ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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応援しているなろう小説がマガジンで漫画化した。


21話 コストトの回し者

家……、拡張しなければならないな。

 

俺とシルヴィアの家は、辺境の開拓街の門の外に建ててある。

 

街の北側の、草原のど真ん中にだ。

 

例え、これからこの先に、開拓街がこちらを開拓しに来ても、俺達は退去する必要がない。

 

この大陸共通の法に、『開拓法』と言うのがあり、つまりは、墾田永年私財法である。

 

要するに、開拓した土地は開拓した人のものだ、ということ。

 

それで、草原にホテルの一室みたいな平屋がポツンとある。

 

時折、モンスターが来るので、ちょっとした塀もある。

 

だが、今日からは、追加で六人がここに住む。

 

拡張せねばなるまい。

 

 

 

拡張した。

 

とりあえず、より強固な塀と、部屋を六部屋、大浴場二つ、食堂とキッチン。

 

適当な三角屋根。

 

すまんがハウジングのセンスは期待しないでくれ。

 

奴隷達はびっくりしすぎて腰を抜かしていたが、無視して風呂に入れる。

 

気絶しているカッパーとパラスは、俺が俺の部屋の風呂に入れてやった。

 

リアル世界で自衛軍だった頃に、災害救助で人を風呂に入れる訓練をしておいて助かった。

 

アンドロイド兵士の指揮だけじゃなく、被災地の住民のメンタルケアも何故か自衛軍の仕事の一つだからな。

 

さて、それは置いといて、昼頃。

 

カッパーとパラスが目を覚ました。

 

「こ、ここは……?」

 

「俺の家だ」

 

「……?!?!!」

 

手足を見て驚いているカッパー。

 

「あ、ああ……!見える!目が見える!」

 

目が見えるようになったことを喜んでいるパラス。

 

「あ……、でも動くし、温度も感じる」

 

カッパーは理解を放棄して、使えるなら良いや、という方向に舵を切った。

 

パラスは、目が見えるだけで幸せだそうだ。バイオニックアームに文句はないらしい。

 

まあ、文句は受け付けないが。

 

「さて、まずは腹ごしらえだ。適当に用意するから、親睦を深めておけ」

 

「でしたら僕も……」

 

元料理人のカッパーが言った。

 

「いや、とりあえずは良い。なるべく、他のやつと会話をしておけ」

 

「は、はい」

 

奴隷達が自己紹介を始めたのを他所に、隣のキッチンで料理を開始する。

 

因みに、奴隷の話は、キッチンからでも聞こえる。

 

それもそのはず、キッチンと食堂の間には壁がないのだ。

 

ぶっちゃけ、料理した後に料理を持って移動したくないじゃん、と俺は思う。

 

さあ、大手スーパー『コストト』の冷凍パンを二袋開けてグリルにぶち込む。

 

クラムチャウダー、マカロニアンドチーズ、ローストチキン……、全て、『コストト』MODのものだ。

 

このコストトMODは、コストトの職員が製品のステマのために作ったと噂されているが、本当かどうかはわからない。

 

コストトと言えば、100年以上昔から存在しているスーパーだが、手を広げ過ぎて、今では宇宙開発すらやっていると言うのだから驚く話だ。

 

その大きさから、暗黒メガコーポなどと噂されるが、ちゃんとした企業だし、こうして、場末のVRゲームに自社製品を出してくれるなどのサービス精神もある優良企業だ。

 

俺はコストトの敵じゃありません、コストトを敵に回すとかとてもとても……。

 

と言う訳で、コストトのインスタント食品を温める。

 

インスタントと馬鹿にすることなかれ。二十一世紀では、インスタントとは、保存のために味が落ちている……、というような印象が少なからずあったが、二十二世紀には、技術の進歩により、全く味は落ちないし、見た目もよく、長持ちする……、というのが普通になっている。

 

俺は、というより、現代人は暇を持て余しているのが普通なので、皆料理には手間をかけるのだが、料理が下手なやつはどんなに手間暇をかけても、インスタントの味が超えられないという。

 

俺は、俺の好みの味の料理を作れるので、インスタントに負けている訳ではない。現代人の嗜みとして、料理はそこそこできる。

 

まあ、中には、未来人を気取って、ソイレント飲料だけで生活している奴もいるが、俺からすれば食事の快楽を捨てて馬鹿だな、と思う。

 

さて、そんなことはいい。

 

料理を運ぼう。

 

「わあ……!」

 

「凄え……」

 

「こんなに!」

 

「とりあえず食え、話はそれからだ」

 

飯を食わせる。

 

全員が食い終わったところで、俺は話をする。

 

「お前らには全員、戦ってもらう」

 

ごくりと、息を飲む声が聞こえる。

 

「鋼鉄の手足を取り付けて、食事もしっかり食わせてやった。一人部屋とベッドも用意して、風呂にも入れてやった。このことから分かるだろうが、決して、肉盾として使い捨てようなどと思ってはいないことは、理解できただろう?」

 

「「「「はい!」」」」

 

「俺達の目標を話そう。俺達は、冒険者として名声を集めて、この帝国の貴族になることだ」

 

「貴族に……」

 

奴隷達は驚いた顔をしている。

 

「それだけじゃない。貴族になった暁には、やがて帝国から独立し、亡国アーバンを復興する。こっちのシルヴィアは、アーバンの公爵だった女だ、正当性はある」

 

俺は言葉を続ける。

 

「そして、散り散りになったアーバンの貴族を集めて、戦力を再編し、アーバンを滅ぼしたミリシア教国に逆襲する」

 

「せ、戦争に連れて行かれるのか?」

 

「そのうちな。十年以内を目処としよう」

 

「だ、だけど、僕は戦ったことなんて……」

 

「安心しろ、その為の、鋼の肉体だ。しっかり戦えるようになっている。それに、訓練もしてやる」

 

俺は奴隷の顔を見回す。

 

「良いか?とりあえず、これからは冒険者として活動してもらうが、その際には、装備も、食い物も、住むところも出してやる。訓練もしてやる。冒険者としての報酬金も、山分けとまではいかないがしっかりと分配する。だから……、命をかけて戦え」

 

「「「「……はい!」」」」

 




あれはアニメで見た方が多分面白いと思うんだがな……。

単行本出たら買おう。

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