「よしよし、シェロは可愛いなー」
「うう〜、これでも私、大人ですからね〜?」
「うん?知ってるよ?」
「では、撫でるのはちょっと〜……」
「大人扱いしろってこと?じゃあ胸とかお尻とか撫でて良い?」
「大人扱いだとセクハラになるんですか〜?」
シェロと気さくな会話をする俺。
仲良しだなこりゃ。
着実に信頼関係を構築しつつある今日、シェロからお願いがあった。
曰く、「これは騎空士さんにお任せする予定でしたけど〜、ポートブリーズ近郊の森に出る魔物の間引きをお願いしたいんですよ〜。ついでに、手加減のレクチャーもしますね〜」と。
これはつまり、シェロとデートだ。
ドキドキだ。
俺は武器を手に、ルンルン気分で外に出た。
今は合流したシェロといちゃついてるところだ。
「では、行きますよ〜?」
「待ってくれ、シェロの安全のために召喚獣を」
「わーわーわー!駄目です〜!あんなものポンポン出さないで下さい〜!」
「ちっちゃいやつだから!ちっちゃいやつだから!」
「駄目です〜!!」
「も、もしもシェロが怪我でもしたら大変だろう?!」
「最低限、身を守る術くらい心得ています〜!商人としてそれくらいは、ですね〜」
「まあ、分かった。じゃあせめて強化魔法はかけさせてくれ」
「まあ、それくらいなら〜」
『プロテス』『シェル』『ヘイスト』『テトラカーン』『マカラカーン』『ラクカジャ』『スクカジャ』『マカカジャ』『タルカジャ』『バイキルト』『スカラ』『肉体の保護』……
「あ、あの〜、もう良いですよ〜?」
「?、これくらいでいいのか?加減が分からん」
「さっきから目の覚めるほどに身体が軽いですから〜、明らかにやり過ぎですね〜」
「そうか」
では行こうか、森へ。
「今日は曇りで、森の中は暗いですから〜、気をつけて下さ」
『ラナリオン』
「……晴れ、ましたねぇ〜」
「ああ、曇りが嫌なんだろう?天候を操作して晴れにしたよ」
「はぁ〜。あのですねぇ、天候の操作なんて、星晶獣くらいじゃないとできないことなんですよ〜?」
「そうなのか?ごめんね?曇りに戻す?」
「いえ、戻すのも不自然でしょうし〜」
そうか。
「もともとこれは下位の呪文でね、簡単な魔法なんだよ」
「貴方にとっては簡単でも、この世界の人間にはとても難しいことですからね〜?」
「なら、上位魔法のラナルータは使わない方がいいな」
「どんな魔法なんですか〜?」
ん?
「ラナルータは昼夜を逆転させる。時間を進める魔法だ」
「じ、時間の加速まで……」
驚いているが、これくらいは児戯の範疇なんだがな。
「おっと、そろそろ魔物と出くわすぞ、退がっててね」
「分かるんですか〜?」
「ああ、探知魔法をかけている。この島にいる魔物は、一匹残らず把握している」
「ははあ〜、それはそれは〜」
さて、現れたのは……。
『ライブラ』
ウインドラビットだ。
うん、雑魚。
「その魔法は何ですか〜?」
「ああ、これはライブラ。相手の詳細なデータを見ることができる。名前や弱点、特技とかな」
「……それも反則ですね〜。魔物研究家垂涎ものの大魔法ですよ〜」
初歩の初歩なんだがなぁ。
「それじゃあ、倒そうか」
「はい〜」
うーん、どうするか。森だし、火を使ってしまうと山火事になったりするかもしれん。
じゃあこうだ。
『二フラム』
『?!』
「……あの、消えたんですが〜」
「うん?二フラムは相手を消滅させる魔法だよ?」
「消滅……?」
「うん、この世界から完全に消滅させる魔法さ」
「あの、ですね〜。それ、二度と使わないで下さい〜」
えっ?
「何でだ?指パッチン一つで即殺できるのに」
「良いですか、よく考えて下さい〜。指パッチン一つで生き物を消滅させる人と、仲良くしたいと思う女の子はいるでしょうか〜?」
「はっ?!た、確かに。怖がらせてしまう……?」
そんな、馬鹿なっ!
「シェロ、違う、違うんだ。君を消そうだなんて思ってない。どうか怖がらないでくれ」
「それは分かってますよ〜。でも、次からは気を付けて下さいね〜」
「そうか!良かった……。では次は得意なザキとムドとデスを見せるよ」
「どんな魔法ですか〜?」
「呪殺だ。相手を呪いの言葉で即死させる。生命の操作は得意でね。死体が残るのはナンセンスだが」
「……それも、駄目ですね〜」
えっ。
「何度も言いますが〜、相手を即死させる魔法なんて、全空を探してもありません〜。異端中の異端です〜。それに、先ほども言ったように、目の前の相手を即死させられる人と仲良くなりたい人はいませんからね〜?」
「あっ、あー、そうだな、ごめんね」
「悪気がないのがまた怖いですね〜……」
「ごめん、本当にごめん。そうだ、大丈夫だよ!シェロが死んだら生き返してあげるから!」
「し、死者蘇生も可能なんですか?!」
「むしろ得意だけど」
生命の操作は得意だって言ったろ。
「良いですか、絶対に、絶対に言いふらさないで下さいね?死者蘇生が可能だと知られたら、全空から引っ張りだこです〜!!」
「ははは、もちろん、それは分かってるよ。つまらない面倒事は望ましくないからね」
死者蘇生は高等技術、それは色んな世界共通か。
「おや、ラウンドウルフの群れだね」
「次こそはこう、普通に、お願いしますよ〜?」
「ああ、任せろ」
『マハザンマ』
『ッゲ』『ガッ』『グッ』
ザン系は衝撃波の魔法。食らったラウンドウルフの群れは破裂してミンチになった。
「ひっ」
小さく悲鳴を上げるシェロ。
「うーん、やはりナンセンスだ。死体が汚らしい、美しくない」
「も、もっとグロテスクじゃない、普通の魔法は……?」
「うーん、雷を出すのは普通かな?」
「ええ、光属性の魔法ですね〜」
「氷や炎は?」
「水属性、火属性ですね〜」
「じゃあ、それらをメインに使っていくことにしようか」
「それが良いですね〜」
「ああ、因みに属性と言うけれど、万能属性はどうなの?」
「万能、属性……?」
メギド系だ。
その気になれば地上を焼き払えるメギドアークも当然使えるぞ!
「すみません、その、万能属性とは?」
「どんな相手に対しても一定量のダメージを与える属性だ」
「ん〜、異端ですね〜」
そうか、メギド系も駄目か。割と好きなんだがな。
メギド系みたいに魔力でゴリ押しできる万能属性魔法はよく使うから得意なんだけど。
「重力は駄目か?」
「ちょっと聞いたことないですね〜」
「じゃあ……」
と、そんな調子で、この世界の現実と俺の魔法力のすり合わせを済ませた俺とシェロ。
シェロとはもう十分に仲良しだな。
最早恋人同士と言っても良いだろう。
「なあシェロ」
「い、いえ〜」
あれれ〜?
「良いじゃないか、私は君を愛しているよ」
「あらら〜?『俺』じゃないんですか〜?」
「ああ、普段は理知的な大魔術師キャラでやっていきたい。その方が女受けがいいかと思って」
「動機が最低ですね〜」
そう?
「それで?式はいつにする?」
「で、ですから〜、まだ知り合って間もないと言うか〜、熱烈に求められても困ると言うか〜」
んー。
「本音は?」
「……異性からこんなにも求められたことはないので〜、ちょっと緊張してますね〜」
少し、頬を赤らめ、そっぽを向くシェロ。
あら可愛い。
「おっとぉ?そこのエルーンのお嬢さん?可愛らしいね、私と食事でもどうかな?」
「………………」
はっ。
シェロの目が冷たい!
「あ、いや、これはほら」
「もう、自分の魔法で女の子を作って、それを好きにすればいいんじゃないですかね〜」
「それはちょっと。なんかそれ物凄く背徳的なオナニーなんじゃないかなって」
「……あー、そう言う見方もできますねぇ〜」
「さ、さて、今日の仕事は終わりかな?それなら私はナンパ……、げふんげふん、散歩をしてくるつもりだけど」
「はぁ〜、良いですよ〜。来週にはポートブリーズを発ちますから、それまでは好きに過ごして下さい〜」
「ああ、分かったよ」
と言う訳で。
ラカムを探します。
ラカム……、グラブルのメインキャラ、主人公の乗る騎空艇グランサイファーの操舵手。
兄貴肌のいい人物だ。
確か、原作開始時の年齢が29歳だったかな?
ってことは、それを基準に行動すれば、主人公の動きが分かる訳だ。
……いや、そんなことするより、直接ザンクティンゼルに出向いた方が早いな。後でシェロに相談してみよう。
しかし……、一ファンとして、原作前のラカムに会ってみたい。
と、思ったんだが……。
「いない?」
いない、そう、いないのだ。
ラカムが、千里眼で見えないほどの魔法的な隠蔽術を使えるなんてことはないだろうし。
こりゃ、マジでいないみたいだな。
んー、つまりこれは……。
原作開始から十年以上前……?
あっ、そうだ、確か、ラカムは十歳にも満たない頃、ガロンゾにいたって……。
今が丁度その時なのか?
ノア君とホモホモしてるのかー。
成る程なー。
あっ、俺可愛い子は好きだけど男の娘は守備範囲外なんで。
兎にも角にもザンクティンゼルだな。
主人公の出身地、ザンクティンゼルに出向くことだ。
それも、十数年後に。
帰ったらシェロに言おう。「私の魔法によれば十数年後にザンクティンゼルに行くべきだ」と。
男は、ネツァワルピリ、ヨダルラーハ、アレーティア、アルベール、アギエルバ、アルタイル。
女は、サラ、メルゥ、ネモネ、アステール、ダヌア、アルルメイヤ。
を一応予定しています。