンが草葉の陰で泣いているぞ。

 

「とてもじゃないが耐え切れん」

 

「だが、どうする?わがままを言っても、貴族用の宿に泊まれるほどの金も信用もないぞ」

 

「この冒険者であることを表す鉄のカードがあれば、街を出入りしても入門料は取られないんだったな?」

 

「ああ、冒険者の出入りでは金を取られない。街の外で依頼をこなす冒険者から一々金を取っていたら、冒険者は街の外に出れなくなるからな」

 

「街の外れに家を作る。ついて来い!」

 

そう言うことになった。

 

 

 

「俺はCraftが100でその上時短MOD付けてるからすぐできる」

 

「なんの話だ」

 

そんなことを言いつつ、三十平方メートルほどの、大体2万円くらいで泊まれそうなホテルの一室を作り出す。

 

「ほう、少々狭いが、貴族を泊めても良いくらいには上等だな」

 

「そうかい」

 

俺は備え付けの椅子に座って、本を開いた。

 

中身は中世ヨーロッパの風俗史だ。これを読んで知識をつける。

 

そして、シルヴィアに一言。

 

「シルヴィア、風呂に入れ。シャワーを浴びて、髪と身体をしっかり洗え」

 

「沐浴か?」

 

「違う、洗え」

 

「……?」

 

「……ああ、もういい、服を脱げ」

 

「少しはムードを考えて欲しいものだが」

 

「そうじゃない、洗ってやる」

 




自作ヒロイン、大抵、初登場時に洗ってない動物の匂いする説。

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