ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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近所のファミレス、量が少ない。


35話 攻略開始

五人のおねーさんと共に冒険に出発だ。

 

朝六時にはギルドに集まって、出発することに。

 

猫獣人のナーゴが十分くらい遅刻するが、いつものことらしいのでスルー。

 

因みに、正確な日時は、脳内ネットワークで時報が流れるようになったので、分かりやすくなったのだが、そもそも分などと言う単位は使われない。

 

女神のせいで、時間や暦については地球と同じなのだが、時計はないので正確な時間は誰も測れないのだ。

 

仕方がないので、俺が、脳内ネットワークで決まった時間に様々な放送をすることで時報にしている。

 

朝六時から十分間放送されるニュース番組……、と言う名の、エクスシアでの出来事を話すだけの番組。

 

昼十二時から一時間放送される、『今日のクラシック音楽』に、午後六時から放送される『今日の芸』と言う、サーカスや芸人を呼び寄せてやらせる芸の番組を二時間。

 

それで終わりだ。

 

まあ、まだ始まってからそんなに時間が経ってないからな。

 

次に買う奴隷は、ニュースキャスターや芸人にしてもいいだろう。

 

しかし……、そんないつものテレビ番組と違って、今回は凄いぞ。

 

丁稚のエイハブ君と、五人のおねーさんの冒険の様子を生放送でお届け!

 

なお、俺は、冒険者ギルドに行ったり、外に出る時はいつも、顔を特殊メイクで誤魔化している。具体的には糸目の蛇のような雰囲気の少年にしてある。今にも「13kmや」とか言い出しそうだ。ロン毛だけど。

 

本当の俺はもっと悪人面してる。具体的に言えば二重人格の黄金の闘士の黒い方、みたいな。流石に眼球は赤くはないのだが。

 

 

 

それで……、まあ早速、普通にダンジョンに入場。

 

陣形は、斥候のナーゴを先頭にして、戦士ダーナと剣士ガギリ、真ん中に俺、そして後列に回復術師カトリーヌ、魔導師リリーベル。

 

おお、リリーベル。

 

俺は馬鹿かもしれんがぶっ倒れりゃしないさ。

 

なんてったってウキウキしてるからな。

 

ジングル、ジングル、ジングルってか?

 

心の中で好きな曲を流しながら、ダンジョンの道を行く。

 

「くんくん……、ゴブリンが来るにゃ」

 

曲がり角の先にゴブリンがいるそうだ。

 

「よーし、坊主!やってみろ!」

 

「はい」

 

俺は曲がり角を曲がる。

 

『ギッ!』『ガギャガ!』『ギギ!』

 

お、三体。

 

俺は、腰の可塑性錬金ミスリル棒を取り出して、錬金をかけて二本の剣にする。

 

「疾ッ」

 

独特の構えから繰り出される、柔らかな動きの流れるような剣技で、ゴブリンを迎え撃つ。

 

『ガガー!』

 

間合いに入ってきたゴブリンの手首を斬り落とし、足首を斬り落とす。そして、動けなくなったところをとどめ。

 

『ギャー!!』

 

相手の剣は受け流して体勢を崩させてから、首を刎ねる。

 

『ギイ!』

 

相手を中心に円を描くように移動して、狙いをつけにくくしてから、流れるように心臓を貫く。

 

こんなもんか。

 

「ふむ……、どう思う、ガギリ?」

 

「ん、柔らかい」

 

「だな。ありゃ、隙を見せたところからじわじわ殺していく技だ」

 

「体幹」

 

「そうだな、体幹もやべえ。ガキだっつうのに巨人種みてえに芯がしっかりしてやがる。なのに、あのおかしな足運びで素早く移動して、狙いがつけられねえ」

 

「回転」

 

「おう、そうだ。柔らかいだけじゃなく、回転と共に遠心力を込めて繰り出される一撃は、全身の力が込められてやがる」

 

そんなことを、ダーナとガギリが言い合っている。

 

「おい、坊主!錬金術は使わねえのか?」

 

とダーナに問われる。

 

「ゴブリン程度には火力過多ですから。こんなところで魔力を無駄使いできません」

 

と、答えると。

 

「なるほどな、頭も回るらしい」

 

そう言って、ダーナはニヤリと笑った。

 

これである程度は認められたらしい。

 

 

 

まあ、ゴブリン程度なら軽く突破できますわな。

 

ほぼ足を止めずに進み続けて、朝の六時から行軍。

 

今は昼の十二時。

 

脳内放送でクラシックが流れてくる。

 

もちろん、消えろと思えば消せるが。

 

「お、音楽だ。ってことは、昼か」

 

「ダンジョンに潜ってると時間の感覚がなくなっていくのですが、このように決まった時間に『ばんぐみ』が流れると、時間が分かって便利ですねえ」

 

と、カトリーヌが言った。

 

「はは、ありがとうございます」

 

そんなことを言いながら俺は、4リットルは入りそうな寸胴鍋を取り出す。

 

「……何するつもりかしら?」

 

リリーベルが言った。

 

俺は答えた。

 

「何って……、料理するんですけど」

 

「あは、ははははは!面白いわね、坊や!ダンジョンで料理だなんて!」

 

「そうですか?あ、これ、お願いします」

 

俺は、リリーベルに杭を渡す。

 

「……何かしら?」

 

「これを、僕達のいる空間の四方に突き刺してください。この杭四つに囲まれた空間は、一日に六時間だけ、『モンスターが入れなくなります』から」

 

「へえ……!これも、錬金王の発明した魔導具、って訳ね」

 

そう、これは、俺が作った魔導具、『結界杭』である。

 

この杭で囲まれた空間は、モンスターに気づかれにくくなり、モンスターは侵入できなくなるのだ。

 

一日六時間、リキャストタイム十八時間。

 

「そんなもんがあるなら、寝るときに使えよ」

 

と、ダーナの尤もなツッコミが入るが……。

 

「そうくると思って、もう一組持ってます」

 

と、俺がアイテムボックスポーチから杭を取り出して見せると、ならいい、と言って座り込んだ。

 

俺は、寸胴鍋の下に魔法陣の描かれた布を敷く。

 

これは、鉄の部分のつまみを回すことで、一日の間、八時間火を発せられる携帯コンロ、その名も『コンロ布』である。

 

そしてデン!

 

缶詰!

 

トマト缶!豆の水煮!サイコロ状に切られたランチョンミート!コンソメキューブ!

 

「これは?」

 

リリーベルが尋ねてくる。

 

「これは缶詰です。錬金術によって、しばらくの間は腐らないように加工された食材が入った鉄の容器ですね」

 

そう言って俺は、缶切りで缶を開けていく。

 

それを、寸胴鍋にどばどば入れる。

 

それを、コンロ布で温める。

 

「それは?」

 

「これは、肉と野菜の茹で汁と、塩胡椒を濃縮した『スープの素』です」

 

まあ、普通にコンソメキューブであるのだが。

 

このコンソメキューブは、一つでちょうど冒険者の一食分、すなわち常人の二食分の塩分がある。

 

「へえー?それを入れれば、何でもスープになるの?」

 

「まあ、理論上は?」

 

そうして、食材を軽く煮込む俺。

 

「でも、煮込むほどゆっくりしてられないわよ?」

 

「ああ、この缶詰に入っているものは、必ず加熱処理されているんで、そのまま食べても大丈夫です。けど、どうせなら温めたほうが良いかと思いまして」

 

そう言って、十五分くらい軽く煮込んだら完成ね……。

 

「それと、これをどうぞ」

 

「これは?」

 

「パンの缶詰です。大きめのブリオッシュが二つ入っています」

 

「ブリオッシュ?」

 

「えーと、ブリオッシュって言うのは、バターや卵を多目に使った、ふわふわのパンです」

 

「ふーん。でも、その缶詰って言うのはいつまで保管できるの?白パンなんてすぐに腐るでしょ?」

 

「えーと、大体、高温多湿を避け、開封しなければ、製造してから五年間は保管できます」

 

「………………は?」

 

「五年間は保管できます」

 

「え?腐らないの?」

 

「えーとですね、腐敗というのは、細菌が……、あー、えーと……」

 

俺は手を叩く。

 

「皆さんの身の回りには、常に、目に見えないほど小さな虫がいるのです。その虫が、食品に取り付いて繁殖することで、腐敗が起きます。しかし、この腐敗虫は、空気がないところでは生きられず、熱湯で死にます」

 

「ふむふむ」

 

「なので、食品を一度茹でて、腐敗虫を熱湯で殺してから、空気に触れないように空気を抜いた鉄の入れ物にいれることにより、腐敗虫の侵入を防ぎ、五年間は腐らないようにできるのです」

 

「なるほど……、新しい学説ね」

 

「そうなんですか?錬金王様は、既存の学問はどうでも良いと思っているらしくて、あまり知らないそうですよ。……はい、どうぞ!おかわりもありますよ!」

 

と、スープとブリオッシュを配る。

 

木製の皿にたっぷりとトマトと豆のスープを入れてやり、ステンレスの先割れスプーンを持たせ、パンを食わせる。

 

「うーん、美味いなこりゃ!」

 

「美味」

 

「こんなに美味しいと、わざわざ飲食店に行く意味がなくなるのですが……」

 

「にゃにゃ?!こ、このパン、すっごくおいしーにゃあ!スープも、肉がやわらかーでサイコーにゃ!」

 

「あー……、錬金王って本当に賢いわね。このレベルの製品を一般流通させたら、一体どれだけの商店が潰れるのやら……。百階層の先でしか売らないって判断は本当に英断だわ」

 

などと褒められて。

 

「はい、デザートに、南国果実の砂糖漬けです」

 

「ダンジョンでデザート?ははははは!笑えるな!」

 

デザートも食べてから出発だ。

 




メガ盛りだけど食べ残したらお持ち帰りできます!!!みたいな店ないの?

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