ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ハンバーグ作るッかー。


25話 聖天王と勇者

この世界『リンクス』にその名を轟かせる八神将のうち、西を支配する偉大なる王、聖天王ダルバ。

 

彼は今、大いに満足していた。

 

何故ならば、自分の支配する西の王都『アルカディア』の辺境の村に、勇者が現れたからだ。

 

弱冠十歳にして、オークの群れを蹴散らす武勇、高いレベルの剣術、更に火、水、光の三属性を操るそうだ。

 

勇者……。

 

勇者とは、圧倒的な基礎ステータスの高さを持ち、多様多種なスキルを習得し、こと戦闘においては万能の存在。

 

チェスで例えるならばクイーンだろう。

 

勇者の出現率は、百年に一人だとか、一億人に一人だとか言われている。

 

これを取り込んで戦力にできたら……。

 

それは、自軍の大きな力になる。

 

スキルやJOBは遺伝する可能性も高いので、自分の妾にしても良いかもしれない。

 

「陛下、エクレール村の勇者をお連れしました」

 

ダルバの直下の騎士団、聖王騎士団に所属する騎士が玉座の前に現れて言った。

 

ダルバは、自らの、短めの金髪を撫で付ける。

 

「そうですか……、では、通しなさい」

 

「その、それが……」

 

「どうしましたか?」

 

騎士が言うには、勇者は、同時期に洗礼を受けた想い人が失踪し、塞ぎ込んでいるとのことであった。

 

「想い人、ですか……」

 

女の情愛というものは実に厄介だ。ダルバはそう思っている。

 

ダルバにも、情愛と言うものがない訳ではないのだが、それ以上に、強力な知性と理性が常に自らを制御している。

 

よってダルバは、情愛に溺れず、惑わされない人間である。

 

もちろん、できる範囲で人々を助け、施しをして、妻や子供を愛しているが、それに惑わされることはない。

 

だが、一般人は、特に女というものはそうではないとダルバは良く知っていた。

 

女という生き物は、我が子を守るためなら、愛する男のためなら、何だってやる存在だ。

 

さて、情愛が深い女は確かに良い女であるが、それはそれで厄介だと考えてしまう自分は冷たい人間なのかと思ってしまうが……。

 

「そうですか……。とりあえず、勇者をここに呼びなさい」

 

「はっ」

 

気持ちを切り替えて、勇者との会談に臨むダルバ。

 

そして、程なくして勇者が現れる。

 

「こんにちわ……」

 

「ふむ……」

 

可憐、その一言だった。

 

この西のアルカディア周辺ではかなり珍しい赤い髪は、長くも短くもない。

 

美しい空色の瞳もまた、珍しい。

 

体格は、まだ十歳で、成長しきっていないが、それでも、一般的な市井の臣とは比べ物にならないほどにしっかりとしており、肉付きも良かった。

 

その外見的特徴、能力、JOBは、総じて、この勇者が特別な存在であることを示唆しているように思える。

 

そう、まるで、神に選ばれたかのような……。

 

「あの……?」

 

「ああ、いや、聞いた話より何倍も美しかったから、つい見惚れてしまいましたよ」

 

「そ、そうですか。その、ありがとうございます……?」

 

「さて……、私は、このアルカディアの王、ダルバ・テラです」

 

「はい……」

 

美しい少女だ。

 

それは嘘ではない。

 

だが、どんな女も、このように辛そうな顔をしていては、真に美しいとは言えないだろうとダルバは思った。

 

「ええと……、確か、恋人が居なくなってしまったとか?」

 

「そ、その、まだ恋人じゃないです、けど、いずれは……」

 

「かわいそうに……。何も、君のように美しい女性を置いて失踪しなくても良いものを」

 

「やめてくださいっ!アレクは悪くないんです!きっと、何か理由があったんです!」

 

ダルバは、この時点で、この勇者の愛は強烈なものであると見抜いた。

 

一国の王たる自分にすら、怒鳴り声を上げるくらいには、その『想い人』とやらに入れ込んでいるのであろうということを。

 

これは、その想い人とやらを忘れさせるのは手間がかかると考える。

 

ダルバは、基本的に、自らの理性によって、効率的に物事を進行させる傾向にある。

 

女神ヒューラを信仰しているのも、それが一番効率的だからだ。

 

女神ヒューラがこの世界で最も名のある神であるから、その名を利用しているに過ぎない。

 

その信仰心は人並程しかなかった。

 

そんなダルバの見解では、この勇者に想い人を忘れさせるのは難しいということに。

 

「すみません、失言でしたね。貴女はアイリンで、その想い人はアレックスと言いましたか?」

 

「はい、そうです」

 

「アレックス君はどんな人でしたか?」

 

「えと、アレクは凄い人です。カッコよくて、賢くて、強いし……、あまりおしゃべりは得意じゃないんですけど、優しい人で……」

 

「例えば、そう、どんなスキルを持っていたか分かりますか?」

 

「えっと、確か……、格闘、錬金術、武器術、鑑定をレベル五と、雷魔法に氷魔法も持ってました」

 

ダルバは、それを聞いて、内心で大きく驚いた。

 

「(物理戦闘術をレベル五、上級魔法二種類に、貴重な鑑定持ちですって?何の冗談ですか、それは)」

 

その話が本当であれば、逃して良い人材ではない。

 

「良いでしょう。貴女の想い人である、アレックス君。こちらでも探してみます」

 

「ほっ、本当ですか?!」

 

「はい、但し……、その代わりに、今後は、我が軍に協力してもらいます」

 

「は、はい」

 

 

 

こうして、勇者という使える人材を得たダルバ。

 

勢力を拡大し、いずれバベルの百階層に……。

 

そんなことを夢想した。




ひき肉二キロを揉んで、玉ねぎ4個をみじん切り……。


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