ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あああー。

続きが思い浮かばねえ!!


大魔導師、歌う

「♪"〜♪"〜」

 

「あー……、犬吠埼さんは、もうちょっと頑張りましょうね?」

 

「うう、はい……」

 

私、犬吠埼樹。

 

……人前で歌うのは、苦手だ。

 

 

 

「ふむ、人前で歌うのが苦手だと……?精神感応の魔法で恥や恐怖の概念を取り除くか?それとも、声帯をセイレーンのものと取り替え、声自体に魔力を付加するか?」

 

「ひっ……、な、なんか怖いこと言ってる?!」

 

部室に行って、何故か勇者部に定期的に顔を出す真凛さんにアドバイスを求めたところ、大分アレな回答が返ってきた。

 

「樹、相談する人間違ってるから!」

 

お姉ちゃんにツッコミを入れられる。

 

「で、でもぉ、もう魔法に頼るしか……」

 

「諦めないの!」

 

「じゃあほら、聴いている人達をみんなじゃがいもか何かだと思えば良いんじゃない?」

 

夏凜さんが言う。

 

「ならば視神経に干渉する魔法であらゆる生命体がじゃがいもに見えるようになる魔法を……」

 

「やめなさいっての!」

 

「ジョークだ、ジョーク」

 

「あんたが言うとジョークに聞こえないのよ!」

 

真凛さんは真面目な顔でジョークを言うから冗談なのか本気なのか分かんないよ……。

 

「しかし、恥や恐怖の概念を切り離す魔法はあまり使わないからな。たまには使わせてもらいたいんだが」

 

そんな、自転車に長い間乗ってないから感覚を忘れちゃいそう、みたいなニュアンスなんだ……。

 

「俺の魔法にかかれば、全裸で街を歩き回っても、露ほども恥を感じることはなくなるぞ」

 

「ぜんっ?!な、何をさせようとしてるんですかぁ?!!」

 

えっちです!

 

「落ち着け、あくまでも例え話だ。しかし、一時的にとはいえそこまでの度胸を得られるとすれば、それは素晴らしいことでは?」

 

「た、確かに……。い、一時的になら……」

 

そう言われれば……。

 

うう、ちょっとだけ、ちょっとだけなら……。

 

「駄目よ樹!それは悪魔の囁きなんだから!」

 

「俺は悪魔ではない」

 

「悪魔みたいなもんでしょ。人を堕落させようとしてくるんだから」

 

「む、そんなつもりはないぞ。真にお前達を想ってのことだ」

 

「……マジで言ってんの?」

 

お姉ちゃんが聞き返す。

 

「もちろん。俺はいつでもお前達のことを想っているぞ」

 

「ちょ、あんたねえ……」

 

ま、真凛さんはまたそんなこと言って……。

 

真面目な顔して言うから破壊力高いよ……。

 

「ねえ真凛、あんたって、私達のこと好きなの?」

 

「ああ、好きだとも」

 

「っ、あんたはね、ちょっとズレてんの!どうせ、神様気分で『全てを愛してるー』とかでしょ?」

 

「いや、お前達を、だ。俺の愛は創造物とお前達のような美しい魂を持つものに捧げる。だから、風。愛しているぞ」

 

お姉ちゃんの顎をくいっと自分の方へ向ける真凛さん!

 

あわわ、あわわわわ!

 

「ーーーっ❤︎」

 

あっ、お姉ちゃんがちょっと色っぽい声を?!

 

「……馬鹿、変態、エッチ、スケベ!何やってんのよ!!」

 

「少し触れたぐらいで怒るなよ」

 

「怒るに!決まって!いるでしょ?!」

 

「そうか、では……」

 

ああーっ?!お、お、お姉ちゃんが、真凛さんに抱きしめられてるぅーーー?!!

 

「よしよし」

 

「ーーー?!!!」

 

混乱のあまり真っ赤になってフリーズするお姉ちゃん。

 

と、そこに。

 

「結城友奈!アーンド東郷さんが、勇者部にただ今参上致しまし……、あっ、えと、失礼しましたー?!!!」

 

「あ、あらあら、風先輩……」

 

「………………はっ?!!!ゆ、友奈、東郷待って、これは違うのよ!違うのよー!!!」

 

ああもう、めちゃくちゃですよ!!!

 

 

 

「で?」

 

「で、とは?」

 

「なんであんな真似した訳?返答次第によっては……」

 

拳を鳴らすお姉ちゃん。ちょっと怖い。

 

「あんな真似とは?」

 

「とぼけないで!わ、私のこと、だっ、抱きしめたじゃない!!!」

 

「ああ、あれはな、やるとみんな喜ぶんだよ」

 

「……は?」

 

「城のメイドによくやっているんだが、皆大層喜んでくれるんだ。何でも、とても心が落ち着くんだとか」

 

「……つまり、悪気はない、の?」

 

「悪気など一片たりともないさ。むしろこうされると女性は喜ぶんじゃないのか?」

 

「はぁ〜。なんか、もう、良いわ。怒る気力もない。あんた、アレね、怒ってくれる人が身近にいなかったのね……」

 

そっか……。真凛さんは、周りに叱ってくれる人がいなかったんだ。

 

「ま、真凛君?いきなり女の子を抱きしめるのはいけないよ!」

 

友奈さんが真凛さんに注意する。

 

「そうなのか?次からは断りを入れよう」

 

「えーっと、じゃあ、そうして?」

 

「では抱きしめさせてくれ、友奈」

 

「えっ、私?!えっえっ、あっ、うん……❤︎」

 

あっさり身を預ける友奈さん。友奈さんは頼めば何でも言うことを聞いちゃうようなところがある。

 

悪い男の人に騙されちゃわないか心配だ。

 

「ちょ、ちょっと!コラ!友奈に手を出すなこのエロ魔法使い!」

 

お姉ちゃんが必死になって止めるけど、真凛さんは気にした様子がない。

 

「エロい魔法も使えるが、それ専門ではない」

 

「そうじゃなくって……、ああもう!友奈から離ーれーなーさーいー!!!」

 

「嫌だ断る。友奈は温かくて柔らかいな。抱き心地が良いぞ、褒めてやる」

 

「う、うん……❤︎」

 

顔を赤く染めながらも、真凛さんの胸の中で縮こまる友奈さん。

 

「ま、真凛君?!ゆ、友奈ちゃんに手出ししちゃ駄目ですっ!」

 

東郷先輩が車椅子のまま真凛さんに縋り付く。

 

「ならば美森が身代わりになるか?」

 

「くっ、致し方ありませんね……!!」

 

悔しそうに両腕を広げる東郷先輩。

 

「よしよし」

 

抱き上げる真凛さん。あれ、見た目より力持ちなんだ。東郷先輩を軽々と持ち上げた。

 

「あっ❤︎これは、少しだけ……、良いかもしれません❤︎」

 

って、ちょっと籠絡されてる?!

 

「東郷なら良いって訳でもないわよ!離れなさいー!」

 

真凛さんを東郷先輩から引き剥がすお姉ちゃん。

 

「ならば樹、来い」

 

「え?ええー?」

 

「人前で歌えるような勇気が欲しいのだろう?ならば、自分から男性に抱きつくようなことをすれば度胸がつくんじゃないか?」

 

い、一理ある?!

 

抱きついてみよう!

 

「うう、えいっ!」

 

「おお、よしよし」

 

あっ、凄い、薬草の匂い。

 

良い匂いする……、あったかい、落ち着く……。

 

「こ、こここここ、この変態ぃーーー!!!」

 

あっ?!お姉ちゃんの右ストレートが火を噴いたっ!!!

 

「って、痛ぁぁぁ?!!!」

 

「馬鹿だな、自動防御結界に引っかかる威力と敵意を向けるなよ」

 

その瞬間、真凛さんの頬の前に白い小さな魔法陣が浮かんで、お姉ちゃんの拳を弾いた。

 

うわぁ、あれ、ゴンって言ったよ、ゴンって……。

 

「うう、痛い……」

 

「大丈夫か。回復魔法をかけてやる」

 

そう言ってお姉ちゃんの手を握る真凛さん。

 

『ホイミ』

 

「あっ、痛みが引いた!」

 

「次からは気をつけろよ」

 

「うん、ありがと。……って、じゃない!!!樹から離れなさーい!私の目が黒いうちには、樹には誰にも手出しさせないんだから!!!」

 

「お姉ちゃん、それじゃ私、一生結婚できないよー!」

 

「可愛い可愛い私の樹を他所の男のところになんてやるかー!!!」

 

 

 

このあと、真凛さんは、なんだかんだで夏凜さんとも抱き合って、勇者部フルコンプと呟いていた。

 

うう、悪党だ……、根っからの悪党だよ……。

 

そして、場所は移ってカラオケ。

 

もちろん真凛さんもついてきた。

 

「あんた暇なの?」

 

「うん?暇ではないが、二年ほど余分に時間ができたからな」

 

「どういうこと?」

 

「ちょっとこちらの世界の時間を二年ほど止めた。つまり、ユートピアは二年ほど進んだ計算になるな」

 

「は、はぁ?!何やってんのよ?!」

 

「大丈夫だ、世界全体を止めたから、バーテックスの進行が早まるとかそういうのはない。とっくに世界は終わっているから関係はないが」

 

「詳しく説明しなさい!」

 

「ユートピアに移住するなら全て話すが」

 

「むー、何なのよ……」

 

「まあ良いだろう。さあ、歌声を聴かせてくれ」

 

「はあ、まあ良いわ。話さないのは、何か理由があってのことなんでしょ?あんたが私達のことを考えてくれているのは、何となく分かるし。さあ、歌うわよー!!」

 

そして歌い始めるお姉ちゃん。とっても上手!自信満々で歌うから、私とは大違いだ。うう、お姉ちゃんの度胸をちょっとでも分けてもらえたらなぁ。姉妹なのに何でこう違うんだろう。

 

点数は92点。凄い!

 

そして、お姉ちゃんに煽られた夏凜さんも、友奈さんと二人で歌った。

 

点数は92点。同じかぁ。

 

「次は樹ちゃんだね!」

 

「う、うん!」

 

大丈夫、私はできる、私はできる……。

 

………………。

 

う、み、見られてる……。

 

見られてるよぉ……。

 

うぅ〜、ううううう〜。

 

えっと、えっと。

 

「♪"〜♪"〜」

 

ああ、やっぱり……。

 

駄目だったよぉ……。

 

「うう、駄目でした」

 

「ま、まあまあ、これはカラオケ!練習だから!ほ、ほら、お菓子でも食べてって何やってるの真凛君?!」

 

「凄いぞ友奈、お前の精霊の牛鬼とやらはいくらでも食うな」

 

ああっ、真凛さんが牛鬼に餌付けを……。

 

「俺も何かペット的なの創ろうかな……。いやでも男が淫獣ポジのマスコットキャラ連れてんのもキモいかな……」

 

ブツブツ言いながらもお菓子を創り出して次々と牛鬼に食べさせる真凛さん。

 

「ぎゅ、牛鬼が太っちゃうよお!」

 

……なんだかフォアグラみたい。

 

あ、次は東郷先輩の番だ!

 

敬礼っ!

 

……東郷先輩も上手いなー。堂々とした歌声がカッコいい!

 

次は……。

 

「俺か」

 

えっ、ま、真凛さんも歌うの?

 

『俺は夜空を駆け抜ける流れ星、重力に逆らう虎のように……』

 

三百年以上昔のロックバンドの名曲だ。未だに色んなロックバンドにカバーされ続ける、ロックの殿堂のような曲を、原曲に忠実に再現しつつも真凛さんのカッコいい声で歌い上げている。

 

え?え?歌手か何か?

 

正直、中学生のカラオケレベルで披露して良い歌声じゃないよ!

 

点数は100点満点!

 

「あ、あんた、それ、魔法?」

 

「魔法で肉体を強化してはいるが……、声は自前だ」

 

そういえば真凛さんって、声が凄くカッコいいよね。

 

「なんか、納得いかないわ……」

 

 

 

帰り道。

 

お姉ちゃんの様子がちょっとおかしかった。

 

何かあったのかな。

 

私に相談……。

 

でき、ないか。

 

私、お姉ちゃんに頼ってばかりだ。

 

でも、いつかは、お姉ちゃんに頼ってもらえるようになりたい。家族なんだから、支え合わないと、ね?

 

そして次の日。

 

「……ビタミンは血行を良くして、喉の荒れを防ぐ、コエンザイムは喉の筋肉の活動を助け……」

 

わー。

 

なんか一杯ある……。

 

夏凜さんがサプリを持ってきた。

 

「流石です!」

 

「さあ樹!これを全種類飲んでみなさい!」

 

「えっ、全部ですか?!」

 

「俺も持ってきた。俺配合の魔法薬だ。使うか?」

 

カッコいい四角い瓶に入った青い液体……。

 

「さ、最終手段で……」

 

怪しいから……。でも、効果は絶大なんだろうなあ。

 

「取り敢えず、ちょっとサプリ飲んでみなさいよ」

 

「一種類なら」

 

「……まあ、樹はまだビギナーだしね」

 

と、サプリを飲んで歌ってみたけど、結局駄目で……。

 

うう、私、もう駄目なのかな……。

 

 

 

そして、テスト当日。

 

結局、何も対策を立てられなかったよぅ。

 

「では、犬吠埼さん」

 

「は、はい」

 

前に、出る。

 

そこでは。

 

人の視線。視線、視線。

 

う、うう、やっぱり、無理……。

 

あっ、あれ?

 

教科書から、何か、紙が?

 

何だろう、これ。

 

『樹ちゃんへ』

 

寄せ、書き……?

 

友奈さん、東郷先輩、夏凜さん、お姉ちゃん……、そして、真凛さん。

 

皆んな……!

 

私、歌うよ!

 

歌える、歌ってみせる!

 

「♪〜♪〜」

 

「……はい、犬吠埼さん、とても上手よ!」

 

「凄ーい!」

 

「上手いなあ」

 

ありがとう、勇者部の皆んな。

 

あ、それと真凛さんも。

 

皆んなが背中を押してくれたおかげです……!

 

 

 

お姉ちゃん、私、目標ができたよ。

 

今はまだ、話せないけど。

 

歌手を、目指してみたいんだ。

 

いつか、お姉ちゃんの隣を歩けるように。

 

私、頑張るよ。

 

 

 

あ、そうだ。

 

歌の指導は真凛さんに頼んでみよう……。

 




一応オチは思いついたんすけど、そこに至るまでの過程が謎。

あと、ワンチャンSS書くためだけにゆゆゆい始めてもいい。

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