『ガガギャ……、ヤッテクレタナ、ニンゲン!!!』
ああ、そうか。
こいつが大将のグレーターデーモンか。
三メートルほどの肉体、青黒い肌。
蝙蝠のような翼膜に、大きな角。
ギザギザした牙と鋭い爪。
長い尻尾が生え、爛々と輝く赤い瞳には、俺達二人が映っている。
『ニンゲン……、ココデオワリダ!!!『ライトニングボルト』!!!』
俺がシルヴィアを庇う。
「おい!大丈夫か?!」
シルヴィアが叫ぶ。
「おほー、効くねえ!肩こりが治りそうだ」
しかし、俺には効かない。
俺を殺すなら最低でも、大陸が吹っ飛ぶレベルの強化核ミサイルを用意しなきゃな。
『ヌウ?!ナラバ……、『アイスボルト』!!!』
氷の光線が俺の身を貫かんと迫る。
「ぬるいぬるい!」
俺はその辺にいるゴブリンを投げつけた。
『ヌオオオオオッ?!!!』
アイスボルトに直撃して風穴が空き、氷の塊になったゴブリンが、雹のようになってグレーターデーモンに叩きつけられる。
それを、腕を交差させて防ぐグレーターデーモン。
『ヌウ……、ヤルナ!ダガ……!』
鋭い爪で引っ掻いてくる。
俺は軽く躱して、スノードロップとキティを取り出す。
『グハハハハ……!ニンゲン、シッテイルゾ!オレサマニコウゲキハキカン!!!』
「へえ?何でだ?」
『コレダア!!!『パーフェクトフィジカルシールド』!!!』
なるほど。
「物理攻撃は効かないと?」
『グハハハハ!ソノトオリダ!ミテイタゾ!キサマラハマホウヲツカエナイノダロウ?!コレデナブリゴロシニシテヤル!!!』
なるほど、なるほど。
「ふっ」
『……アァ?』
「ふっ、ははは、あはははははは!!!ば、馬鹿だろお前!!!はーっはっはっは!!!」
『ナニガオカシイッ?!!!』
「いや、まあ、聞いてくれよ」
俺は、笑いながら言う。
「ニュークリアデターランスの世界には、様々な属性がある。拳銃、ライフル、格闘攻撃などの物理属性。レーザー、プラズマ、イオン、マイクロウェーブなどのエネルギー属性。その他にも、PSYや特殊武器による、火炎、電気、氷結、核などの属性がある」
『ナニガイイタイ?!!』
「Ω鯖はMODマシマシの修羅の国だぜ?物理無効、エネルギー無効なんてMODをつけた奴はゴロゴロいるんだよ。そして最後に一つ、これだけは覚えて死ね」
俺は、スノードロップとキティを構える。
「この銃は『完全に無属性』だ。『命中したエネミーに破壊したと言う結果だけを残す』んだよ」
『ナニヲ』
トリガーを引く。
『ガ』
グレーターデーモンの腕が弾け飛ぶ。
『ナ、ナゼダ』
足が弾け飛ぶ。
『ア、アア……』
羽が弾け飛ぶ。
『ウワアアアアアアアアアア!!!!ジャシンサマ、バンザアアアアアアアイ!!!!』
頭が弾けて、終わりだ。
『ア、アギ、アア……』
『アアアアアッ!!!』
『ギアッ、ギア!!!』
グレーターデーモンという頭と、最大戦力たるジャイアントを失ったモンスター軍は、完全に戦意を失った。
確かに、数の上ではまだまだモンスター軍の方が優位に立っているが、気持ちの部分で、根本的な部分で負けてしまったのだ。
情けない悲鳴を上げながら逃げていくモンスター軍。
それを背景にして、俺とシルヴィアは街へ戻った。
「おーい、門を開けろー」
「は、は、はひっ!はいぃっ!!!」
俺とシルヴィアは、兵士に門を開かせて街の中に戻る。
街の人々も、冒険者も、誰もが一言も喋らない。
ドン引きってやつだ。
やり過ぎたかな?
などと思って、少しばかり頭を抱える俺。
だが、その時だ。
「何をしているお前達?!英雄の凱旋だ!喝采せよ!!!」
ギルドマスターのおっさんが叫ぶ。
「お、おお」
「おおお……」
「おおおおおおおっ!!」
「「「「わああああああっ!!!!!」」」」
そうすると、皆が歓声を上げた。
若干、取ってつけたような、強制されてやっているみたいな感じがあるが、まあ、許容範囲内ということにしておこう。
料理やってると気づくんだけど、俺、そんなに料理上手くねーや。
おふくろって料理上手かったんだなあ。
カレー消費したら次何作ろうか……。