ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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次回やること。
・銀ちゃん蘇生
・無自覚セクハラ
・時間停止



大魔導師、勇者部に依頼する

夏凜ちゃんが勇者部に入ってから数日後。

 

私達は、夏凜ちゃんの誕生日を祝っていた。

 

「今朝は夏凜ちゃんが来なくてびっくりしたよー」

 

「だからそれは悪かったわよ……」

 

「あ、責めてる訳じゃないよ?!大丈夫!」

 

そんな時に。

 

『ピンポーン』

 

「あら?誰か来たみたいね……?」

 

「ったく、こんな時間に尋ねてくるやつは誰よ……」

 

夏凜ちゃんが呆れながらもインターフォンに出ると。

 

「誰ですかー?」

 

『俺だ』

 

「うぉわあ?!明星真凛?!」

 

「!、いけません夏凜ちゃん!相手は単体で世界を滅ぼせる方ですよ!」

 

「そ、そうね、もうちょっとへりくだった姿勢を見せた方が良いかしら」

 

『入るぞ』

 

「い、今開けます!」

 

『その必要はない』

 

え?

 

『アロホモラ』

 

あっ、魔法で鍵を開けられるんだ……。

 

「夏凜」

 

「は、はい……」

 

「誕生日おめでとう。これは俺からプレゼントだ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「それとへりくだらなくていい。お前は生意気なくらいが可愛らしい」

 

「んなっ?!それってどういう意味よ?!」

 

「そのままの意味だが」

 

ま、まあまあ。

 

「か、夏凜ちゃん、何をもらったの?」

 

「え?これは……、タブレット端末?」

 

「それは魔力駆動式千里眼タブレットだ」

 

またよく分からないものを……。

 

「これを使えば、ユートピアの好きなところを見れる。ライブ中継されるグーグルマップみたいなもんだ」

 

「わっ、本当だ、凄い……」

 

「あと、ここの欄に名前を入れると、ユートピアの著名人の行動も見れる」

 

「じゃあ、ルシファー、と。……あ、仕事してる」

 

「風呂トイレなどのシーンは見えないように設定されているから、安心して見ろ」

 

「えっと、ありがと。結構面白いものもらったわ」

 

「気にするな、お前のためだ」

 

出た、真凛君の勇者部贔屓だ!

 

何でなんだろう、真凛君はどうして私達なんかに優しいのかな。

 

「真凛君って、私達に優しいよね……。何で?」

 

疑問だった。

 

真凛君は強くて、万能だ。

 

私達なんかに優しくする必要はないんじゃないかと、そう思う。

 

「勇者だからだ。心清く、優しく、美しい。そして、良い魂の輝きを持っている」

 

「魂の、輝き」

 

「質が違うんだ。例えば一般人のそれが路肩の石ころなら、お前達のそれは宝石だ」

 

ほ、宝石みたいに綺麗ってこと?

 

……何だか、カッコいい口説き文句だなあ。

 

「思ったんだけどさ、真凛。あんたってさ、あんだけ凄い魔法を使えるんだから、その、綺麗な魂ってのを無理矢理奪うことだってできるんじゃないの?」

 

風先輩が真剣な目で言う。

 

「それどころか読心、洗脳、催眠、暗示も一通り出来るな。お前達程度であれば、洗脳して、恋人や家族に成りかわることも可能だ。しかし、やらない」

 

「何でよ。あんた、自分の力を私利私欲の為に使う気でしょ」

 

「品がないからだ」

 

「品?」

 

「カッコ悪いだろう?」

 

「……まあ、そうね。洗脳とか催眠とかって、ベタな悪役みたいでカッコ悪い、わね」

 

風先輩が引き下がる。

 

「って、え?真凛さんって、私達の魂が欲しいんですか?!」

 

と、樹ちゃん。

 

「ん?ああ。肉体は別に。欲しいと言うならもっと良い肉体を作ってやるぞ。俺としてはドラゴニュートや悪魔、天使がオススメだ」

 

「生まれ変わらせる、ってことですか?」

 

「そうだな、魂の置換だ。人間などと言う脆弱な肉体を捨てて、より素晴らしい存在に転生しないか?」

 

「い、嫌です……」

 

「その肉体が気に入っているならば、俺と同じように魔法使いになるか?食事や睡眠、排泄がいらないのは楽だぞ」

 

「それも、怖いです……」

 

「そうか、それは残念だ。気が変わったらいつでも言えよ。最高の肉体を用意してやるからな」

 

怖いよ!言うことが怖い!

 

「美森、お前はどうだ?歩くことどころか、空を自由に飛べる肉体なんて欲しくはないか」

 

「い、いえ……」

 

「夏凜、強くなりたいんだろう?人間のそれより遥かに強靭で俊敏な肉体が必要じゃないか?」

 

「い、嫌よ!」

 

「む、何故だ?友奈、完璧な肉体は欲しくないものなのか?」

 

「あの、ね、真凛君。どんなものでも、お父さんとお母さんからもらった大切な身体だから……」

 

「少し手を加えるだけで格段に良くなるんだぞ?勇者としての戦力も段違いだろう。俺はお前達の利益になると思って言っているんだが。そしてあわよくばユートピアに移住させようとしている」

 

「あ、あはは……。ごめんね、私達、この身体で生きていくつもりだから」

 

「そうか……。臓器移植と同じようなものだと思うんだがな」

 

「治療のために身体を弄るのと、性能を上げるために身体を弄るのとでは大分違うと思うな……」

 

やっぱり、神様みたいになんでもできちゃう真凛君の視点は、私達のそれと大分違うなあ……。

 

私達が、ちゃんと人間のことを教えてあげよう!

 

 

 

 

 

それから、数日後。

 

真凛君はちょこちょこ勇者部を手伝ってくれたり、差し入れをしてくれたりしつつ、私達を誘惑していた。

 

別に悪い気分じゃないし、助かっているから良いんだけど。

 

そんな時に、勇者部宛にメールが来たのだ。

 

『土曜の09:00頃、勇者部部室へ来い。昼飯は出す。晩飯も出す。

 

真凛』

 

というメールが。

 

「あいつめ……、要件を書きなさいよ……」

 

風先輩が頭を押さえて言う。

 

「えぇ……、何をやらされるんだろう……」

 

樹ちゃんも不安そうにしている。

 

「ユートピア関係でしょうね……」

 

「一体何なのよ……」

 

東郷さんと夏凜ちゃんもこんな感じ。

 

私は、ドキドキ半分、不安半分くらい、かなあ。

 

ってか、お昼と晩御飯出すって……、何出されるんだろう。やっぱりファンタジー的なやつかな……。ちょっと楽しみ。

 

「ねえ、風。……行くの?」

 

「そりゃあ、まあ、依頼である以上、行く、でしょ」

 

 

 

そんなこんなで土曜日。

 

現在、08:59。

 

言われた通りに部室に全員集合済み。

 

「……来ないのかしら」

 

風先輩がスマホの画面を見ながら言う。

 

「そんなことはないと思うけど……、こう、魔法でパッと現れるんじゃないんですか?」

 

あ、ちょうど今、9時ぴったり、に……。

 

「さて、来い」

 

「あ……、え?」

 

あれ?ここ、どこ?

 

一瞬で景色が変わった?!

 

「う、うわあああ?!!ど、どこよここぉ!!」

 

「ユートピア、アルカディアの俺の城、ゴールデンドーン城だ」

 

「あ、あんたねぇ、ワープするなら言いなさいよ!こっちにも心の準備ってもんがあるじゃないの?!」

 

「そうなのか?それは悪いことをしたな。すまない、勇者部」

 

あはは、私は真凛君の、悪いと思ったらちゃんと謝るところ、好きだよ?でも、これはちょっとびっくりしたかなー?

 

「で?何で呼び出したのよ?」

 

「ユートピアの運営について他者の意見を取り入れたい。それと、視察だ」

 

「本音は?」

 

「お前達に俺の作ったユートピアを自慢したい」

 

「しょうもないわねぇ……」

 

「いやいや、俺の身になって考えてみろ、十年近くかけた創造物を他人に自慢したいと思うのは当然だろう?」

 

「何で私達なのよ?」

 

「うん?一般人に魔法の存在をバラしてはならないんだろう?だから、既に魔法の存在を知り得たお前達に見せるんだ」

 

「本音は?」

 

「お前達のような美しい女と話したい」

 

「ふ、ふーん!中々にお目が高いじゃないの!まあ私みたいな女子力高い女の子にぞっこんになるのは仕方ないわよねえ!」

 

あ、風先輩、嬉しそう。

 

って、また美しいとか言った!真凛君は真面目な顔でそう言うこと言うから!

 

「午前は会議、12時頃に食事。その後視察、7時頃に食事、解散」

 

「つまり、一日中あんたと顔を合わせなきゃならない訳ね……」

 

「不満か?」

 

「別に嫌じゃないけど……」

 

「男慣れしてないと?」

 

「なっ?!そ、そんなことないしー!男子に告白されたことだってあるんだから!」

 

「ふふ、そうか」

 

目を細める真凛君。風先輩ー、真凛君の方が一枚上手みたいですよー?

 

「さて、ついて来い」

 

凄く綺麗な人外のメイドさん達がずらーっと並ぶ赤絨毯の道を歩いて数分、会議室に辿り着いた。

 

そこには、性別も種族もばらばらな、だけど共通して偉い人だって分かる格好の人(?)達が沢山……。

 

「おろ、可愛らしいお客さんだな。種族は?」

 

黒い羽、着物の男の人に話しかけられる。真凛君と同じくらいカッコいい。

 

「あ、えと、人間の結城友奈です」

 

「へえ、人間!初めて見るな!俺は天魔波旬の鞍馬だよ。ジパングの魔都京都で天狗達の頭領をやってるんだ。よろしく」

 

「天魔波旬……?」

 

「他化自在天、第六天魔王……、悪しきものです。友奈ちゃん、近づき過ぎないように」

 

東郷さんが耳打ちしてくる。

 

「おいおい、警戒しないでくれよ。美人に嫌われるのは悲しいねえ」

 

他にも、何人かの偉そうな人に挨拶された。

 

「妾は白面金毛九尾狐の玉藻、華胥の女帝じゃ。よろしく頼むぞえ」

 

「僕は聖人のアーサー。キャロメットの王さ。よろしく」

 

「私は神人の天照。高天原の首領です。今後ともよろしく」

 

私でも何となく聞いたことがある、伝説上の人達がちらほらと。

 

「さて、会議を始める」

 

あれ?ひょっとしてこれ、私達、とっても場違いじゃない?

 

 

 

会議は白熱した。

 

特に、ルシファーさんとミカエルさんは、お互いに戦争していることもあってか、かなりの大喧嘩だった。怖い。

 

どうもルシファーさんは、世界の全てを解放しようとしているらしく、自由な世界を作ろうとしているらしい。

 

逆にミカエルさんは、世界の全てに秩序を齎し、法の加護を受けさせたいと言っていた。

 

でも、ルシファーさんの目指す世界では、弱いものはみんな苦しんで、強いものだけが生き残る恐ろしい世界になると思う。

 

逆にミカエルさんの目指す世界では、あらゆるものが生きづらい、そう、ほんのちょっとした罪でも処刑されてしまうような、悍ましい管理社会ができあがると思う。

 

そのどちらも必要なことだけど、どちらかに傾き過ぎてもいけない。混沌と秩序のバランス……、真凛君が言ってた通りだ。

 

「さて、こんなところか。会議は終了だ。新大陸の資源は各国が組合を作って採取すること。これから食堂で会食がある、参加しろ」

 

あ、そう言えばお昼出るとか言ってたね……。え?その、偉い人の会食に出るの私達?え?だから場違いじゃないかな?

 

そう言って食堂に案内される私達。

 

良いのかなあ……。

 

「こちら、レッドドラゴンのサイコロステーキです」

 

「ケルピーの馬刺しです」

 

「バジリスクオムレツです」

 

「マイコニドのソテーです」

 

「ミノタウルスの乳を使ったクリームシチューです」

 

「マンドラゴラのかき揚げです」

 

他にも、アルバコアの寿司、ナンディのコロッケ、大王トマトのリゾットなどなど。

 

聞いたことのない食材のオンパレード。

 

「ま、真凛君?これ、食べて大丈夫なのかな?」

 

「大丈夫に決まってるだろ。味は最高に美味いぞ」

 

真凛君はレッドドラゴンのサイコロステーキをトングで掴んで、自分の皿に乗せ、フォークに突き刺して、齧った。

 

「……うむ、流石はうちの料理人だ。素晴らしい」

 

うー、真凛君、美味しそうに食べるなあ。

 

ええい、私も!

 

「ーーーッ?!!」

 

「ゆ、友奈?どうなの?」

 

「い」

 

「い?」

 

「今まで食べたお肉の中で、一番美味しい!!!」

 

「本当?!ドラゴンよ?!……ええい、もぐっ!……う、美味っ?!!!」

 

風先輩はあまりの美味しさに目を白黒させている。

 

「味は牛、でもない、馬、でもない……、けど美味しい!」

 

樹ちゃんも同じだ。

 

真凛君は次に、バジリスクオムレツに目をつけた。

 

恐らくは鶏肉とブロッコリーが入ったオムレツだ。

 

「バジリスクの肉とシャングリラ産の美味しい野菜が入ったオムレツだ、不味い訳がない」

 

「バ、バジリスクには毒があるはずですが!」

 

と、東郷さん。

 

「毒腺を取り除けば肉を食えるし美味いぞ。卵にも毒はない」

 

「うう、信じますからね……。ぱくっ!……んんんっ?!お、美味しい!!!」

 

「本当だ、美味しい……!」

 

夏凜ちゃんもオムレツを頬張る。

 

「アルバコアのトロ……。おまけに金剛赤貝と白銀鯖、黄金鯛、流星海老の握り寿司。こちらも絶品だ」

 

「アルバコア……、ビントロですか?」

 

「いや、アルバコアはオケアノス近海に生息する5mから10m程の回遊魚だ。そちらで言うマグロに近い魚だな」

 

美味しい!

 

「シーサーペントの蒲焼きも美味いぞ」

 

美味しい!!

 

「ビッグホーンのロースト、シャングリラ風」

 

美味しい!!!

 

「デザートには黄金蜂蜜のクッキー、ミノタウルスの乳を使ったショートケーキ、不思議の国特産のチョコレート……、色々揃ってるぞ」

 

何を食べても美味しい!!!!

 

 

 

「美味しくって夢中で食べちゃったけど……、あれ、絶対高級品だよね?大丈夫なの?」

 

「確かに、お前達の世界の金銭価値で換算すると、一人につき数十万円分は食べたな」

 

あわわわわ……、どうしよう、そんなお金は……。

 

「しかし安心しろ、俺の奢りだ」

 

「わ、悪いよ……」

 

「これくらいの会食はかなりの頻度でやっている。気にすることはない。さあ、視察に行くぞ。転移する」

 

「わっ」

 

真凛君は、私の肩を抱いて、魔法をかけた。

 

一瞬で景色が変わる。

 

「ここはアルカディアのコロッセオ。アルカディアは俺の居城の他に、造幣局や歓楽街がある、巨大都市だ」

 

『本日の対戦カードは……、ギラファ迷宮のブラックドラゴン対魔剣士ゼファー!オッズは……』

 

異形の剣士がドラゴンと戦っている。

 

「凄い……」

 

『魔剣士ゼファー、堂々の勝利!!!』

 

「あの、真凛君?視察なら、ジパングというところに連れて行ってくれませんか?」

 

と、東郷さん。

 

「ん?あそこはほぼ日本だぞ?」

 

「それが良いんです!古き良き日本の風景!是非見せて下さい!」

 

「まあ良いが……。では転移」

 

ここは……、京都、かな?凄く綺麗なところで、歴史的なお寺が沢山あるって聞いたけど。

 

「あれは金閣寺!なんて美しいんでしょう!写真、写真を撮らねば!」

 

「魔導カメラならあるが」

 

「借ります!」

 

転移。

 

「富士山……!日本の山と言ったらやはりこれですね!」

 

転移。

 

「姫路城!噂通りの白さです!美しい……!」

 

満足そうなため息を吐きながら、テンションマックスで観光する東郷さん。

 

と、それについて行く私達……。

 

 

 

そうこうしているうちにもう夜だ。

 

晩御飯も豪華だった……。

 

「ありがとう、真凛君!楽しかったよ!」

 

「そう言ってくれてこちらも嬉しい。どうだ?ユートピアに移住するか?」

 

「あはは、日本のバーテックスがどうにかなったら、移住しても良いかな?なんて……」

 

「そうか……」

 

「そうだ!勇者に来て欲しいなら、先代や先先代の勇者を探すのはどうかな?来てもらえるかもよ?」

 

「……成る程、その発想はなかった。検討しよう。では、学校の前まで送ろう」

 

するとまた、転移の魔法で学校に戻ってきた私達。

 

「あのさ、ワープできるなら私達の家まで送ってよ」

 

風先輩がわがままを言う。

 

「お前達の家の位置を知らん」

 

「魔法で調べて……、って、それは私達の頭の中を覗くことになる、わよね。ならしょうがないわね」

 

「せめて、家まで送ろう。治安は良いとは言え、女性の一人歩きは危険だ」

 

「……そう言う紳士的なところは、ちょっとカッコいいと思うわ。悔しいけど」

 

結局、真凛君は、家まで送ってくれた。

 

ユートピア、かぁ。

 

お役目が終わったら……、移住してみるのも良いかな、と。

 

ちょっとだけ、思った。

 




銀ちゃん(小学六年生)に欲情するのは悪いことでしょうか?

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