ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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銀蘇生ルート書けて満足。


大魔導師、蘇生する

水の中を、漂うような。

 

日曜日の朝の微睡みのような。

 

ふわふわ、してる。

 

……声が、聞こえる。

 

……『三ノ輪銀、先代勇者よ、蘇れ。そして、俺のものになれ』

 

 

 

……『ザオリク』

 

 

 

「……っは?!」

 

意識が覚醒する。

 

私は誰だ?

 

三ノ輪銀、勇者だ。

 

ここはどこだ?

 

ファンタジーRPGのようなベッドの上、ふかふかだ。端的に言えば分からない。

 

そして……、それより。

 

「園子は?!須美は?!!無事なのか?!!」

 

「落ち着け、三ノ輪銀」

 

目の前に現れたのは、白髪の男。中学生くらいかな。顔は……、結構タイプだ。ちょっと気だるげな雰囲気がまたカッコいいって違う違う!!

 

「なあお兄さん!ここはどこだ?!みんなは無事なのか?!」

 

「落ち着け」

 

「むぎゅ」

 

だ、抱きしめられっ……?!

 

……あ、でも良い匂いだ。薬草、かな。なんか、スーッとする。

 

それで、撫でられてる。

 

なんだか、こういう風に撫でてもらうのは久し振りだな。気持ち、良い……。

 

「落ち着いたか?」

 

「……う、うん」

 

「まず、話を聞いてくれるか?」

 

「分かった、聞くよ」

 

「結論から言おう。蘇生おめでとう」

 

蘇、生?

 

「三ノ輪銀、お前は二年ほど前に死んだ人間だ」

 

「わ、私が死んだ?そんな訳……」

 

……『三体のバーテックス……』

 

……『させるもんか……、絶対に!!!』

 

……『魂ってやつよぉぉぉ!!!!』

 

……そうだ。

 

私、は……。

 

園子と須美を守るため、一人で三体のバーテックスを相手にして、それで……。

 

「そっか、私、死んじゃったんだ……。あ、はは、呆気なかった、なあ。じゃあやっぱり、ここはあの世、なのか?」

 

「違う、よく聞け。お前は蘇った」

 

「………………へ?」

 

「二年前に死んだお前は、今日、つい先程蘇ったんだ」

 

「蘇ったって……、どうやって?!」

 

「俺の魔法によってだ」

 

魔法……?

 

「そんなものある訳」

 

「ある」

 

気だるげだけど、確信を持った、強い瞳に射抜かれる私。

 

「っ……」

 

な、なんなんだよぉ……。

 

「次に、ここはどこか。ここは、俺が魔法によって創り出した世界、ユートピアだ」

 

「あ、あり得ないだろっ!世界を作るとか、魔法とかって!」

 

「外を見てみろ」

 

「え……」

 

取り敢えず、私は、窓から外を見てみると……、そこには……!

 

空を飛ぶワイバーン、道を行くエルフ、商売をする獣人……!

 

街だ、街がある。

 

よくやっていたRPGの街並みが、ここに!!

 

「すっ、げえ、何だよ、これ……!」

 

「素晴らしいだろう?俺の創造した世界だ」

 

「これ、本当にお兄さんが作ったのか……?」

 

「そうだ」

 

マジかよ……。

 

「そ、それで、私を……、蘇らせた、と?」

 

「そうだ」

 

私はあの時、確かに死んだ。片腕も捥げて、腹には太い針が刺さって……、うん、死んだ。それは確かだ。

 

でも今は、両腕がちゃんとあるし、腹に穴だって空いてない。心臓が動いているのだって、感じられる。もちろん足だって付いてる、お化けじゃない。

 

死んだ、けど、生きてる。

 

おかしい。

 

おかしい!

 

おかしい!!

 

私、は、『何だ』?

 

『どうなっている』?!

 

「はーっ、はーっ、はーっ……!」

 

呼吸が荒くなる。

 

自分は一体、『何者』なんだ?!

 

「落ち着け。自我の連続性が途切れて戸惑っているんだろう?自分が何者か分からない、と」

 

よく分からないまま、私は頷きながら、お兄さんに縋り付く。

 

「わた、しは、『何だ』?生き返ったって、『何だ』?!」

 

怖い、怖い、怖い!!!

 

「安心しろ、魂魄はそのまま、肉体は生前のものを再構成してある」

 

「分から、ないよ、何だよ、それ……!魂魄とか再構成とか、分かんないんだよ!!」

 

「難しいことは言っていないんだがな。魂魄、つまり魂は星幽界という物質界より高位の次元に属しており、エーテル体に宿り、生物として活動したり、幽体になったりする。魂を物質界に降ろすのに要する魔力より、魂が保有するエネルギーの方が多いが……」

 

「だから、分かんないよ!分かんない分かんない分かんないッ!!あんたは何をしたんだッ!!!」

 

「……ああ、すまない。魔法のことになると饒舌になるのが俺の悪い癖だ。一から話そう。聞いてくれるか?」

 

お兄さんは縋り付く私の頭を優しく撫でながら、語り始めた……。

 

「魔法論理の生命学の基礎だが……、生命体が死ぬと、身体から魂魄、魂が離れて、離散するんだ。人によって離散する速度は違うが……、お前は常人よりも濃い魂を持っていた。だから、あまり離散していなかったんだよ。俺はそれを、魔法で拾い集め、一つにまとめた」

 

魂の、かけらを、拾い集めて……。

 

「肉体は既に火葬されていて存在しないだろう?かといって、死んだ頃に時を遡っても、肉体の損傷は激しかった。だから、いっそ一から作り直すことにした」

 

肉体、を、作り出した……?

 

「お前の遺灰から、肉体を再構成……、遺伝子レベルで全く同じ肉体を作り出したんだ。本来ならもっと良い肉体をプレゼントしてやりたいところだが……、どうやら人間はそれを嫌がるらしい。だから、生前と寸分違わぬ肉体にした」

 

肉体は、生前と全く同じ。

 

「そして、新たな肉体に魂を注ぎ込み……、現在に至る」

 

「……じゃあ、私は、三ノ輪銀なのか?三ノ輪銀で、良いのか?」

 

「もちろん。俺が保障しよう。お前は三ノ輪銀だ」

 

そう、か……。

 

「少し長い眠りから覚めたとでも思えば良い。何も恐れることはない」

 

力強く、男の人の力で、ぎゅっと抱きしめられることで、幾分か恐怖と混乱は和らいだ。

 

それじゃあ……。

 

「その、なんで、蘇らせてくれたんだ?」

 

「お前が欲しいからだ」

 

「……ひゃい?!!」

 

何、何だ?!こ、告白っ?!!

 

「勇者とは、皆須らく美しい魂を持っている。その魂が欲しかった」

 

「わ、私の、魂を?」

 

「ああ、綺麗だ。とても、綺麗だ。ずっと側に置いておきたい」

 

コ、コレクション感覚、なのか?

 

「それに、こうして生き返らせてみると、お前自身も可愛らしいじゃないか。是非俺のものになってくれ」

 

「か、かわっ?!何言ってんだよお兄さんは〜!」

 

て、照れるだろ〜!

 

ってか、俺のものになれって!く、口説いてんのかよぉ……?で、でもな?

 

「ちょっとドキッとしたけど……、やっぱ駄目だわ。私、帰らないと。家族の、みんなのところへ」

 

「?、お前に帰る場所なんてあるのか?」

 

「え……?」

 

「お前が死んで二年経つんだぞ?死んだ人間が急に現れるのは問題なんじゃないのか?」

 

「それ、は……」

 

そりゃそうだ。

 

本当に、私が死んで二年も経つなら、私がいきなり帰ってきたら大混乱になる。

 

「だから、こうしよう」

 

すると、お兄さんは告げた。

 

「ユートピアで、失った二年の時を過ごせ。それから決めろ。将来のことを」

 

そう、だよな。

 

二年間、死んでた、訳だし。

 

「過去改変を行い、お前が死ななかったことにしてもいい。全人類に洗脳をし、お前が生きていてもおかしくないと言う設定にしてもいい。何でも願いを叶えてやろう」

 

「そんな、ことが?」

 

「俺に不可能はない」

 

そう、なのか。

 

「なあ、一つだけ、教えてくれる?」

 

「何だ?」

 

「家族と、友達は、ちゃんと生きてるか?」

 

「ああ、生きている。大分ややこしいことになってはいるが」

 

「……そっか。生きてるんなら、私が死んだのは、無駄じゃなかった、ってことだよな」

 

「そうだ、お前は勇気を示した。正しく勇者だ。敬意を払おう」

 

「あ、ありがと……」

 

「さあ、今日は休め。明日からユートピアの案内と、勉強を教えてやる」

 

「うげっ、勉強はやだな……」

 

「元の世界に戻ることになった場合、相応の学力がないと困るんじゃないのか?それとも、勉強をせずにユートピアへの移住を決意するか?」

 

「うー、まあ、やっておくに越したことはない、か。分かったよ」

 

と言う訳で……、何がと言う訳なのかは分からないが、まあ、と言う訳で、今日のところはユートピアのパンフレットを読んで美味しいご飯を食べさせてもらって、ふかふかのベッドで、寝た。

 

パンフレットでは、謎のゆるキャラユーちゃんの存在が気になりつつも、この世界の成り立ち、各国の王様、創造主『明星真凛』についてなど、知識を得た。

 

 

 

そして、次の日。

 

まだ自分の中でモヤモヤがあって、いまいち現状を把握できてない。心の整理ができていない。

 

けれど、食事の美味しさとか、ベッドの心地よさとかをまた感じられるようになったことは幸せなことで、感謝すべきことだってことも、何となく分かった。

 

朝、メイドさん(猫耳猫尻尾が生えてた、びっくりだ)に起こしてもらって、食堂まで案内されると、お兄さんがいた。

 

ずらりと、異形のメイドさん達が立ち並ぶそこに、これまた美味しそうな朝食が。

 

「おはよう、銀。昨日はよく眠れたか?」

 

「あ、ああ、うん。ベッドがすんごいふかふかで、気付いたらぐっすり」

 

「それは良いことだ。さあ、朝食にしよう」

 

「あの、さ、昨日の夜ご飯の時も思ったけど、こんな豪勢なの、本当に良いのか?」

 

「うん?俺はこの世界の創造主で、お前はその客人だ。もてなすのは当然だろう?」

 

「いや、良いなら良いんだけどさ。私も嬉しいし」

 

「そうか?では席に座れ」

 

角の生えたメイドさんが椅子を引いてくれる。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「さあ、遠慮せず食べてくれ」

 

「じゃあ、いただきます!」

 

ん〜!

 

美味い!

 

ああ、須美なら、どこから出てくるのか分からない謎の語彙力で褒め称えるんだろうな。けど、私にはそんなことはできない。

 

ただ、ただ、美味しい。

 

それだけ。

 

……ってかさ?

 

「あの、そんなにじっと見られると食べづらいってか……、真凛さんはもう食べたのか?」

 

「ん、ああ、すまない。食事をする姿が可愛らしかったのでつい観察していた」

 

ナ、ナチュラルに口説いてくるなこの人?!無自覚なのか?

 

「あと、俺に食事、睡眠、排泄は必要ない。何も問題はない」

 

それって……。

 

「お腹、減らないのか?」

 

「減らない。必要ないんだ。まあ、趣味で食べたりもするが」

 

じゃあ、朝から飲み物だけで良いんだ……。そんなんで元気出るのかな?朝はしっかり食べないと力が出ないと個人的には思うけど。

 

「で、何飲んでんの?」

 

「魔都京都原産の日本酒だ」

 

「朝から酒って!しかも未成年!」

 

「この世界に未成年の飲酒を禁じる法はない。仮にあっても、俺は創造主だから法を守る必要などない」

 

スンゲェ横暴?!

 

悪いこと言ってるぜこの人?!!

 

「食事が終わったら授業だ」

 

「え、あ、うん!」

 

 

 

授業はすんごい分かりやすかった。分からないところはちゃんと教えてくれるし。

 

真顔で小粋なジョークを挟むもんだからかなり面白い。思いの外ユーモアがあるんだなこの人。

 

それで、ええと、授業の後は城の案内をされた。

 

ユートピアの中央に位置する、神都アルカディア。

 

そのまた中央の、ゴールデンドーン城。

 

ユートピア最初の建築物で、巨大な魔法のお城。真凛さんの居城。白亜の巨城。

 

中には、様々な種族のメイド達が揃っていて、魔法の仕掛けで一杯だ。

 

テーマパークのアトラクションみたいでテンション上がる!

 

「スゲー!マジでスゲー!!」

 

「はっはっは、そうだろうそうだろう!いやー、楽しいな!自慢するの楽しい!」

 

ヤバい、これは……、こっちも楽しい!

 

「明日は城下街を案内しよう」

 

「うんっ!よろしく、真凛さん!」

 

めっちゃ楽しいんだ!

 

魔法ってこんなにスゲーのか!

 

「あ、後ね、真凛さん、よかったら魔法も教えてくれる?」

 

「もちろんだとも。ああ、それとこれ」

 

「これは……?!」

 

スマホだ。

 

それも、勇者システム付き。

 

「な、何で?」

 

「一応、身を守る術くらいは持っておくべきだと思ってな。最新版の勇者システムを採用した擬似的なスマホだ。魔力駆動だから充電は心配するな」

 

「でも、変身、できるのか?」

 

「大気中のマナと自身のオドを組み合わせて変身する形式に変更した。もちろん、精霊もつく」

 

精霊……?

 

何だそれ?

 

『グルル……』

 

「うおっ?!なんか出た?!」

 

「それが精霊だ。まあ、些か悪趣味なんで大分手を加えさせてもらったが……、お前を守るものだ。安心しろ」

 

へえ、名前は?

 

応龍、か。

 

強そう。

 

その名の通りデフォルメされたドラゴンだ。

 

「さあ、今日はそろそろ寝ると良い」

 

「うん、分かった」

 

「寝る前は暇だろう?ユートピアの雑誌でも読むと良い。そして、眠くなったら寝るんだ」

 

「お、ありがと」

 

パンフレットも面白かったし、雑誌も期待できるな。

 

それじゃ、おやすみ。

 

また明日も、よろしくな!

 




因みに銀ちゃん攻略中は日本の、表の世界の時間は止まってます。止めました。

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