ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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書きましたよゆゆゆ。

次どうしよーかなー。

サービス回やる?


大魔導師、叱る

「総攻撃、ね……」

 

夏凜ちゃんがそう呟く。

 

私達、勇者部のスマートフォンには、バーテックスの現在位置を確認する機能がある。

 

それを見れば一目瞭然だ。

 

七体。

 

七体ものバーテックスが一気に攻め込んできた。

 

この私、結城友奈は、自慢じゃないけれど勉強は得意じゃない。

 

でも、それでも、簡単な数の計算くらいはできる。

 

五対七。

 

それも、いつもなら五対一でやっとの相手が、だ。

 

今の状況がどれだけ不味いか、私にだってよく分かる。

 

だと言うのに……。

 

「ああ、これ!天魔よ!それは妾の酒じゃぞ!」

 

「まあまあ、良いだろちょっとくらい」

 

「異世界の戦士か……」

 

「面白い見世物じゃのう」

 

「ポセイドン、その言い方は良くない」

 

「何故女の戦士しかおらんのだ?」

 

わいわいがやがや。

 

………………。

 

「あのー、真凛君?」

 

「何だ?」

 

「その人達は?」

 

「ああ、こちらの世界で観光していてな。滅びる前に見て回ろうと言うことだ。今は目玉イベントの現地の勇者の戦いだ」

 

観光気分?!

 

わ、私達は決死の思いで戦うのに……?

 

「ああ、それと。どうしても危なくなったら助けてやっても良いぞ」

 

「ふん!大丈夫だもん!」

 

「拗ねるなよ友奈」

 

拗ねてないもん!

 

 

 

でも……、この時、素直に助けてって言えたら。

 

こんなことには、ならなかった、かもしれない。

 

 

 

やっぱり、七体ものバーテックスを相手するのは辛かった。

 

夏凜ちゃんが果敢に切り込んだ。

 

そこに便乗する形で、東郷さんが銃撃。

 

一体目はみんなと上手く連携して倒せた……。

 

けどそれは囮で。

 

鐘の付いたバーテックスが、その鐘を鳴らすと、音の衝撃が発生。

 

轟音の波動が私達を襲った。

 

「ぐっ、うう……?!」

 

あ、頭が……!

 

大きな音で頭が割れるように痛くなる!

 

「音は、みんなを、幸せに、するものなの!!!」

 

樹ちゃんがワイヤー型の武器で鐘の動きを止めた。

 

樹ちゃんが止めてくれなかったら本当に危なかったよ……。

 

そうしているうちに、風先輩が後ろに控えている二体のバーテックスを斬り伏せた。

 

流石風先輩!

 

「あ、あれ?」

 

と、思いきや、バーテックスが退いていく……?

 

どう言うこと?

 

「どうして……?退いてどうするつもりよ?」

 

風先輩が呟いた。

 

四体のバーテックスは、一箇所に集まった。

 

すると。

 

『『『『………………!!!』』』』

 

溶け合うように姿形を変えて、一つに合体した!

 

「合体した?!こんなの聞いたことないわよ?!」

 

「そんな……」

 

勇者部一同に衝撃と不安が。

 

いけない。

 

「で、でも、これで一度に倒せるよ!」

 

拙い言葉だけど、フォローしておく。

 

そう、そうだ。

 

これで一度に四体のバーテックスを倒せるんだ。

 

この合体バーテックスさえ倒せば、形勢逆転だよね!

 

「友奈の言う通りよ!協力して倒すわよ!」

 

風先輩が声を上げる。

 

「「「「はいっ!」」」」

 

でも、そんな私達を嘲笑うかのように……。

 

合体バーテックスは、火を噴いた。

 

「え?」

 

人の背丈ほどもある大きな火の玉を無数に展開し、それを放って来る。

 

「……ッ!!」

 

避けなきゃ!!

 

いや、違う、これは……!!

 

「何これっ!!追尾ッ、する……?!」

 

夏凜ちゃんが墜とされた?!

 

「ああっ!!」

 

「いやぁぁぁ!!!」

 

風先輩と樹ちゃんも躱しきれずに火の玉に当たった!

 

「ならっ、直接ぶつけて……!!」

 

それなら、追尾する火の玉をこのまま合体バーテックスにぶつければ!!

 

「なっ?!」

 

そう思った私は浅はかだった。

 

合体バーテックスは、火の玉を再度出して、合体バーテックスの方へ向かう私の正面から火の玉を放った!

 

「まずっ……、挟み撃ちにされっ、きゃあああ!!!」

 

私を追尾していた火の玉と、新たに出された火の玉、両方にぶつかった私もあえなく撃沈。

 

離れた箇所にいる東郷さんにも、火の玉は放たれ、大ダメージを与えた……。

 

 

 

『どうだ、そろそろ手を貸すか?』

 

脳内に真凛君の声が響く。

 

「黙り、なさい……!私達には、切り札があるのよ!」

 

風先輩が声を張り上げて、立ち上がる。

 

「満開……ッ!!!」

 

『……なんてことを!はぁ、お前は本当にもう……、馬鹿なことをしたな!!』

 

真凛君の声は、悪態をついて、それきり聞こえなくなった。

 

にしても、満開……。

 

「行ける、これなら!はああああ!!!」

 

『………………!!!』

 

明らかにパワーアップした様子の風先輩は、合体バーテックスに果敢に向かっていった。

 

一方で、東郷さんもそれに続くかのように満開。

 

目の前にいるバーテックスを倒す。

 

樹ちゃんも満開。

 

高速移動するバーテックスを捕まえて、倒す。

 

いい調子だ。

 

このまま合体バーテックスを倒す!

 

「私が抑えているうちに封印してっ!!!!」

 

絶叫する風先輩。

 

合体バーテックスから放たれた特大の火の玉を防ぎながら、指示を飛ばす。

 

それを了承した私達は、合体バーテックスを封印する!

 

「そ、そんな!」

 

合体バーテックスの御霊は巨大で、その上、宇宙に向かって飛び出して行った。

 

これじゃ、手の出しようが……!!

 

……いや、諦めちゃ駄目だ!

 

ここで私が退いたら、世界が……!!

 

「友奈ちゃん、乗って!」

 

「東郷さん!」

 

東郷さんの満開……、飛行する要塞のようなものに乗せてもらい、宇宙へ!!

 

「どんなに敵が大きくたって……、諦めるもんか!!」

 

勇者って、そういうものだよね……!!

 

途中、御魂が攻撃してくるアクシデントがあったけど、東郷さんの複数攻撃、マルチロックオンで迎撃。

 

すぐ側まで、来た!

 

ふらつく東郷さんを支え、私は。

 

「見ててね、東郷さん。……やっつけてくる!!」

 

満開……!!!

 

 

 

満開した私の力は、自分で言うのも何だけど凄まじかった。

 

凄いパワーで御魂を砕き、破壊した。

 

挫けそうになった時も、勇者部五カ条が私を勇気付けてくれた。

 

そこで、力の全てを出し切った私は、東郷さんと一緒に、大気圏に突入した。

 

今回ばかりは、流石に死んじゃうかな……。

 

『本当に、馬鹿なことをしたな、勇者部……』

 

真凛君の声が心に響いて……。

 

そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

「ここ、は?」

 

病院、かな?

 

「あ、れ?真凛君?」

 

「……馬鹿だな、お前らは」

 

え?ええっ?

 

何で急に怒られたの?

 

「何故あんなことをした」

 

「あんなこと……?」

 

「はぁ、分かっていないのか。取り敢えず、ついてこい」

 

「う、うん」

 

「その前に、お茶だ、飲んどけ」

 

「ありがとう……、?」

 

あれ?味が分からない……?

 

「……やっぱりな、味覚、ないだろ」

 

「え、と、うん」

 

「来い、治してやる、とは言わないが、どうにかしてやる」

 

「ほ、本当?!」

 

「いいから来い」

 

「う、うん」

 

 

 

「夏凜以外の、馬鹿をやった勇者部。整列」

 

「何よ急に!」

 

「その、どうしたんですか?」

 

「黙って並べ」

 

真凛君の迫力に押されて全員が一列に並ぶ。

 

「死霊術式、展開。組織代替!」

 

「……あ!目が見える!」

 

「耳が聞こえます!」

 

「こえがでる!」

 

治った、のかな?

 

「そらよ」

 

「むぐうー」

 

口にチョコレートを突っ込まれた!

 

ん、あ、甘い!

 

けど、なんだか違う、みたいな?

 

「あ、ありがと。凄く助かるわ」

 

「ありがとうございます!」

 

「本当にありがとうございます」

 

風先輩、樹ちゃん、東郷さんがお礼を言う。

 

私も。

 

「ありがとう、真凛君!」

 

お礼を言った。

 

「黙っていろ馬鹿共」

 

「「「「え?」」」」

 

「それは死霊術による組織の代替に過ぎない。完全な治癒を望むなら、患部を切除して再生成若しくは移植が不可欠だ」

 

「は?え?」

 

どう言う、こと?

 

「風、お前のその目」

 

「な、何よ」

 

「日常生活ではあまり問題はないが、距離感や動体視力、色彩感覚が微妙に欠落している」

 

「そ、そう、なの?」

 

「樹、お前のその声」

 

「な、なんですか?」

 

「会話程度ならば問題はないが、抑揚や高低音域、大声などは出せない。歌などは以ての外だ」

 

「え……?」

 

「美森、お前のその耳」

 

「……はい」

 

「ある程度の音域なら聞こえるが、高音域、小さな音は拾えない。老人並だ」

 

「……っ、そう、ですか」

 

え?

 

え?

 

どういうこと……?

 

「そして、友奈、お前のその舌」

 

「………………」

 

「元のお前がどれほど繊細な味覚を持ち合わせていたかは分からないが、確実に性能は落ちていると思え。繊細な味は分からないだろう」

 

「……そっか」

 

つまり……。

 

「ど、どういう事?あんたでも完全には……」

 

「そうだ。俺にも完全には治せなかった。いや、厳密には治していない」

 

「「「「………………」」」」

 

そう、なんだ。

 

「……そう、なのね」

 

「で、でも、おいしゃさんはそのうちなおるっていってたから、だいじょうぶだよ!」

 

「え、ええ、そうですよね」

 

で、でも!

 

「そう、そうだよ!すぐに治っちゃうよ、こんなの!それより、少しでも治してくれてありがとう、真凛君!」

 

「だから、治してなんかいない」

 

「え?」

 

「お前らの内在魔力……、オドを、体内に刻んだ死霊術の術式を刻んだ魔術回路に流れ込むように設定し、擬似的に活動するようにしているんだよ」

 

「?えっと?」

 

「……義手のようなものだ」

 

「成る程?」

 

え?

 

どういう事?

 

治してはいないの?

 

と、言うより……。

 

「あ、あの、真凛君?なんか怒ってない?」

 

「当然だろう」

 

うええ、怒ってるの……?

 

「何故、あんな醜いものに助けを求めた?俺ならば、より完全に、対価など必要とせずに救ってやれた」

 

「それは……」

 

だって、それは。

 

「ちょっと、意地を張ってた、かも」

 

確かに、こんな大変なことになるくらいなら、真凛君に助けてもらった方が良かった、よね。

 

「……意地でこんなことを?」

 

「……うん」

 

「バーカ」

 

「ううぅ……」

 

ストレートに罵倒された……。

 

「で、でも、バーテックスは全部倒したんだし、これで世界は平和になったね!」

 

「そ、そうよね!」

 

夏凜ちゃんが同意する。

 

そう、そうなのだ!

 

世界は平和になったのだー!

 

「そうね!ほら、真凛!あんたが思ってたみたいに、世界は滅んだりしなかったわよ!」

 

風先輩が真凛君に指を指して宣言する。

 

「………………本当にそう思うか?」

 

「な、何よ……?」

 

「……まあ、そう思うならそうなんだろうよ。じゃあな」

 

「な、何?そんなこと……、あっ、消えた!」

 

真凛君……?

 

「くそー!あいつめー!言いたい放題言って消えちゃうなんてー!」

 

 

 

「真凛君、なんであんなに怒ってたのかな……」

 




次は傭兵の書き溜めを投下します。

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