「少年、店番なのに本なんか読んでちゃダメにゃん?」
「あはは……、すいません。師匠から勉強をしておけと言いつけられているので」
「師匠?」
「はい!偉大なる錬金術師、アレックス様です!」
「へー、ここにある品物も、そのアレックス様が作ったにゃん?」
「そうですよ」
俺は、露店に屋台を出し、冒険者に役立つ品物を売ることにした。
そこに、早速最初のカモが!
カモではなく猫だったのだが。
「なんか、甘ーい匂いがしたにゃん?」
「ああ、それはこれですね」
俺は、ブロック食料、カロリーチャージャーの入った箱を見せる。
「何かにゃ?」
「これは、カロリーチャージャーと言って、一本食べるだけで、食事一回分くらいの栄養が得られる携帯食です。こちら、味見用に割ったものがあるので、食べてみてください」
「ほんとっ?!くれるにゃ?!」
「でも、味見したら買ってくださいね?」
「む、いくらにゃん?」
「四本入りで銅貨十枚です」
「むー、結構高いにゃあ……」
「でも、試しに食べてみれば分かりますよ!」
と、食わせてみる。
「にゃ……?!!!にゃにゃ、こ、これ、甘くって美味しいにゃ!!!おやつに買うにゃ!!!」
「あ、おやつはやめといた方がいいと思いますよ。栄養がとんでもなくたくさん入っているので、これをおやつにしていたらめちゃくちゃ太ります」
「んにゃ〜……。でも、すっごく美味しいにゃ!保存食って言っても、どれくらい保つにゃ?」
「えーと、師匠が言うには、中の袋を開けない限り、三年間は保つそうですよ」
「さ、三年間?!!!」
猫女は、何かを考えるような素振りを見せる。
「とりあえず、四箱くださいにゃ」
「ありがとうございます!」
「それと……、この腕輪は?」
「それは、万能の腕輪と言って、全ステータスを+10するアクセサリーです」
「………………は?」
「え?」
「全ステータスを+10……?」
「はい、そうですけど……?」
「ちょ、ちょっと待つにゃ……、『鑑定』!」
お、鑑定を使えるのか。
「にゃ……、にゃ、にゃあ……?!にゃんだこりゃあ!!!」
えっ、何だよ。
「フツーに国宝級アイテムにゃん?!何でこんな場末のバザーにこんなものを流すにゃん?!」
「師匠が、適当にその辺で売ってこいって……」
「少年の師匠は頭おかしいにゃん!!!」
そんなん言われましても。
しかし、やり過ぎだったのか?
ステータスを+10するアクセサリーの相場は金貨一枚からだったな。
ステータス全8項目を上げるので、金貨八枚ってところか。
「こ、こっちの剣は?!」
「こっちは、稲妻の剣と言いまして、雷属性の魔剣です」
属性魔剣だし、値段は金貨十枚ってところかな?
「い、い、い、雷属性の魔剣?!!!ダンジョンでもまだ未発見の、しかも属性剣!!!激レアにゃん!!!」
「あ、あと、こっちもおすすめですよ。ポーションジェルと言って、スライム状のポーションの塗り薬です。普通のポーションよりコンパクトなサイズで、効果は二倍以上なんですよー」
「にゃあっ!それもっ!ダンジョン未発見の特殊アイテムにゃっ!!!ちょ、ちょっと待つにゃ!今からパーティメンバー集めて銀行行ってお金下ろしてくるにゃ!!!だから、全部売っちゃダメにゃん!!!」
「はい、分かりました!お昼まではここにいますから、あまり急がなくても大丈夫ですよ」
「待ってるにゃん!絶対にゃん!」
そう言って、風のように走り去る猫女。
全く、騒がしいな……。
その一時間後、猫女が戻ってきた。
……明らかに、パーティメンバー以外のメンツを引き連れて。
「本当にこんなところにそんな良いもんがあるのか?」
「本当にゃ!私の目利きを疑うのかにゃ?!」
「雷属性の魔剣!魔剣!」
「馬鹿っ!それより腐らない保存食だろ!」
「違う、ポーションだ!」
冒険者が十人以上集まった。
「いらっしゃいませ!ご注文は?」
「魔剣!」「腕輪「ポーション!」腕輪を」「保存食!「保存「保存食!」保存食」」
あーあーあーあー。
「あの、並んでもらえますかー?!」
俺がそう言うと、冒険者は列をなす。
「では、ご注文をどうぞ」
「魔剣を見せてくれ!」
と、男の人間の剣士。
「はい、どうぞ」
見せてやる。
「おお……!いくらだ?!」
「金貨十枚で」
「安い?!よし、買った!」
「ありがとうございますー」
次、人間の女魔道士。
「腕輪を買うわ」
「金貨八枚です」
「やっすい!」
次、男獣人剣士。
「保存食!ありったけ!」
「お一人様四箱までとなっております。一箱銅貨十枚です」
次、男性爬虫人狩人。
「ポーションを」
「一つ銀貨三枚です」
よしよし、売れた売れた。
なろうで原敬に転生する作品見つけてぶったまげたわ……。